脊柱管狭窄症(せきちゅうかんきょうさくしょう)の本質とその対処法
                        2016.12.13 有本政治


『脊柱管と脊柱の役割』

脊柱管とは棒状に連なる背骨に囲まれた管状の空間の事です。脊柱は椎骨という
やや厚めの積み木の様な骨が26個積み重なってできています。例えれば、26個の
積み重なった積み木の中に、直径1センチ位のゴムホース管が貫いたような状態に
なっていると想定して下さい。この管を脊柱管と言います。この管の中を、脳から続
く脊髄神経が通っていて、各椎骨の間から枝分かれして脊髄神経の分枝が各部に
伸びています。

脊柱管の中には神経が入っている硬膜という袋があり、この袋は全脊柱を貫いて
脳までつながり、この中を脳脊髄液が還流し、脳と脊髄神経を養い、不純物の排出
も司っています。この脳脊髄液が還流する事で、脳や脊髄神経が生きる事ができ
るのです。故にこの脳脊髄液の還流は生命維持にとって不可欠なものになります。

椎骨と椎骨の間には椎間板という柔らかい繊維性のクッションが組み込まれてい
て、このお陰で脊柱は、硬い骨のつらなりながら、クネクネと蛇状の動きが可能に
なります。究極的には渦のようなラセン状の動きが可能です。
またこの脊柱はまっすぐではなく、人体の横から見ると前後にS字状にカーブして
います。頸部は前弯し、胸部は後弯、腰部は前弯というS字型のカーブが形成され
ていますこれを生理的弯曲と言います。このカーブによって体にかかる重力を分散
し、直立を達成しています。この生理的カーブから逸脱すると、脊柱全体に異常な
応力がかかる事になり、直立と歩行に障害が生じてきます。重力を分散できず、
上体の重さが各所にかかり、その部の椎骨や椎間板の破壊や脱出にもつながり
ます。


『現代医学における脊柱管狭窄症の原因と症状について』

現代医学における脊柱管狭窄症の捉え方は、脊柱管をとり囲む背骨の椎骨の変
形や支える靭帯の肥厚、椎間板の変性による膨隆、突出、つまり、脊柱管を構成
する組織の変形により脊柱管が狭くなったために、脊柱管の中を通っている神経
や枝分かれする神経と、神経に伴走する血管が圧迫される事で、神経が障害され、
腰痛や下肢の痛み、しびれなど様々な症状が発生するとされています。

背骨に加齢に伴う変化が加わる事が原因で、脊柱管の狭窄が起こると考えられて
います。老化現象の一つで、年をとると多かれ少なかれ脊柱管は狭くなります。
高齢者の方に多くみられ、変形性脊椎症との合併で進行が早まると言われていま
す。

具体的な症状としては、腰痛、腰の周りが重かったり、違和感、ハリ感があるなど
に加えて、足に痛みやしびれがある。普段は何ともないが、歩き出すと足がしびれ
て歩けなくなったり、歩きにくくなるが、”前屈み”で休むとまた歩けるようになる(間
欠跛行)等が代表的です。

症状は太ももからふくらはぎ、足の裏などに、両側に出る場合や片側だけに出る
場合があります。足が持ち上がりにくい、階段でつまずく、スリッパが脱げやすい
など足に力が入りにくい症状もあります。さらに症状が悪化すると、歩行時に尿意
を催したり、排尿障害、会陰部の灼熱感などの異常が起こってきます。足の症状
だけで、腰痛は全く無い場合もあります。以上が現代医学における脊柱管狭窄症
の見解になります。以下は日本伝承医学的に脊柱管狭窄症を捉え直しその本質
を明らかにし、その対処法を解説していきます。


『日本伝承医学の病気や症状の捉え方』

現代医学の病気や症状の捉え方は、出ている症状を全て一方的に”悪の反応”と
して考えています。この見解に対してほとんどの人が納得してしまい、疑問を挟む人
はいないのが実状です。しかしこれは生命の法則に照らして考えてみると、一方的
な見解になります。

