本気で病気を治したいなら、横たわる時間と睡眠が最重要となる

                                  2017.2.22 有本政治


『食・息・動・想・眠』

本格的なネット社会を迎え、様々な健康情報があふれ、何を選択すればいいの
かわからなくなっているのが実状です。一面の真理を有するものもありますが、
間違った健康法もたくさんあります。病気を治すには何を食べれば良いとか、どの
ようなサプリメントを用いれば良いとか、このような運動療法をしたら良いとか、
一面のみを捉えた対症療法的なものばかりで、見誤った選択をしてしまう場合が
多々あります。

健康を害してしまう理由は、もっと統合的な、私たちをとり巻く、避けては通れない
条件の過不足が体に影響を及ぼしているのです。これを端的に示したのが、
「操体法」の創始者である故橋本敬三の提唱した健康の4原則であります。これは
「食・息・動・想」(しょく・そく・どう・そう)と呼ばれています。

食とは食べる事、食材や食生活を指し、息とは、息を吸ったり呼いたりという呼吸
を指し、動とは、動く事、歩行、運動を指し、体の使い方、動かし方を言います。
想とは、想念の意味で、生き方や考え方、思考、心のあり方を指しています。
この4つの条件のどれか一つに過不足や間違いが生じても、体にゆがみが生じ
健康を害するという教えになります。実に全てを網羅した統合的な概念になります。

現代医学においても、慢性病の原因として生活習慣の乱れをあげています(生
活習慣病)。それは食生活、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の乱れや不摂生にな
ります。また最近では心労や精神的ストレスも病気の大きな要因に挙げられる様
になってきました。どれをとっても間違いではありませんが、残念ながらもうひとつ
大切な概念が抜けているのです。それは体を横たえる事と睡眠の重要性になります。

実は現代人の病気や症状発現の根源に、この横たわる時間や睡眠時間の不足
と、睡眠時間のとり方の認識不足が内在しているのです。この横たわる事と睡眠が、
健康維持と病気治しにおいて一番重要な条件になるのです。特に高度な脳をもっ
た人間には、脳の機能をいかに回復し、発現させるかが命題になります。

日本伝承医学では、病気を本気で回復させるために、この横たわる事と睡眠時
間の重要性を伝えています。つまり睡眠を加えた「食・息・動・想・眠」、しょく・そく
どう・そう・みんを日本伝承医学では病気治しの基本としています。これまでに「病
気治しの基本ーー動物に学ぶ」の中で横たわる事の重要性(ホームページの院長
日記参照)は既に解説してきましたが、今回はこの重要性を更に詳しく総合的に
解説していきます。


『動物の病気治しの方法について』

犬や猫を飼った事がある人は、動物達が病気になった時に、回復のためにどう
しているかは御存じだと思います。それは一切食べ物を口にせず、水を時々飲む
だけであとはただひたすら横たわる事で回復を図っている姿です。食べ物を与え
ても食べようとはしません。初めのうちは水は口にしますが、死期が近づいてくると
水もなめるだけになり、最後はスポイトで口に含ませてあげても、顔をそむけて
飲もうとしなくなります。

彼等は、頭で考えないで、天然に回復のための最善の方法や自分の死期を察知
しているのです。つまり「生物脳」(天然のカン)を駆使して、その時その時で、最善
の選択をしています。これにひきかえ人間は生物脳ではなく、「人間脳」(頭で考え
たこと)で判断して行動しています。そのために、自分の飼っているペットが、食事
を摂らなくなると、なんとか無理にでも食べさせようとします。しかしこれは動物達に
とっては極めて迷惑な事なのです。

なぜかと言うと、動物は、病気を回復させるには、自らの体のエネルギーや血液
を機能低下した臓器、組織器官に導入し、患部の回復を早めようとしています。
食べ物を食べてしまうと、その消化のために、エネルギーや血液を使う事になり
ます。これでは弱った組織器官の修復に使えず、回復を遅らせる事になるのです。

食べ物をとらずに、ただひたすら安静に横たわり、体内を省エネに保ち、体内の
血液の循環、配分を促進しやすい体勢を作り、回復を図るのです。食べ物をとっ
て元気を取り戻すのは、体が回復してからなすべき事なのです。その順番に従っ
て、まず弱った臓器、組織器官の修復を最優先にしていかなければなりません。

