自己免疫疾患

 免疫機構(システム)が自分自身に働いてしまい、自分の細胞
や組織を攻撃してしまう病状を自己免疫性疾患と言います。
本来は自分と異なる異物(細菌、ウィルス、腫瘍等)を排除する
ための役割を持つ免疫系が、自分の細胞や組織に過剰に反応し
攻撃を始めることで発症していきます。
 原因は遺伝素因、環境素因、ホルモン因子素因等多彩な因子
が複雑に関与しますが、直接的素因(引金的要因)として、脳の
中枢部である脳幹に熱がこもることによる(脳の炎症)、基本的
生命維持機構(呼吸・心拍・体温・自律神経・ホルモン・情緒等)
の乱れから発症します。

 この中でもストレスによる自律神経の乱れが自己免疫疾患には
大きく影響を及ぼします。ストレスとはストレッサー(外部から
の刺激)に適応するために心身に生じた様々なストレス反応の
ことを言い、物理的ストレス、化学的ストレス。精神的ストレ
ス、社会的ストレス、身体的ストレス等に分けられます。こう
した様々なストレスにより、人間の脳はオーバーワークになり
熱をおび、脳内に炎症を発生させていきます。司令塔である
中枢部が機能障害を受けることで、体の生理機能が乱れ免疫
システムが破綻していきます。
 自己免疫疾患には全身に影響が及ぶ全身性自己免疫疾患と
特定の臓器だけが影響を受ける臓器特異的自己免疫疾患の二つ
の種類があります。

●全身性自己免疫疾患・・・・膠原病(全身性エリテマトーデス・
関節リウマチ・強皮症・多発性筋炎・血管炎・ベーチェット病等)

●臓器特異的自己免疫疾患・・1型糖尿病・バセドウ病・天疱瘡・
類天疱瘡・重症筋無力症・自己免疫性溶血性貧血・自己免疫性
胃炎・血小板減少性紫斑病等)
※自己免疫疾患は抗核抗体検査(疾患別検出感度)、各種自己抗
体検査によりこのように様々な病名が識別されていきます。
しかし検出感度は100%のものではないため、病状の発生状態
により、症状が出ているのに抗体検査では陰性と診断されて
しまう場合もあります。
 自己免疫疾患を理解するために、免疫機構、免疫細胞、胸腺等
について知っておかなければなりません。病状と向き合うため
には、今自分の身に起きていることを知ることから始めます。
そこからどうしたら良いかという発想が生まれてきます。

【免疫】
 一度伝染病にかかると次はその病気にかかりにくくなること
を、人は昔から知っていました。二度目に同じ伝染病にかから
ないことを「疫病(えきびょう)から逃れる」という意味で、
免疫(めんえき)と言うようになりました。
 その後免疫反応は病原微生物(ウィルス、細菌、真菌、原虫等)
だけではなく、生体内に侵入してきたタンパクに対しても起き
ることが明らかになりました。現在、免疫の定義は「異物
(非自己)の侵入から自己を防衛する生体反応」として位置づけ
られるようになりました。つまり免疫反応とは非自己と自己を
認識、区別して自己以外のものを排除する機構となります。
 非自己と自己を区別する指標は、細胞表面上のMHC(主要組織
適合遺伝子複合体)と呼ばれるタンパクになります。人間では
HLA(ヒト白血抗体)と呼ばれます。HLA抗原は自分自身の細胞の
証明書のようなもので、すべての細胞に存在します。これを
認識し非自己と自己を区別しているのが白血球の中のT細胞に
なります。

※タンパクは分子生物学上の呼び名で、たんぱく質は厚労省、
タンパク質は文部科学省の呼び名になります。各々呼び方が
異なりますが全てたんぱく(protein)のことになります。

【白血球】
 白血球は血液成分のひとつで身体の異物の侵入に対し、体を
守る働きがあります。細菌等の異物が体内に侵入すると白血球
数が増加し、異物を細胞内にとり込み無害化します。つまり
細菌等の感染症に罹患すると血液中の白血球数が増加します。
 白血球には主に好中球(4560%)、リンパ球(2545%)、単球
(4
6%)、好酸球(13%)、好塩基球(01%)5種類がありま
(男女の性別によっても比率は異なります)。これらを総称し
て白血球と呼びます。
 好中球は顆粒球の一種で顆粒球の大部分を占めます。好中球
とリンパ球の割合が大事でこの両者の割合が、ストレス等に
より自律神経のバランが崩れると(交感神経優位)、好中球が
増加し自己免疫疾患の引き金となります。

