動脈硬化症を捉えなおす 2022.4.17. 有本政治

 私たちの体には、くまなく血液がめぐっていて酸素や栄養を全身の細胞に送り
届けています。この血液を循環させる血管が狭くなったり(狭窄)、詰まったり
(閉塞)すると血流が阻害され、手足末端に充分な栄養や酸素を送ることができ
なくなります。ゴムホースのように柔軟性のある血管壁が固くなって弾力性を
失います。柔らかいと流れの抵抗を受けるため、血管をガラス管のように固く
細くし、流れの抵抗をなくして血液を早く流す対応をとるのです。
これが動脈硬化の本質になります。

 動脈硬化は高齢者の病気と思われがちですが、小児期から始まる場合もあり
ます(子どもの動脈硬化)。若年成人期に進行し中高年期に病状として発症して
いきます。血液や細胞は食べた物で作られるので、小児期から成人期にかけての
栄養バランス状態が良くないと、生命活動の根幹に関わる重要な栄養素である
カルシウム等が慢性的に不足し、血液や細胞、各組織、筋肉、神経等が充分に
養われなくなります。骨はカルシウムの貯蔵庫であり、骨の中には造血幹細胞が
存在し、赤血球、白血球、血小板等が造られています。小児期にかたよった
食生活をして栄養状態が良くないと、骨形成過程に支障が生じ血液や各組織、
細胞が正常に機能しなくなります。

 体はこの状態を危機と察し、骨に貯蔵しているカルシウムを血液中に流出し
ます。カルシウムが必要以上に溶出されることにより体内のカルシウムバランス
が崩れ、血管壁に沈着し始め、血管を固く細くし動脈硬化を発症させていきます。
昨今子どもの動脈硬化による心疾患や脳血管疾患が急増しているのは、外食や
ファーストフード、添加物含有のコンビニ食等による食生活の偏りが要因の
ひとつにあると言えます。

 動脈硬化は「沈黙の病気」と言われ長い年月をかけて少しずつ症状が進行して
いく病状になります。症状が現われたら初期の段階で、食生活をはじめとする
全ての生活習慣(食・息・動・想・眠)を見直す必要性があります。

【血管新生/血管可塑性】

 体には、血管の主要な部分が閉塞したり硬化すると、血管を新生させる血管
新生(血管可塑性)という生理的機能が備わっています。血流が阻害されると、
血管が枝分かれし、毛細血管が虚血になっている組織の隅々まで酸素や栄養素
をめぐらせようとします。血管新生には通常、制御機構があるのですが、生命
維持の中枢部である脳幹部に熱がこもると(脳の炎症)この制御機能のシステム
が狂い、既存の血管系から、異常な血管を新生させてしまうようになります。

 異常新生の血管には腫瘍血管というものがあります。腫瘍血管の内皮細胞
(血管の内腔を覆う単層の細胞)は正常血管とは異なり、休眠しているがん細胞
に働きかけ、がん細胞に栄養をどんどん送り込み増殖、転移させていきます。
がん細胞が触発される背景には、まずこのように脳の炎症があり、血管の慢性的
炎症が存在しているのです。生命は最後まで命を守るように対応していきます。
がん細胞を敵視し叩こうとすれば正常細胞にも深刻なダメージを与えることに
なります。がんには共存共生していくという選択肢も存在します。

  ≪参照≫ 有本政治:著 『がんを捉えなおす』

【脳内の動脈硬化】

脳の血管が狭窄・閉塞すれば脳梗塞や脳内出血のリスクを負います。前駆症状
として、吃音(初めの言葉がつっかかる)、どもり、もの忘れ、言葉が出ない、
思い出せない、頭痛(一瞬走るような感じ)、めまい、目の充血、耳閉感、耳鳴感、
食器を落としやすい、力が入りにくい、顔のむくみ、まぶたの腫れ等が挙げられ
ます。このような症状が現われたら脳内に炎症が起きて、血流が滞っているので
要注意です。横たわる時間をできるだけ多くとり、頭部(首筋・ひたい・後頭部)
の局所冷却を行なうようにします。

