病気と症状は体のねじれのゆがみに起因する 
             2022.5.20. 有本政治  

 私は約35年位前に人体に発生するねじれのゆがみを「人体バナナ
理論」と題して発表しています。これは、スポーツ障害で発生する
筋肉、関節、靭帯、腱、骨の疾患は、人体全体に起こったねじれが、
下肢上肢に及び、外からは見えないが中身は腐りかかったような状
態がすでに存在し(これをバナナに例えて命名)、そこにわずかな応
力が加わることで、肉離れ、腱の断裂、捻挫(靭帯損傷)、疲労骨折
等のスポーツ障害が引き起こされるという理論になります。

 また、人体の縦方向のねじれと横方向へのゆがみは「人体積木理
論」として展開しています。それから長い歳月が経過し、臨床に従
事する中、さらに解明されたねじれのゆがみの本質が今回紹介するも
のになります。
(参考)有本政治著:『人体バナナ理論人体積木理論』

【四つ足動物から二足直立を果たした人間のもつ構造的弱点】

四つ足の動物は四本の手足で胴体を支えているので構造物として
安定しています。そして頭部と胴体が水平位の状態に位置している
ので血液のポンプ装置としての心臓は負荷がかからず頭部に血液を
供給することができます。また手足が四本ありそれが筋肉ポンプと
して作動して心臓までの血液の環流を合理的に効率よく果たすこと
ができています。

しかし二足直立を果たした人類は、縦長な構造体になり、不安定
な構造物として存在することになったのです。それだけではなく、
立位ということは、心臓と頭部が上部に位置され、心臓と頭部の位
置関係から頭部が心臓より高い位置にあり、頭部に血液を送り込む
行程に大きな負荷がかかることになったということです。

さらに心臓まで血液を還す手足四本のポンプ装置から足二本に半
減したため、高い位置の心臓まで血液を還すには大きな重力にも抗
さなければならず、これも大きな負荷を人体機能にかけることにな
ったのです。これが人体の構造上の弱点となり、心臓と脳(頭部)
血液不足(虚血)を起こしやすくなった理由になります。

 人間の病気、死因の大半が心臓疾患と脳血管障害になる所以です。
故に当院では家庭療法として、横たわる時間の確保の徹底を指導し、
脳圧と脳温を下げるために頭部冷却をすべての病気治しの基本とし
ています(詳細は院長日記2018年1月18日家庭療法の項を参照)

 そして二足直立を果たした人間のもつもうひとつの弱点が、今回
のテーマである人体構造のゆがみの発生の要因になります。四つ足
動物ではねじれのゆがみはほとんど発生しません。しかし棒状の縦
長構造の人体はいとも簡単に発生してしまいます。
その中でも人体
の上部の胴体に起きるねじれのゆがみは、内部に決定的な破壊と体
液循環(血液・リンパ液・間質液・脳脊髄液・関節内滑液等)の停
滞を生じさせる最大要因となります。体液循環の停滞は熱を発生させ
筋肉関節疾患等さまざまな症状の根本原因となっていきます。病気
や症状は熱(炎症)から生じると言っても過言ではありません。

上肢(肩、肘、手首、手指)関節に熱がこもると、4050肩、上肢
痛、肘痛、手首痛、手指痛を発症させます。下肢(股関節、膝関節、
足関節、足指)への影響は股関節痛、膝痛、シンスプリント、捻挫、
外反母趾等として表われます。

 (参考)日本伝承医学ホームページ下記『院長日記』~

「人は何故病気になるのか?回復させるためにはどうしたら良いのか?」2019.7.25.
「日本伝承医学の治療と家庭療法のすすめ」2018.10.31.
「つま先立ちと腕立て伏せは何故必要なのか」2018.6.12.
「家庭療法として推奨する頭と肝臓(胆嚢)の局所冷却法は何故必要なのか」2018.1.8.
「本気で病気を治したいなら、横たわる時間と睡眠が最重要となる」2017.2.22
「病気治しの基本~動物に学ぶ」2016.7.9.


 【上部胴体のねじれのゆがみは横隔膜にも作用する】

 物体にかかるねじれの応力を、ぞうきんしぼりを例えに考えてみ
ます。ぞうきんをしぼると内部に力が加わり、ぞうきん内部に含ま
れた水が表面に浮き上がりしたたり落ちます。このように人体の上
部胴体である胸部や腹部にねじれの応力が加わると、内臓がよじら
れ破壊と機能低下が起こります。またよじられることで内部の血液、
リンパ液等の体液循環にも停滞が生じます。

 例えれば、水道にゴムホースをつないで水をまく際に、ゴムホース
の途中がよじれてしまうと、水が遮断されてしまいます。これと同じ
ようなことが人体内部にも起きてしまうのです。

次にねじれの応力は横隔膜にも作用することを記します。ねじれ
のゆがみは人体の隔壁でありポンプ装置である横隔膜の動きに制限
を加えます。横隔膜は胸腔と腹腔の境にある筋肉になります。この
横隔膜は呼吸に連動して上下に10センチ位迄動き、安静時呼吸では
呼吸運動の大部分を担っています(安静時には1.5センチ位)。また、
体内のポンプ装置として血液、リンパ液、組織液などの液体成分を
循環させるもとになっています。
 横隔膜の起始部は腰椎部・胸骨部・肋骨部の3部からなり、停止部
は横隔膜中央分の
腱膜になります。横隔膜の上下運動は全脊柱を波
立たせるように働き、仙骨と後頭骨に連動して脳脊髄液環流のための
ポンプとしても重要な働きを担っています。胴体のねじれのゆがみは、
この大事な横隔膜の動きも制限してしまうことになるのです。


【右ねじれと左ねじれの考察】
 日本伝承医学では人体を上体の右ねじれと左ねじれに分けて解明し
ています。

上体に右ねじれを起こすのは心臓からの血液の噴き出し、心臓のポン
プ作用(収縮力)を助ける対応とし、左ねじれは胆のうを絞り込み胆汁
の分泌を助ける対応とみていきます。ほとんどの場合は右ねじれに
よるねじれのゆがみを引き起こしています。それはどうしてかとい
うと、生きていく上で心臓機能を低下させないことが第一条件にな
るからです。心臓の働きを守ることが第一優先になるからです。

 日本伝承医学は『心臓中心の医学』と言われ、心臓のポンプ作用
を高める技術を有している唯一の手技療法になります。心臓の働き
を正常に復することができるので人体に生じたねじれのゆがみを根本
から正していくことができます。日本伝承医学の操法のほとんどが、
首、胸・胴体のねじれをとることを目的として構築されており、日本
伝承医学の「治効理論」のひとつとなっています。

※詳細は『人体バナナ理論積木理論』に明記されています。

【日本伝承医学の治効理論】
『骨髄機能を発現し、生命力(細胞新生力)と免疫力(造血力)を高め、病(やまい)の直接的要因となる
血液の循環・配分・質を整えていく治療技術である。』
        
        血液の循環は心臓が司る
        血液の配分は肝臓が司る
        血液の質は胆のうが司る