生物脳を使う事を忘れた人間は、食べないと体力が落ちて、病気が治らないと
判断して、無理に食べようとしてしまうのです。動物は、人間が無理やり口に入れ
て、食べる段階は、まだ体力がある段階で、本当に弱ってきたら彼らは一切受け
付けなくなります。また横たわる場所は、床が涼しくて、気の良い場所を天然に
探し出し、一番らくな体勢で横たわります。涼しい(冷たい)床に、炎症のある部分
を押し当てて、体内の余計な熱を冷ましているのです。このように動物が教えてい
るように、病気治しは、この安静に横たわるという事と睡眠が極めて重要な条
件になります。高度な脳をもち、日々頭脳を酷使している人間には、脳の機能を
回復発現させるためにも、動物たちを見習わなければならいのです。


『動物と違い高度に発達した脳をもつ人間は、脳の機能が生命維持に大きな比
重を占める』

人間も動物の一種であります。しかし生きる上において、人間は他の動物と違い
生物脳を使用せず、人間脳(大脳)の使用比率が極めて高い事が特徴になります。
人間のみが、火と道具と伝達手段となる言語を用い、頭脳を発達させてきました。
故に何でも頭で考え、頭で答えを選択して生きる様になってしまったのです。これ
が高度な文明を築き上げてきました。しかしその反面、動物的な感覚や、本能的
な直感、生命維持のための天然の感覚等を失ってしまったのです。五感にばかり
頼ってきたがために、動物の様な第六感、天然の感覚をなくしてしまったのです。
人間も太古の時代は、超力があると言われているイルカと同じように、仲間と交
信し合い、本能、感覚の第六感をもち得ていました。文明の発達、進化と共に、生
きる上で最も大切な、生物脳、つまり本能や感覚、第六感を失ってしまったのです。

また人間は言葉をもったが故に、脳を観念的に支配するという現象を生み出しま
した。それを表わす格言に、「人間は言葉をもった、そして出産の苦しみを知った」
という言葉があります。人間以外の他の動物は、出産も死も、苦痛にもがき苦しむ
ということはありません。どちらも尊厳深い表情で淡々と受け入れています。人間
のみが、言葉をもった事で、他との意思疎通を生み、生物脳を無視した思考が
固定観念を生み出し、脳の感覚をも支配するようになってしまったのです。

まだ言語もよく話せない子どもには恐怖心が全くありません。平気で火を触ろうと
したり、車に向かっていこうとします。死ぬことも怖がりません。これはまだ人間脳
が成長しておらず、生物脳だけで生きているからです。子ども達は実に無邪気で、
邪気が全く無い状態で生きているのです。子どもは具合が悪くなると、動こうとしま
せん。ゴロゴロ横になって体を休めます。食べ物もとろうとしなくなります。これが
病気治しの基本なのです。

つまり人間脳が発達していくという事は、健康や病気にも大きな影響力を与え、
人間特有の“脳が病気を作る”という特殊な生理失調状態を作り出していくのです。
故に人間の病気治しにおいては、まず脳の機能を良い状態に保つ事が重要にな
っていきます。人間脳を納得、人間脳に教え返す事で(逆序のサトリ)、人体の生
理機能を変えていくのです。大脳の前頭連合野の機能を覚醒させていくのです。

この様に人間の病気治しにおいては、脳の機能を無視しては成り立ちません。
具体的には脳の機能に影響を与える自律神経のバランスを元に戻す事が絶対
条件になります。また脳をいかにプラス思考にもっていくかが重要な要素になり、
やる気、意欲に関わる前頭葉の機能を良い状態にする事が不可欠になります。

日本の古代人は、上記の事を既に発見し、どの様な病気に対しても、前頭連合野
にあたる“額”(ひたい)に冷たい手ぬぐいをのせ、冷却する事で前頭葉の機能を発
現していたのです。また額の冷却は、基本的生命維持機構に指令を出す「脳幹」
(のうかん)の熱を除去する役割も果たしています。古代日本人の高度な洞察力に
は驚くばかりです。日本の民族医療の高度さの一端が垣間見られます。この古代
から伝わる民族医療を継承してきたのが、日本伝承医学になります。


『横たわる事と睡眠が何故生命維持に必要なのか、どういう役割を果すのか』

自然界に夜と昼があるように、人体においても活動している時と休息している時
が存在します。よく人生の三分の一は眠っている時間と表現されますが、個人差
はあれ、睡眠をとらなければ生命の維持はできません。一番つらいことは、食べ
れない事より、何日間も眠れないことと言われています。眠れない、眠らせてもら
えない状態が続くと、思考が停滞し、発狂したり、何日も続くと死に至ります。つま
り生物は横たわる時間と睡眠をとらないと生命を維持できないという事です。

