自律神経失調症(交感神経緊張型)の本質とその発生機序 2017.1.30 有本政治

自律神経とは、自分の意思とは関係なく、刺激や情報に反応して、体の機能を調
整している神経を指します。手足を動かそうと思えば自分の意思に従って動かす
事ができますが、心臓の鼓動、脳への血流、体温調節、胃腸の消化の働き等は、
自分の意思ではコントロールすることができません。このように自律神経とは、内
臓や体全身の機能を自然調整している神経を指しています。

自律神経には、正反対の働きをする「交感神経」と「副交感神経」の二つがありま
す。この二つが拮抗的に働くことで内臓の機能を保っています。例えば心臓の機能
を活発に動かす必要がある時は交感神経を優位に働かせます。この場合は、副
交感神経は抑制的に作用します。

また1日の中で昼間と夜では活動する内臓が異なってきます。精神的に緊張してい
る時とリラックスしている時でも交感神経と副交感神経の働き方が変わります。こ
れらを随時自動的にコントロールしているのが自律神経のバランスになります。つ
まり今現在の体が必要とする働きを自動的に調整して、私たちの命を維持してい
るのです。

交感神経が働くのは主に昼間で、活動している時、緊張している時、ストレスを感
じている時に優先的に働きます。心拍数は増えて、筋肉が硬くなって、血管は細く
収縮します。活動モードになっているので、すぐに反応できる体勢になっています。
仕事の指示を受けて臨機応変に働けるのも、家事や作業が計画通りにこなせる
のも、スポーツで相手の動きに瞬時に反応できるのも交感神経が優位に働いて
いるからです。

逆に、副交感神経が働くのは主に夜になります。眠っている時に働きがピーク
になりますが、食事中、入浴中、ゆっくりくつろいでいる時等にも働きます。副交感
神経が優位になると心拍数は落ち着いて、筋肉も緩んで、血管もふわりと拡がりま
す。胃腸などの消化器系の動きも盛んになって、栄養の吸収や老廃物の排出が
促進されます。

こうした自律神経の作用にバランスの乱れが生じると、一時的に様々な症状が
発現します。これを現代医学においては自律神経失調と称して、心身ともに悪い
状態として捉えています。また出てくる症状は多岐に渡り、不定愁訴として扱われ
ています。不定愁訴は原因が特定できないのが現状です。

代表的な症状として、微熱が続く、ほてる、多汗、体がだるい、疲れがとれない、
首肩のコリ、腰痛、偏頭痛、不眠、動悸、めまい等といった症状から、気分が落ち
込む、イライラする、やる気が出ない、憂鬱等の精神的な症状があります。
現代医学においてはこれらの症状の全てを一方的に”悪”として捉え、症状を封じ
込める処置が施されます。

眠れないなら睡眠薬、精神が不安定な場合は精神安定剤、うつ症状なら抗うつ剤
等で、症状を消す事だけに終始します。しかし症状は抑えられたように見えても、
自律神経の失調状態は全く変わらず、逆に慢性化し、さらに深刻な病態や重度の
精神疾患へと移行してしまうことになります。

これは自律神経のバランスの乱れを正しく捉えていない事が最大の原因です。
実は自律神経のバランスの崩れを悪い反応と捉える事に問題があるのです。
日本伝承医学では、これを体を元に戻す必要な正の対応として捉える事で自律
神経失調症の本質を解明しています。以下この視点に立って、自律神経失調症
の本質とその根拠と機序を明らかにしていきます。


『生きている体の起こす反応には意味がある』

生物として生まれて、自らの体をより悪くなる方向にもっていったり、ましてや死を
早めるように反応を起こす事はありません。その逆で生きている体の示す反応は、
何かを元に戻し、回復に向かわせるために発生させています。つまり命を最後の
最後まで守るために反応を起こしているのです。その反応は、病状の段階に応じ
て構築され、幾重にも対応できるようになっています。

体の起こす反応には全て意味があるのです。自律神経失調の典型状態である交
感神経緊張型は、自律神経のバランス関係を大きく崩してでも、何かを元に戻す
対応に迫られた時に起こり、生命にとって必要な対応なのです。


『交感神経を優位(緊張状態)に働かせる事で何を元に戻そうとしているのか』

体が示す反応には意味があり、生命を維持する上で必要な対応に迫られて交感
神経が優位な状態を作り出しています。自律神経のバランスを極端に崩してでも、
元に戻さなければならない状態に体が置かれているのです。

