正しい食の話
   ~『食・息・動・想・眠』の食について

 昨今の食生活では様々な情報が錯綜しています。誤った情報
で良かれと思ってやっていることが、実は体に良くない事がたく
さんあります。知った時点からでも遅くはありません。正して
いくことです。
 日本伝承医学では健康維持のために『食・息・動・想・眠』
(しょく・そく・どう・そう・みん)の重要性を家庭療法とし
て提唱しています。この項では「食」(しょく)についての話を
していきます。


【水の重要性】
 まずは水です。水はむくむから良くない、トイレが近くなるか
ら飲みたくない、勤務中は水が飲めない等の理由で、あまり飲
んでいない方がたくさんおられます。水を飲まないと草花が枯
れてしまうように、私たちの細胞も枯れてしまい、様々な病巣
(びょうそう)を体内に生み出します。病気は体内の水不足から
始まるといっても過言ではありません。動物や赤ちゃん、草花
にお茶やジュース、コーヒー等は与えないように、生命によっ
て純粋な水が何よりも大事なのです。
 私たちの体は汗や尿で約1.52リットルもの水分を排出しま
す。逆算すると毎日1.52リットルの水の摂取が必要という事
になります。がんや筋腫、腫瘍、血液の病気(急性白血病・悪性
リンパ腫・血球貪食症等)、婦人科疾患、精神疾患、神経症状
(神経障害)、肝臓、すい臓、胆のう、腎疾患等に罹患する方の
ほとんどが、水をあまり飲んでいませんでした。緑茶やほうじ
茶、ルイボスティ等の方が体に良いと思い込み、敢えて水を飲
んでいない方もおられますが、これは誤った健康法となります。
 純粋な水が体内にとり込まれないと新陳代謝が行なわれなくな
り、血液、組織液、脳脊髄液等の循環が滞り、細胞の新生、再
生ができなくなります(細胞新生力、生命力の低下)。水を飲ま
ないと毒素や熱を排出できない体になってしまうのです。病気
は炎症に起因するように、熱のこもりが炎症を発生させ病気の
体にしてしまうのです。がん細胞に侵されている方は細胞新生
を促すためにも、一日1.52リットルの水の摂取が急務となり
ます。
    ≪参考文献≫有本政治著:『がんを捉えなおす

【砂糖と塩の話】
 糖分を控えている人に認知症や記憶障害、脳障害等が発症する
確率が高いことは、医学的にも立証されています。糖質には情
緒安定作用がある為、不足するとおこりっぽくなったり、切れ
やすかったり、いらいらしたり、情緒不安、うつ症状、無気力
等を発症しやすくなります。
 「糖は脳を養いナトリウムは心臓を養う」と言われるように、
(脳細胞)を養うためには適度な糖分が必要となります。脳は
エネルギー源としてブドウ糖以外は使えないため、糖質を制限
してしまうと脳が活動できなくなり、細胞新生、細胞修復がで
きなくなります。疲れた時に甘いものが食べたべたくなるのは、
糖質不足により脳が働かなくなり脳疲労を起こすからです。
 また塩分(ナトリウム)を控えすぎてしまうと心臓のポンプ作
用が低下してしまい、十分な血液が体内や脳にまわせなくなり、
脳が虚血(血液不足)になります。心臓はナトリウムで働いてい
るからです。
 つまり糖分や塩分を控えてしまうと、一番の中枢部の脳と心臓
が働かなくなってしまうということです。日本では古来より
「さしすせそ」(砂糖・塩・酢・醤油・味噌)が健康の秘訣とい
われてきました。これは先人達の叡智といえます。

【肉の話】
 次に肉類です。肉は体に良くない、がん細胞を増殖させる等
の誤った健康法が一部浸透していますが、これは大きな認識違
いとなります。適度な鶏肉、豚肉は体を養うためには必要です(
牛肉は摂る必要はありません)。適度な肉類をとらないと、良い
細胞と血液が作れなくなるからです。特にがんに罹患している
方、寛解といわれた方は肉類を控えてはいけません(食べすぎは
禁物です)