脳内の動脈硬化は脳の虚血により(血液不足)内頸動脈という主要な脳血管
が狭く細くもろくなっています。主要部の血管が狭くなると体はこの状況を回避
するため、多数の細い側副血行路(バイパス)を作り、脳の血流を守ろうとします。
人体には一部の血管が詰まると、迂回できる経路を作る能力が備わっています
(脳血管可塑性)。血流を守るために迂回路を作る作業は脳内をフル稼働させる
ので、脳に炎症を生じさせます。脳の炎症は自律神経のバランスを乱し、精神
状態にも影響を及ぼします(不眠、情緒不安等)。脳は炎症()に最も弱い臓器
なので、炎症は頭部の局所冷却法を用いて速やかに除去しなければなりません。

症状を改善するためには脳の虚血の根本要因となる心臓のポンプ作用、肝臓の
充血(胆のうの腫れ)を正常にし、血液の循環・配分・質を整える
必要があります。
日本伝承医学では脳に起こる症状をこのように内臓との関連の中で捉え、
心臓
調整法で心臓のポンプ作用を高め血液の循環を助け、肝胆叩打法で血液の配分を
整え、胆汁の分泌を促進することで、血液の熱を冷まし赤血球連鎖を除去します。
これにより脳への血液供給を改善し、脳内の血管の停滞と詰まりを回復させて
いきます。脳は精神状態とも関わるので自律神経調整法を用い、交感神経の緊張
をとり、情緒(脳波)を安定させていきます。脳内の熱のこもり(脳の炎症)
脳圧の上昇を改善するために、家庭療法として首筋、ひたい、後頭部、耳の後ろ
局所冷却法を実践します。

【抹消動脈疾患/下肢閉塞動脈硬化症】

血行障害が手足の動脈に生じた状態を、末梢動脈疾患(PAD)と言います。抹消
動脈疾患は国際的名称で、日本では一般的には下肢閉塞性動脈硬化症(ASO)
呼ばれています。末梢動脈疾患の症状の進行と対処法を段階的に明記します。
 初期段階での下記のような症状が表われた時点で、血管状態、血液の循環・
配分・質が良くないという事になります。

(1)血流が悪くなるので手足末端が冷たくなります。手先や足先が常に
冷たく感じられます。これは初期の兆候になるので、この時点で食・息・動・
想・眠
の生活習慣をしっかり見直します。特に睡眠が大事です。睡眠時には
氷枕で頭部を冷却し足元は湯たんぽで温め(秋~冬、春先迄)頭寒足熱を実践
します。

(2)心臓機能(心臓ポンプ作用)の低下からむくみ(浮腫)や静脈瘤が生じ
ます。腎臓肝臓機能の低下もみられます。階段の上り下りが息苦しく感じら
れます。
むくむからと言って水を控えてはいけません。代謝が悪くなっているので水
の摂取は重要です。一日1.52ルットル位が目安となります。

(3)脳への血流が悪くなり脳内での情報伝達に支障をきたすため、話す時
に吃音(きつおん)、どもりが出てきます。話し始めの言葉がつまったり、
つっかかったりします。神経原生吃音と言い、脳の動脈硬化の初期症状に
なります。吃音は本人が気がつかない場合が多いので周囲の方が教えてあげ
て下さい。脳梗塞や脳内出血の警告サインになるので無理をせず、床に就く
時間を早め養生することが大事です。

(4)下肢(特に膝から下)にしびれ感やだるさ(おもだるさ)が起きます。
だるく感じて力が入りにくくなります。夜中に足がつったり(こむら返り)
しびれたりすることがあります。静脈瘤が生じる場合もあります。心臓の
弱りが出ているので、体はしびれ等を起こすことで血液を心臓まで還そう
とします。また筋肉をおもく固くし硬直させ、動脈を圧迫することによって
末端まで血流を促す対応をとります。