他の動物と違い、二足直立で縦長な姿勢の人間の生命維持において、横たわる
事と睡眠が果たす役割は二つあると考えています。それは「脳の機能維持」と「内
臓の負担軽減と回復」になります。以下列挙してみます。

<脳の機能維持と回復に関わる事項>
⑴脳神経の休息と脳幹の働きの促進及び脳への血液供給の改善
⑵成長ホルモンの分泌の促進
⑶脳脊髄液の還流の促進

<内臓の負担軽減と回復>
⑴心臓、肺臓の負担軽減と回復を図る。
⑵肝臓の機能回復ための血液の供給促進。


以下上記について詳しく説明していきます。

『⑴脳神経の休息と脳幹の働きの促進及び脳への血液供給の改善とは何か』

脳の神経を休ませるためには、睡眠が不可欠です。眠れなくても体を横たえる必
要があります。脳の神経が休まるためには、自律神経の中の副交感神経が優位
な状態にならないと脳神経は休むことができません。自律神経失調の典型的な状
態の交感神経緊張状態では、逆に副交感神経は抑制され働く事ができません。
つまり脳神経を休ませるには、自律神経失調のバランスを元に戻す事が必要に
なります。

自律神経のバランス失調である交感神経優位(緊張状態)になるのは、病気や症
状の直接的な要因となる全身の血液の循環・配分・質の乱れが生起された時です。
全身の血液の循環・配分・質を乱すのは内臓の肝臓(胆嚢を含む)と心臓の機能
が低下する事で発生しています。この“肝心要”(かんじんかなめ)に相当する肝臓
と心臓の機能を元に戻す対応が交感神経優位(緊張)を作り出すのです。

交感神経緊張を元に戻すためには、この内臓の肝臓と心臓機能を高める事が
求められます。これにより副交感神経抑制がなくなり、夜間に副交感神経が優位
に働く状態に戻り、脳神経の休息ができるのです。
この自律神経失調のメカニズムを認識する事が、脳神経の休息を達成する上で
大切になります。この機序を認識しないで、睡眠薬で眠らせる処置をとってしまうと、
いつまでも自律神経失調は改善できず、益々慢性化させ、さらに重篤な精神疾患
へと移行してしまうのです(詳細はホームページ、院長の日記の、自律神経失調の
本質の項を参照)。

次に「脳幹」の働きの促進のためには、脳幹の働きを低下させている“熱”のこも
りを除去する必要があります。脳幹は別名「命の座」と呼ばれ、基本的な生命維
持機構に指令を出す場所になります。基本的な生命維持機構とは、体温中枢、
呼吸中枢、心拍中枢、ホルモン中枢、自律神経中枢、生理のコントロール、情緒
の安定作用等を司っています。まさに“命の座”と言われるゆえんです。

病名に関わらず、病気や症状を回復に向かわせるためには、この「脳幹」の機能
を正常に戻す事が極めて重要になります。
頭という場所は、中身の詰まった大きな脳が、堅固な頭蓋骨に覆われている場所
です。例えればフルフェイスのヘルメットをかぶっている様なもので、内部に熱
がこもりやすい構造になっています。故に人体で一番熱のこもりやすい場所にな
ります。この様な構造の脳の熱のこもりは、脳の中心に集まりやすく、ここに位置
する脳幹部に熱のこもりが集中します。これが脳幹の機能を低下させる最大の要
因となるのです。

脳内の熱の発生の根源は、脳の虚血(血液不足)にあります。脳全体に血液が供
給不足になると、少ない血液を脳内にくまなく供給するために、脳内の圧力(脳圧)
を上昇させて、循環を早め対応するのです。ただしこの脳圧の上昇状態の持続は、
同時に脳内に熱の発生と蓄積を生じ、脳内の熱の発生の原因となります。
この脳内の熱の発生と蓄積が、脳の中心部に位置する『脳幹』に熱をこもらせ、
脳幹の機能を減退させる原因となります。故に脳幹部の熱のこもりを除去するため
には、脳の虚血状態を根本的に改善する事が必要です。

脳への血液供給不足を改善するためには、まず血液のポンプ装置にあたる心臓
の機能を高める事が不可欠です。また心臓だけの問題ではなく、全身の血液の
配分、質(赤血球の連鎖と変形)も脳の虚血の大きな要因です。
全身の血液の配分と質(赤血球の連鎖と変形)に関与するのが、内臓の肝臓と胆
嚢になります。全身の血液の配分の乱れは、大量に血液をとる場所があるからで
す。肝臓はレバーと呼ばれ、血液の固まった様な大きな臓器です。この肝臓に大
量の血液が集まる事が、全身の血液の配分を乱し、脳の虚血を生み出す最大の
要因となります。血液の質の乱れは、血液の熱変性が原因です。