それはどういう状態かと言うと、体が今の状態のままだと、体調を崩し、病気に移
行し、命に危険が及ぶと体が判断した状態です。具体的には全ての症状や病気の
直接的な要因となる命の源の血液に問題が生じたのです。つまり全身の血液の
循環・配分・質に乱れが生じたのです。この状態は何の病気をも発病する事態で、
免疫力も低下し感染症にもかかりやすい状態です。これを元に戻す対応が交感神
経緊張を生み出すのです。
交感神経が緊張すると体を活動モードにさせ、機能低下した臓器への血流を良く
するため、血液の循環・配分・質が整うからです。


『全身の血液の循環・配分・質の乱れは何によって起こるのか』

全身の血液の循環に関わるのは、心臓になります。心臓のポンプ力の減退は全身
に血液を流す力が弱まり、血液の循環を遅くします。これは血液を必要としている
場所に血液が不足する事になり、全身の組織器官の機能低下をもたらします。
そして遺伝的に弱い箇所や弱りの出ている箇所に病気を起こす直接的な要因に
なります。

次に全身の血液の配分を乱す最大の要因は、特定の臓器に大量の血液が集ま
る事です。これは逆に体のどこかに血液が不足する事を意味します。これも血液
の循環不全同様に、遺伝的に弱い場所や弱っている場所に症状を引き起こす要
因となります。この大量の血液を集める臓器が肝臓になります。肝臓はレバーと
呼ばれ、血を固めたような中身の詰まった人体最大の臓器です。ここに血液が大
量にとられる事で全身の血液の配分を大きく乱すのです。

次に血液の質(赤血球の連鎖と変形)の低下に関わるのは、肝臓に内包される形
で存在する”胆嚢”(たんのう)になります。血液の質の低下とは、血液の成分の過
不足や変化は当然ながら、当初は血液成分の98%を占める赤血球のくっ付き(連
鎖)と形の変形から始まります。赤血球の連鎖と変形が起こるのは、血液が熱を
帯びる事が原因です。血液が熱をもつと”熱変性”によって赤血球同士がくっ付い
たり、形の変形が起きるのです。このように連鎖した赤血球や変形した赤血球は
本来の血液の作用を失い、血液の質を低下させるのです。

この血液の熱を一定に保つのが胆嚢から分泌される”苦い胆汁”になります。胆汁
の作用は一般的には、脂肪の分解吸収を助け、胆汁酸を生成、便の生成になり
ますが、一番重要な働きは苦い成分による熱を下げる作用です。これは漢方薬の
苦い成分による消炎作用と同等の作用になります。漢方薬ではこれを”苦寒薬”と
呼び、”良薬口に苦し”と例えられる通りの役割を果たします。これと同様に体内の
漢方薬(苦寒薬)の役割を担うのが、胆嚢から分泌される苦い胆汁になります。

この苦い胆汁によって、体内の炎症を鎮め、血液の熱を下げ、血液を一定の温度
に保っているのです。この胆汁の分泌が低下する事で、血液が熱を帯び、熱変性
によって赤血球の連鎖(ドロドロでベタベタの血液状態)と変形が生じたのです。

このように全身の血液の循環・配分・質の乱れの原因は、内臓の心臓と肝臓、胆
嚢の機能低下によって引き起こされるのです。肝臓(胆嚢を含む)と心臓は、命の
源となる血液の「循環・配分・質」を制御するという重大な働きを担っています。故
に生命にとって無くてはならない重大な働きをする事から『肝心要』(かんじんかな
め)と称されるのです。


『肝臓(胆嚢を含む)と心臓の機能低下は何によって引き起こされるか』

肝臓の機能低下は、世間ではすぐに飲酒と結びつけますが、これはアルコール中
毒のように飲めばの話で、普通の飲酒ではほとんど起きません。それどころか適
度の飲酒はストレス解消になり、”酒は百薬の長”ともなります。肝臓や胆嚢の機
能低下をもたらす最大の要因は、精神的なストレスの持続にあります。

精神的なストレスの持続は、常に脳を働かせ、興奮状態を持続させます。これは
脳内の神経の伝達物質や脳内ホルモンを大量に消費させます。脳内の神経伝
達物質や脳内ホルモンのほとんどは肝臓で作られ、脳で消費されてまた肝臓に還
って分解されます。精神的ストレスの持続は、この行程を過度に働かせ、次第に
肝臓に負担をかけ、ついに肝臓の機能低下をもたらすのです。これにより肝臓に
内包される形で存在し、肝臓で作られる胆汁を集める袋である胆嚢も同時に機能
が低下するのです。