(5)歩行時にふくらはぎの深部、足の裏等に痛みが起きます。しばらく
休むと違和感はなくなります(間欠性跛行)。休むことで血流が改善され、
血流を確保するために硬縮していた筋肉が戻り、痛みがなくなります。
間欠性跛行の症状が出た時点で要注意です。仕事や家事、活動量をセーブ
するようにします。血管に老化(血管寿命)がきているということなので、
休めば治るという安易な気もちでいてはいけません。

(6)警告を無視して通常通り過ごしていると、歩ける距離が段々短くなり
ます。少し歩いただけで痛みを発症するようになります。これ以上無理を
してはいけないという体からの最終警告です。

(7)この警告サインをさらに無視すると、安静にしていてもふくらはぎ
深部から疼痛が起きるようになります。患部の筋肉に痛みを発生させ、痛み
の信号により心臓の拍動を活発化し、痛みの出ている筋肉に血液を集める
対応をとります。心臓機能がかなり弱ってきているということです。

(8)全身の組織がダメージを受けるので知らぬ間に、皮膚におできや潰瘍等
ができやすくなります。いつまでも治らずその部位が紫色に変色したり黒ずん
できます。虫刺されや傷口跡も治りにくくなり暗褐色になります。小さな
部位からゆっくり広範囲に広がり皮下組織が死滅し、壊疽(えそ)や壊死(えし)
に至る場合があります。体は脳脊髄液の環流を守る為、手足末端部の細胞を
死滅させ放棄してまでも、脳と体幹部(胴体)の血流を守ろうとします。

(9)血流と血液の質の低下は免疫力と生命力を低下させ、末端部のわずかな
傷や化膿部から細菌が血液を通して全身に廻り、敗血症で命を落とす危険性
があります。

※抹消動脈疾患はこのような段階を経て重度になっていきます。体は最後まで
命を守る対応をとりますが、警告を何回も無視し続ければ、だいじに至ると
う事です。下肢に起こる動脈硬化は全身にも波及するため、抹消動脈疾患
から
心不全、心筋梗塞、脳梗塞、脳出血等を発症させるリスクも高くなります。

 また血管がガラス管のように固く細くもろくなっているので、無理をすれば
大動脈解離に至る場合もあります。体に現われる症状は、全て命を守る警告サ
インになるので、初期の段階で過信してはいけません。生活習慣を見直し、
動量(仕事・家事・娯楽等)を制限し、養生することが大事です。

【子どもの動脈硬化】

 これまでは成人期以降にみられた動脈硬化が、小児期から発症するようになり
ました。遺伝的素因(先天的心肺機能の弱さ)の他、外食、間食、ファースト
フード、インスタント食品、冷凍食品、スナック菓子、清涼飲料水等による
食生活の不摂生、運動(歩行)不足、ストレス過多(脳疲労)、ゲーム・パソコン・
スマホ等による脳疲労、睡眠不足等の外的要因が挙げられます。

 日本でも小児期に多くの子どもたちに動脈硬化の初期症状である病理学的変化、
血管の内腔の狭窄と脂肪線条が認められています。動脈硬化は遺伝的素因の他に
環境要素、生活習慣が相互に関連性をもち小児期から危険因子を作り出してい
ます。昨今の教育事情や環境要因による運動不足も要因として挙げられます。

骨は歩いたり動いたり(運動)することで圧力がかかり骨を作る細胞が活性化
されます。運動不足になると骨からカルシウムが溶出し、骨がもろくなり骨髄
機能が低下し造血力が落ちてしまいます。造血力の低下は脳脊髄液の環流を阻害
し脳細胞が養われなくなるので、情緒不安や切れやすい子が増えていきます。

小児成人病と共に小児精神病という名前がつくほどに、子どもの多岐に渡る
病状が増加したのは、遺伝的要因や家庭環境のみならず、社会環境による要因
も大きいと言えます。

