眼病を眼だけで処置すると、脳溢血やクモ膜下出血、脳梗塞等の
脳血管障害を起こしやすくなる       
2017.4.21 有本政治
      ≪ 眼と脳と全身の密接な関係 ≫



病名に関わらず眼病の診断において、将来的に失明の恐れがあるという様な事
を医者から言われると、誰しも恐怖心がわき、何とかなるものなら何でもしたいと
いう心境になるものです。また治療する事で視力の低下が改善できるものと期待
をもちます。

当然の様に、眼科の治療を受け、外科的な処置や薬物療法をする事になります。
ましてや、その事に対して何の疑問ももたず、治るものなら何でもする事になり
ます。しかし眼病を目だけで処置してしまうと、脳血管障害(脳溢血、クモ膜下出
血、脳梗塞等)のリスクを背負う事になります。そしてこの事を認識している人は皆
無といえます。私は、当院に来ている患者に対しては、徹底してその事の危険性
を説き、中止するか日本伝承医学との併用をするように説得しています。

眼病は眼だけを治療するのではなく、全身との関連という両面からのアプローチが
必要だからです。また、眼と脳との密接な関係を考慮しての治療が必要です。
特に眼と脳は連結しており、表裏一体の関係です。それでは 何故眼病を目だけ
で処置してはならないかを以下に解説していきます。


『眼は脳ミソが球状に外部に飛び出したような存在である』

眼というものを象徴的に表現するならば、「脳ミソが、マヨネーズの容器から球状
に絞り出された様な存在」になります。つまり脳と密接につながっているという比喩
表現になります。眼と脳は直接的につながっているのです。

”眼圧”が高くなる理由は、脳内の脳圧が上昇して、その圧力が眼内に持続的に
影響して、眼内の圧力も高くなる事で発生しているからです。この眼圧の上昇が
持続的に続く事で白内障や視野狭窄等の各種の眼病の原因となります。

脳圧の上昇が眼球を前方に押し付ける事で、眼内の圧が上昇するのです。マヨ
ネーズの容器内の圧が高まり、球状に絞り出されたマヨネーズが拡大膨張する
現象と同じようなもので、これにより内部の圧力が高まるのです。故に、眼圧の
上昇を除去するためには、眼だけを治療の対象にしては、とり除くことができない
のです。眼と脳の密接な関係の一端がここにあります。


『一切の眼病の原因は、脳全体の虚血(血液不足)と眼自体の虚血が根源にある』

眼病に限らず、全ての病気の原因は、組織器官に命の源となる血液が十分に供
給されず、血液不足になる事が挙げられます。これが持続的に続く事で、組織器
官の生理機能に失調が生じ、機能低下が生起され、次第に病気に移行していく
のです。

眼に置き換えれば、まず脳全体に虚血が生じ、脳の一部である眼にも虚血が生
じるのです。これにより眼の機能に低下が生じ、症状の強く出たものに病名が付
されるのです。ただし眼だけに虚血が生じ、症状が出たのではありません。

その前提に脳全体の虚血がまずあり、それが眼に虚血をもたらしているのです。
故に眼だけを対象にして回復を図ろうとしてもそれは達成されないのです。
では何故脳と眼に虚血が生起されるのでしょうか。


『脳や眼は人体内で一番虚血が生起しやすい場所となる』

脳や眼という場所は、全身の組織器官の中で、一番血液の消費量が多い場所
になります。常に新鮮な血液が大量に供給されないと機能を維持できない場所
になります。故に全身の血液の循環・配分・質(赤血球の連鎖と変形により、毛
細血管に詰まりと停滞が起きる)の乱れで血液不足が起きやすい場所になります。

また立位において唯一心臓より上にある臓器です。立位において心臓より上に
あるという事は、重力に抗して血液をもち上げなくてはならない事になり、心臓
の強いポンプ力が必要になります。故に遺伝的に心臓機能の弱いタイプの人は、
元々虚血が起きやすい場所にあたります。脳の血液不足は頭痛の最大要因で
もあり、これがさらに進行する事でめまいに移行します。