 豚肉にはエネルギー源となるビタミンB1やヘモグロビンを作る
ビタミンB12、貧血を防ぐ鉄分が豊富に含まれています。血液を
作るもととなるのです。鶏肉を食べる場合はムネ肉やささみば
かりを食べていてはいけません。脂質を含む、鳥もも肉も食べ
るようにします。もも肉には骨を丈夫にするビタミンKや鉄分が
含まれているからです。貧血状態の時には週1回位の割合で、
やきとりのレバーを12本分位を食べるようにします。貧血時
は造血力(免疫力)が著しく低下し、細胞新生力(生命力)を低
下させます。このような状態のときに、体は休眠しているがん
細胞を原発させていくのです。

【アルコールの話】
 本気で病気を治したいならば、アルコールはやめるべきです。
アルコールは分解するのに肝臓(胆のう)に負担をかけるので、
胆汁(たんじゅう)の分泌の妨げになります。血液の熱を冷ます
働きがある胆汁が分泌されなくなると血液は熱を帯び、どろど
ろでベタベタになります。血液の質が低下し、各臓器を養えな
くなり、病巣を悪化させます。アルコールは依存性が高いので、
自身に確固とした信念がなければやめることができないのが難
しい所です。家族や周囲の人たちの協力が必要です。

【小麦粉の話】
 パン、パスタ、ピザ、うどん、ラーメン、クッキー、ケーキ等
に含まれる小麦粉は体に良くありません。小麦にはグルテンと
呼ばれる成分が含有され、このグルテンが腸内環境を悪化させ
ます。「脳腸相関」と言い、腸機能は脳と関わりがあるため、
小麦粉の摂取は脳にも悪影響を与えることになります。
 グルテンはモルヒネと似たアミノ酸配列をしているため、グ
ルテン分解時に、体はモルヒネやアヘン等の薬物を摂取したと
きと同じような反応をしてしまうのです。つまりグルテンは依
存性の強い麻薬と同様の働きをするということです。パン食が
体に良くないと思っていてもなかなかやめられない理由はここ
にあります。
 また、小麦粉に含まれるアミロペクチンAは、血糖値を急上昇
させるため、血糖値が高い方や疲れやすくだるい方は摂取を控
えるようにします。
 朝食をパン食にしている御家庭が多くなりましたが、健康維
持のためにはおにぎり等に切り替えることを勧めます。パンは
含有されるグルテンが腸壁にへばりつき、腸に炎症を生じさせ、
下痢や腫瘍、腸炎、憩室炎等のリスクを高めます。眠りの質も
低下させるので不眠になりやすくなります。

【玄米の話】
 玄米とは収穫した籾(もみ)から籾殻(もみがら)を除去したも
のを言います。私たちが普段食べている白米は、玄米を完全に
精米して胚乳部分となったものです。栄養価が高いと思い込み、
高齢時や病気になったときに白米から玄米に切り替える方がい
ますが、これは間違った健康法になります。
 玄米の表面の皮に含まれているセルロースや不溶性食物繊維
は、人間の消化酵素では消化できません。がんの方や病気の方、
高齢の方は、造血力(免疫力)が低下しているため、胃腸機能も
低下しています。体内に不溶性食物繊維が入ってくると、消化
不良を起こすだけではなく、腸に負担がかかるため、脳機能が
阻害されてしまいます。腸と脳は「脳腸相関」と言われ、互い
に関連し合い機能を保っています。脳機能が阻害されると、脳
(視床下部)からの発令が狂い、正常細胞が新生されず、がん
細胞等の悪い細胞が優位になってしまいます。

 幼少期から毎日ずっと玄米食の場合は腸環境が慣れていますが、
高齢になってから、病気になってから、という摂取方法は却っ
て逆効果だということです。本来玄米は摂取しなくてよいもの
ですが、どうしても摂りたい場合は少量を白米に混ぜる程度に
しておきます(割合的には白米9玄米1程度)

 玄米も白米も奈良時代頃より食されてきましたが、戦時中は
食べ物がなく、充分な栄養がとれなかったため、玄米を完全食
として食するようになりました。
しかし現代ではおかずや食材もたくさんあり栄養バランスの良
い食事がとれるようになったので、敢えて玄米食にする必要は
ないのです。また昨今はストレス過多による脳疲労で腸機能が
低下してきているので、不溶性食物繊維である玄米は控えた方
が良いと言えます。