自然界の法則や物事に一方的な事は存在しません。全てにおいて正反二面性を
有するのが基本になっています。また悪の反応であるならば、体は徐々に悪くなる
一方で早く死ぬ方向に向かう事になります。生物として生まれて、体を悪くなる方向
にもっていったり、ましてや早く死ぬ方向に導く事は考えられません。

生物の歴史を紐解けば、何十億年もかけて種の保存を全うし現代につながってい
ます。その間、あらゆる環境の変化、外敵、疫病等に対して生き残るための手段
を、あらゆる条件に対して獲得、構築し生存を全うし現在に至っています。
つまり命を最後まで守り抜く対応手段を幾重にも完璧に獲得構築しているのです。

生きている体の示す反応は一方的に悪ではなく、必ず意味をもっています。その
意味とは、負の対応ではなく、体の重要な機能を守り、最後まで命を守り抜くため
の必要な対応なのです。つまり正の対応なのです。
この延長上で体に起こる変形や固着を捉え直す必要があるのです。生存のための
対応は、そこまでやるかという驚くべき手段を講じます。生存を全うするためには、
脊柱カーブも変え、骨さえも変形させ、脊柱全体を固着させ、脊柱管を細くしてまで
も守りぬくのです。


『脊柱管狭窄症を正の対応として捉え直す』

日本伝承医学の病気や症状の捉え方は、首尾一貫して正の対応の視点から症状
を捉え直し、その本質を明らかにしています。今回の脊柱管狭窄症は、その原因
とされる脊柱の生理的な弯曲からの逸脱、椎骨や椎間板の変形、靭帯の肥厚突
出といった形の変化を、正の対応として解説致します。つまり変形が悪ではないの
です。

脊柱の生理的な弯曲からの逸脱、椎骨や椎間板の変形、靭帯の硬化や膨隆も体
の何かを守る必要な対応なのです。命を守る優先順位に従って、変形させてでも
守る機能が存在するのです。その何かとは、脊柱管の中を流れる脳脊髄液の還流
と歩行の確保が挙げられます。歩行は生きるために最後まで守らなければならな
い移動手段です。そのためには、姿勢を前傾させたり、脊柱のカーブを変え、 また
脊柱を固める対応も時には必要になります。つまり変形や固着は、重力線上にバラ
ンスを保ち、最後まで歩行を確保する為の手段なのです。変形の本質は生命維持
に重要な役割を果たす脳脊髄液の還流を守り、動物としての人間が、生きるための
捕食と身の安全を守るのための移動手段である歩行を最後まで守る対応であると
いうことです。


『脊柱管の中を流れる脳脊髄液の還流を守る対応と歩行の確保は優先順位が高い』

脳と脊髄神経は、脳脊髄液の中に浮かんでる様な存在です。脳や脊髄が生きられ
るのは、水の中に浮かんでいる事で衝撃から守られ、脳脊髄液から栄養を受けと
り、不純物を排出し、それを運んでくれているからです。故に脳や脊髄は、脳脊髄
液に満たされ、常に新鮮な脳脊髄液が循環還流する事で生存が確保されているの
です。

脳や脊髄が生命維持にとって不可欠である事は言うまでもありません。この機能
は最後まで守り抜く必要があるのです。守る優先順位は当然高くなります。また
移動手段としての歩行も、動物として守るべき優先順位は当然高くなります。


『脳脊髄液の還流は何をポンプにしているか』

内部の液体が還流するためには、必ずポンプ機構が必要です。例えば血液が血
管の中を流れるのは心臓のポンプ装置によって血液が送り出されています。また
心臓まで還るためには、たくさんの筋肉ポンプが働いています。足を第二の心臓と
呼ぶのはこのためです(足関節と連動したふくらはぎの筋肉の収縮が代表的)。

