黄斑前膜

 黄斑(おうはん)とは、網膜(もうまく)の中心にある直径1.52㎜位の小さな
部位になります。黄斑の中心は中心窩(ちゅうしんか)と呼ばれ、光が当たる部位
になります。

 網膜は透明な膜で眼球の内側を一面にぐるりとおおっています。その表面には
1億以上の視細胞(しさいぼう)が存在しています。視細胞には、色や形を認識
する錐体(すいたい)と暗い所で光を感知する杆体(かんたい)があり、眼の中に
入ってきた光や物の形や色をここで感知できるようになっています。

 この視細胞には光の情報を電気信号に変換する視物質が存在し、この電気信号
により神経繊維を経由し視神経を通って様々な情報が脳へ送られていきます。
視細胞が最も密集している所が黄斑になります。黄斑は黄色味がかった色の斑点
状で、網膜の中心に位置し重要な役割を担っています。この黄斑部に繊維性の膜
がはってしまうのが、黄斑前膜になります。

 黄斑部は光の酸化ストレスを最も受けやすい部位で、この黄斑部に膜がはって
しまうということは、これ以上光を入れてはいけないという体を守るための警告
サインと言えます。

※酸化ストレスとは、酸素が体の中の細胞や組織等に結びつきダメージ(損傷・
攻撃)が蓄積していく事をさします。元来体には抗酸化力というものが備わって
いて、活性酸素がうまく働いてくれるようになっているのですが、体の力(免疫
力と生命力)に低下がみられる場合、抗酸化力が正常に機能しなくなり、活性酸
素の自分自身を酸化させようとする力が強く働いてしまうのです。酸化ストレス
が体をさびつかせてしまうということです。

【黄斑前膜について】

 黄斑前膜は、これ以上光を入れてしまうと脳にダメージが加わるため、膜を
張り、視力を低下させ光や刺激を極力遮断し、脳を守るための対応をとっていま
(白内障も同様の根拠と機序になります。詳細は下記文献参照)

 脳内の虚血(血液不足)により脳圧が上がってしまうことで発症しますが脳圧が
上がると脳脊髄液の環流が停滞し脳が養われなくなります。脳が虚血になる根底
要因には肝臓、心臓機能の低下による血液の循環・配分・質の乱れが必ず存在し
ています。

 ストレスや心労、過労、生活習慣の乱れ等で肝臓に負担がかかると胆嚢(たん
のう)に負荷がかかり胆汁(たんじゅう)が正常に分泌できなくなります。胆汁に
は血液の熱(血熱)を冷まし血液の質を良くする働きがあるので、胆汁が分泌され
なくなると、血液がどろどろでべたべたになり(血液の質の低下)、脳への血流が
滞ってしまいます。体は何とかこの危険を回避し、脳への血流を確保しようと
するため、心臓機能に負担をかけていきます。

 胆嚢を手術でとっている場合、胆嚢の働きを肝臓が請け負う為、肝臓に負担が
かかるので肝機能低下による目の病状を発症させやすくなります(漢方医学では
「肝は目に開竅(かいきょう)する」と言われ、肝臓と目には密接な関わりがあり
ます。詳細は下記文献参照)

【日本伝承医学】

 日本伝承医学では、目に現れる症状を単に眼だけでみていくのではなく、内臓、
脳、血液の循環・配分・質等の体全体との関連の中で
捉えていきます。   
 全体調整法で、身体のねじれのゆがみをとり、肝臓心臓等内臓機能を高め、
個別操法として目の操法を用います。目は最も酷使される部位で脳と直結して
いるためダメージを受けやすくなります。生活していく上で、瞳は常に開いて
使うので光が入ってしまうからです。故に目の疾患の場合は週1回のペースでの
受診となります。遠方から泊まりで来られる場合は、可能であれば滞在期間中は
連日の受診を勧めます
(目薬を用いて瞳孔を開き網膜を検査する散瞳検査等を
されてしまうと改善の妨げになります
)。当院では治療と併用して、自身で行な
える家庭療法の指導も行なっていきます。家庭療法としての生活習慣等の指導は
1度では行なえない為、通院して頂いています。体の事を学び、自助努力を身に
つけていく場になります。

 家庭療法としては「食・息・動・想・眠」と「頭部と肝臓の局所冷却法」を
実践します。脳圧が高く、目に症状が出る方の場合、通常の水の摂取が足りて
いない場合が多々あります。水を飲むことは生命を養う上での基本となるので、
一日
1.5リットル位を目安に習慣として飲むようにします。

日本伝承医学では、体に起こる症状を悪いことではなく、命を守るための正へ
の対応として捉えています。目に起きる症状には上記のような意味があり、
当院は視力を急激に上げるための治療ではありません。脳圧を下げて眼圧を正常
に復し視力低下の進行を防ぎ、脳障害等の重篤な症状に移行するのを未然に防ぐ
ための臨床になります。身体に生じるねじれのゆがみをとり、低下した内臓機能
を高め血液の循環・配分・質を整え、免疫力と生命力を高めていく治療の学技詳細
はホームページの下記文献を参照下さい。

(参考文献)有本政治著: 目の疾患を捉えなおす / 肝臓を捉えなおす

             目の操法 / 白内障の本質 / 食・息・動・想・眠

          「眼病を眼だけで処置すると脳溢血やクモ膜下出血、脳梗塞等
        脳血管障害を起こしやすくなる
」