人の体のナゼとワケ~難聴を捉え直す

「年をとれば、目や耳が衰えるのは自然な事ですよ」「足腰が衰えるのは、動作を
ゆっくりしなさいと言う事ですよ」と昔の人は、老いを素直に受け入れていました。
しかし昨今は、こう言った身体観が少なくなってしまいました。耳が遠くなってくると、
「これ以上悪くなったらどうしよう」という不安に思われるかもしれません。しかし
生きている体の為せることは、意味のない事はしません。寸分の狂いも無く、命を
つないでいます。耳が遠くなったり、耳が聞こえなくなるにも人智を超えた深い理
由があるのです。難聴の本質を知る事で正しい対処法が見つかり、不安の解決
につながります。特に頭部にある目や耳は、精神的不安から視力低下、聴力低
下の進行を早めてしまう事が多い故に、本質を知る事が大切です。以上の疾病観
に立って、難聴を捉え直してみます。まず現代医学的な所見と対処法を説明して
いきます。難聴とは、「耳が聞こえなくなる」病気ではなく、「耳が聞こえにくくなる
病気」となります。大方の難聴症状は、耳自体や体に何らかの異常が見つかる訳
ではありません。分類すると以下になります。

機能的な分類として
⑴感音性難聴ーーーー内耳に障害がある。多人数での会話が出来にくい。
⑵伝音性難聴ーーーー外耳や中耳に障害がある。声を大きくすれば聴きとれる。
⑶混合性難聴ーーーー上記二つの混合型。

特性的分類として
⑴老人性難聴ーーーー加齢によりおこる感音難聴。内耳機能減退、中枢機能減
              退による。
⑵突発性難聴ーーーー突然に、片側が聞こえなくなる。原因不明。
⑶神経性難聴ーーーー聴神経の障害による。
以上になります。対処法としては、薬物療法と手術、補聴器の装着、あるいは心
理療法も行われます。ただ難聴の特効薬は無く、症状に応じてステロイド剤、利
尿剤といった対症療法がほとんどになります。しかし効果はあまり期待できない
のが現状です。(手術も同様です)。

以上が現代医学的な所見と対処法になります。これらの所見を見てみますと、難
聴の根本的な原因は、はっきりつかめていないのが実状です。原因が特定出来
ないが故に、薬物も手術も功を奏することができず、再発や悪化につながってい
ます。つまり難聴は耳だけの局所的な問題ではなく、脳との関係、体全体との関
連の中から根本原因を探る必要があるのです。

次に日本伝承医学の疾病観に基づいて、その本質を解説致します。冒頭にも述べ
てありますように、本人にとっては不自由な事であっても、体の起こす反応は意味の
ない事はしません。体を悪くなる方向に向かわせたり、ましてや命を縮める反応は
起こしません。命ある生き物は、最後の最後まで何かを元に戻し、修復するように
対応し、命を守り抜くように働くからです。

難聴の意味とは、耳を聴こえにくくする事で、耳から入る音の刺激を制限し、脳へ
の刺激を最小限にとどめるために対応している姿になります。何故脳への刺激を
制限しなければならないかと言うと、すでに脳内に、熱のこもりと脳圧の上昇が存
在し、これ以上脳に刺激が入り脳圧の上昇が起こると、脳の血管障害(脳溢血、
脳梗塞、クモ膜下出血等)に進行していくおそれがあるからです。これを回避する
ために、わざと耳を聞こえにくくして、音の刺激を制限し、脳の興奮と刺激を抑え、
脳の熱のこもりと脳圧が限度以上に高くならないようにしてくれているのです。つま
り命を守る必要な対応をしているのです。これが難聴の本質になります。(精神疾患
の患者さんが音の刺激に敏感になり、これを避けるために耳を塞ぐのも、脳への
余計な刺激を軽減するための対応のひとつであります)。

また同様の対応の仕方として、目の白内障があります。目の水晶体を濁らせる事
で、入る光を制限して脳への刺激を回避し、難聴と同じように脳圧の上昇を抑える
働きをしているのです。体はこのように修復能力と段階的な対応手段を備え、私た
ちの命を守ってくれているのです。
以上が難聴の本質になります。故にこの本質を知らず、安易に薬や手術、補聴器
の装着で聴こえを良くしては本末転倒になります。体は必要な対応で発生させて
いるものですから、これを封じ込めても、再発してしまいます。必要な対応で音を制
限しているものを、聞こえやすくするという事は、音の刺激が脳を興奮させ、脳圧を
上げる要因として作用します。これは脳の血管障害(脳溢血、脳梗塞、クモ膜下出
血等)を引き起こす危険度を高める事になるのです。ただ耳が聞こえにくい事は
仕事や生活をしていく上で支障をきたすこともありますので補聴器の使用は、臨機
応変に使用することも必要な場合もあるかと考えます。

それではどうすればいいのか、難聴の予防と改善方法を説明していきます。 それ
はこれまで解説してあります難聴の根拠と機序の中から見い出すことができます。
耳を遠くする目的が、音を制限して脳への刺激と興奮を抑え、脳の熱のこもりと
脳圧の上昇を避ける対応ということです。つまり、脳内の熱のこもりを除去し、脳
圧を下げていけば、音を制限する必要がなくなるということです。
それには脳内の熱のこもりと脳圧の上昇は、どういう機序で体に発生するのかを
知る必要があります。これは体全体の問題として捉えていかないと答えは出ません。
それは脳への血液供給不足(脳の虚血)と、全身及び脳内の毛細血管内の血液の
停滞と詰まりに起因してます。