『脳と眼の虚血は、局所的な問題ではなく、全身の血液の循環・配分・質の乱れ
 が原因である』

血液は人体の全ての生理機能の死活を担う最重要物質になります。血液の不
足する場所は、必ず機能低下を生じ、症状や病気を引き起こします。
全身の血液の循環を担うのは心臓になります。心臓のポンプ力が落ちれば、当
然血液を全身に送り出す能力が低下し、血液不足を起こす場所が発生するの
は必然です。心臓のポンプ力の低下は一番先に脳に虚血を生起します。

人体の血液の量は、その人の体重の約12分の1位で、体重が60キロの人の血液
量は約5リットル位です。この血液が全身の組織器官に必要に応じて配分されま
す。しかしある特定の場所に大量の血液がとられてしまうと、全身の血液の配分
が乱れ、血液が不足する場所が生起されます。この血液不足が一番起きやすい
場所が脳になります。

次に血液の質(赤血球の連鎖と変形による毛細血管の停滞と詰まり)に乱れが
生じると、全身の毛細血管の中の血液の流れが遅くなったり、詰まったりしてき
ます。これにより全身の毛細血管の流れが遅くなり、血液不足を起こす場所が現
われます。この影響を一番受けるのが脳になります。
このような理由により脳や眼に虚血が生じるのです。では全身の血液の循環・配分・
質の乱れは何によってもたらされるのでしょうか。


『全身の血液の循環・配分・質の乱れに関与するのが、”肝心要”と言われる内臓
の肝臓(胆嚢を含む)と心臓になります』

心臓に関しては、前項で既に解説の様に、心臓のポンプ力が低下すれば必然的
に血液の循環は悪くなります。故に遺伝的に心肺機能の弱い人は、全身への血
液の循環供給に支障が生じやすく、脳の虚血を起こしやすいのです。

全身の血液の配分に、大きく関わるのが肝臓になります。肝臓は”レバー”と呼
ばれ、血の固まった様な中身の詰まった大きな臓器になります。肝臓という臓器
は、精神的なストレスの影響を最も受けやすく、機能が低下すると、機能を元に
戻すために、大量の血液を集め、熱を発生させる事で機能回復を図ります。その
時中身の詰まった大きな臓器に大量の血液がとられる事で、全身の血液の配分
が大きく乱されるのです。これが脳に虚血を招くのです。

全身の血液の質(赤血球の連鎖と変形)に関与するのが胆嚢になります。胆嚢か
ら分泌される胆汁は、極めて苦い物質で、1日に約600mlから1000ml位分泌され
ます。胆汁の働きは、脂肪分の分解吸収を助けるだけでなく、この苦い成分によ
って、体内の炎症を鎮め、血液や体液の熱の上昇を抑え、一定の温度に保つ作
用があります。この胆汁の分泌が低下する事で、血液が熱を帯び、熱変性によっ
て、赤血球の連鎖(ドロドロでベタベタの状態)と変形が生起されるのです。これが
全身の毛細血管の停滞と詰まりを生じさせ、血液の循環を遅くさせます。
このように内臓の肝臓、胆嚢と心臓の機能低下が全身の血液の循環・配分・質を
乱す最大要因となるのです。


『東洋医学では、肝臓の機能低下は眼に症状が出ると教えていますーーー眼と肝
臓の関係』

東洋医学では、「肝は眼に開竅(かいきょう)する」と表現され、肝臓の状態は
一番眼に反映されると教えています。眼病一切の根源は肝臓の機能低下が原因
としています。故に眼の治療は、眼だけでなく、肝臓の機能低下と合わせて調整
する事を教えています(東洋医学の教えは、何千年にも亘る先人達の叡智によ
る実証医学です)。

東洋医学の肝臓と眼(脳を含む)の関係は、前項の肝心機能の低下が、全身の
血液の循環・配分・質に乱れを生じさせ、脳や眼に虚血を生起する機序とつながっ
ていたのです。
眼と脳、眼と肝臓、脳と全身の血液の循環・配分・質の乱れはこの様な関連の中
でみていく必要があるのです。


『眼と脳、眼と肝臓、脳の虚血と全身の血液との関係を知れば、眼だけを処置し
ても治らないだけでなく、眼だけをいじる事で、脳内に熱をこもらせ、脳圧を高
める事になる』

