喉の炎症の本質

喉の炎症には、喉頭炎と扁桃炎があります。どちらも喉の粘膜の炎症で、急性と慢
性があります。原因は、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、インフルエン
ザウイルス、RSウイルスなどのウイルス感染や、溶血性連鎖球菌、肺炎球菌、ブド
ウ球菌などの細菌感染等が挙げられています。(声の酷使やタバコの煙の吸い過
ぎ等も起因することがあります)。
症状は、喉の痛み、声枯れ、唾や食べ物を飲み込んだときの痛み、喉の乾燥感、
異和感、発熱(高熱が出る場合もある)、慢性になると潰瘍ができたり、激痛を伴
います。治療法は、ほとんどが対症療法で、消炎剤、咳止め、細菌やウイルスを殺
す抗生物質の投与、ステロイドホルモンの服用、ステロイドホルモンの吸入法になり
ます。これらで一時的には症状がなくなりますが、また再発を繰り返したり、慢性疾患
に移行してしまうこともあります。症状が出るたびに対症療法を行なうのが実状で、
アデノイド(咽頭扁桃増殖症)の手術も多く行われています。再発を繰り返し慢性に
移行するという事は、喉の炎症の視点を変えた考察が必要になります。ここからは
日本伝承医学の視点に立って喉の炎症の本質と根拠と機序を解説していきます。

喉の炎症とは、炎症を起こす事で、喉の機能を回復させるための修復反応であり、
機能を元に戻すための必要な対応になります。喉に炎症が起こると、発熱や発赤
(充血)、痛み、腫脹、機能障害等を伴う場合がありますがこれらの症状には、みな
意味があります。
発熱は、組織の分子運動を活発にして、細胞の活性化を図り、咽頭や扁桃の修復
を促しています。発赤とは、充血して赤くなる事をいいますが、これは充血させ新しい
血液を大量に集める事で、組織の修復を図っています。痛みは、痛みの信号を
発する事で、心臓のポンプ力を高め、患部に血液を集めて回復させようとしています。
腫脹とは、組織に腫れを作り、内部の圧力を高め、内圧によって患部の血液やリ
ンパ液、組織液の循環を高め、修復を早めています。機能障害とは、その部位を
使わせないことで、負担をかけないようにし組織を回復させています。喉に炎症が
起こると、物が飲み込みづらくなりますが、これは食べることを少し控えていくことで、
回復させるために嚥下を制限してくれているのです。喋りづらくなるのも、声を出す
事を制限して組織の回復を図ろうとしている対応になります。このように症状の捉え
方の視点を変えてみると、各々の症状には意味があるという事がわかるかと思いま
す。

扁桃炎の場合は高熱を出す場合がありますが、これは高い熱を出す事で、速やか
に組織の回復を図ろうとしている対応なので、解熱剤を用いてはいけません。高熱
を出す場合は、熱を出し炎症を起こすことで、体内にこもった余計な内熱を体外に
排出させ、体の組織を元に戻そうとしているのです。(腎炎、肺炎、脳炎、肝炎、胆嚢
炎等も同じ原理になります)。インフルエンザの高熱も同じです。インフルエンザの高熱
を解熱剤で一気に下げてしまうと、治りを遅くするだけでなく、体は熱の排出先を失
い、症状をより重篤な肺炎や髄膜炎、急性白血病等に移行させてしまうことになるの
です。(急性白血病は、抗生物質や風邪薬、解熱剤を、長期に渡り服用していた場
合に多くみられます)。
つまり喉の炎症は喉をいち早く回復させるための、必要な対応として発症していま
す。故にこれを薬等で押さえ込んだり封じ込めるという事は、体はさらなる段階的
対応を迫られ、炎症から潰瘍へ、さらには腫瘍へと重篤な症状へ移行していく事に
なるのです。