次に心臓は、血液を送り出すポンプの役割を果たしています。体に血液の過不足
が生じないように、心臓ポンプの拍動数や排出量を調整して全身に送り出してい
ます。特に血液を大量に消費する脳へは、血液不足にならない様に常に新鮮な血
液を送ります。精神的なストレスの持続は、脳の血液をさらに大量に消費し、新鮮
な血液の補充を必要とします。この過度の持続は当然心臓に負担をかけ、徐々に
心臓の機能低下を生起させるのです。特に遺伝的に心肺機能(心臓と肺の機能)
が弱い体質の人は、元々心臓のポンプ力が弱いために大きな負担となり心臓の
機能低下がいち早く起きるのです。

また肝胆の機能低下を回復させる対応として、肝臓と胆嚢に大量の血液を集め、
熱を発生せる事で機能を元に戻そうとします。これが肝臓や胆嚢の炎症状態を生
み、充血、熱、腫れを生起するのです。この状態は、全身の血液の配分と質を乱
し、少ない血液を早く回す必要から心臓に大きな負担をかけるのです。さらに連
鎖した赤血球が全身の毛細血管に詰まりと停滞を生じさせ、これを流すために
心臓ポンプにさらなる負担を強いるのです。以上が肝臓、胆嚢と心臓の機能低下
の機序になります。

『肝心要の肝胆と心臓の機能を元に戻す対応が自律神経失調(交感神経緊張型)
を生み出す最大要因』

命の源である全身の血液の循環・配分・質が乱れる事は、体内の全ての組織器
官の生理機能の失調を生起し、機能の低下を意味します。これは病気や症状の
直接的な要因となります。生きている体は生命維持のために、一時も早くこの状
態を回避する必要がある事は言うまでもありません。

全身の血液の循環・配分・質の制御に関与しているのは肝臓、胆嚢と心臓です。
故に体は肝臓、胆嚢と心臓の機能を元に戻す対応を早急に始める必要に迫られ
るのです。これを早急に成し遂げるためには、内臓の機能を支配制御している自
律神経を作動させる事で対応するのです。そのためには、自律神経の中の交感
神経を優位に働かせて、肝臓、胆嚢と心臓の機能を高める事が求められるのです。
交感神経と副交感神経の基本的な働きの中で、肝臓と心臓の機能の亢進は交感
神経が司っています。故にこの状態の打開には交感神経を強く作動させる必要が
あるのです。

冒頭で解説した様に、交感神経の働きは、昼間活発になり、緊張している時、スト
レスを受けている時に活発に働きます。また心拍数を上げ、筋肉を固め、血管を
細くして血液の流れを早くして、組織器官への血液供給を高めます。さらに常に脳
を活動モードに入れ、熟睡させずすぐに動ける体勢をとるのです。

この様に交感神経を優位に働かせる対応は、肝臓と心臓の機能と関連直結して
います。精神的なストレスの持続は肝臓の機能低下をもたらすため、交感神経を
優位にする必要があるのです。また昼間の体状態に体を置く事で、心臓を活発に
働かせます。筋肉を固くし、血管を細くする事で血液の流れを早くし 、脳や肝臓、
心臓への血液の供給を活発にします。また脳を活発に作動させるためには、脳の
神経伝達物質や脳内ホルモンの供給を活発にする事と関連します。
以上が交感神経が優位に働く根拠と機序となるのです。


『交感神経緊張型になると様々な症状が発現するが、それよりも肝心機能を上げ
る事が優先される』

自律神経の中の交感神経だけを優位に働かせる事は、副交感神経を抑制する
事となり、自律神経のバランスは大きく崩れます。これは一時的に体に様々な症
状を引き起こしますが、これ以上に命を守る対応が優先されるのです。これは生
物として当然の対応ながら、肝心機能が元に戻る一時期は、交感神経緊張型の
症状が表に出てきます。

交感神経が優位に働くと、昼間の体状態にする事で、心臓の機能を元に戻そうと
します。そのためには夜間、故意に眠らせない状態を作り出します。寝つきが悪く、
1時間〜1時間半毎に目が覚めたり、一度目が覚めるとその後眠れなくなったりと
いう睡眠障害が発生します。

また交感神経が緊張すると、後頭部から脊柱に沿って骨盤までの筋肉が硬直して、
いわゆる”凝り” の状態を作り出します。故に後頭痛、偏頭痛、めまい、首こり、肩
こり、背中や腰の痛みが発症します。また心臓の機能を元に戻す段階で、一時的
に動悸や息苦しさ、ほてり、顔や頭の汗、多汗等も発現します。

さらに交感神経が優位に働く事は逆に副交感神経が抑制されるために、胃腸の
働きが落ち、栄養の吸収が妨げられます。食欲不振、消化不良、胃痛、腹痛、
便秘、下痢、気持ち悪さ、嘔吐等が起きやすくなり、特に消化不良のために、常
に胃の存在感があったり胃の重さを感じます。その他、精神的にも、神経過敏に
なったり、気分が落ち込む、情緒不安定、イライラ、やる気が出ない、憂鬱等の症
状が出やすくなります。