【健康食品、栄養補助食品について】
 錠剤や粉末、ドリンク剤等の栄養補助食品を毎日何種類も摂
取している方がみられますがこれも間違った健康法になります。
例えばビタミン剤の摂取は、体内での活性酸素の生成と破壊の
バランスを崩し、免疫システムを破綻する場合があります。
免疫機構が崩れるために自己免疫疾患に罹患しやすくなります。
 サプリメント(栄養補助剤)やプロテイン(たんぱく質)、たん
ぱく質栄養補助食品等の摂取は、栄養素を包む基剤となってい
る化学物質を無害化するために、肝臓に過度に負担がかかるの
で、肝機能を低下させてしまいます。また健康食品、栄養補助
食品によるたんぱく質等の過剰摂取は肝臓だけではなく、腎臓
機能も低下させる要因となります。
 たんぱく質は分解されるとアミノ酸に変わるので、アミノ酸
もたんぱく質という認識になります。たんぱく質を過剰摂取す
ると腎臓が過度に働かなければならなくなり、腎臓の解毒作用
に多大な負担がかかってしまいます。腎機能の低下は尿毒症等
を引き起こす事にもなりかねません。昨今、筋肉増強だけでは
なく、美容や健康のためにこうした栄養補助食品に頼っている
方が増えてきましたが、栄養はバランスよく食事から摂ってい
くようにします。
 また栄養補助食品が、スポーツをしている子供達や成長期に
良いと言われ、子供の為に与える御家庭も増えてきましたが、
これも認識違いとなります。たんぱく質(プロテイン)はカルシ
ウムの排出を促進してしまうので摂取によって却ってカルシウ
ム不足に陥ることがあります。
 栄養補助食品によるたんぱく質の摂取は、たんぱく質の代謝に
より生産された酸を中和するために骨(カルシウム)が過度に使
われ、カルシウム不足になり骨が弱くもろくなる傾向があると
いうことです。このような臨床報告から、成長期に摂取すると、
却って成長を阻害してしまうことにもなりかねません。たんぱ
く質の摂取に関しては賛否両輪ありますが、厚生労働省におい
て、たんぱく質の耐容上限量の規定が、いまだ設定されていな
いため、様々な情報が錯綜しているのが現状です。栄養は食生
活から自然な形でとっていくことが何よりも大切であるという
事を忘れてはいけません。
 ビタミン剤も同様です。ビタミンCは摂りすぎて、嘔吐、胃け
いれん、腹痛等を発症する場合が多々あります。とり過ぎが発
がんリスクを高くするという症例もあります。栄養は基本、毎
日の食事からとるようにし、錠剤やドリンク剤に極力頼らない
ようにします。

 栄養補助食品、健康食品等と題して1980年頃から様々な錠剤
やカプセル、粉末(パウダー)、ドリンク剤等が開発されてきま
したが、1995年頃より、これらが却って体に悪い影響を与える
場合があるということがわかり、臨床研究が続けられてきまし
た。2004年には栄養補助食品であるビタミン剤を長期服用した
場合、がんの発症率が上がるという研究結果が証明されました。
病気予防、がん予防のためにと思い続けている誤った認識が、
がんを原発させてしまうという何ともいえない矛盾が生じてき
たのです。

【最後に】
 肉や糖分、塩分等が、がん細胞を増殖させるという情報が流
れていますが、これらは認識違いと言えます。肉や糖分、塩分
を控えてしまうとエネルギーがなくなり、体を養えなくなりま
す。とり過ぎてしまうのもよくありません。何でも適量にする
ことです。

 病気になると人から色々な事をいわれ、様々な情報で混乱し、
何が真実かわからなくなってしまいます。誤った食材、誤った
食生活は知った時点から正していくことです。物事に手遅れと
いう事はありません。手遅れや後悔があるとしたら、それは真
実を知っているのに何も動かない事、あきらめて動きをとめて
しまうことです。

ここに書かれている先人達の教え、叡智に耳を傾け、正しい選
択眼をもつようにしてください。日本伝承医学は、日本に古来
より伝承されてきた先人達の叡智といえます。
追伸:食事の時間帯、食生活についての詳細は日本伝承医学の
   ホームページの「一日二食のすすめ
   「日本伝承医学の真の健康法」の項を御覧下さい。


≪参考文献≫有本政治著:「一日二食のすすめ
              「日本伝承医学家庭療法
             (局所冷却法と食息動想眠)

            「日本伝承医学の真の健康法
            「脳疲労
         「日本伝承医学は真のセカンドオピニオン
         「日本伝承医学の治療はなぜがんに効くのか
            「脳腸相関
             「眠りの質を良くするためには」