脳脊髄液を動かすポンプ機構は、呼吸に連動した後頭骨と仙骨(脊柱の延長上の
骨盤部中央の三角錐状の骨)の微細な”うなずき運動”によって達成されています。
この呼吸に連動した後頭骨と仙骨による微細なうなずき運動がポンプ装置になっ
て、脳内と脊柱管の中の脳脊髄液が動かされているのです。脳脊髄液は1日に約
500mlから600ml産出され、1分間に6回〜12回の早さで、脊柱管を介して脳内と
仙骨間を循環しています。

後頭骨と仙骨の目に見えない範囲のわずかな動きにより液体が動く理由は「パス
カルの原理」にあります。この法則は密閉された容器内に液体が満たされていて
いる場合、液体の一部に加えられた圧力は全容器内の液体に均等に伝わるという
法則で、小さな力で大きな応力を得る装置として応用されています(油圧装置)。

まさに脳脊髄液は密閉された脳内の隙間と狭い脊柱管の中を満たしており、後頭
骨と仙骨のわずかな動きの圧に対して大きな力となって液体を動かす力となり、
液体の還流が達成されるのです。この後頭骨と仙骨の動きが失われると、脳脊髄
液は還流できなくなるのです。


『後頭骨と仙骨のうなずき運動を失わせるのは何が原因か』

これの最大の要因は自律神経の失調にあります。自律神経とは交感神経と副交
感神経で構成されており、お互い拮抗的に作用して内臓をコントロールしています。
その中にあって交感神経の緊張(交感神経優位状態)によってもたらされます。い
わゆる交感神経の緊張が強い状態です。交感神経緊張型の症状は後頭から首を
通って背部から腰部までの筋肉の凝りと引きつり状態です。特に脊柱に沿って後頭
から仙骨に連なる”最長筋”と”脊柱起立筋”の引きつりが後頭骨と仙骨のうなずき
運動を制限する最大の要因として働きます。交感神経緊張を見つける簡易的な方
法として、頭を最大前屈して顎が胸に着かない人は、後頭部から首の筋肉が引き
つれていて、交感神経緊張状態にある人です


『交感神経緊張は肝心機能の減退により発生する』

「肝心要」と言われる様に、生命活動において肝臓と心臓は最重要臓器です。故に
肝心機能が減退すると、これを早急に元に戻す必要が生じます。この肝心機能を
元に戻す対応が交感神経を緊張(優位に働かせる)になります。体にとって必要な
対応なのですが、上記した様に後頭部から仙骨まで筋肉を引きつらせる事になる
のです。しかしこれは一過性の対応で肝心機能が元に戻れば交感神経緊張は解
除されます。

特に心臓の機能が遺伝的に弱い人は、交感神経の緊張が起こりやすくなります。
また肝臓の機能低下は精神的なストレスの持続が最大の要因です(詳細はHP、院
長の日記参照)。この二つが重なることで、肝心機能の減退が生じ、その対応とし
て交感神経緊張が生じるのです。この交感神経緊張状態の持続が後頭骨と仙骨
の”うなずき運動”を消失させ、脳脊髄液の還流を阻害させるのです。


『もう一つの後頭骨と仙骨のうなずき運動を阻害する要因は精神作用にある』

私の43年の臨床の中からの気付きとして、脊柱管狭窄症を発症する人は、気質的
に意志の強く、最後まで物事を成就する能力の高い人に多く見られます。頑固なま
での意志貫徹力をもっている方になります。意志の強い人は体内に”石”を作りや
すいのです。特に「胆石」が生じやすくなります。また、頑固な人を”石頭”と呼びま
す。言葉通り石頭の人は、頭蓋骨の噛み合わせも硬くなり、後頭骨の微細な動き
にも影響を与えると考えられます。