血液の熱を冷まし一定の温度に保つのが、胆嚢から分泌される胆汁になります。
苦い胆汁の分泌不足が血液に熱を発生させ、熱変性によって赤血球の連鎖(ドロ
ドロでベタベタな血液)と変形が生起されるのです。これが全身の毛細血管の流れ
に停滞と詰まりを作り出し、血液の循環を遅くし、脳への血液供給を阻害する要因
となります。また胆汁の分泌不足は血液の質の低下の大きな要因となります。
このように、脳の虚血を根本的に改善するためには全身の血液の循環・配分・質
の乱れを引き起こす肝臓と胆嚢と心臓の機能低下を元に戻す事が不可欠となり、
正にここでも”肝心要”の重要を再認識していかなければなりません。脳神経の
休息、脳幹の機能改善、脳の血液不足改善のためには、肝臓(胆嚢を含む)と心
臓の機能を元に戻す事で回復に向かうのです。


『⑵成長ホルモンの分泌促進とは何か』

脳の脳下垂体から分泌される成長ホルモンは、その名の通り、体の骨の成長を促
進し、身長を伸ばします。故にこの成長ホルモンの分泌減少は”小人症”の大きな
要因として挙げられています。骨の合成だけではなく、体にとって重要な働きを担
っています。
その働きは、生命維持に欠かせないものばかりで、体の全細胞を活性化させ、タ
ンパク質代謝、筋肉代謝、糖質代謝、脂質代謝という体の重要な代謝を促進しま
す。故にこの成長ホルモンの分泌の減少は、体を弱らせ、生命力や免疫力の低下
をもたらし、全ての病気や症状発生の根本的な要因となるのです。

この成長ホルモン分泌に欠かせないのが、横たわる事と睡眠になります。このホ
ルモンの分泌にはリラックスした安眠と睡眠の時間帯が必要です。体を横たえる
事は言うまでもなく、睡眠の時間帯が夜の10時から午前2時までの4時間位が成
長ホルモン分泌の絶対条件になります。この時間帯に横たわらないと成長ホルモ
ンの分泌は促進されないのです。

つまり睡眠は時間の長さではなく、横たわる時間帯が問われるのです。正に現代
人の睡眠のとり方に大きな”誤認”が存在するのです。毎日の就寝時間が夜中の
1時や2時では、たとえそこから5~6時間横たわっていても、肝心の成長ホルモン
の分泌はできません。この様な生活が自身の生命力や免疫力を著しく低下させ、
病気や症状を引き起こしている事を肝に銘じるべきです。病気を本気で治したい
のであれば、この横たわる時間を改善しない限り無理と言わねばなりません。


『⑶脳脊髄液の還流と脳脊髄液の重要性』

脳脊髄液とは、脳内と脊柱管内を満たし、還流する液体です。その役割は、脳と
脊髄に栄養を供給し、また老廃物を吸収する事で脳と脊髄で、その機能を維持し
ています。特に脳内においては脳内の神経細胞が活動した後の、老廃物の吸収
排出を唯一担っています。
この脳脊髄液の脳内の老廃物の吸収は、最近の 脳科学の研究で明らかになった
もので、この研究成果から、人間の睡眠の重要性が改めて浮き彫りになっていま
す。人体の各組織器官の老廃物の吸収は全身に張り巡られているリンパ管とリン
パ液がその役割を果たしています。しかし脳内にはこの「リンパ組織」がないの
です。

特に人間の脳は全身の血液の約四分の一を消費すると言われていて、常に脳神
経が活動し、天文学的数の脳細胞が毎日活動した後に死滅しています。またおび
ただしい数の神経伝達物質や脳内ホルモンが使われています。故にこれらの出す
老廃物は膨大なのです。
これらを全て吸収し、排出する役割を脳脊髄液が担っていたのです。人体の全て
の生理機能は、栄養の供給よりも、消費して出た熱や老廃物をいかにすてるかに
重点が置かれているのです。また病気とは熱との闘いで、いかに体内の不要な熱
をすてるかが”命題”になります(詳細はHP、院長の日記「がんを捉え直す」の
項を参照)。