 好中球とリンパ球は免疫細胞になりますがこの二つは炎症細
胞と言われます。炎症が起こる場所に集まるからです。好中球
は主に急性期、リンパ球は慢性期の炎症に関与します。この
二つは炎症の指標として用いられ、好中球とリンパ球の比率
NLRという形で表わされます。高値(H)を示した場合、炎症反応
が強いという事になります。がんに罹患した場合、組織内に
炎症が起きるためNLRは高くなります。このように、好中球と
リンパ球は免疫系と神経系に関連しているだけではなく、炎症
マーカーとしても用いられ、がんの予後因子としての有用性も
示されています。


T細胞】
 T細胞は白血球の中のリンパ球の一種で、骨髄で作られ胸腺
(
きょうせん)
で教育されて分化します。胸腺はT細胞の学校
(
教育現場)のような役割を果たしています。胸腺(Thymus)
頭文字をとり、T細胞と名付けられました。その機能によって、
免疫応答を促進するヘルパーT細胞、免疫反応を抑制するサプ
レッサーT細胞、病原体に感染した細胞やがん細胞を殺すキラー
T細胞等に分類されます。分類は細胞表面のタンパク(細胞マー
カー)によって識別されます。T細胞の他に免疫細胞には、
B細胞、マクロファージ、樹状細胞等があります。T細胞の源で
ある幹細胞は骨髄から供給され、胸腺に入り分裂増殖を始めます。
 T細胞は骨髄で生まれ、胸腺で成熟していきます。胸腺でT細胞
が、非自己か自己かを判定するので、この成熟過程(教育課程)
はとても重要になります。しかし胸腺で行なわれる審査で、
合格判定がでるT細胞は、わずか5%の確率でしかなく、95
T細胞は適確な判断(非自己と自己の識別)ができなくて、
不合格となり自然抹消されていきます。判断が狂うと生命に
関わるからです。このT細胞の判定が狂った状態、もしくは狂っ
たままのT細胞が消滅しないで生き残った場合に自己免疫疾患
が誘発されます。T細胞が正常に働かないと、非自己と自己の
判別ができなくなり自己を非自己として攻撃してしまうように
なります。

 T細胞は免疫系の中で最も中心的役割を担っていて、T細胞が
無くなると免疫機構は破綻します。弱い細菌でも死に至る細菌
(
病原体)と化し、体を攻撃してしまうのです。 
DiGeorge症候群(胸腺低形成症候群)
              ・・・T細胞が欠損する遺伝病

【胸腺】
 胸腺(きょうせん)は自己免疫疾患抑制に関わる重要な臓器に
なります。胸骨の裏にあり、心臓の上に乗るような形で存在し
ています。胸腺は未熟なT細胞を成熟させる免疫系に関与する
一次リンパ器官になります。またホルモンを産出する内分泌系
でもあります。
 胸腺は生まれた時は1015gで、幼児期迄は活発に働き、
思春期で3040gまで大きくなります。成人後は年齢と共に
萎縮し、脂肪組織に置き換わっていきます。免疫細胞である
T細胞は胸腺で成熟し、非自己と自己を認識する免疫を培って
いく為、加齢と共に免疫が低下するのは、年と共に胸腺が萎縮
して小さくなり、T細胞が減少していくからになります。

【造血幹細胞】
 T細胞の根源(みなもと)は骨髄の造血幹細胞(ぞうけつかん
さいぼう)にあります。T細胞は造血幹細胞で生まれ、胸腺で
教育を受け成熟し、生命にとって大事な任務を司ります。
 造血幹細胞とは、骨髄(こつずい)の中で血球(けっきゅう)
作り出す元になる細胞になります。中心部の海綿状の組織で
細胞分裂を繰り返し、血球を赤血球、白血球、血小板へと
「分化」させていきます。また造血幹細胞は細胞分裂の過程で
、自らと同じ造血幹細胞を複製する力をもちます。この機能を
「自己複製」と言います。このように造血幹細胞は「分化」と
「自己複製」という二つの機能を有し、骨髄の中でこの二つの
機能が巧みに調節されて造血が行なわれています。

 日本伝承医学は骨のもつ圧電作用を用い、この造血幹細胞に
スイッチを入れ、造血力と細胞新生力を高めていく治療になり
ます。全身性エリテマトーデスをはじめ、自己免疫疾患(膠原
病等)に著効を示す所以はここにあります。
 造血幹細胞に働きかけることができる手技療法は世界で唯一
日本伝承医学になります。日本各地のみならず他国から当院の
治療を受けに来られるのは、東洋医学の分野でも、日本伝承医学
が骨髄機能を発現することができるからです。