冒頭で眼圧の上昇と脳圧との関係を述べています。眼病の原因の一つに眼圧の
持続的な上昇が挙げられていますが、この眼圧は何故上昇するのかのその理
由を知る必要があります。

眼圧の上昇は、眼だけの問題ではなく、脳との関連の中から発生しています。そ
の理由は二つ考えられます。一つは、脳内の圧力(脳圧)の上昇が生じた場合、
脳圧の上昇による脳溢血やクモ膜下出血、脳梗塞等を回避する対応として、そ
の圧力を眼の方に抜く対応が生じるのです。これにより眼球が前方に押し出され、
眼圧が高まるのです。

もう一つの理由は、脳内の虚血(血液不足)が眼にも波及し、眼の組織全体に血
液不足が起きるのです。この場合、少ない血液を速く眼の隅々まで供給するため
に、眼内の圧力を高める事で血液の循環を促進する対応が起きるのです。これが
眼圧の上昇をもたらすのです。

以上の理由から、眼圧の上昇は起きています。眼圧の上昇は、脳圧の上昇を防
ぎ脳内の血管が切れるのを防ぐために発生にしています。また、眼の組織に充分
な血液を供給する必要な対応として、発生しているのです。


『眼だけを処置して、眼圧を抜いてしまうと脳血管障害のリスクを高める』

眼圧の上昇は脳圧の上昇を抜くだけではなく、脳内の熱のこもりの”抜け口”とし
ても作用しています。この必要な対応を無視して眼だけを処置してしまうと、脳圧
の上昇をさらに高め、脳内の熱のこもりをさらに助長させてしまう事になります。

脳内の熱のこもりは、脳の中心部にある基本的生命維持機構に指令を出す「脳
幹」の機能を低下させ、生命力や免疫力を著しく低下させます。これは重篤な病
気(がん、心臓病、脳血管障害)への移行を招く大きな要因ともなるのです。

また前述の様に、脳圧の上昇は、脳溢血、クモ膜下出血、脳梗塞等の脳血管障
害を引き起こす最大要因ともなります。
44年の臨床の中で、この私の忠告を無視して眼だけの処置を行ない、脳血管障
害を発症した事例は多くあります。眼と脳、眼と肝臓、脳と全身との関連を知る意
義は大きいのです。


『眼の充血を、薬で抑える事も、脳血管障害のリスクを高める』

生きている体の起こす反応には全て意味があります。眼が充血したり、瞼が腫れ
るのにも、全て意味があるのです。眼の機能を回復させるためには、眼に血液を
集め(充血)、熱を発生させる事で機能の回復を図っています。これが白眼の血
管が赤くなったり、瞼が腫れる理由になります。

この意味を理解しないで、見た目の理由や眼の違和感や疲れをとるために、眼
の充血や腫れを目薬等でとり去ってしまうと、体はさらなる対応を迫られる事に
なります。当然薬をやめれば再発するために、目薬を常用する事になります。

この状態の持続は、眼自体に血液不足が常に起きる様になります。体はこれを
回避するために、眼圧を上げて、少ない血液を循環させたり、眼の血管を収縮さ
せて、血液を速く流す対応をとる事になります。
この状態の持続は、眼だけに留まらず、さらに脳内の圧力や脳内の熱のこもりを
助長させる結果につながるのです。それが脳血管障害のリスクを高めてしまうの
です。


『視力低下、視野狭窄、白内障、緑内障等、全ての眼疾患の本質は、光や色の刺
激を軽減し、脳への刺激を抑え、脳圧の上昇と熱のこもりを防ぎ、脳血管障害を
回避する対応』

日本伝承医学の理論の特徴は、全ての病気を”負”の対応ではなく、”正”の対応
の視点で捉え直して、病の本質を解明し、その根拠と機序を明らかにしている所
です。生物として生まれて、生きとし生けるものは、自らの体を悪くなる方向に導
いたり、ましてや早く死ぬ方向に進めていく事はありません。