※脂肪線条・・主にマクロファージ(白血球に分類される免疫細胞)からなるコレ
ステロールエステルを多量に含む泡沫細胞が集合してできます。泡沫細胞は徐々
にプラークに移行し、血管壁に沈着し、血管内腔に固い隆起性病変として表われ
てきます。


【腎硬化症】

 動脈硬化により血管が狭窄、閉塞し血液の循環・配分・質に異常が生じると、
腎臓は血液をろ過するためにフル稼働します。血液中の老廃物をろ過し体外へ
排出する作業におわれます。この働きを担っているのが腎臓の糸球体になります。
糸球体は血液をろ過して尿のもとを作るフィルターのような働きをしています。
この糸球体へ急いで血液を送らなければならないので、その経路となる細動脈を、
固く細く狭くすることで、速やかに血液をまわす対応をとっていきます(腎硬化症)
このとき血圧は急上昇します。血圧は血液を流す力であり、圧を高くすることで
血液を早急にまわそうとします。

細動脈に起こるこのような動脈硬化を腎硬化症と言います。細動脈の壁の内側
の層と中間の層に異常が生じ、細動脈の壁が固く厚くなり内腔が狭くなります。
腎臓の糸球体へ血液を送る役目の細動脈を、固く細く狭くすることによって血流
を早める対応をとります。高血圧にして、血液を流す力を強めて、血流を促して
いるので降圧剤等で下げないようにします。血圧を人為的に下げてしまうと血液
を流す力が弱くなってしまうので、心臓ポンプをさらに働かせなければならなく
なり、心臓に大きな負担をかけることになります。

 動脈硬化がおきると腎臓機能が弱るのではなく、先に腎臓機能の低下が前提
にあります。共通して言えるのは長期に渡る水の摂取不足です。水を飲まない事
で代謝が悪くなっています。水が細胞や血液等を造っているので、水が不足する
と血液が養なわれなくなり、血液の質が低下し、どろどろでべたべたになります。
腎臓は汚れた血液をろ過するために過度に働くため、ますます機能低下に陥り
ます。このような悪循環が長い年月の間、繰り返されてきたことにより、動脈
硬化という病状として現われます。


   ≪腎臓の役割≫ ①血液のろ過、再生、排出
               ②血圧の調整
               ③血液を造る指令ホルモンの分泌
               ④体液中のイオン濃度調整
               ⑤強い骨を作る働き

※このように腎臓は血管、骨(カルシウム)に関わり、動脈硬化に最も影響をもつ
臓器になります。動脈硬化の予防と回復には、腎機能を上げる必要があり、
一日1.52ルットル位の水を摂取する習慣をつけていくことです。

【動脈硬化を捉えなおす】
 
 末梢動脈疾患をはじめ、全ての動脈硬化症は全身の血液の循環を司る心臓の
ポンプ機能の低下が根底に存在します。心臓のポンプ力を助ける対応として、
上体に右ねじれが生じます。肝臓の充血(胆のうの腫れ)がある場合は上体に
左ねじれが生じます。右ねじれと左ねじれの両方に出る場合もあります。
この体幹部のねじれのゆがみは下肢部にまで及び、下肢の各関節と筋肉に炎症
を生起させ、痛みやだるさ等を発症させていきます。

日本伝承医学ではまず低下した心臓機能を戻し、肝臓(胆のう)機能を高め、
体のねじれのゆがみを除去することで末端部の血流を促進し動脈硬化を改善して
いきます。

     参照:「病気と症状は体のねじれのゆがみに起因する」

 心臓機能の低下から体幹部に生じたねじれのゆがみは、体内を縦に走行する
動脈にもねじれを生じさせ、ゴムホースがよじられるように血液の流れを著しく
阻害させます。体幹部のねじれは横隔膜の上下運動(肺を動かす呼吸運動)も
阻害させます。就寝時の呼吸は横隔膜の上下運動が担っています。横隔膜と心臓
の鼓動は一体となり、日夜休まず可動して生命を維持しています。
 
