日本伝承医学の真の健康法
~健康を取り戻し体力を回復したいならば、
夜は何も食べず頭を冷やし、ひたすら横たわる事~
人間は何らかの病気でいつか死んでいきます。現在ではその
死因の多くが、がん、心臓病、脳血管障害になります。それに
比べて人間以外の動物達は、病死はごく一部で、ほとんどが寿
命を全うして自然死しています。人間だけが各人の寿命を全う
できずに、痛みや苦しみ、死への恐怖の中で死んでいくのです。
この違いは一体何なのでしょうか?答えははっきりしていま
す。人間は日常の生活の仕方に大きな間違いを犯しているから
です。それは何かと言いますと、生きていく上で最も基本とな
る「食生活」と「睡眠」に大きな認識違いがあるからです。
それは平易に言い表せば、食べすぎ、飲みすぎ(飲酒)、睡眠不
足(横たわる時間の不足)になります。
動物には食べ過ぎや睡眠不足は存在しません。お腹がすいた
時に適量を食べ、日没と共に寝て、日の出と共に起きます。
ライオンは満腹の時は目の前にうさぎがいても捕獲しません。
それにひきかえ人間はなんと愚かな生き物でしょうか。お腹が
いっぱいでも目の前に好物や御馳走があると食べてしまいます。
お腹が空かないのに時間になると三食を定時に食べないと気が
すまないのです。体の声を聞かず、脳で考えて、その方が栄養
になると考えてしまうのです。
昔から食事は「腹八分目」と言われています。腹十分目の満
腹になる少し手前で食事は止めないと、胃腸だけではなく心臓
にも負担がかかり、早死にしてしまうという先人の教えです。
日本伝承医学では『食(食事)・息(呼吸)・動(歩行)・想(思考、
ストレス軽減)・眠(睡眠)』の重要性を提唱してきましたが、
今一度皆様方には誤った食生活や睡眠が健康を如何に害するか
ということを再認識し、身におとして頂きたいと思います。
人間の健康を害しているのは、毎日の「食べ過ぎ」と「夜ふか
し」が最大要因だったのです。
【人はなぜ食べ過ぎてしまうのか】
満腹中枢は脳の中心部にあります。脳幹(のうかん)の視床下
部(ししょうかぶ)が、満腹になると血糖値の上昇を感知して、
自然に食欲がおさまるようにできています。ところが脳に炎症
(熱のこもり)が起こると、炎症で視床下部の働きが阻害され、
自律神経のバランスが乱れて指令が狂ってくるのです。いくら
食べても満腹感が得られず、一日三回食べても間食をしたくな
ってしまうのです。つまり食欲を調整するためには脳の炎症を
除去することが命題となります。
そのためにはストレスを極力軽減することです。ストレスは
肝臓を充血させ脳に虚血(血液不足)を引き起こします。脳内は
速やかに血液を廻そうと働くのでオーバ-ヒート状態になり炎
症を帯びてきます。脳は人体中で最も熱に弱い臓器の為、頭蓋
骨には口や鼻、耳等の穴があいていてそこから熱を放出させて
いるのです。
ストレス(心労、不安感、対人関係の悩み、仕事や生きがい
の喪失、家庭内での不満感、満たされない気もち、むなしい空
虚感、無気力等)がある人は、なかなか一日二食(朝食と昼食の
み)にすることができません。夕方から夜になると、一日のス
トレスの蓄積(脳の疲弊)から脳に炎症が起き、自律神経が乱れ、
お腹がすいてしまい、何か食べずにはいられなくなります。
お酒も同様です。不調なのにワインや日本酒、ビール等のアル
コールを止められない人は、ストレスから脳に炎症が起き、
自律神経のバランスを崩しているからです。
心肺機能が弱い人や高齢の方、血液の質が低下している方、
不調がある方は、たとえ少量であっても飲酒は禁物です。飲酒
は肝臓の解毒機能に負担をかけ肝機能を低下させるだけではな
く、心臓機能も低下させ脳の虚血を助長し、めまいや動悸、
不整脈、脳血管障害(脳梗塞・脳内出血・くも膜下出血)等を誘
発させる要因となります。
日本伝承医学の治療では、骨髄機能を発現させ細胞新生力
(生命力)と造血力(免疫力)を高め、病気の直接的要因となる
全身の血液の循環・配分・質(赤血球の連鎖・変形)の乱れを
正し、心臓機能を高め、脳の炎症(脳内の熱のこもり)、肝臓の
充血を除去することを主体として学技が構築されています。
ストレスをなくすことはできなくても、治療と併用して家庭療
法としての頭(後頭部、頭頂部、首筋、ひたい)と肝臓の局所
冷却法を実践していくことで、ストレスによる脳の炎症を軽減
していくことはできます。
