病気の直接的要因となる血液の循環・配分・質
の乱れは
なぜ起きるのか  2022.1.7.  有本政治

 「血は命」といわれるように、私たちの命を存続させるために欠く事のでき
ない体内の物質は血液になります。常に新鮮な血液が体の中の組織・器官に供
給されることで生命は営まれています。血液は循環と配分と質に分類され、
すべての病気の直接的な要因には、この血液の「循環・配分・質」の乱れが
必ず存在します。これはどうして起きるのか解説していきます。

血液の循環は人体の血液のポンプ装置である心臓が一番大きく関わっています。
横たわる時間が短いと心臓機能は低下します。心臓のポンプ機能が低下すれば
全身の隅々まで血液を循環させることができなくなり、血液の供給が不足する
組織器官に病気を発生させていきます。心臓機能の弱りは血液の循環だけでは
なく配分を乱す要因にもなります。

血液の配分を乱す最大要因は肝臓の充血にあります。肝臓はレバーと呼ばれ、
人体中の血液の約4分の1が貯えられ、最も中身の詰まった血液の固まりのよう
な臓器になります。肝臓はストレスを受けると機能低下を引き起こします。
内包されている胆のうの働きも低下し胆汁が分泌不足になります。低下した機
能を元に戻すために体は肝臓を充血させ、大量の血液を肝臓に集めるので、
全身の血液の配分が乱れ、脳や心臓が虚血(血液不足)になります。

血液の質の乱れに関わるのは肝臓と胆のうになります。血液の質はいきなり
低下するのではなく、胆汁(たんじゅう)の分泌不足による赤血球の連鎖(ドロ
ドロベタベタ)と変形が起因します。血液の熱を冷ます働きがある胆汁が分泌
不足になると血液に熱を帯び、その熱変性により、赤血球同士がくっついて
血液がドロドロでベタベタの状態になってしまいます。
良薬口に苦し(りょうやくくちににがし)と言われるように、苦い胆汁には熱を
冷まし体内の炎症を抑える苦漢薬としての大事な働きがあるのです。

血液の循環の乱れは心臓の機能低下にあり、配分の乱れは肝臓の充血が関与
し、質の乱れは胆のうから分泌される胆汁にあったのです。漢方医学では肝臓
と胆のうは表裏(ひょうり)の関係にあり、胆のうと心臓は時間的陰陽関係に
あります。正に「肝心要(かんじんかなめ)」と言われるように、肝臓(胆のう)
と心臓の弱りが血液の循環・配分・質を乱し、様々な病気を発症させていく
直接的要因になっているのです。

日本伝承医学は「心臓中心の医学」であり、それに付随して肝臓、胆のうが
あり、肝心要の働きを元に戻す目的で技術が構築されています。胸椎の3番と
5番の心臓の反応点を病気や症状の診断と判定場所として用い、血液の循環・
配分・質を整えていく事で病気や症状を回復に向かわせていきます。