消散性肛門痛/仙骨の発作痛/脳脊髄液減少症 

※以下3つは脳脊髄液(のうせきずいえき)の環流が阻害されたときに発症する
病状になります。日本伝承医学では、脳脊髄液を最も重要な体液として捉え、
脳脊髄液を環流させる為の技法を構築しています。

【消散性肛門痛】

消散性肛門痛(しょうさんせいこうもんつう)は、肛門の奥の方に夜間に突然激痛
が生じ、数分から数十分の間、痛みが継続する症状を言います。深部がずきずき、
ずんずん刺すような、割れるような発作的な痛みが起こりますが、しばらくする
と何事もなかったかのように自然に痛みは消失していきます。痛みで目を覚まし、
冷や汗をかいたり失神に至る場合もあります。ほとんどが就寝時になりますが、
昼間に発症することもあります。

 肛門の奥の方の直腸付近から起こりますが、痛みがある場所には仙骨神経(せん
こつしんけい)が走っていて、仙骨神経叢に沿って痛みは起きます。仙骨神経叢は
脊髄神経から分岐し、仙骨にあいている穴(仙骨孔)から出て、その神経の一部は
肛門、膀胱、直腸に伸び、直腸、肛門の運動と感覚を支配しています。
 脳脊髄液流が停滞することで、脳幹から電気信号(インパルス)が脊柱を通して
送られ、仙骨神経に伝播され痛みの信号を発し、脳脊髄液の環流を促すために
消散肛門痛を発症させます。
 ※インパルスとは神経繊維を伝わる活動電位のことを言います。情報信号の経過
 は数ミリ秒で、衝撃波とみなしインパスルと呼びます。
 
 仙骨は背骨の一番下の逆三角形の骨になります。身体の土台としての働きだけ
ではなく、電気を脳内迄送る発電機(ダイナモ)、センサーとしての役目がありま
す。仙骨は前後に傾くように「うなずき運動」をすることによって脊柱から頭蓋
(脳内)迄、脳脊髄液を環流させる大事な役割を担っています。脳脊髄液は脳を
保護するために、なくてはならない髄液になります。脳(第三脳室・側脳室)
作られ、脳内をめぐり脊髄を伝わり仙骨迄運ばれ、再び脊髄を通り脳へ戻ります。 
 精神的ストレスで脳内に炎症を帯び脳脊髄液の環流が阻害されてしまうと、
頭蓋骨の動きが止まり圧迫され脳神経細胞に障害が生じます。脳の総合中枢で
ある視床下部にも支障をきたし自律神経が乱れ、免疫力と生命力が大幅に低下し
ます。生命維持にとって脳脊髄液の環流が阻害されるということは命に関わる
ことなのです。体はこれを回避するためにダイナモである仙骨に激痛を発症させ、
脳脊髄液を脳まで戻し環流させる対応をとります。仙骨神経は肛門を支配する
ため、この痛みは肛門の奥から起こっている感覚になります。
 消散性肛門痛が夜間に起きやすいのは、就寝中は仙骨のうなずき運動がなされ
ず脳脊髄液が停滞しがちになるからです。夜間に痛みが起きたら、立ち上がり
家の中を歩き回るようにします。歩くことで、かかと(距骨)から骨に圧がかかり
電気が発生し、仙骨のうなずき運動が促進され脳脊髄液が環流されます。

【仙骨の発作痛

すごくショックなことや、極度のストレス(不快感、衝撃的な出来事、いかり
や深い悲しみ等)を受けた時に、仙骨付近がどくどくと拍動するような痛みに襲わ
れることがあります。痛みは数秒から数分でおさまりますが、急激に発作的痛み
がくるため驚きますが、これは脳脊髄液を急速に循環させようとしている対応
なので、深呼吸をして呼吸を整え、歩くようにします。

 仙骨の発作痛が起きている時は、呼吸が乱れ、胸部が固まり横隔膜の上下運動
が阻害されているので息苦しくなります。まず落ち着いて深呼吸をし、横隔膜に
動きをとり戻します。胸骨(胸の前部の中心にある細長い長方形の板状骨)を衣
類の上からトトトンと指で軽くたたき胸部(心臓部)に電気を発生させます。
その場でピョンピョンと縄跳びをするようにはねることで、脳脊髄液を急速に
循環させることができるので行ないます。
仙骨の発作痛は長時間同じ姿勢でいることによる尾骨や仙骨の痛みとは異なり、
急激に深部からズンズン響くような痛みが起こります。気もちが落ち着くとおさ
まるのが特徴になります。


