目の操法         2021.9.24.  有本政治

       

 日本伝承医学の目の操法は、白内障、緑内障、難病の眼疾患、ドライアイ、
視野狭窄、角膜炎、結膜炎、強膜炎、飛蚊症、目の充血等すべての目の疾患に
対して著効を示します。

 人体内において目は骨、心臓、筋肉についで電気を発生している場所になり
ます。例えば「目力(めじから)がある」と言いますが、これは目から発生する
電気力が高いことを示します。この電気力が低下したり、電気が発生しなくな
ったときに目の病気を発症します。

 目は弱ってくると微妙な眼球の動きを失います。重症になるほど眼球が動か
なくなっていきます。眼球は動きを失うと、電気が発生しなくなり機能低下し
ます。この操法は微妙な眼球の動きを取り戻し目に電気を発生させ、涙を出さ
せることで、傷んだ目の組織を修復させることができます。
涙は唯一目(角膜)
に酸素と栄養を供給できる手段であり、眼圧を下げ、目にこもった内熱をすて
る手段でもあります。また、涙は交感神経の緊張を瞬時にとり去り、脳圧を下
げてくれる大事な役目も果たしています。

【涙とは】

涙は目の涙腺から分泌される体液になります。涙の原料は血液で、9割以上
が水で、タンパク質やリン酸塩等を含有します。涙腺内の毛細血管から得た血
液から血球を除き液体成分だけをとり出したものが涙になります(目ヤニは涙
の成分が熱によって固形化されたものになります)
深い悲しみや苦しみにみ
まわれたとき、とめどなく涙があふれ出てくるのは、
ショックで停滞した脳に
循環を速やかに回復させようと、内熱を放出している姿でもあります。
 

目の操法に入る前に

漢方医学では、「肝は目に開きょうする」と表現されるように、機能低下し
た肝臓の反応は目の症状として表われてきます。従って日本伝承医学では、基
本調整の後、肝胆のたたき操法で、まず肝臓の充血と炎症をとり肝臓機能を上
げていきます。これにより全身の血液の循環・配分・質が整い、脳や目に十分
な血液が行き渡るようになります。

眼病の根本原因は、脳に血液が足りない状態(虚血状態)が長期間続く事で発
症します。これは主に心労やストレスが原因で、肝臓に機能低下が起こり、肝臓
が回復をはかるために血液を集める事で(肝臓の充血)、全身の血液の配分が乱れ、
脳に充分な血液がいかなくなってしまうために起こります。
虚血状態になった
脳は少ない血液を脳内全てにめぐらせるために、脳圧を上げて対応していきま
す。脳圧が上昇すると、脳に通じている眼下底の穴を介して、眼球が前方に押
し出され、眼球に異常な圧(眼圧)が発生します。この眼圧が上がったままにな
ってしまうと目に内熱を発生させます。これにより目に充血も起こり、眼球内
の内圧が危険域に達すると毛細血管を切ってまでも内熱を除去しようとするの
です。

 眼圧上昇と充血だけでは排熱処理ができなくなると、脳を守る対応として脳
へできるだけ刺激を入れないように、水晶体を濁らせていきます(白内障)

水晶体を濁らせることで、脳への過剰な光や色の刺激を回避し、脳圧の上昇を
抑え、脳内の主要な血管が切れないように防いでいきます。

故に充血や白内障を薬や手術で処置してしまうと、脳は光や色等の刺激を遮断
することができなくなり、脳圧をますます上げていきます。脳圧が高くなるこ
とで脳溢血(のういっけつ)や、くも膜下出血等の命に関わる重病をまねくこと
になるのです。

白内障に限らずあらゆる眼病は、まず脳と肝臓との関連の中からとらえ、両方
からアプローチすることが必要です。

()緑内障(りょくないしょう)や飛蚊症(ひぶんしょう)も近年非常に多い眼
   病になりますので、受者にはまずその根拠と機序を説明してから施術に入
   るようにします。

緑内障:眼圧によって視神経がつぶされて、視野が欠けたり(視野欠損)
         視野が狭くなっていきます(視野狭窄)

飛蚊症:目の内部にある硝子体(卵の白身のようなもの)がにごることで、
         目の前に蚊や小さいゴミが飛んでいるように見えます。 

()ストレスについて

ストレスというと私たちは精神的ストレスだけと思いがちですが、ストレス
とは単に、心労や不安、悩み、心配事、不快感等の精神的なものだけをさすの
ではありません。ストレスには、ストレス状態を引き起こす要因のストレッサー
というものが存在します。ストレッサーが加わることでストレスを発生してい
くのです。

 ストレッサーには騒音、雑音、光、色、放射線、湿度等の物理的なもの、活
性酸素や薬物等の化学的なもの、炎症や感染等の生物的なもの、そして不安や
恐怖、怒り、悩み等の心理的(精神的)なものがあります。生活をしていく上で
私たちは常にこうしたストレスにさらされているために、自分でも気がつかな
いうちにストレスを受けている場合があります。様々なストレスにより、知ら
ない間に肝臓機能が低下して、脳内に熱を帯び、脳圧が高まり、目に症状が出
ている場合があります。

目が疲れたり充血してきたら、まず肝臓、頭部、目の冷却を行なうこと。
一日に何度も瞳を閉じて、目と脳を休ませる時間を設けること。遠くの景色を
見る時間を設けること。こうしたささいなことの継続で症状はかなり緩和する
ことができます。

脳は頭蓋骨によって堅固に守られているため、脳内にこもった熱はなかなか
排出することができません。だから耳・鼻・口・目と多くの穴を頭部に開けて
熱を排出しようとしているのです。

 ストレス等で脳内に熱がこもって脳血管が切れる寸前の人の脳温を計測する
42度近くもあると言います。体温が3637度位でも脳温(脳内温度)だけが
42
度まであがってしまうのです。

 私たちは生きている限りストレスとの共存になります。脳内に熱をこもらせ
ないためにも、日々の頭部冷却(首筋・ひたい・後頭部の冷却)がいかに大事か
を認識していく事です。