しかしこれらの症状は、肝心機能が元に戻れば自然に解消されます。自律神経の
バランスを極度に崩してまでも、肝心の機能を上げる事が優先されるのです。生
命維持のためには一時的に症状は発現しても、優先されるべき事があるのです。
まさに『肝心要』です。交感神経緊張状態をこのように認識する事が大切になります。


『症状を一方的に悪と捉え、間違った認識のもとに、症状を封じ込める処置を行
 なうとどうなるか』

元々必要な対応として、自律神経を失調させています。その過程の中で一時的に
必要な対応として出ている症状を、無理やり薬物で封じ込めても、自律神経失調
状態は一向に改善しません。改善しないだけでなく慢性化させ、さらに重篤な状態
に移行するのです。

故意に眠らせないで、昼間の体状態にして、心臓機能の回復を図っているのに、
これを睡眠薬で無理やり眠らせてしまっては、いつまでも自律神経失調は回復し
ません。確かに眠れないという事は、仕事をもつ方にとっては死活問題です。少し
でも眠りたいという気持ちは理解できます。しかし睡眠薬を飲み続ける事がどうい
う結果をもたらすかを知る事も重要です。改善のためには何が必要かを正しく自
覚する事が大切です。自律神経失調の根拠と機序を認識すれば、これを改善す
る方法は示されています。

筋肉の硬直や凝りを緩解するために、筋弛緩剤や痛み止めを使用する事は、筋
肉を固め、血管を収縮させて血液の流れを早め、脳や心臓、肝臓に血液を供給
する対応が妨げられます。これを続ける事は、当然自律神経失調の回復を遅らせ
る事になります。

また副交感神経が抑制的に働くため、消化吸収能力が低下します。特に胃の症
状として、胃痛、胃の存在感、胃の重さ等が現われます。このため、安易に胃薬を
服用してしまいますが、かえって逆効果になります。何故なら胃腸を動かす副交
感神経が抑制されているからです。自律神経のバランスが元の戻る事で解消します。

精神的な症状に対して精神安定剤や抗うつ剤の投与は、脳波の乱れを引き起こ
し、薬の依存症や重篤な状態に移行する事になるのです。これを改善するために
は、脳への血液供給を確保し、脳圧の上昇と脳幹部の熱のこもりを除去する事で
改善に向かわせる事が可能です。そのためには、心臓のポンプ力を元に戻し、脳
へ血液を引き上げる力を高める事が必要です、また肝臓の機能が元に戻り、脳
の神経伝達物質や脳内ホルモンの産出と分解能力が高まる事が求められます。

背中や腰の痛み、首や肩の痛みやコリ、後頭痛、偏頭痛に対して鎮痛剤を使用す
る事は、痛みの信号を発することで、心臓の拍動を活発にし、患部に血液を集める
対応を消すことになります。これにより益々交感神経緊張を助長し、組織の回復を
遅らせる要因となります。

事実、自律神経失調の方が症状を封じ込める処置を施しても、ほとんど症状の改
善を見ないばかりか、慢性化し、さらに重篤な疾患や重度の精神疾患に移行して
しまうケースが多くなっています。これを改善に向かわせるためには、自律神経失
調の本質を理解し、その根拠と機序を知ることが不可欠になります。


『どうすれば、改善に向かわせることができるか』

これまで詳細に自律神経失調の根拠と機序を解説してきました。根拠と機序が示
された事は、その対処の仕方も自ずと見えてきます。
根本的な要因となる、個々のもつ精神的なストレスを解消する事は、早急にはで
きませんが、肉体への影響を最小限に抑える事は可能です。

体を交感神経緊張状態にするのは肝心機能を元に戻す対応です。そのためには
肝臓、胆嚢と心臓の機能を上げる処置が不可欠です。これを最も効果的に達成
する事ができるのが日本伝承医学の治療になります。
世界で唯一骨髄の機能を発現する事を目的に構築された日本伝承医学は、骨髄
のもつ細胞新生力と造血力を引き出し、病の背景にある低下した生命力と免疫
力を短時間で回復させていくことができます。

これをベースにして古代から継承された、肝臓と胆嚢の充血、腫れ、熱をとる右
の大腿骨を叩打する調整法は、一度の治療で肝胆の腫れと熱を除去できる技術
になります。
また古代人の開発した心臓調整法が、心臓機能を回復させていきます。
これにより肝心機能を確実に元に戻す事ができます。また家庭療法として推奨す
る頭と肝臓の氷冷却法が、脳内の熱のこもりをとり、肝胆の熱を除去します。以
上の統合的な治療が自律神経失調を改善に向かわせることができます。