眠りの質   

私たちの睡眠は浅い眠りと深い眠りを交互に繰り返しています。
浅い眠りをレム睡眠(Rapid Eye Movement 急速眼球運動)と言い、深い
眠りをノンレム睡眠(non-REM)と言います。レム睡眠中は眼球がピク
ピク活発に動き、脳が覚醒しています。夢を見るのもこの睡眠時にな
ります。深い眠りのノンレム睡眠時では眼球は動かないで大脳は休息
しています。深い眠りは脳や肉体の疲労回復のために重要な睡眠にな
ります。この深い眠りの時に、目覚まし時計や誰かに起こされてしま
うと、どんなに長時間寝ても、朝起きたときに目覚めが悪く寝たよう
な気がしません。だるさや疲労感、頭痛、関節痛等が生じ、その日
一日が不調に感じられます。故にできるだけ目覚まし時計は用いない
で浅いレム睡眠時に自然に起きるようにします。仕事がある日は無理
でも休日には自然に目覚めるようにすると、その日一日を体調良く過
ごすことができます。(参考文献はリンクしてご覧いただけます)

【眠りのサイクル】

眠りにつくときはノンレム睡眠から始まり、一気に深い眠りに入り
ます。1時間位たつとその後眠りは浅くなり、レム睡眠に移行してい
きます。30分位浅い眠りになり、体はまたノンレム睡眠に移行します。
このようにノンレム睡眠とレム睡眠は交互に繰り返され、1時間半~
2時間位の周期で一晩に35回繰り返されていきます(1周期はノンレ
ム睡眠とレム睡眠を合わせた時間になります)。深夜2時~3時位から
明け方にかけてこの周期は短くなっていき、ノンレムとレム睡眠を
合わせた周期が50分~1時間半位にせばまります(個人差があります)
つまり10時に床につき、2時半まではぐっすり眠れてもその後は眠れ
なかったり寝ても何度も起きてしまうという現象が起こります。年と
共に眠りの質は低下していくので深夜や明け方に目が覚めてしまった
あとは熟睡できなくなり、うとうとしているだけになっていきますが、
できるだけ気にしないようにしていきます。眠れない、眠れない、と
気にやんだり、あせったり、イライラすると交感神経がさらに緊張し
てもっと眠れなくなります。女性の場合は閉経に向けて体が準備し
始める40歳代位から、男性の場合は50歳代位から、眠りの質を司る
ホルモンの分泌能力が著しく衰えていくので、眠りの質が低下してい
きます(男女共30歳位から徐々に低下し始めます)。誘眠剤や睡眠薬等
を用いてしまうと脳内ホルモンのバランスを崩し、心臓機能を大幅に
低下させてしまうので、薬剤等は極力用いないようにします。

【眠れない理由】

眠れない時は交感神経を緊張状態にして心臓のポンプ機能を守って
います。眠れないのではなく、体を守るために眠らせないようにして
いるのです。遺伝的に心肺機能(心臓と肺)が弱い人や、過労や心労に
よって肝心機能(肝臓と心臓)が弱っている時に、ぐっすり眠ってしま
うと、血液の循環が阻害され、血液の配分、質に乱れを生じさせます。
心臓のポンプ機能と血液の循環・配分・質を守るために眠れなくさせ
ているのに、眠ってしまうと逆に体を害するということです。人為的
に眠らせる誘眠剤や睡眠薬を避けたい理由はここにあります。

【眠りの質を高めるためには】

眠れない時は、就寝時に氷枕で後頭部を冷却していくことで脳幹部
の熱(炎症)を除去します。自律神経のバランスが整い交感神経の緊張
がとれるので、深い眠りにつくことができます。アイスバッグで首すじ
やひたいも冷却するようにします。首すじを冷却することで血熱(けつ
ねつ)がとれ、脳内に冷たいきれいな血液が循環されるので、脳内が
良い状態に保たれリラックスでき眠りの質が高まります。

食・・・食べてからすぐに寝ると消化に血液をとられてしまうので脳
と肝臓が虚血になり血液の循環・配分に乱れが生じてきます。これを正
そうと交感神経を緊張させて、昼間の体にしようとするため眠りが浅く
なり、眠りの質も低下してしまいます。夕食はできるだけ早めに
すませ
る習慣をつけていくことも必要です。

息・・・床についたら深呼吸をします。深呼吸をすることで横隔膜の
動きが良くなるので就寝時の心臓の働きを助けてくれます。
()横隔膜は心臓のポンプ作用を助ける筋肉ポンプになります。

動・・・眠りの質を高めるためには適度な歩行(ウォーキング)が必要
です。適度な歩行を行なうことで脳波がデルタ波(ノンレム睡眠時に出
るやすらぎの脳波)になり、睡眠の質が良くなるからです。眠りは短時間
でも質の良い眠りにつくことが大事です。

日本伝承医学の施術では基本調整によって身体のねじれのゆがみをとり、
心臓調整法、肝胆の叩打法で血液の循環・配分・質を整えていきます。
そして交感神経の緊張をとるために自律神経調整法、後頭骨擦過法を用
います。人体の伝達系の主体である骨伝導系を用いて、枝葉にあたる
神経系(自律神経等)を調整していくので、不眠症や不安神経症等を改善
していくことができます。