胆石のできる胆嚢は、別名肝(キモ)と言われ、”肝っ玉”と言い精神作用と関わる
場所になります。つまり胆石のできるタイプの人は、肝のすわったいわば”頑固者”
という事になります。このタイプの方は、最後まで物事を諦めず成就する人です。
この気質の人はリーダーとして向いている人で、グイグイ人を引っ張っていく能力
をもっています。ただその反面、常に自分と向き合い、自分を”起励”し続ける事
を求められます。
これは当然体にも負担を強いる事になります。つまり肝臓、胆嚢の機能低下を引
き起こすのです。またこの気質が姿勢にも反映され、気持ちの前向きさがいわゆ
る「直立不動姿勢」、『軍体調の起立姿勢」を作り上げていったのです。

これが過度の脊柱起立筋の緊張を生み、この姿勢の持続が後頭骨と仙骨をこわ
ばらせ、うなずき運動の減退をもたらしたのです。また肝胆機能を元に戻す対応と
して交感神経の緊張も加味され、さらに後頭骨と仙骨の動きを失わせる要因とな
るのです。またこの気質の方は、次の項で解説する脳脊髄液の還流を守る対応と
して「くの字姿勢(前傾姿勢)」を見栄えが悪いという思いから無理して伸ばそうとす
るのです。これが「間欠跛行」に代表される脊柱管狭窄症の症状を引き起こす要因
となるのです。


『脳脊髄液の還流の減退に対して、体はどういう対応をするのか』

脳脊髄液の還流の停滞は生命活動に影響を及ぼします。生きている体はこれを
回避するためにその対応をとります。その手段が上体をやや前屈させ、くの字姿
勢をとるのです。

この姿勢は脳脊髄液の還流促進だけではなく、体内の血液、リンパ液、全ての体
液の循環促進につながります。人類は四つ足から二足直立を果たしました。これ
により体内の液体の循環形態が大きく変わる事になったのです。縦長姿勢は上か
ら下への液体の循環は重力に従ってスムースですが、反面、上への循環は重力
に抗して行なう事になり、労力を要します。

その意味では、四つ足姿勢になる事が、全ての体内の液体循環を一番楽にし、助
けます。しかし人間の場合は四つん這いで動く事は返って不自由です。そのため
にやや前屈した姿勢をとる事になるのです。

高齢の方で腰曲がりが強い方が見受けられますが、これは心臓の噴き出しを助け、
血液の循環を促進する対応姿勢なのです。この腰曲がりは、世間でよく言われて
いる長く腰を曲げる農作業をした事が原因の様に考えられていますが、これは間
違いです。なぜならば一度も農作業をした事が無い人も腰曲がりが発生している
からです。

また前傾姿勢をとる対応のもう一つの理由は、体がくの字に前傾姿勢をとると、最
上部にある頭部は逆に後頭部を起こした姿勢になります。この姿勢は骨盤部の
仙骨の角度は前傾し、後頭部は後屈します。この姿勢は後頭骨と仙骨のうなずき
運動を補助する体勢になるのです。

この前傾姿勢は当然脳脊髄液だけではなく、上記の様に、心臓の血液の噴き出し
を助け全身の血液の循環を促進する対応でもあるのです。これが体のとる対応の
姿になります。これにより脳脊髄液の還流と循環を確保するように働くのです。


『前傾姿勢の持続は、重力線上でバランスをとる対応と歩行を守る必要上から、
脊柱の生理的カーブを変え、椎骨の変形や支える靭帯の肥厚、椎間板の変形によ
る膨隆や突出を生起する』

二足直立を果たした人体は、重力線上にバランスをとり歩行を確保するために、
脊柱にS字状カーブの弯曲を作りました。これは直立と歩行を達成するための理想
的な生理的な弯曲です。しかし生命維持のための対応の優先順位に基づいて、前
傾姿勢を余儀なくされました。この前傾姿勢の持続はさらに脊柱全体の重力線上
でのバランスのとり方に変化を余儀なくしたのです。

この理想的な脊柱のS字型の生理的カーブが、前傾姿勢をとる事で応力の集中が
起こり、これを補強する対応が生じたのです。これが全ての変形の根拠と機序に
なります。故に全ての変形は破壊へのプロセスではなく、逆に脊柱を破壊から守る
必要な対応手段であるのです。