眼に症状が出たということは、命を守る対応に迫られたと考えるべきなのです。
つまりこれ以上脳への刺激が過剰になると、脳溢血やクモ膜下出血、脳梗塞の
危険が迫ると生命体が判断し、故意に視力を落とし、視野を狭め、光や色の刺激
を軽減させたのです。これ以上脳に刺激を入れないようにしたのです。

命あるもののやる事はこのように人智を超えた対応を示します。そこまでやるかと
いう驚嘆に値する対応をみせます。命を守るためには視力すらも奪ってしまうの
です。その対応の一環が、視力の低下、視野を狭窄、水晶体を曇らせて光と色
の遮断等なのです。自身にとってはどれも辛い症状ではありますが、以上の理由
が存在する事を認識し、自分に起きている症状を受け止め、共存していくことが大
事です。


『どう対処すべきかーーー手術や薬の使用だけが処置の手段ではない』

これまで、眼の症状の根源的な要因の根拠と機序を明らかにしてきました。全て
の眼の疾患は眼だけの問題ではなく、脳との関連、肝臓との関連、脳と全身の血
液の循環・配分・質の乱れとの関連が明らかになりました。

眼だけの処置は、脳血管障害のリスクを高めるになります。
まずとり組まなくてはならない命題は、全ての眼疾患の最大要因となっている眼
と脳の虚血(血液不足)と眼圧と脳圧の上昇を除去するという事です。そのため
には、全身の血液の循環・配分・質の乱れを回復させる事が不可欠になります。

全身の血液の循環・配分・質に関与するのが肝臓、胆嚢と心臓になります。また
東洋医学の教えの中の、肝臓と眼の関係からも肝臓の機能を上げる事が大切
です。肝心要に当たる、肝心機能を基に戻す事が、眼と脳の虚血と眼圧、脳圧
の上昇を除去するための絶対必要条件になります。さらに言えば、もっと根源的
な自身の生命力や免疫力の低下を改善する事も必要です。



『上記の全てを網羅できる日本伝承医学の治療法』

日本伝承医学の治療法は、世界で唯一骨髄機能を発現できる技法になります。
骨髄機能が発現する事で、細胞新生と造血が活発になり、低下した生命力や免
疫力を短期間で回復に向かわせます。また内臓的には肝臓(胆嚢を含む)と心
臓の機能を高める事を目的に技術が構築されています。

眼自体の機能を回復させるためには、涙が充分に出せる状態に眼の電気力を
回復させる事です。眼は心臓に次ぐ電気の発生場所になります。全ての眼疾患
の根源には眼の起電力の低下が挙げられます。これを回復させる方法を日本の
古代人は開発しています(目の操法)。

目の操法は眼に電気を発生させ、涙の分泌を促すことを目的に技術が構築され
ています。眼の機能を回復させるためには、眼の起電力を回復させ、涙成分の
分泌促進が不可欠だからです。

眼病を患っている人は、微妙な眼球の動きを失っています。動きを失うと、目に
電気が発生しないため、機能低下していきます。この機能を改善するために、
目の操法では、施術者は親指を受者の眼の遠近に動かし、受者が瞳を閉じたく
なるのをしっかり開眼させて涙が出るまで操作していきます。涙を出させることで
脳圧を抜くことができるのです。また、眼圧調整法を用いて、脳内の圧力を調整
していきます。

日本伝承医学ではこのように、眼病に対しては全体と部分との二面からアプロー
チしていきます。日本伝承医学の治療を併用していくことで、眼だけを処置してし
まったことによる副作用も軽減していくことができます。

さらに家庭療法として推進している氷を使用した頭と肝臓の冷却法が、脳内の熱
のこもりと脳圧の除去に効果を発揮します。また肝臓と胆嚢の腫れと熱を除去し
機能を回復させます。このような合理的で統合的なとり組みにより、眼科の処置を
しなくても眼の疾患に対処していく事ができるのです。

≪参考文献≫:『シリーズ病気をとらえなおす』〜
             文責者:有本政治
              発行:有限会社日本伝承医学研究所
             発行日:2004年4月14日

   脳・心臓の血栓症について

   脳梗塞・脳血栓をとらえなおす

   めまいと脳梗塞の関係について

   脳循環障害と心臓との関連

   脳・心疾患の正しい対処法

   脳腸相関

   もの忘れや認知症