夜中に目が覚めた時は起き上がりトイレに行くようにします。排尿に
より脳圧を抜くことができます。また起き上がり歩くことによって血液
の循環が良くなるので、行きたくなくても行くように意識します。口内
は睡眠時に最も雑菌が繁殖する所なのでトイレに起きた時は口をすすい
でからお水を少し飲むようにします。いきなりお水を飲んでしまうので
はなくすすいでから飲む習慣をつけていきます。

(参)有本政治著:『不眠症の本質』~眠れないには眠れない意味がある 
        『骨伝導系が作動すると人体に何が起きるか』 
        『病気と症状は体のねじれのゆがみに起因する』
        『食・息・動・想・眠』
        日本伝承医学心療科~『自律神経調整法と後頭骨擦過法』
                  『交感神経が緊張している場合』


【眠る時間帯が大事】

睡眠は床に就く時間帯が大事です。私たちの体は夜10時~4時迄の時間
帯に眠ることで新陳代謝が良くなり、成長ホルモンが分泌されます。
免疫力が高まるのもこの時間帯になります。同じ6時間の睡眠でも夜12
6時迄の睡眠ではホルモン分泌、免疫力向上にはつながりません。
仕事で帰宅が遅い日は無理でも、休日や週2日位は10時迄に床につく日
を意識してつくることが病気予防や健康維持の秘訣になります。病気の
かたも免疫力を高めるために、実践するようにします。体は横たわるこ
とで内臓が重力から解放され、休まる事ができます。横になる事で心臓、
肺、肝臓(胆のう)、腎臓、膵臓等の臓器が休まるのです。立位や座位の
姿勢では常に各臓器に負担がかかっていきます。たとえ眠れなくても横
になり各内臓を重力から解放させて休ませることが病気予防、病気治し
には必要です。免疫力が低下すると休眠しているがん細胞を原発させて
しまう要因にもなります。人間の体にとって睡眠が大事と言うことです。

()有本政治著:『本気で病気を治したいなら、横たわる時間と睡眠が
         最重要となる』

()成長ホルモンとは・・・成長ホルモンは体内にある物質をエネルギー
に変える大事な働きがあります。これを代謝と言いますが代謝が悪くな
ることで以下の様な様々な病気を発症させていきます。

成長ホルモンが分泌されなくなると、骨がもろくなる・心臓機能が低
下・コレステロールが増える・インスリンの働きが悪くなる・筋肉量が
低下・精神不安になりやすい・疲れやすくなる等の様々な症状が表われ
ます。最も着目したい点は、成長ホルモンの分泌不足は、骨を弱くもろ
くするという所にあります。骨の健康状態が悪くなるので脳や内臓を
保護し守っていくことができなくなります。骨はカルシウムの貯蔵庫と
言われ、体を維持し養っていく為の大事な役割を果たしているからです。

()有本政治著:『骨を捉えなおす』

つまり成長ホルモンは人間が生きていく上でとても大事なホルモンだと
いうことです。寝不足や就寝時間が遅いと、この成長ホルモンが分泌さ
れにくくなるので体は不調になっていきます。免疫機能に作用するホル
モンなので、成長ホルモンの分泌不足は免疫力を低下させ感染症や様々
な病気を発症させやすくします。

成長ホルモンは3歳頃から分泌し始め、骨が成長、形成する思春期に
かけて分泌量は増大していきます。20歳を過ぎ30歳代から分泌量は徐々
に低下していきます。若い時のように夜更かしはしないで早めに寝るこ
とが大事です。

成長ホルモンは脳から出た指令を受けて脳の下垂体から分泌され、
肝臓や筋肉、様々な臓器で行なわれている代謝を促進する役割を担って
います。成長ホルモンを仲介する物質は肝臓で作られます(IGF-1)
日本伝承医学が推奨している頭部と肝臓冷却は、成長ホルモンの分泌を
促す家庭療法になります。

(参)有本政治著:『局所冷却法』~家庭療法としての頭と肝臓の
           局所冷却法はなぜ必要か

同じ様な環境で暮らしていても、ウィルスや細菌に感染する人しない人、
病気になる人、ならない人、休眠しているがん細胞を原発する人しない
人等がいます。遺伝的要因や体質気質、外的要因等様々ではありますが、
共通して言えることはその人の免疫力が低下しているということです。
人が健康に生きていく上で大事なことは『食・息・動・想・眠』になり
ます。最後の『眠』はおろそかになりがちですが大切な生活習慣のひと
つであることを認識しなければなりません。眠りの質を高めていくのは、
薬でも医者でもありません。生活習慣を見つめ直し変えてみるという意志
です。人間には何かを成し遂げたり、考えたり、生み出したりする想像能力、
自由意志というものがあります。「気のもちよう」でいかようにもなる
ものです。
 ()有本政治著:『人はなぜ病気になるのか?回復させるためには
         どうしたらいいのか』

         『病気治しの基本~動物に学ぶ』