高次脳機能障害

 

【高次脳機能障害とは】

脳梗塞や脳出血、くも膜下出血や事故等で脳の機能が損傷を受けることによっ
て起こる記憶障害、注意障害、失語障害、遂行機能障害、社会的行動障害等の
認知障害を高次脳機能障害と言います。発達障害の症状と類似する点もありま
すが、高次脳機能障害は、後天的障害となります。確立した治療法はなく、
日常生活のリハビリや言語運動訓練、認知行動療法が主体となっているのが
現況になります。

 

【日本伝承医学による著効】

日本伝承医学では、骨の特性である圧電作用と骨伝導を用い、骨に振動(ひびき)
や圧を加えて骨髄機能を発現させるので、遮断された脳の回路の神経可塑性
(かそせい)を促し、脳障害を改善させることを目的としています。脳内の
神経細胞間のシナプス伝達の効率を変化させ、欠落した機能を別のシナプス
新生によって新たな構造としてつないでいきます。

 

【家庭療法としての局所冷却法】

また脳内の炎症を除去し、脳内温度を下げ、脳の虚血(脳内の血液不足)を回避
するために家庭療法として、アイスバッグと氷枕を用いての頭部と肝臓冷却を
日課として実践します。脳は熱に弱く、脳内温度が高くなると、脳のたんぱく
成分が固まり、良い脳内物質が生成されません。脳内物質が滞ると運動細胞、
知覚細胞等の神経細胞にも支障をきたします。

 

【神経細胞はストレスに左右される】

神経細胞は大脳と小脳を合わせて約8001000億個にのぼると言われています。
人体の脳は宇宙の神秘と同じ位未知なるものとして扱われています。解明され
ている事象はほんの一部にしか過ぎません。神経細胞同士はシナプスでつなが
り、非常に複雑な神経回路を形成しています。シナプスでの情報伝達は一定で
はなく、情報や刺激により変化します。神経細胞、所謂神経というものはとて
も繊細で、不安や恐怖等の感情や、不眠、過労、心労等のストレスによって
大きく影響されます。

 

【感覚記憶と短期記憶と長期記憶】

人間の記憶には感覚記憶と短期記憶と長期記憶があります。感覚記憶は感覚
器官毎に存在する保持時間の短い記憶になります。視覚・聴覚・臭覚・味覚・
触覚等の感覚器官から受ける情報は、電気信号として神経系を伝わり脳に達し、
私たちに感覚を与えます。感覚の保持時間は非常に短く
02秒程度になります。
この記憶が感覚記憶になります。短期記憶とは短い期間、頭の中に保持される
記憶になります。短期記憶は一時的な情報の置き場であり、長期記憶に送らな
ければ記憶は維持されません。長期記憶は短期記憶を何度も繰り返すことによっ
て長い間保持されていく記憶になります。毎日反復して暗記することによって
記憶が長期化されるということです。短期記憶は主にシナプスでの伝達効率の
変化により、長期記憶はシナプスの結合の数や形態の変化により達せられると
考えられています。高次脳機能障害の場合、短期記憶が維持されにくくなるた
め、長期記憶にも支障が出てきます。

 

【海馬】

記憶をつかさどる脳は海馬(かいば)と呼ばれる部位になります。海馬が活性化
することでドーパミン等の神経伝達物質が放出され情報が脳に記憶されます。
大脳側頭葉の内側に左右一対に位置しタツノオトシゴのような形をしています。
短期記憶から長期記憶へと情報をつなげる中間記憶を担う器官になります。
海馬は記憶の司令塔とも言われとても大事な部位ですが、繊細で壊れやすい
性質をもっています。熱に弱く、脳の炎症によってダメージを受けやすくなり
ます。また強いストレスや恐怖を受けた時にも海馬は壊れやすくなります。
記憶障害を悪化させないためには、脳の炎症を速やかに除去することです。
そのためには就寝時の
氷枕での脳(後頭部)の冷却が有効になります。

 

【偏桃体と側坐核】

海馬の隣にある偏桃体は、ストレスを司っています。偏桃体がストレス情報を
キャッチして反応することで、私たちはストレスとして感知します。この偏桃
体をコントロールするのは海馬の役割になります。海馬はストレス抑制機能を
もっているので、海馬で情報を処理し、ストレスが偏桃体までいかないように
ブロックします。ところが脳に炎症が起きると海馬の働きが鈍くなり、ストレ
スをうまくコントロールできなくなります。他の人が気にしないようなことで
も気になりストレスに感じてしまいます。海馬はやる気を司る側坐核
(そくざ
かく
)ともリンクしているので、海馬の損傷はやる気や意欲も消失させてしまい
ます。

 

【前頭葉・側頭葉・後頭葉】

前頭葉は思考—判断—行動機能を司ります。この前頭葉に損傷がある場合、遂行
機能障害
(自分で考え行動をおこすことができない)、易疲労性(脳の損傷によ
る精神疲労
)、意欲低下(無気力)、注意障害(表情に変化がなくなる、集中力欠
)等の症状がみられます。側頭葉に損傷がある場合、記憶障害がでます。
側頭葉は、言語脳力も司るため、言語理解力が低下したり失語を発症する場合
もあります。後頭葉が損傷した場合、具体的障害が発症します。今まで視覚を
通して認識していたことが認識できなくなります。視覚失認と言い、見たもの
が識別できなくなります。

 

【日本伝承医学による考察】

高次脳機能障害の場合、脳が損傷を受けた部位によって発症する症状が様々に
異なります。日本伝承医学では如何なる症状でも、脳の炎症
()を除去し、脳
内温度を下げることによって、脳内の環境を整え、神経伝達物質の正常化を図っ
ていくことを目的にし、学技が構築されています。脳の虚血を回避し脳内に十分
な血液を送り込む為に、心臓肝臓機能を正常にし、血液の循環・配分・質を
改善していきます。また家庭療法として肝臓と頭部の局所冷却と、『食・息・
動・想・眠』
(しょくそくどうそうみん)の指導を行なっています。セロトニン
やドーパミン、ノルアドレナリン、アセチルコリン等の神経伝達物質は、食事
や睡眠、思考や気分
(ストレス)の影響を直に受ける為、症状の改善を図るため
には、家庭療法も毎日実践していく事が必要になります。日本伝承医学は受け
身の姿勢ではなく、本人や家族も病気や症状の根拠と機序を理解し、自分で
できることを実践する自助努力の指導とリハビリを行ないます。