下肢閉塞性動脈硬化症

 

下肢閉塞性動脈硬化症は、足の血管の動脈硬化により血管が狭くなったり
(
狭窄)詰まったりする(閉塞)症状を言います。血流が悪くなるため、むくみが
出たり、常に手指先足先が冷たく感じられます。歩行時に急にふくらはぎの深部
に痛みが起きることがあります。少し休んでいると痛みはなくなりますが、
大丈夫だと思ってまた歩き始めると一定距離(わずか数百メートル単位で発症
します)を超えた時点で急激に痛みが再発します(間欠性跛行)
 狭窄や閉塞が進行していくと、次第に歩ける距離が短くなっていきます。

血管だけの問題ではなく神経にも及ぶので、傷ができても痛みを感じにくくなり、
オーバーワークを続けてしまうと悪化して動けなくなり敗血症に移行してしまう
場合もあります。安静時にも深部から疼痛が起きるようになると重症なので、
仕事の態勢(休暇をとるようにする)や生活習慣を見直す必要があります。
壊疽や壊死を起こしてくると下肢切断の危険も生じます。下肢閉塞性動脈硬化症
は命に関わる病状なので過信は禁物です。

※間欠性跛行(かんけつせいはこう)とは、少し歩くことで足が痛くなったり
しびれたりして歩けなくなるが、しばらく休むとまた歩けるようになる状態を
言います。動脈硬化により血管に充分な血液を送り込むことができなくなること
で起こります。症状はふくらはぎより下側付近に起き、下肢が重く冷たく
感じ
られます。下肢に違和感や痛みを感じたら、不必要な外出は控え行動を最小限度
にします。日中も横たわる時間をふやしていきます。椅子に座り足を床におろし
ている姿勢はふらはぎに負荷がかかるので、足は台座や他の椅子の上にのせて、
ふくらはぎを床と平行の高さにまっすぐ伸ばしてくつろぐようにします。何より
も自身のエネルギーを蓄え充電することです。動きすぎ歩きすぎ、仕事のしすぎ
等のオーバーワークはいけません。

下肢閉塞動脈硬化症をおこす背景には、根底に心臓機能の低下があります。
心臓のポンプ作用が弱くなっているので全身の隅々まで血液を循環できなくなり、
末端である下肢への血流が悪くなっています。動脈をガラス管のように細く固く
させることによって、血流を速くさせる対応をとっているのですが、もろくなっ
ているため、過度の圧力がかかると亀裂が入り大出血を起こし命に危険が及ぶ場合
があります。生命は最後まで命を守る対応をとりますが、動脈硬化は、「無理を
しないで体を少し休めなさい」という最終警告だと思って下さい。
 動脈硬化の性質は、全身同時に進行するという所にあります。そのため、心不全、
心筋梗塞や脳梗塞、くも膜下出血、脳出血等を合わせて発症しやすくなります。
心臓だけではなく、背景にはすい臓、脾臓、腎臓に慢性的な機能低下がみられます。
体は全体との関連の中で生命維持をしているからです。

【動脈硬化とは】

 動脈には心臓から送り出される血液を全身に運ぶ役割があります。本来は弾力
があってしなやかな組織でできています。しかし心臓、すい臓、脾臓、腎臓等の
機能低下により、血管の内膜にタメージが加わり続けることによって、新しい
細胞が作られなくなり、動脈が弾力性を失い固くなってしまいます。動脈の内膜
にはコレステロール等が沈殿しやすくなり、血管を細くしてまで血流を確保しよ
うとしていきます。しかし血管は細く固くなるだけではなく、ガラス管のように
非常にもろくなってしまうため、血液を速く流すために血圧が急激に上がった
ときに解離して大出血を起こす危険性もあります
(大動脈解離)

【日本伝承医学の治療】

 日本伝承医学は心臓中心の医学と言われるように、まず心臓機能を上げること
に主体を置いています。心臓のポンプ作用を高め、下肢への血流を確保します。
どろどろでべたべたになっている血液をさらさらにして血液の質を良くする治療
を行ないます。胆嚢の腫れによる胆汁の分泌不足、脾臓
(すい臓)の弱り等も要因
になっているので、胆嚢、脾臓
(すい臓)調整法も入れていきます。下肢だけを
診るのではなく内臓機能から整え、体が動脈硬化を起こさなくても良い状態に
していきます。下肢閉塞動脈硬化症の場合は症状が安定するまでは週1回位の
ペースでの受診が必要になります。

日常生活で気をつけていくことは、できるだけ省エネで生活していくことです。
人間には限られたエネルギー量というものがあります。適度な歩行は大事ですが、
歩きすぎや動きすぎは負担がかかり、かえって症状を悪化させてしまいます
(一日
30005000歩位を目安とします)。膝、足関節に負荷がかかるので、大またで
歩くことは避けます。腕を曲げて手を振る歩き方は、胸部、肺に負担がかかる
ので、手は自然体で下におろした姿勢で小また
(小幅)で歩くようにします。
「歩幅を大きく、手を振って歩く」という歩行は、若い健康な人の歩き方で、
高齢者や心肺機能の弱い方、病状が出ている方はまねをしてはいけません。

健康は見誤った知識により、良かれと思ってやっていることがかえって健康を
害することになる場合があるので気をつけるようにします。


 下肢閉塞性動脈硬化症は、深部の違和感や重さ、鈍痛が消失しない限り、症状
を甘くみてはいけません。家庭療法としての「食・息・動・想・眠」、局所冷却法、
水の摂取等は毎日実践していきます。日本伝承医学で推奨している梅雲丹と合わ
せて、レモン入り手作り野菜ジュースは毎日飲むことを日課とします。レモンの
抗酸化作用が血液の質を高め、胆汁の分泌を促し血流を改善していきます
(レシピ
は治療院にありますので担当の臨床士にお申し出ください
)

≪参考文献≫

動脈硬化症を捉えなおす

ウィリス動脈輪閉塞症(もやもや病)