 医学も医療技術も何もなかった太古の時代に、日本の古代人
は骨に重要性を見出し、骨に圧や振動を加え骨のもつ圧電作用
を用い、骨伝導を介して全骨格に伝え、骨髄機能を発現させる
ことで病気を治すという治療法を生み出しました。この地に
綿々と伝承されてきた数々の技法は日本人の叡智の集大成と
言えます。


【自己免疫性疾患とは】
 人間には本来、細菌やウィルスから身を守る免疫系が備わっ
ています。それが遺伝素因、環境素因(生活習慣、ストレス、
薬剤、放射線等含)等の要因により、本来守るべき免疫系が
自分の体を攻撃するようになってしまいます。(環境素因には
体内の環境、体内素因も含まれます)

 自己免疫疾患は、免疫が自分の正常な細胞や臓器を攻撃する
病気の総称になります。白血球の一種であるリンパ球のT細胞
(B細胞に指令を出す細胞)の異常が関係します。
自己免疫疾患は胸腺におけるT細胞の異常の他、精神的ストレス
による脳の炎症(脳幹部の熱のこもり)、自律神経、脾臓との
関連性もあります。


【なぜ自分を攻撃するのか】
 本来免疫は身体にとって有害な物質を攻撃し排除し体を守り
ます。ところが脳に炎症が起こり脳幹の視床下部に熱がこもる
と免疫機構に異常が起き、自分の組織を攻撃する自己免疫疾患
を引き起こします。正常な組織を異物()と認識してしまい、
異常な抗体を作り出してしまうのです。そして人体内の臓器や
組織を攻撃しはじめ炎症を生起させます。
 ウィルス等の異物が体内に侵入すると、免疫の司令塔である
T細胞が、異物を破壊する働きのあるキラーT細胞に指令を出し、
B細胞に抗体を大量に作るように命令します。ところが脳に炎症
によりニューロンネットワーク(神経細胞伝達網)が障害される
T細胞からの指令が狂い、B細胞の機能に障害が起き、異常な
抗体が作られてしまいます。正常な細胞が攻撃のターゲットに
されてしまうのです。
 またストレスにより自律神経の交感神経が優位になるとノル
アドレナリンが分泌されて白血球の一種である好中球が増加し
ます。交感神経が優位になる背景には心臓機能の弱り
(低下)
存在します。

 好中球が急激に増加し、リンパ球(白血球の一種)とのバラン
スが崩れると、好中球が自分を攻撃し始めます。好中球には
貪欲に細胞を食べる性質
(貪食)があるからです。
 自律神経が乱れ、血液成分のバランスが異常になったとき、
免疫機構が狂い、貪食の好中球が細菌等の敵だけではなく、
自身の味方の正常細胞も食べるようになってしまうのです。

 白血球のバランスを戻すには、リンパ球の比率を上げていか
なければなりません。リンパ球は副交感神経が優位な時(リラッ
クスモード時)に増えるので、そのためにはすべてのしがらみ
から逃れ、しっかり養生し休養する必要があります。人間は
ストレスに最も弱い生き物で、心に受けるストレスが肉体を
むしばんでいくからです。

【交感神経優位は心臓機能の弱りを元に戻す対応】
 自律神経の交感神経は、心臓機能が低下した時にも優位にな
ります。全力疾走の後、心拍数が早くなり汗が出ますが、この
ときは交感神経が作用しています。交感神経が優位になると
血圧が上昇し、血液を流す力が高まります。全身に速やかに
血液を巡らせるためです。逆に副交感神経が優位な時には血圧
は下がり、リラックスした状態になります。
 ストレスを受けると肝臓が充血し血液の循環、配分が乱れま
す。全身に血液を巡らせる必要性から心臓が過度に働くことで
機能低下を引き起こします。
また、心臓機能は遺伝的要因も強く、先天的に心肺機能が弱い
人は、常に交感神経を緊張させ(優位な状態)、心拍数を高め体
を昼間の活動状態にさせます。本来就寝時には副交感神経が
優位になるのですが、心肺機能が弱い人は、夜間も身体は昼間
の状態になっているため、熟睡できず慢性不眠に陥ります。
これは眠れないのではなく、眠らせないようにして、就寝時に
も心臓の拍動(ポンプ作用)、代謝等を守っている対応になりま
すので現状を受け入れ共存していく姿勢が必要です。
 人間の体は心臓機能を守ることを第一優先するために交感神
経を優位にさせていきます。しかし交感神経の緊張の持続は
白血球のバランスを乱す要因となり、自己免疫疾患のみならず
様々な病状を発生させる要因となります。
 自律神経のバランスを取り戻すためにも(交感神経と副交感
神経のバランス)十分な休養、休暇が必要です。仕事、家事、
育児、様々な業務等、人は忙しすぎると、オーバーワークで
いつかシャットダウンします。電源が落ちてしまい停止、全て
が終了となってしまうのです。