これをわかりやすく解説するために、物理的な応力を分散する構造であるアーチ構
造に例えて解説していきます。古い構造物の中に石積みで作られたアーチ橋や城
の石垣の武者返しのアーチがあります。石組みのアーチ橋は半円形に石を組み上
げるために、橋の下部の方の石は真四角な立法形ですが、上に積み上げるに従
って台形型になります。

特に半円のトップは必ず台形になります。これを”キャップストーン”と称してアー
チ橋の最重要な石となります。この台形型をしたキャップストーンが”要石”となり
アーチを構成し、それぞれの石が強く結合する事で、上部からの力を分散し、橋と
しての強度を作り上げているのです。

このアーチ橋に破壊が起きる最大の要因は、アーチのトップに位置するキャップ
ストーン部の結合が緩んで、キャップストーンが浮き上がる事です。ここにゆがみが
生じると理想的な石と石の面圧に隙間が生じ、応力分散のバランスが崩れ、半円
形のアーチの形状がゆがみ、上からの重力に耐えられず崩壊してしまいます。
また崩壊しないまでも、石積み石の一つ一つに大きな応力が加わり石の破壊や変
形をもたらします。

城の石垣の武者返し形状の破壊も、アーチのへこみがなくなり、石垣がせりだして
膨らんでくると石垣は崩れてしまいます。
アーチ橋や城の武者返しの形状が崩れてくると、これを補強する対応に迫られま
す。この補強の方法が、石と石の接合部にコンクリートを流し込んで接着させ固着
する事で強度を保ったり、石と石の間に”クサビ”となる物を打ち込んで石と石の接
合面を安定させたり、アーチの弯曲を変えたりする事で、崩壊を食い止めようと対
応します。

これらの補強対応と同じ事が、人体内の脊柱に起こるのです。その補強対応の姿
が、脊柱の生理カーブを変え、椎骨の変形や支える靭帯の肥厚、椎間板の変形に
よる膨隆や突出なのです。これらは全て脊柱を重力線上に保ち、脊柱の崩壊を防
ぎ、移動のための歩行を確保する対応なのです。

椎骨を変形させる事で、椎骨と椎骨の接合部の面圧を保護し、接合固着させる事
で強度を高め、支える靭帯を強くするために靭帯を厚く肥厚させ、椎骨と椎骨の間
にある椎間板を変形、膨隆、突出させる事で”クサビ”の役割を付与しているのです。
この様に生きている体のやる事は全て意味があり、ここまでしても生命維持を果た
していくのです。

これを証明しているのがX線やMRIに映った映像です。X線による腰椎全体の横か
らの映像に、第3腰椎の前方突出と第4、第5腰椎のくっ付いて接合された姿です。
これは前述したアーチ構造の崩壊する姿とそれを補強しようとする対応手段が見
事に示されています。またMRIに映る肥厚して厚くなった靭帯と椎間板の変形した
姿がそれを見事に証明しています。

人体内のアーチ構造である腰椎は5個の椎骨の積み重ねで構成され、第3腰椎が
トップのキャップストーンに相当します。これが腰椎の前弯カーブの逸脱により、
前方突出する事でアーチ構造に破壊が生じたのです。これを補強する対応が、そ
の下に位置する第4腰椎と第5腰椎をくっ付けて固める事で強度を得るための対応
手段なのです。

また支える靭帯の強度を増すために、厚く肥厚させたのです。例えればアーチ橋
の崩壊を防ぐためにアーチの下に硬く強度の強い”鉄板”をアーチ状に支えにする
対応と同じなのです。

椎間板の変形、膨隆、突出も同じ原理で起こっています。椎骨間のクサビの役割
を果たすために、形を変えたり、膨隆させ硬くしたり、突出する事で脊柱を重力線上
に保つ役割を果たしているのです。また、脊柱管を一部細くする事で脳脊髄液の
流れをコントロールしているのです。