この様に脳脊髄液は、脳の栄養供給のみならず、生命維持に重要な老廃物と余
分な熱の吸収排出を唯一果たしていたのです。そしてこの老廃物と熱の吸収排
出は、人間の睡眠の時間帯のみに行なわれ、覚醒時には作動しない事が明らか
になったのです。
また上記の研究成果の中で明らかになった事は、アルツハイマー病や認知症の原
因物質と言われているアミロイドタンパク質の凝固に、脳脊髄液の還流不足が大
きく関わっているという事実です。
この様に病気治しや認知症の改善に脳脊髄液が極めて重要な役割を演じ、この
働きを作動させるためには、十分な睡眠が不可欠である事が判明したのです。


『内臓の負担軽減と改善についてーーー横たわる事と睡眠が、肝心要と言われる
肝臓(胆嚢を含む)と心臓の機能を元に戻す上で何故重要なのか』

二足直立を果たし、縦長な構造の人類は、他の四つ足の動物と違い、体内の血液
や体液の循環機構が違います。人体は立位においては、“立て板に水”のごとく重
力に従って、下への体液や血液の循環は楽に行なえますが、その反面、上への
循環は大きなエネルギーと労力を要します。また立位や座位では、心臓より上に
位置する頭に血液や体液を供給する事は、心臓のポンプに大きな負担が生じます。
これが体を横たえると、体液や血液の循環は重力から解放されて、楽に行なえま
す。水(液体)は横(水平方向)に拡がる性質から、体内の循環は全く変わります。
特に人体の最上部に位置する脳への血液の循環は、楽に省エネで行なえます。
これは、脳の血液不足(虚血)を解消し、脳の虚血の対応として発生している脳圧
の上昇を下げ、脳内の熱の発生を抑制してくれます。

また心臓のポンプにかかる負担が軽減する事で、弱った心臓の機能を元に戻す事
ができるのです。さらに立位の重力からの解放は、カゴ状の胸の肋骨が、下方に
押しつぶされる事がなくなり、呼吸で楽に肋骨が拡大するために肺の負担を減ら
し、肺の機能回復にもつながります。
この様に横たわる事や睡眠は、心臓と肺の機能回復に大きく関わり、脳の虚血を
改善し、脳圧の上昇を防ぐ事から、脳内の熱の発生やこもりを除去できるのです。

次に肝臓に対しても、横たわる事が肝臓の機能回復に不可欠になります。機能低
下した肝臓の働きを元に戻すためには、肝臓に新鮮な血液を大量に導入する事が
必要です。肝臓に血液を集めるためには、体勢が大きく影響します。肝臓の血液
の集まりは、立位で4、座位で6、横たわる事で10という割合になるといわれていま
す。つまり肝臓の機能回復のためには横たわる事が不可欠になります。
以上の様に、横たわる事が病気の直接的な要因となる、全身の血液の循環・配分
質の乱れに関与する肝臓と心臓の機能を回復するための絶対条件となるのです。


『生物脳を使用せず、人間脳が支配している人間は、横たわる事と睡眠の重要性
を人間脳に納得させる事で、脳の機能が発現し、病気回復に向かわせる』

冒頭ですでに解説してありますが、人間の脳は、他の動物と違って、大きな脳幹
と動物には無い大脳新皮質と大脳辺縁系を有しています。これは、全ての事を頭
で考え、認識して、納得して行動する生理パターンを脳と人体生理に確立しまし
た。しかしこれは逆に生物脳のもつ本能的認識や直感的な認識を使えなくしてし
まいました。
この人間脳の特性が理解できれば、この人間のみがもつ脳の使い方を、逆に利
用する事で病気治しに応用できるのです。つまり人間の病気治しにおいては、横た
わる事と睡眠が不可欠であるという「根拠」と「機序」を正しく認識し、脳に納得させ
る事ができれば、脳の機能が発現し、行動が生まれるのです。


『具体的な対処法』

一番効果的な方法は、肝心要の機能を回復させる事を目的に作られた日本伝承医
学の治療と併用する事です(詳細はHPを参照)。
そして家庭療法として、横たわる時間をいかに多く作るかです。可能な限り早く横
たわり、就寝時間を夜の10時から明け方の4時くらいまでは確保する事です。
それに加えて、楽な体勢で、日本の古代人が発見開発した額(前頭連合野)の冷
却と肝臓胆嚢の冷却を毎日、日課として行なう事です。
脳内の熱のこもりや脳圧の上昇を効果的に除去するには、足に湯たんぽを使用し
て、”頭寒足熱法”を応用します。以上が人間の全ての病気治しににおいて、最重
要な条件になります。