人体のねじれのゆがみによる脳脊髄液の循環の乱れ
                  
2023.4.30有本政治

 日本伝承医学では人体のねじれのゆがみが、体液(血液・リンパ液・脳脊髄液・
組織液等)の循環の乱れと人体最大のポンプ装置としての横隔膜の動きを制限し、
病気を発生させていくという観点で病状を捉えています。この章ではねじれのゆが
みが脳脊髄液に及ぼす影響について解説していきます。

人体に生じるねじれのゆがみは中心部に作用応力が集中します。つまり体幹部の
中心は脊柱であり、脊柱の中の脊柱管を通る脳脊髄液に応力が最も集中するのです。
脳脊髄液は脳と脊髄を養う重要な体液で、脳と脊髄は脳脊髄液の中に浮かんでいる
状態で衝撃から保護されています。

脳脊髄液は頭蓋内では脳室とくも膜下腔に、脊柱管内では脊柱くも膜下腔に
存在し、頭蓋骨から仙骨迄を循環することで脳や神経に栄養が運ばれ、老廃物や
余計な熱が除去されます。脳脊髄液を循環させるポンプ機構は、呼吸に連動した
後頭骨と仙骨の微細なうなずき運動によって達成されています。この「うなずき
運動」がポンプ装置として働き、脳内と脊柱管の中の脳脊髄液が動かされています。

脳脊髄液は1日に500600ml産出され、1分間に612回の早さで脊柱管を介して
脳内と仙骨間を循環しています。後頭骨と仙骨のわずかな動きの圧に対して大きな
力となって液体を動かす力となり、液体の環流が達成されるのです。この後頭骨と
仙骨の動きが失われると脳脊髄液は環流できなくなります。
後頭骨と仙骨のうなずき運動を失わせる最大要因は自律神経の失調にあります。

脊柱管がねじられ脳脊髄液の環流が阻害されると脳内に充分な栄養が行き渡らな
くなり、脳内に発生した熱の処理がうまくできなくなり、脳内に熱のこもり
(脳の
炎症
)を引き起こします。脳は炎症に最も弱く脳幹部に機能障害を招き、末梢神経
である自律神経や、運動神経等に影響を及ぼします。人体に生じるねじれのゆがみ
が脳の炎症を引き起こし自律神経のバランスを乱し、脳脊髄液を環流させている
後頭骨と仙骨間の微細な「うなづき運動」を阻害させていくのです。

日本伝承医学が提唱する頭部冷却法(後頭部、ひたい、首筋)が有効な理由は
ここにあります。脳幹部に熱がこもり脳の中枢部機能が破壊されることで全ての
生理機能は狂い病状として発現していきます。脳幹部の熱を除去し、脳内の炎症
をとり去る有効な家庭療法が、この頭部冷却法になります。

脊柱管は26個の脊椎骨と仙骨の中を貫く細長い管で三角柱のような形をしてい
ます。脊柱管は単なる管のような空洞ではなく中には脊髄が走行し、脊髄からは
無数の脊髄神経が出現して叢(そう)を形成しています。脊髄神経叢は薄い硬膜に
包まれ硬組織のようになっています。そして周囲を脳脊髄液で満たされ液体に浮か
ぶように存在しています。脊髄は脳から連続する重要な中枢神経で衝撃に非常に
弱い為、脳脊髄液によって衝撃から保護されているのです。

脊柱にねじれのゆがみが起きるとその中を通る脊柱管がねじられ、神経繊維の
集合体である脊髄神経叢を内包する管は大きなねじれの応力を受け、その周りを
流れる脳脊髄液の環流が著しく阻害されます。
人体にねじれのゆがみが生じたとき
のダメージは、血管がねじられる時よりも脊柱管がねじられる時の方が内部の循環
に大きな損傷が生じるのです。

日本伝承医学では人体のねじれのゆがみをとることに学技の主体をおいています。
三指半操法で胸部のねじれ、大腿骨一発叩打法で胴体のねじれのゆがみをとり、
腰椎の捻転法で腰と骨盤のねじれ、頭頂叩打法と
C3C4の頸椎矯正法で頸椎(首の
)のねじれを修復していきます。またふり操法、ゆり操法、腸の操法により、
停滞していた脳脊髄液を環流させていきます。

≪参考文献≫ 有本政治:著

    「家庭療法としての局所冷却法

   「自律神経調整法と後頭骨擦過法

   「人体バナナ理論/人体積木理論

    「病気と症状は体のねじれのゆがみに起因する

   「動脈硬化を捉えなおす」 

 「脊柱管狭窄症の本質とその対処法

      「仙骨の重要性~脳脊髄液の環流

※脊柱管狭窄症という病気は脳脊髄液の環流を守ための対応として脊柱管を迂回
変形させている病状になります。この病気の進行を防ぎ回復を図るためには人体の
ねじれのゆがみと同時に脊柱管のねじれの除去が必須となります。それを達成でき
るのが日本伝承医学になります。