≪瞬間的意識消失発作≫

 仙骨の発作痛は、瞬間的意識消失発作(失神、気絶、卒倒)の前駆症状と言えます。
心が破壊されるような精神的ショック(衝撃)を受け、心因反応が現われた時、
一瞬で脳内が虚血(血液不足)となり、肝臓に血液が集まります(肝臓の充血)
脳が虚血になると、心臓から脳内へ血液が送り込まれなくなるので(極度の低血圧
状態)、脳内が酸素不足になり意識を失ってしまいます。失神、気絶、卒倒は
一過性の瞬間的意識消失発作であり、ばたんとその場に倒れることで脳への血流
を確保しようとする対応をとります。脳へ血液がまわれば意識は戻ります。
※心因反応とは、家族や親しい人の死、事故や災害等心理的に大きなダメージを
受けた時に起きる一時的な心理的反応のことをいいます。極度の精神的衝撃から
発症し、極度の恐怖や悲しみを思考から消す防衛反応として、無意識状態にさせ
るため瞬間的意識消失発作を誘発します。意識が戻っても後遺症として記憶喪失
等の記憶障害が残る場合があります。


【脳脊髄液減少症】

脳脊髄液が少なくなることにより頭痛めまい耳鳴り、倦怠感、精神不安等
様々な症状が起きる病状を脳脊髄液減少症と言います。
 脳や脊髄は髄膜で覆われていて髄膜の一番外側には硬膜がありその内側に、
くも膜があります。髄膜の一番内側の軟膜とくも膜の間にある空間を、くも膜下腔
と言いこの空間は髄液で満たされています。髄液量と圧(髄圧量)は常に一定に
保たれ、頭蓋骨から仙骨間を環流(循環)しています。
 脳脊髄液が持続的あるいは断続的に硬膜外に漏出し減少していく病態を脳脊髄液
減少症と言います。髄液が漏出してしまうことで髄圧量が低下します。
体はこれを回避するために脳圧を一気に高め、脳髄圧を上昇させていきます。
脳圧上昇時に脳内に熱が発生し炎症が起きるため、頭部の局所冷却法により、
速やかに熱(炎症)を除去する必要性があります。脳は最も熱(炎症)に弱い臓器
だからです。
 脳脊髄液減少症は外傷や事故等の後遺症以外の精神的ストレス、気圧の変動等
で発症する場合もあり、慢性疲労症候群(筋痛性脳脊髄炎)、線維筋痛症、
起立性調節障害による不登校等との関連性もあるとされています。
 人間はストレスに弱い生き物になります。ストレスを受けると一気に肝臓が
充血し、胆のうが腫れ、血液の循環・配分・質に乱れが生じます。循環・配分・
質の乱れはリンパ液や脳脊髄液等全ての体液の循環をも阻害します。
 この疾患に対する認知度は低く、脳脊髄液減少症ではなく突発性低髄液圧症候群
や脳脊髄液漏出症等と診断される場合もあります。40歳代の女性に多いとされる
のは、体が閉経に向けて準備し始めるため、ホルモンのバランスが著しく乱れる
ことが要因として挙げられます。
 脳や脊髄は、脳神経、脊髄神経や血管等につながり、髄液の中で浮かんだよう
な状態で存在しています。故に髄液が減少してしまうとこの浮力作用が減少し、
脳神経、脊髄神経、血管も下方に偏位したり牽引されたりします。神経系の機能
が大きく阻害されてしまうのです。これにより起立性頭痛、頸部痛等が発症し、
関連して自律神経症状や高次脳機能症状を発現する場合もあります。
※起立性調節障害とは、自律神経のバランスの乱れから循環器系の調節がうまく
働かず、立ち上がった時に血圧が急激に低下し、脳が虚血(血液不足)になったり、
血液を脳へ回すために心拍数が急にあがって胸が苦しく気分が悪くなったりします。

脳脊髄液は、脳の中心にある第3脳室・側脳室で血液をろ過して作られています。
故に血液の循環・配分・質が乱れていけば、脳脊髄液の循環・配分・質も阻害さ
れ、支障をきたしたり、減少したりしていくのです。
 血液の循環・配分・質を司っているのは心臓、肝臓(胆のう)等の臓器になるので
脳脊髄液の環流を守る為には、内臓機能から高めていく必要があります。

日本伝承医学ではこのように体に生じる症状を単にその部位だけでみていくのでは
なく、内臓機能から考察し全体との関連の中で捉えていきます。

≪参考文献≫    「仙骨の重要性~脳脊髄液の環流」 

           「脳脊髄液の循環の乱れ

          「肝臓と頭部の局所冷却法

           「高次脳機能障害

           「自律神経失調症の本質

           「慢性疲労症候群(筋痛性脳脊髄炎)
 
           「頭痛を捉えなおす

           「めまいを捉えなおす

           「耳鳴感・耳閉感

           「不登校(HSC)