喉は、頭部と胴体部を結ぶ一番くびれた狭い場所になります。喉は首という細長い
形状の中にある管なので、咀嚼されていない食べ物や飲み物、呼吸による有害物
等により、刺激を受けやすく、傷つきやすく、熱を生じやすい場所になります。また
体の心臓より上に位置する喉や頭には、血液の供給不足が起こりやすいのです。
心臓より上にあるという事は、血液を循環させるためには血液を持ち上げなくては
ならないからです。心臓のポンプ力が落ちたり、全身の血液の配分が乱れ、血液
の供給が不足してしまうと、喉への血液供給は少なくなります。体を起こしている時
間(起きている時間)が長くなったり、寝不足でも、喉に血液供給不足を生じさせます。
さらに赤血球の連鎖が全身の毛細血管の流れを停滞させたり詰まらせていく事で、
ますます喉への血液不足が起こります。これが喉の機能を低下させる要因になり
ます。

東洋医学では、喉の症状は”腎虚”により起こると捉えています。腎虚とは、内臓
の腎臓の弱りを指す言葉ではなくて、生命力や免疫力、体全般の弱りを表します。
先天的に心肺機能の弱い体質の方は、腎虚になりやすく、喉に炎症を起こしやく
なります。だから生活習慣等には気をつけていかなければなりません。生活習慣の
乱れによっても、生命力や免疫力は低下していきます。特に寝る時間帯は大切です。
夜の10時から明け方の4時までの間は体を横たえていないと、脳からの成長ホルモ
ンが十分に分泌されず、細胞の活性化が起こりません。この時間帯に眠ることで、
体は疲れて弱った体力を元に戻し、細胞の修復作業をしてくれるのです。生命力の
低下は、新たな細胞を生み出す力となる細胞の新生力も低下させていきます。

喉の炎症の本質は、喉に炎症を起こす事で、低下した組織器官の機能を元に戻
そうとする必要な対応であります。喉は体における免疫機構の入り口にあたる所
になります。口、鼻、喉は呼吸と食事をするために、外界に通じた内管系の入り口
にあたります。口と鼻から入ってくる空気や飲食物の有害無害の識別をしなくては
なりません。喉の粘膜は、これらの有害な細菌やウイルスを退治する免疫機構の第
一の関門にあたる重要な場所なのです。ここは本来は免疫力が高く、病原菌やウイ
ルスに侵されにくくなっています。この個所の免疫力が低下したということは、細
菌やウイルスに感染しやすくなり、感染症や様々な症状を発症させてしまうということ
になります。故に咽頭と扁桃の粘膜の免疫力は、低下させないようにしなければなり
ません。また低下してしまった時には、少しでも早く元に戻す必要があるのです。

免疫力とは、具体的には細菌やウイルスを退治する力で、その役割は血液の白血
球が主に担っています。(白血球だけでなく、赤血球や血小板もその役割分担を
しています)。つまり血液そのものが免疫物質の主体になります。故に免疫を上げる
ためには新鮮な血液を必要な時に、必要な量を、必要とする組織器官に送り込む
必要があります。そのためには新たな血液を大量に作り出していかなければなりま
せん。免疫力とは、具体的には造血力に置き換えられます。つまり免疫力が低下す
ると言う事は、造血力が低下するということになります。血液は命の源(みなもと)で
あり、健康な体は、血液の循環・配分・質が常に正常に保たれていなければならな
いのです。

血液の質が悪くなると血液はドロドロになり、体に支障をきたしてきます。血液の質の
低下をもたらす最大の要因は、血液の熱変性になります。全ての症状は血液が熱を
帯びる事から始まるのです。血液が熱を帯びると熱変性により赤血球同士、白血球
同士、血小板同士がくっ付き合います。血液は98%が赤血球で構成されていて、何個
もの赤血球が連鎖しています。熱変性した血液は、連鎖するだけではなく、血液をド
ロドロにし、血液の働きも低下させます。血液の質が悪くなれば、循環や配分にも乱
れが生じてくるのです。こうした状況が免疫力の低下につながっていくのです。
免疫力の低下の背景には造血力の低下があり、直接的にはこのように全身の血
液の循環・配分・質の乱れが免疫力の低下を引き起こしていたのです。