正に生きている体を示す対応の全ては理にかなっていたのです。驚くべき対応手
段ですが、生きている体にとっては極めて当たり前に備えている命を守る手段です。
ちなみに頸椎に起きる変形、狭窄、椎骨の固着も同じ対応になります。頸椎は7個
の椎骨で構成されているためにキャップストーンは第4頸椎になり。その下の椎骨
の第5頸椎が固着癒合する事になります(詳細は拙著、人体積木理論、バナナ理
論を参照ください)。

故に全て必要な対応のために発生している変形、癒合、固着ですから、これらを
除去する処置や手術は避けなくてはなりません。これを行なえば、またさらなる対
応をせまられ、逆にもっと重篤な状態を引き起こすのです。そして、ついには歩行
困難に陥らせるのです。


『X線やMRIの映像で脊柱管が折れ曲り、狭くなっているがこれはどういう対応
  なのか』

脊柱管が折れ曲り狭くなっている映像を見ると、これは大変な事で、このために
神経や血管が圧迫され症状が出ているものと誰もが危惧します。また医療側もこ
こが最大の原因という説明をします。実はそれは早計な判断になります。

生きている体のやる事は意味のない事は絶対にしません。脊柱管を狭くする事で、
脳脊髄液の還流を調整しているのです。体内の液体の循環を守る対応として血管
がとる対応があります。血液の循環を確保する対応として、血管を細して流れを速
くしたり、一部分狭くして、流れを一時的に止めておいて一気に流したり、血管を硬
くガラス管化する事で、内部の抵抗を減らし流れを早くしたりという対応をとります。
(詳細はHP院長の日記「心臓カテーテル治療の予後について」の項を参照ください)。

この血管のとる対応と同じ事が脊柱管内で生起されるのです。前記してある様に、
脳脊髄液のポンプ装置としての、後頭骨と仙骨の動きに制限が起きています。
このために脳脊髄液の還流を確保する全ての対応を総動員させます。その対応
の一環が脊柱管を細くする事で速く流したり、部分的に脊柱管を折り曲げて流れを
一時的にせき止め、圧力を高めて一気に流したりという手段なのです。また脊柱
管を固く硬化させる事で流れを速くする対応も含んでいます。決して脳脊髄液の
流れを遮断するための変形、狭窄、突出、折り曲げ、硬化ではないのです。


『脊柱管狭窄症の原因とされている脊柱管を取り囲む椎骨の固着や変形、椎間板
の変形、黄色靭帯の硬化等による脊柱管の圧迫では症状は出ない』

X線やMRI検査の画像を示され、脊柱管をとり囲む椎骨の変形、支える黄色靭帯
(おうしょくじんたい)の肥厚、椎間板の変形による膨隆や突出により、局所的に脊
柱管が狭くなっている画像を見せられると、なるほどこれが原因かと誰しも納得し
てしまいます。しかしこれをとり除く処置や手術等を行なっても症状は根本から改善
はしません。

原因因子をとり除いても、症状が完治しないという事は、これが原因ではないとい
う証明であります。つまり脊柱管が局所的に狭くなることで、神経や血管が圧迫さ
れ、症状が出ているわけではないのです。これは神経生理学の分野で証明されて
います。神経をピンセットで一箇所をつまんで狭くしても、痛みやしびれという症状
は出ないのです。

どうした場合に症状が出るかと言うと、神経をゴムのように引き伸ばした場合に、
違和感が発生するのです。この事実が神経や血管の局所的な圧迫説を否定して
いるのです。つまり局所的に脊柱管が狭くなって、神経や血管を圧迫しているよう
に見えてもこれが原因で症状が出ているわけではないのです。