では脳の虚血は、どうして起こるかと言うと、これは全身の血液の循環、配分、質
(赤血球の連鎖による、ドロドロベトベト状態を指す)の乱れによって引き起こされ
ます。次に全身及び脳内の毛細血管内の血液の停滞と詰まりは、何によるかとい
うと、血液の質の低下になります。これは上記してあるように、赤血球の連鎖(ドロ
ドロベトベト状態)により、赤血球の塊(かたまり)が肥大し、毛細血管の内径より
大きくなってしまうために流れが停滞したり、詰まりを起こすことに起因します。
全身の血液の循環、配分、質の乱れと全身及び脳内の毛細血管内の血流の停
滞と詰まりがどうして脳の虚血を生むのかと言うと、それは以下の理由になります。

血液の循環に一番関与しているのは心臓になります。心臓のポンプ力が弱まる事
で、脳への血液が巡りにくくなり、脳への血液供給不足が起こります。次に全身の
血液の配分に関与するのは、内臓の肝臓になります。肝臓はレバーと呼ばれるよ
うに血の固まったような大きな臓器になります。肝臓の機能が低下すると、これを
元に戻す対応として、肝臓に大量の血液を集め、熱も発生させて機能回復を図り
ます。体は、中身の詰まった血の塊のような大きな肝臓に大量の血液を奪われる
事で、全身の血液の配分が乱れ、脳に虚血状態(血液が足りない状態)が起こる
のです。

そして血液の質(赤血球の連鎖)に関わるのは、胆嚢(たんのう)になります。”肝
胆相照らす”(かんたんあいてらす)の言葉通り、肝臓と胆嚢は密接な関係になりま
す。肝臓が弱れば胆嚢も機能低下します。肝臓で作られた胆汁は、胆嚢という袋
に集められ、濃度を濃くして極めて苦い物質になります。この苦い胆汁は、苦い
成分により体内の炎症を鎮め、血液の熱を冷ます作用を担っています。胆嚢が
弱るとこれを回復させる対応として、血液を集め熱を発生させます。熱が発生す
る事で、胆嚢という袋が腫れる事になり、収縮力を低下させます。これにより胆汁
の分泌が著しく低下します。この胆汁の分泌低下が血液に熱を持たせる事になる
のです。熱を帯びた血液は熱変性により赤血球の連鎖を発生させたのです。
これがドロドロベトベトの血液の根本原因です。これにより全身及び脳内の毛細血
管に停滞と詰まりを起こす結果となってしまったのです。血液の質の乱れと全身及び
脳内の毛細血管内の血流の停滞と詰まりは、胆嚢の機能低下に起因していたのです。
これが脳の虚血と脳圧の上昇をもたらします。

以上が脳の虚血と脳内の毛細血管内の血流停滞と詰まりの原因です。その結果、
脳への血液供給が不足すると、少ない血液を脳内に早く巡らせる対応として、脳圧
を上昇させるのです。また脳内の毛細血管の停滞と詰まりを流すためにも脳圧を
高くするのです。これが脳圧上昇の機序になります。脳圧が高い状態の持続は、
脳に熱を発生させ、脳内に熱をこもらせる要因となるのです。ここまで解明出来れば、
どうすれば難聴の進行を食い止め、改善と予防につながるかが見えてきます。答えは
難聴の直接的要因となっている脳圧の上昇と熱のこもりを除去する事です。その
ためには、全身の血液の循環、配分、質の乱れを整えていく事が不可欠になります。

また、体というものはその部位だけで働くのではなく、血液の循環、配分、質の他に
各内臓とも大きく関わってきます。「腎は耳に開竅する」(じんはみみにかいきょうする)
というように、耳に表れる症状は特に腎臓との関わりが深く、腎と耳は相似象の関係
にあります。つまり腎機能が低下すると耳に支障をきたし難聴になりやすくなります。
さらに難聴を引き起こす背景には、生命力の衰えと免疫力の低下が存在します。
病気や症状を改善していくためには、このようにその部位だけをみていくのではなく
体全体や内臓との関連の中からみていくようにしていかなければなりません。

生命力とは具体的には細胞を新生する力、すなわち細胞新生力に置き換えられ
ます。免疫力とは命の源(みなもと)である血液を造り出す力、すなわち造血力の
ことを言います。この細胞新生と造血は、共に体の骨髄で行なわれています。生
命力と免疫力を高める方法は具体的には骨髄の機能を発現する事で成し遂げら
れます。この骨髄の機能を発現する事を目的に構築されているのが日本の土地
に古来から伝授されてきた日本伝承医学の治療技術になります。

日本伝承医学の治療では、心臓、肝臓(胆嚢)、そして腎臓機能をも高め、病気や
症状の背景にあるその人自身の生命力や免疫力を高めていきます。また直接的要
因となっている全身の血液の循環、配分、質(赤血球の連鎖)の乱れを同時に改善
していきます。血液の循環、配分、質に関与しているのは肝臓(胆嚢を含む)と心臓
になります。また直接的な操法として、脳圧をさげる操法と脳の熱のこもりを除去する
操法、耳の操法も使用します。

さらに家庭療法として推奨している頭と肝臓(胆嚢を含む)の氷冷却法は、脳圧と
熱のこもりをとり、肝臓の充血をとり去り、胆嚢の腫れをひかせる事が出来ます。これ
により血液の配分を正し、血液の質(赤血球の連鎖)を元に戻す作用を助けます。
まさに生命力や免疫力を高め、全身の血液の循環、配分、質の乱れを整えるには、
最善な治療法となります。このような方法により脳圧の上昇と脳内の熱のこもりが平常
に戻れば、聴力を落とす必要がなくなり、自然に聴力は戻っていきます。以上が日本
伝承医学の考え方と治療法になります。