【 人間の消化能力について
】
人間の食べ物の消化にかかる時間は約4~5時間になります。
肉類や油物を摂取した場合はその2~3倍もの時間がかかります。
パンや小麦粉、パスタ類等は5~10時間も消化にかかるため腸
に負担がかかるだけではなく、含有されているグルテンにより、
心臓疾患(めまい、頭痛、動悸、息苦しさ等)、精神疾患(不眠
症、うつ症状、不安症等)、自己免疫疾患等を誘発させる確率
が高くなります。
食事は摂る時間が大事です。夕方から夜にかけての時間帯は
消化器の働きが半分以下になります。この時間帯に夕食をとっ
てしまうと消化(胃腸)に負担がかかります。
人間は江戸時代中期までは一日二食の生活でした。三食にな
ったことで、消化器の働かない夜間に、胃腸に血液を大量導入
することになり、床についても臓器を休める事ができなくなっ
たのです。これが胃腸に大きな負担をかけ炎症を生じさせ、胃
腸だけではなく、肝臓、心臓等の内臓に機能低下をもたらした
のです。
【ノーベル生理学・医学賞を受賞したオートファジー理論
】
人間の約60兆の細胞は毎日新しく生まれ変わっています(新
陳代謝)。つまり生きているということは「細胞新生」を意味
し、生命力とは細胞新生力を表わしています。病気の根本原因
には、その人の生命力と免疫力の低下が必ず存在します。故に
病気を根本から治すためには、生命力と免疫力の向上は不可欠
となります。この細胞新生と再合成の仕組みを明らかにしたの
が「オートファジー理論」になります。
オートファジーとは、一日二食(朝食と昼食)にして胃腸を16
時間、水のみで固形物を体内に一切入れず胃腸を空にします。
そうすることで全細胞が細胞新生と再合成に注力され、細胞内
のミトコンドリアが生まれ変わり、細胞活動が活性化し細胞エ
ネルギーを高め、細胞新生が促進されるという理論になります。
16時間臓器を休めることで生命力(細胞新生力)が高まるという
ことです。食事の時間帯は朝食を朝の6~8時に摂り、次の食事
を昼間の12~14時の間に摂ることが望ましいとされます。
この理論は五千年の歴史をもつインドのアーユルヴェーダ(生
命の化学)では古来より病気治しとして実践されてきました。
日本でも50年程前から研究され、2016年にノーベル生理学・医
学賞を生物学者(分子細胞生理学)である大隈良典氏が受賞した
ことで、一日二食の健康法が病気回復には必須であることが、
生理学、医学上からも実証され、世界中に認知されるようにな
りました。
オートファジー理論はパーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、
脊髄小脳変性症、自己免疫疾患、アルツハイマー型認知症等の
重度の難病や運動障害、神経変性疾患に対しても大きな効果が
あることが立証されました。
【 夜8時の就寝が必要な理由
】
人が病気となる根本原因は、その人自身の生命力(細胞新生
力)と免疫力(造血力)の低下が存在しています。その生命力と
免疫力を低下させる第一の原因は、睡眠不足です。
現在の死因の一位にあるがんの原因は免疫力の低下にありま
す。がん細胞の発生・増殖を抑えることができるのは体に備わ
った免疫力です。その役割を担う免疫細胞が充分に機能すれば、
がんに侵されることは無いのです。がんの死因がトップになっ
たのは、現代人が極端な睡眠不足の生活を送るようになったこ
とによる免疫力の低下にあるのです。誰しもの中に休眠してい
るがん細胞を原発させないためには、睡眠、横たわることが不
可欠となります。
夜行性以外の動物は日没と共に横たわり体を休め、眠ります。
そして日の出と共に起きます。明るい日中と光のささない夜と
では、体の生理機能が変わります。昼間は自律神経の交感神経
が働き、夜間は副交感神経が優位になることで、自律神経のバ
ランス関係が保たれます。動物達はそれに従い、体を横たえ、
睡眠をとっているのです。人間だけが自然の摂理から反し、深
夜12時をまわるような生活を送っています。これでは健康が保
てるわけがありません。
人体の生理機能を保つには、横たわる時間帯というものが設
定されています。夜10時から明け方の4時までの間は、体を横
たえないと人体の細胞を活性化する成長ホルモンが分泌されな
くなってしまうのです。成長ホルモンは脳の下垂体から分泌さ
