日本伝承医学の眼の治療

日本伝承医学の眼の治療】
 この技法は日本に古来より伝授されてきた目の操法になりま
す。整体術で目の治療技術をもっているのは日本伝承医学だけ
になります。

 まず目を大きく開いて、臨床士が小刻みに動かす親指の先を、
目で追うようにします。瞳が閉じない様に臨床士が指で、上瞼
と下瞼に指を添えます。施術中はピリピリと電気が走るのがわ
かります。目がしばしばして涙が出てきますが、23分になり
ますので瞳を閉じないで開けたままにして下さい。涙が出るこ
とで脳圧が下がり、眼圧も下がります。
 コンタクトレンズの方は事前にはずしておいてください。

≪適応症≫
白内障・緑内障・飛蚊症・疲れ目・充血・黄斑前膜・黄斑変性・
ドライアイ・弱視・近視・遠視・乱視・老眼・網膜剥離・糖尿
病網膜症・雪眼(電気性眼炎)


【脳圧と眼圧の関係】
 人間には眠っている時に脳圧が高くなり、目が覚めると脳圧
が下がるというリズムがあります。眠っている間に脳は血液を
集め、脳圧を高め、疲弊した脳を修復し機能回復をはかります。
 脳圧が高くなると脳は熱をもちます。朝起きたときに枕が温
かく感じるのは、就寝時に脳圧が高くなり脳内に熱がこもって
しまうためです。就寝時に氷枕で後頭部を冷却すると良いのは、
脳内の炎症(熱のこもり)をしずめ、脳圧を正常にしてくれるか
らです。

 目は脳の一部と言われ角膜(黒目)から入った情報は視神経を
通し脳に伝達さ
れます。眼球は、脳みそがマヨネーズの容器か
ら絞り出されたような存在の為、
脳圧が上昇すると眼球を前方
に押し出す為、眼圧も上がる仕組みになっています。
 眼圧とは眼の中を流れている房水(ぼうすい)という液体が、
一定の圧力で
循環することによって生じる力を言います。この
眼圧によって眼の形状は保た
れています。房水は常に毛様体か
ら分泌されて、眼球内を循環しています。
正常値は1021mmHg
と定義されていますが1416mmHg位が望ましいとされます。
脳圧が高まると値は3050mmHg位に上がります。白内障や緑内
障、飛蚊症等の場合は何れも眼圧の上昇がみられます。改善す
るためにはまず脳圧を下げることが先決です。


【眼圧とストレスの関係】
 ストレスを受けて交感神経が優位になると、眼球内の水分量
は増加し眼圧が上がり、目が固くなっていきます。本来眼球は
水風船のようにぷよぷよした柔らかい臓器ですが、眼圧が上が
ると、ぱんぱんにふくれた風船が、固くなったような状態にな
ります。

 目の疾患に罹患する方の大半が、症状が出る前に何らかのス
トレスや心労を受けています。


【目に現われる症状について】
 目の網膜は0.10.4mm程の薄い透明な膜で眼球の内側を一面
にぐるりとおおっています。その表面には1億以上の視細胞(し
さいぼう)が存在しています。視細胞には、色や形を認識する
錐体(すいたい)と暗い所で光を感知する杆体(かんたい)があり、
眼の中に入ってきた光や物の形や色をここで感知できるように
なっています。
 この視細胞には光の情報を電気信号に変換する視物質が存在
し、この電気信号により神経繊維を経由し視神経を通って様々
な情報が脳へ送られています。視細胞が最も密集している場所
は黄斑部になります。この黄斑部は光の酸化ストレスを受けや
すい部位で、心労やストレス等による脳疲労で、光を入れては
いけない時に、光を遮断し情報をブロックさせます。光が入り
脳圧、眼圧が急上昇してしまうと命に危険が及ぶと判断するか
らです。

 目の症状は昔からいじってはいけないと言われています。
これは目に出る症状が命を守ってくれているということを先人
達が知っていたからでしょう。
※酸化ストレスとは、酸素が体の中の細胞や組織等に結びつき
ダメージ(損傷・攻撃)が蓄積していく事をさします。体には
元来抗酸化力というものが備わっていて、活性酸素がうまく働
いてくれるようになっているのですが、体の力(免疫力と生命
)に低下がみられる場合、抗酸化力が正常に機能しなくなり、
活性酸素の自分自身を酸化させようとする力が強く働いてしま
うのです。酸化ストレスが体をさびつかせてしまうということ
です。

頭部冷却法がなぜ良いのか・・・
 視神経は脳に向かって伸びているので目と脳はつながってい
ます。目に症状が現われた場合は、脳に炎症が生じ、脳が限界
にきています。日本伝承医学が推奨する頭部冷却法(後頭部、
首筋、ひたい等)は、脳内の炎症、熱のこもりを除去できる最
も有効な家庭療法と言えます。


