日本伝承医学の耳の治療
≪序文≫ ~東洋医学と西洋医学
西洋医学とは、投薬や手術等によって患部(悪い所、病巣のあ
る部位)を治すことに主体を置いています。心臓なら心臓、胃
なら胃、耳ならば耳というように、その部位だけを診て治療し
ます。これに対し東洋医学(日本伝承医学/漢方医学)では患部
を、他の臓器や部位、精神状態等の全体との関連の中で捉え、
体の不調を根本から診て、免疫力と生命力、自己治癒力を高め
ていきます。西洋医学は病気・患部だけをみる医学で、東洋医
学はその人の体質・気質・性質等をふまえて人をみていく医学
と言えます。「病(やまい)は気から」と昔から言われるように、
病気は気、つまり元の気(元気)や気力(生命力・免疫力)が低
下した時に発症していくのです。
西洋医学は1875年にポルトガルから伝来され、1875年明治維
新の後、教育制度化されました。医業の開業許可を医師のみに
与えるという規定の法案が制定されたのです。わずか149年前
のことです。
東洋医学は6世紀頃飛鳥時代に中国から伝来されてきました。
しかし実はそれ以前の縄文・弥生時代から日本には、日本独自
の医療技術が存在していたのです。太古の時代から綿々とこの
地に伝承され続けてきた医術が、日本伝承医学になります。
≪日本伝承医学の治療に際して≫
日本伝承医学では、耳に現われる症状を単に耳だけでみてい
くのではなく、脳内臓、血液の循環・配分・質等の体全体との
関連の中で捉えていきます。耳に症状が現われる時は、疲れや
心労等の精神状態との関わりが大きくあります。
ストレスや悩み事、いやな事、心配事、不安感等が重なると、
交感神経が過度に緊張し、脳内に熱がこもり(脳の炎症)、自律
神経のバランスが乱れています(日本伝承医学自律神経調整法の
詳細は下記項目参照)。
自律神経は脳内から全身に巡り、心拍・呼吸・血圧・脈拍・
代謝・排泄・情緒等を司る人体中最も重要な神経になります。
この基本的生命維持機構に狂いが生じると生命の危機に陥る為、
体は耳からの音や刺激を閉鎖させ、脳へこれ以上の刺激が入ら
ない様にさせます(難聴・突発性難聴の根拠と機序の詳細は下記
文献参照)。耳に症状が出た時は、かなり心身共に疲れている、
くたびれている、心が弱っていると思ってください。
休養と心の静穏が必要です。
≪日本伝承医学の治療≫
まず全体調整法で、身体のねじれのゆがみをとり、耳と関連
する肝臓・心臓・腎臓の内臓機能を高め、個別操法としての耳
の操法を用います。
耳と脳は密接に関わりがあるので、根本原因である脳圧、脳
の虚血を改善していくことで治癒に向かわせていきます。耳の
疾患の場合は月2回のペースでの受診となります。遠方から泊
まりで来られる場合は、滞在期間中は連日の受診を勧めます。
当院では治療と併用して自身で行なえる家庭療法の指導を行
ないます。家庭療法としての生活習慣を身につけるために通院
して頂いています。日本伝承医学は単に受診するだけではなく、
体の事を学び、家庭療法としての自助努力を身につけていく場
となります。
家庭療法としては「食・息・動・想・眠」と「頭部と肝臓の
局所冷却法」を実践します。脳圧が高く、耳に症状が出るとき
は、通常の水の摂取が充分に足りていない場合があります。水
を飲むことは生命を養う上での基本となるので、一日1.5リッ
トル位を目安に習慣として飲むようにします。
日本伝承医学では、耳や体に起こる症状は悪いことではなく、
命を守るための正への対応として捉えています。当院は聴力や
耳鳴感、耳閉感、難聴、突発性難聴等の症状を急激に治すため
の治療ではありません。脳圧を下げて脳内の血流を改善し、聴
力の低下や症状悪化の進行を防ぎ、脳障害等の重篤な症状に
移行するのを未然に防ぐための臨床になります。
身体に生じるねじれのゆがみをとり、低下した内臓機能を高
め血液の循環・配分・質を整え、免疫力と生命力を高めていく
治療の学技詳細はホームページの下記文献を参照下さい。
≪参考文献≫有本政治著:
「日本伝承医学の家庭療法」(局所冷却法)
「肝臓を捉えなおす」
「耳鳴感・耳閉感」
「難聴を捉えなおす」
「続難聴と突発性難聴の原因」
「食・息・動・想・眠」
「なぜ2週間に1度のペースでの受診が必要か」
「日本伝承医学自律神経調整法と後頭骨擦過法」