『脊柱管狭窄症の原因となる脊柱管が引き延ばされる状態は、どうして起こるか』

これは生理的な脊柱カーブの逸脱から発生します。人体の脊柱は動きの中で、重
力線上のバランスと重力を分散する目的でS字型に弯曲しています。この形状に
おいて脊髄神経と走行する血管、椎間板の形、支える靭帯等が一番安定する状態
で設置されています。これが何かの原因で生理的なカーブを逸脱して、脊柱が直線
的になったり、逆にS字カーブがより強くなったりする事で脊柱の内部に牽引が生じ
るのです。これが脊柱管内の神経にゴムを引き延ばした様な張力を生起し、痛み、
しびれ、麻痺が発生するのです。


『脊柱管狭窄症の代表的な症状の「間欠跛行」は何故起きるのか』

脳脊髄液の還流を確保する対応が上体の前傾姿勢になります。前傾姿勢をとる事
で脳脊髄液のみならず、心臓の血液の噴出を助け、全身の血液の循環、配分を助
け、特に脳への血液供給を助けています。また、神経の引き延ばしもこの姿勢をと
る事で回避されています。つまり前傾姿勢をとる事で、全ての生理機能が円滑に動
いているのです。

これを無視して、体を無理やり起こして歩行すると、上記の全ての対応が効かなく
なってしまうのです。全身の血液の循環と配分、脳への血液供給、脳脊髄液の還
流の全てに停滞が生じることで動悸、貧血、気持ち悪さ、頭痛、吐き気等が生じ、
神経の引き延ばしによる下半身の痛みやしびれ、膀胱の灼熱感、頻尿等が発生
するのです。これが間欠跛行の原因となるのです。故にしばらく座ったり、前傾姿
勢をとって血液循環を元に戻し、神経の引き延ばしを無くすと症状が消えて、また
歩行が再開できるのです。


『どう対処する事が必要か』

脊柱管狭窄症の根拠と機序を解説してきましたが、根拠と機序が明らかになれば、
どう対処すべきかの答えは既に明確に示されているのと同じです。
まずとり組まなくてはならない事は、交感神経緊張状態の修正です。これがとれな
い限り、後頭骨から仙骨までの筋肉の引きつりはおさまらず、後頭仙骨の脳脊髄
液ポンプ機能の改善につながりません。

そのためには肝心要となる、肝臓(胆嚢を含む)と心臓の機能低下を元に戻す必要
があります。これにより全身の血液の循環・配分・質の乱れが改善されます。
脳への血液供給も改善され、脳内の熱や脳圧の上昇が除去されるのです。これ
により脳の熱がおさまり、脳脊髄液の供給の負担が解消されます。

脳脊髄液と血液の循環と配分が改善する事が、上体の前傾姿勢を元に戻すため
の不可欠な条件になります。これをまず達成させながら、同時に脊柱の生理的弯
曲と脊柱の柔軟性をとり戻す治療を行なう事が必須になります。


『上記の条件を理想的に行なえる日本伝承医学の治療法』

日本伝承医学の治療は世界で唯一、骨の中の骨髄機能を発現させる目的で構築
されています。これにより骨髄のもつ細胞新生と造血機能が活発になり、生命力
や免疫力を高める事が効率よく達成できます。これは同時に骨内のカルシウムの
溶出を防ぎ、破骨細胞と骨芽細胞のバランスを保つことで“骨代謝”を活発にさせ、
骨密度を上げ、丈夫な骨の再生を助けます。

また今回の最大原因となる交感神経緊張を改善するためには、肝臓(胆嚢を含む)
と心臓の機能を上げる事が命題になります。日本伝承医学の治療は内臓的には
肝心要を改善する目的で構築されていてこれに適合しています。
また脊柱に「ゆり・ふり・たたき」という波動操法を使用する事で、椎間板の弾力を
元に戻し、脊柱の弯曲を修正し、脊柱の柔軟性を高める事が可能です。
この様に脊柱管狭窄症の本質を明らかにし、その根拠と機序に基づいた対処がな
される事で症状は回復に向かわせる事ができます(日本伝承医学の治療法の詳
細はホームページを御覧ください)。