【緑内障】
 目の奥の視神経に異常が起こり視野が狭くなり部分的に見え
にくくなる症状を緑内障(りょくないしょう)と言います。眼圧
が高くなり視神経が圧迫、障害されることで発症しますが、
背景には脳幹部(視床下部)の炎症(熱のこもり)による脳圧の
上昇があります。
 目の中は房水(目の中の栄養水)と呼ばれる液体で満たされて
いますが、脳圧の上昇によって眼圧が高くなると、この房水の
排出がうまくいかなくなり、視神経が障害されていきます。
 緑内障には原発性、続発性、先天性のものがあり、原発性に
よる原発解放隅角緑内障が、緑内障の中でも最も多いとされて
います。
開放隅角緑内障・・・線維柱帯という部分が目詰まりして房水
          の排出がうまくいかず眼圧
が上昇します。
閉塞隅角緑内障・・・隅角が狭くなったり閉じたりすることで
          房水が流出できなくなり眼圧が上昇しま
          す。目の痛みやかすみ、吐き気や頭痛が
          起きることもあります。
隅角(ぐうかく)・・・角膜(黒目)と虹彩(茶目)が出会う場所
          で、房水が目の外へ排出され
る排水口
          (
シュレム管)が開いています。


【黄斑前膜について】
 黄斑前膜は、これ以上光を入れてしまうと脳にダメージが加
わるため、膜を張り、視力を低下させ光や刺激を極力遮断し、
脳を守るための対応をとります。緑内障、白内障、黄斑前膜等
の眼病は同様の根拠と機序になります。
 眼病は脳内の虚血(血液不足)により脳圧が上がってしまうこ
とで発症しますが、脳圧が上がると脳脊髄液の環流が停滞し脳
が養われなくなります。脳が虚血になる根底要因には肝臓、心
臓機能の低下による血液の循環・配分・質の乱れが必ず存在し
ています。
 ストレスや心労、過労、生活習慣の乱れ等で肝臓に負担がか
かると胆嚢(たんのう)に負荷がかかり胆汁(たんじゅう)が正常
に分泌できなくなります。胆汁には血液の熱(血熱)を冷まし血
液の質を良くする働きがあるので、胆汁が分泌されなくなると、
血液がどろどろでべたべたになり(血液の質の低下)、脳への血
流が滞ってしまいます。体は何とかこの危険を回避し、脳への
血流を確保しようとするため、心臓機能に負担をかけていきま
す。(漢方医学では「肝は目に開竅(かいきょう)する」と言わ
れ肝臓と目には密接な関わりがあります。詳細は下記文献参照)

【日本伝承医学】
 日本伝承医学では、目に現われる症状を単に眼だけでみてい
くのではなく、内臓、脳、血液の循環・配分・質等の体全体と
の関連の中で
捉えていきます。全体調整法で、身体のねじれの
ゆがみをとり、肝臓心臓等内臓機能を高め、個別操法として目
の操法を用います。目は最も酷使される部位で脳と直結してい
るためダメージを受けやすくなります。生活していく上で、瞳
は常に開いて使うので光が入ってしまうからです。故に目の疾
患の場合は週1回のペースでの受診となります。遠方から泊ま
りで来られる場合は、滞在期間中は連日の受診を勧めます。
 目薬を用いて瞳孔を開き網膜を検査する散瞳検査等をされて
しまうと、改善の妨げになります。目薬の使用は極力避けるよ
うにします。

 当院では治療と併用して自身で行なえる家庭療法の指導を行
なっていきます。家庭療法としての生活習慣を身につけるため
に通院して頂いています。日本伝承医学は単に受診するだけで
はなく、体の事を学び、家庭療法としての自助努力を身につけ
ていく場となります。

 家庭療法としては「食・息・動・想・眠」と「頭部と肝臓の
局所冷却法」を実践します。脳圧が高く、目に症状が出る方の
場合、通常の水の摂取が充分に足りていない場合が多々ありま
す。水を飲むことは生命を養う上での基本となるので、一日
1.5リットル位を目安に習慣として飲むようにします。
 日本伝承医学では、目や体に起こる症状は悪いことではなく、
命を守るための正への対応として捉えています。目に起きる症
状にはこのような意味があったのです。当院は視力を急激に上
げるための治療ではありません。脳圧を下げて眼圧を正常に復
し視力低下の進行を防ぎ、脳障害等の重篤な症状に移行するの
を未然に防ぐための臨床になります。身体に生じるねじれのゆ
がみをとり、低下した内臓機能を高め血液の循環・配分・質を
整え、免疫力と生命力を高めていく治療の学技詳細はホームペ
ージの下記文献を参照下さい。

≪参考文献≫有本政治著: 日本伝承医学の家庭療法
                  目の疾患を捉えなおす
                  肝臓を捉えなおす
                  日本伝承医学の目の操法
                  白内障の本質
                   黄斑前膜
                  食・息・動・想・眠
 眼病を眼だけで処置すると脳血管障害を起こしやすくなる