れ、肝臓や骨の先端の軟骨に働きかけ成長因子の産出を促しま
す。肝臓や筋肉、皮膚、脂肪等の様々な臓器の代謝に関わる重
要なホルモンになります。仕事で帰宅が遅く夜8時就寝が厳し
い場合はせめて夜10時迄には床に就くように心がけます。定年
退職した方や仕事をしていない方は健康維持と病気治しのため
に、夜8時には床につくようにします。
【大谷翔平選手の睡眠観】
日本は世界で一番睡眠時間が短い国とされています。世界中
の人々から働きバチと揶揄(やゆ)され、睡眠を大事にしない日
本人は健康管理ができない人種とのレッテルがはられてきまし
た。早く寝る事や寝すぎることは怠け者のような感覚が日本人
の中にあるのかもしれません。
世界的な英雄となったプロ野球の大谷翔平選手の睡眠観が、
この日本人の睡眠に対する意識を大きく変えることになりまし
た。大谷翔平選手は最低でも一日8時間、通常時は10時間、休
日は12時間以上も寝るそうです。スポーツ選手の体力維持回復
には、夜の食事を控え、ひたすら横たわることが一番重要だと
知っていたからです。
「一日が25時間になったら何をしますか?」の質問に、彼はす
かさず「寝る時間をもう1時間増やします!」と答えました。
これは現代人に一石を投じる発言でありました。どんなに医者
や家族が夜ふかしはいけないと苦言を呈しても全く聞く耳を持
たなかった人々に、この大谷選手の一言が響いたのです。
以下は大谷選手の睡眠観になります。
「十分な睡眠をとることで成長ホルモンが分泌されてケガが早
く治ります。疲れがとれるのはもちろんですが、睡眠は脳のコ
ンディショニングに大事な役割があるのです。人間の身体はど
れだけ筋力をつけても、動かす指示を出しているのは脳であっ
て、だからまずは脳を休ませてあげなければならないのです。
それができるのは睡眠だけです。睡眠をおろそかにすると、ど
れだけトレーニングをしても、思うように身体は動きません。」
【 心臓病や脳血管障害を予防するには
】
がんに続く死因の上位にある心臓病と脳血管障害の発生の根
本原因は、心臓と脳の血液不足(虚血)にあります。水平型の4
つ足動物から、縦長型の二足直立を果たした人類は、頭と心臓
が人体の最上位に位置することになり、重力の影響から頭(脳)
と心臓に血液不足を生じやすい構造的弱点をもつに至ったので
す。立位や座位では頭部が心臓より上にあるため、脳に新鮮な
血液を送り込むために常に心臓のポンプ力に負担をかけること
になります。これが心臓を弱らせ心臓疾患を誘発させていく要
因となります。
心臓ポンプ力が弱まれば脳に血液を上げることができず、脳
の虚血を助長させます。脳は少ない血液をより早く脳内にめぐ
らせる必要性から、脳圧を上昇させます。この持続が脳に熱(脳
の炎症)を発生させていくのです。回復するためには縦長な構造
体の人体を横たわらせ、重力から解放させることです。横たわ
ることで心臓と頭が同じ水平上になり心臓まで十分な血液が還
り、少ないポンプ力でも脳に充分な血液を送り込むことができ、
脳圧の上昇を抑えられます。横たわることで心臓にかかる負担
が軽減でき、心臓病や脳血管障害を防ぐことができるのです。
【 脳腸相関により腸の炎症が脳の炎症を助長させる 】
人間の病気の始まりは脳の熱のこもりからくる脳の炎症にあ
ります。これを助長させるのが食べ過ぎや飲み過ぎ、睡眠不足
による胃腸の炎症です。腸の炎症は脳腸相関という密接な関係
から、脳にも炎症を発症させます。
また腸はリトルブレイン(第二の脳)とも呼ばれ、小腸には情
緒(精神)を安定させる脳内物質のセロトニンの90%が蓄えられ
ています。腸に炎症が起きると、精神安定作用が低下し、精神
疾患を生む要因になるのです。不眠症や不安神経症、情緒不安、
うつ病等の精神症状がある方は改善するためには、一日二食と
夜8時には床に就くという健康法を必ず行なうようにしなけれ
ばなりません。
【 最後に 】
病気の根本原因となる食べ過ぎと睡眠不足が、生命力と免疫
力を低下させていきます。この真理がわかれば、一日二食、夜
8時就寝、頭部冷却は必ず実践できます。
平易な言葉に置き換えれば「夜は何も食べず、頭を冷やして、
ひたすら横たわる」ことです。本気で病気予防、病気回復を望
み、自身の寿命を全うしたいのであれば、この実践は急務と考
えます。
≪参考文献≫ 有本政治著:「一日二食のすすめ」
「日本伝承医学家庭療法」