また体幹部のねじれのゆがみは、下肢の股関節、膝関節、足関節等にも影響
を及ぼし血液の循環のみならず、リンパ液、組織液、脳脊髄液等の循環をも阻害
していきます。
     参照:『人体バナナ理論/人体積木理論』

 脳脊髄液は脳を保護するために、なくてはならない髄液になります。脳(3
脳室・側脳室)で作られ、脳内をめぐり脊髄を伝わり仙骨まで運ばれ再び脊髄を
通り脳へ戻ります。脳脊髄液の環流が悪くなると、血液やリンパ液の流れ、
神経系の回路も阻害されます。神経伝達物質にも支障をきたすため記憶障害
(
物忘れ等)・睡眠障害・判断力、集中力の欠如等が生じます。

人体はねじれのゆがみの応力に最も弱い生き物で、上体部のねじれのゆがみが
下肢部、脳内、神経組織(神経系)にまで影響を及ぼし様々な病状を発症させて
いくのです。改善するためには体幹部と下肢のねじれのゆがみをとることが命題
となります。日本伝承医学では、このねじれのゆがみをとり、低下した内臓機能
(心臓・肺・肝臓・腎臓等)を高めることに学技の主体を置いています

動脈硬化は、血管を細く狭く、ガラス管のように固くし血液を速やかにめぐ
らす対応になります。血管にゴムホースのような柔軟性があると流れが遅くなる
為、血液を速く流すために固くしていきます。しかしゴムホースも劣化すると、
柔軟性を失い固くなり亀裂が入り破裂して水が噴出するのと同じで、人間の血管
も年と共に老いてもろくなっていきます(血管の老化)

動脈硬化は命を守る対応ではありますが過信してはいけません。根底にある
心臓機能の低下(心臓のポンプ作用)を元に戻す必要があります。そのためには
体を縦にしないで(起きていないで)、できるだけ体を横たえる時間を増やすこと
が絶対条件となります。つまり睡眠時間の改善が不可欠となります。

椅子に座る場合は、足を床におろさず、台(オットマン/フットスツール)の上
に乗せて高くして過ごすようにします。下肢部の血流を守るためです。

【食・息・動・想・眠】

 動脈硬化はコレステロール等の脂質が、長期に渡り溜まって沈着していき
プラーク(どろどろの粥状物質)ができ、血管が細くなることによって生じますが、
これは血管を細くして血液の流れを速くしている対応になります。また脂質には
炎症細胞が少ないので、プラークは血管内の炎症(血熱)を除去する働きも担って
います。このようにプラークも血熱を除去し血流を守る為の対応になりますが、
過剰になり大きくなれば動脈の壁を肥厚させ、血管破裂を引き起こすことに
なります。命を守る対応でも警告サインを無視し続ければ命とりになるのです。

家庭療法としての「食・息・動・想・眠」のすべてを見直していけば、
初期段階で悪化させずにすみます。まずは食生活を改めることです。他力本願
では治らないという事です。

食・・・血液に熱(血熱)を生じさせ、血液の質を低下させる(血液がどろどろ
べたべたの状態)食材は避けます。血液の質を低下させるものにはパスタ類・
ラーメン・油っぽいもの・揚げ物・牛肉・ナッツ類・ワイン・たばこ・スナック
菓子・添加物、酸化防止剤、保存料等含有の食品等が挙げられます。パスタ類に
含まれるグルテンは血液をドロドロにするので良くありません。米粉パスタか
グルテンフリーの物に切り替えます。米粉やグルテンフリーのパスタでも夕食時
に食べてしまうと消化吸収の妨げとなり、心臓に負担をかけます。夜中に足が
つったりしびれたり、息苦しくなったり動悸やめまいが起きやすくなります。

