(たん)の本質 
 

(たん)は気道や肺を守るための分泌物になります。口、鼻、
肺をつなぐ気道から出る気道分泌物で免疫物質が含まれ、細菌
やウィルス、ほこり等から体を守る役目があります。外部から
の細菌やウィルスが気道や肺の内部に入らない様に関所となり、
痰と言う分泌物に吸収させて外部へ排出させているのです。
 ウィルスや細菌が混在していない痰はさらっとしていて自然
に胃の方へ流れていきます。免疫力が低下しているとウィルス
や細菌に侵されやすく、咽頭、気道、鼻等の粘膜に付着し粘性
の痰として現われます。
 呼吸器粘膜の上皮細胞表面の細かい繊毛(せんもう)には粘液
がキャッチした異物を外へ押し出す働きがあり下気道から
上気道へ運び上げます。痰として体外へ吐き出す働きは、人間
の生体防御反応になります。熱(炎症)を帯び痰の粘り気が強く
なると排出できなくなり気道にたまり、喉にへばりついて
絡む様になります。喉、首筋、後頭部等の局所冷却により炎症
を除去できるので実践します。
 ※細菌は単細胞生物で細胞分裂により増殖します。ウィルス
 は生物の細胞に感染する複合体で細胞分裂により増殖します。

白色や無色透明の痰は細菌ではなくウィルス感染や気管支炎、
気管支喘息等の時にみられます。粘り気の強い痰は喘息症状の
特徴になります。黄色みがかった痰は、風邪等の後に出やすく、
白血球と細菌が戦ったあとの死骸が混在することで生じます。
緑色の痰は細菌感染による場合が多いのですが、慢性気管支炎、
インフルエンザ桿菌(かんきん)、蓄膿症、慢性副鼻腔炎等でも
生じます。茶色の痰は肺炎、肺結核、肺がん等、赤色の痰
(血痰)は肺出血、肺結核、肺がん、気管支拡張症等の時にみら
れます。
 痰は気道や肺を守るための気道分泌物になりますが、多すぎ
ると気道が狭くなり湿った咳が出て長引きます。咳により痰を
排出しようとするのですが、痰がなかなか切れずに苦しくなり
ます。
また先天的肝機能の弱さやストレスにさらされると肝臓に熱
(
炎症)がこもります。熱は上昇する性質があるため、肝臓の上
にある食道や気道内部に熱をこもらせます。上気道が蒸され
(
蒸し器のようになり)、粘液が熱のために粘度の強い状態に
なり、これが痰と呼ばれるものです。故に常に痰がからんで
きます。肝機能障害の人は痰がからみ、いつも咳払いをして
います。
 遺伝的な心肺機能(心臓と肺の機能)に弱さがある場合は、
心臓に熱がこもりやすくなります。心臓にこもった熱は食道や
気管を乾かすため痰がからむようになります。呼吸が弱く気流
の低下があり、痰がうまく排出されず喉に貯まり気道が狭まり
息苦しさ、息切れ、呼吸のしづらさ等の症状が発生します。
熱がないのに痰だけが長引く場合は気道粘膜に炎症がありま
す。気道粘膜の炎症を除去するには肝臓(胆のう)、心肺機能
の低下を改善していく必要があります。日本伝承医学では、
のど、痰、咳の操法、心臓調整法、肝胆叩打法を用い治療して
いきます。また家庭療法として、肝胆の熱を除去するために
肝胆の氷冷却を行ないます。痰が絡んでいる食道の上の胸骨
の患部を直接冷却することで食道、気道の熱のこもりも改善
できます。

【対処法】
 痰は喉(気道、粘膜、咽頭、扁桃、気管支、鼻腔)に炎症が
起きることで発症します。炎症を除去するためにはアイスバッ
グでの局所冷却が有効となります。首筋、のど、後頭部を徹底
的に冷却するようにします。喉の炎症は脳幹部に熱のこもりを
生じさせるため、就寝時には氷枕で後頭部の冷却も行なうよう
にします。
 水の摂取が不足しても回復が遅れます。11.52Lの水を
飲む様にしていきます。常温の水をコップに常に用意し、少し
ずつこまめに水分補給し、喉を潤していきます。
室内の空気が
乾燥しないように室内の湿度は、湿度計を見ながら調整するよう
にします。
塩水(塩を溶かした水)でうがいを行ないます。梅雲丹は喉の
免疫力を高めるので1日何度も服用します。

【痰がからむ病状】
 気管支喘息/慢性閉塞肺疾患/気管支拡張症/肺結核/肺がん/
 
誤嚥性肺炎/
急性咽頭炎/肺水腫/肺気腫/筋萎縮性側索硬化症(ALS)
 ※上記症状に対して日本伝承医学の治療は有効となります。

≪参考文献≫有本政治:著

      「家庭療法としての局所冷却法

     「咳を捉えなおす(咳の効用)

     「肺気腫をとらえ直す

      「喘息はなぜ起こるのか

      「喉の炎症の本質
 

         「梅雲丹の効能」