全身の血液の循環、配分、質の乱れは、肝臓、胆嚢、心臓の機能低下とも深く関わっ
ています。血液の循環を担うのは心臓になります。心臓は、脳や肝臓に血液を供給
し、血液を送り出し全身にくまなく送り込む作業をしているため、私たちの体は知らぬ
間に心臓に大き負担をかけてしまっているのです。

脳は体の中で最も新鮮な血液を消費する場所になります。様々な思考や心労、精神
的ストレスの持続により、常に働かなければならないため、脳は血液不足になりやす
く(虚血)、常に多量の血液を必要とします。また脳内の神経伝達物質や脳内ホルモ
ンを大量に消費するために、これらを作り出し、また分解を担う肝臓にも負担が、かか
っていきます。肝臓機能の低下を補うために、肝臓に大量の血液が必要になり、全
身の血液の配分が乱れるため、心臓は、血液を全身に速やかに回そうとしていきます。

また、肝臓の機能低下は、内包する胆嚢(たんのう)の機能も低下させます。
肝胆相照らす(かんたんあいてらす)という言葉通り、肝臓と胆嚢は表裏一体(ひょうり
いったい)の関係にあるため、胆嚢にも影響を及ぼします。胆嚢の機能低下を
補うために、軽い炎症を発生させます。炎症は胆嚢を腫れさせ、胆嚢の袋の収縮を制
限していきます。このために胆汁の分泌が十分に できなくなります。胆汁の分泌不足は、
血液に熱をもたせ、熱変性により赤血球を連鎖をさせていきます。つまり血液をドロドロ
にしてしまうのです。そして全身や脳の毛細血管の流れを停滞させ詰まりを引き起こし
ていくのです。心臓は、血液の停滞やつまりを何とかしようと、速やかに流そうと、無理
をしてでも懸命に働こうとしていきます。こうして徐々に心臓に負担がかかっていくのです。

心臓に負担がかかり、心臓機能が低下していくと、血液の循環が悪くなり、免疫の
とりでである喉に炎症が起きていきます。炎症を起こして菌やウイスルが体内に入ら
ないようにしていきます。菌やウイルスは熱に弱いため、炎症を起こすことで、喉に
熱のカーテンを作り、侵入を防いでくれているのです。脇で測る体温よりも、口の中で
測ると、喉に炎症が起きているときには、1度から1.5度位、熱が高いのには、こうし
た理由があります。(脇で36、7度でも口で測ると38、2度位あることがあります)。
体は38、2〜38、3度の熱で、免疫にスイッチが入ります。この数値を境に、菌やウイ
ルスに対する抵抗力が生まれてくるのです。舌や喉に口内炎ができたり、喉の炎症が
ひどい時には、口の中の温度が38、5度を超えていることもあります。でもこれは必要
な、大事な熱です。だから発生した熱は、薬で下げてはいけないのです。

日本伝承医学の技法は骨髄機能を発現させる目的で構築されています。生命力は
は細胞新生力であり、免疫力とは造血力になります。この細胞新生と造血は共に
骨髄で行われています。つまり生命力や免疫力を高めるためには、日本伝承医学に
より骨髄機能を発現させていく事が必要になります。また日本伝承医学の治療は、肝
臓(胆嚢)と心臓の機能を高め、全身の血液の循環・配分・質を整えていくことに主体を
置いています。脳の炎症と肝臓の充血をとるために、頭と肝臓の氷冷却法も行ないます。
喉の炎症を直接的にとるためには、小粒の氷を口にふくみ、氷が溶けたら吐き出して
いく、口内の氷冷却も行なっていきます。(雑菌が体内に入る為、溶けた氷の水は飲ま
ないで吐き出すようにします)。これを1回15分位、一日何回も繰り返していきます。痛
みが和らぎ、喉の炎症が早く引いていきます。症状を改善していくためには、家庭療法
としての氷冷却法も実践していくようにしてください。

梅雲丹の効能

痰の本質