 健康な体を維持するためには、遅い時間に夕食をとったり、夕食時にたくさん
量を食べたり、パスタや油っぽいものを食べることは避けるようにします。
また、ワインが体に良いと思い込んで飲んでいる方が居られますが誤った認識
になります。ほとんどのワインには酸化防止剤が入っているからです。
どうしてもアルコールが飲みたい時は白米、米麹から作られる日本酒か芋焼酎を
少量たしなむ程度にします。しかしアルコール自体が肝臓に負担をかけるため、
胆のうが腫れて胆汁が分泌不足になり、血液に炎症(血熱)が起きやすくなります。
アルコール類は極力止めて、酒粕の甘酒ではなく米麹の甘酒に切り替える努力が
必要です。米麹の甘酒は「飲む点滴」と称され、腸内環境を整え免疫機能
(
生体防御機構)を高めてくれます。


※生体防御機構・・・生体防御機構とは、外から侵入してくる細菌やウィルス、
がん細胞や古くなった細胞等を処理するシステムのことです。健康を維持して
いく上で重要で、血液中の白血球がこの役割を担っています。

   参照:「食生活が健康の基本」   「薬と食事の話」

息・・・私たちは普段浅い呼吸をしています。意識して一日何回も深呼吸をとり
入れるようにします。息苦しさがあるときは必ず体にねじれのゆがみが生じ、
横隔膜の動きが阻害されています。深呼吸をすることにより、低下した横隔膜
の上下運動をとり戻すことができます。
 横隔膜の上下運動と心臓のポンプ作用は互いにリンクしているので、横隔膜の
動きが正常になれば心臓のポンプ作用も正常になり、血流が改善されます。

動・・・足は第二の心臓と言われるように、動脈硬化が発生したら、まず低下
している下肢の筋肉ポンプの働きをとり戻す必要があります。ふくらはぎの筋肉
ポンプが働くことで、心臓へ血液を還すことができるのですが、年と共に筋肉は
だんだんおとろえていくため、血液を心臓までうまく還せなくなります。
 ふくらはぎに筋肉をつけるためには、つま先立ちが最も効果的です。かかとを
高くあげて、あげたままのつま先立ち姿勢で約10秒間静止します。一旦かかとを
おろして再度つま先立ちをします。これを一日何回も繰り返します。

 一日30005000歩位を目安に適度な歩行も重要です。心臓に負担がかかるので
大股で早く歩いてはいけません。小幅でゆっくり歩くようにします。
 体を鍛えなければいけないと思い込みたくさん歩いたり、走ったり、階段の上り
下りや、縄とび、スクワット等をする方が居りますが下肢に負荷がかかるので
却って症状を悪化させることになります。

想・・・想念、心の状態が健康を左右します。ストレスや悩み、不安、あせり
いかりの感情等が常にあると、肝臓を充血させ胆のうを腫らし、胆汁が分泌不足
になり血液に熱を帯びさせます(血液の質の低下)。血液の慢性的炎症が動脈硬化
を発症させる要因になるので、心の状態(精神状態)を穏やかに保てるように
意識改革をします。   参照:「脳疲労」

眠・・・私たちの体は、夜10時~4時迄の間に眠ることによって、成長ホルモン
が分泌されます。成長ホルモンは各臓器の新陳代謝に関わる重要なホルモンなので、
この時間帯に横たわることで代謝が良くなり、健康を維持できます。

 睡眠は床につく時間帯が大事だということです。毎日が無理でも週23回は
早く寝る習慣をつけていきます。  参照:「眠りの質」

【動脈硬化は血液の慢性的炎症】

 世界保健機関(WHO)では、動脈硬化をはじめ生活習慣病、自己免疫疾患、神経
疾患、がん等は炎症反応による非感染性疾患と定義しています。動脈硬化は、
血液(血管)の長期に及ぶ慢性的炎症から発症する謂わば非感染性疾患の中心的
な位置を占める病変と定義されています。つまり動脈硬化を含め、ほとんどの
病状は炎症から発症していくということです。

 血液の慢性的炎症は、肝臓の炎症(胆のうの腫れ)による胆汁(たんじゅう)
分泌不足から起きます。胆汁には血液の熱を除去する働きがあります。胆のうが
腫れて機能低下すると胆汁が正常に分泌されなくなることで炎症反応が現われます。

日本伝承医学では、血液の質を変える操法と胆汁の分泌を促進させる技法を
用い、炎症(血熱)を除去していきます。家庭療法としての肝臓、胆のうの局所
冷却法も合わせて行なうようにします。

【後記】捉えなおすシリーズを発刊して33年の歳月が経ちました。動脈硬化
ある意味、治療院に来られている方々のほとんどに当てはまる症状と言えます。
初期の段階で生活習慣を見直し、降圧剤等の薬剤服用を止め、仕事や活動量を
制限し就寝時間をできるだけ早め、家庭療法としての局所冷却法を実践していけ
ば改善できる症状を、警告信号を無視し続けて、心臓や脳にまで病状が及んで
しまった方々をみて参りました。動脈硬化は初期の段階で選択肢を見誤らず
正しく対処していけば治る病状になります。長文になりましたが、真摯に読み
進めて頂きたい所存です。新たな気づき、再認識として、脳脊髄液の環流を本文
に載せています。


【脳脊髄液】

 ねじられたときに局所的に応力が大きくなることを局所応力と言います。針金
がひねりねじられ、極限までくると手で切れる原理と同様に、人体もねじれの
応力に最も弱い構造になっています。今から
40年前にねじれのゆがみの考察を
『人体バナナ理論
/人体積木理論』として発刊しています。拙著のこの理論には
体にねじれのゆがみが生じるとなぜいけないのか、日本伝承医学の治療がなぜ
ねじれのゆがみを正すことができるのかが明記されています。

 心臓のポンプ機能の低下は上体に右ねじれを起こし、肝臓の充血、胆のうの
腫れは左ねじれを起こします。こうした体幹部のねじれのゆがみの応力は中心部
に最も大きな応力として作用します。つまり局所応力が最も作用するのは、中心
部にある脊柱の脊柱管を流れる脳脊髄液ということになります。ねじれのゆがみ
はこの脳脊髄液の環流を大きく阻害することになります。

 脳脊髄液は脳内で作られ頭部と仙骨間をめぐり、1分間に612のリズムで
生成、吸収を繰り返しています。頭蓋骨はこのリズムに合わせて動いています。
脳脊髄液の環流が阻害されると、頭蓋骨の動きが止まり圧迫され、脳神経細胞に
障害が生じます。脳の総合中枢である視床下部にも支障をきたし、自律神経が
乱れ、免疫力、生命力、自己治癒力等が大幅に低下します。日本では古来より
この脳脊髄液の働きに着眼し、脳脊髄液の環流を促す数々の操法を伝え残して
います。これが日本伝承医学になります。   

令和5417  有本政治

 ※アンダーライン詳細は日本伝承医学のホームページの下記項目を参照下さい。

≪参考文献≫ 有本政治:著

         「がんを捉えなおす

        「人体バナナ理論/人体積木理論

           「病気と症状は体のねじれのゆがみに起因する」

食・息・動・想・眠
     
             頭寒足熱

          「血液の循環・配分・質の乱れはなぜ起きるのか」 

                  頭部冷却法と横たわることの重要性

         「脳・心臓の血栓症について

         「脳梗塞・脳血栓をとらえ直す

         「心疾患(心筋梗塞・狭心症)の本質

         「脳循環と心臓との関連

         「脳・心疾患の正しい対処法

         「自律神経調整法

         「家庭療法としての局所冷却法
 
             「食生活が健康の基本

             「薬と食事の話

            「脳疲労
    
            「眠りの質

 「(下肢)のポンプ機構について

         「下肢閉塞性動脈硬化症

         「ウィリス動脈輪閉塞症(もやもや病)