【脳の炎症はなぜ起こるのか】
 人間は精神的ストレス(プレッシャー・心労・不安・心配事・
恐怖心・いやな事やつらいこと、気になること等)を受けると
肝臓が瞬時に充血し、全身の血液の循環・配分・質に乱れが
生じます。配分の乱れから心臓より上部に位置する脳に虚血
(血液不足)が生じます。少ない血液を速やかに脳内に廻らせる
必要性から脳圧を上昇させます。この状態の持続が脳内に異常
な熱を発生させ炎症を引き起こします。
 この脳に生じる炎症は脳の中枢部である脳幹部に熱を蓄積さ
せ、基本的生命維持機構(呼吸・心拍・体温・自律神経・ホル
モン・情緒の安定等)を狂わせます。自己免疫疾患をはじめ、
病気はストレスによる脳の炎症から発症していくのです。炎症
を除去するためには後頭部冷却と首筋等の冷却が必須になります。

【脾臓は免疫器官】
 日本伝承医学では全身性エリテマトーデスをはじめ自己免疫
疾患を、免疫器官である脾臓(ひぞう)との関連性の中で捉えて
います。
 脾臓には古くなった赤血球を分解する働き、体に侵入してきた
病原菌や細菌やウィルスと闘う抗体を作る働き、新しい血液を
貯める働き、血小板の貯蔵庫としての働き等があります。また
全身のリンパ球の4分の3が脾臓に貯えられ体内で最大のリンパ
器官(二次リンパ管)と言われています。リンパ球には神経伝達
物質の受容体(アドレナリン受容体)が存在します。これが精神
作用と深く関わっていきます。
 ストレス時には交感神経が優位になり、神経伝達物質である
ノルアドレナリンが脳内で分泌され、アドレナリン受容体
(臓器、
器官の細胞表面にあるタンパクの構造物
)で受けとられます。
免疫細胞にはアドレナリン受容体(ストレスの受け皿)が最も
豊富に発現しています。つまりストレスを受けると、免疫細胞
に加わるダメージが大きくなるという事です。
 脾臓には白脾髄(はくひずい)と赤脾髄(せきひずい)があり、
構造、機能が
異なります。白脾髄は動脈周囲のリンパ鞘と
胚中心から構成され免疫器官として機能します。白血球のひとつ
であるリンパ球(B細胞、T細胞)を産出し成熟させる場所になり
ます。リンパ球は抗体(異物による侵入から守る特殊なタンパク)
を作ります。通常は感染防御のための可溶性抗体を産出します
が、脾臓が萎縮し異常事態が起きると、不適切な自己抗体が
産出されてしまいます。脾臓の萎縮、機能低下は著しい免疫力
と生命力の低下を意味するのです。
 赤脾髄は、血液をろ過することにより不要な物質を取り除き
ます。赤脾髄には細菌、真菌、ウィルス等の微生物を消化する
食細胞が含まれています(好中球やマクロファージ)
また赤脾髄は赤血球の状態を常に監視し、古くなったり正常に
機能しなくなった赤血球等を破壊し除去する役割を担っています。
赤脾髄は白血球、血小板の血液成分を貯蔵する場所でもあります。
このように脾臓は免疫器官としての役割を担う重要な臓器となり
ます。


【脾臓の肥大と萎縮】
 血液の質が低下すると脾臓に汚れた血液があふれ、血液ろ過
装置としての機能がフル稼働になるため、脾臓が腫れて炎症を
起こします(脾臓の肥大、脾腫)
脾臓は汚れた血液を集めろ過し、血液をきれいな環境にしよう
と働きます。

血液の状態が悪くなると(血液の質の低下)、脾臓の働きが活発
になり、脾臓に血球と血小板をたくさん蓄えていきます。故に
脾臓は大きく肥大していきます。血液が脾臓に集まる為、他の
部位は逆に貧血となります。
 脾臓が腫れたり肥大するのは(脾腫)このように血液の質を
守る対応になりますが、脾臓が萎縮し固くなるのは重度の状態
になります。臓器というものは、機能低下が極限までくると
萎縮し固まり、その機能を閉じようとします。所謂臓器不全の
状態です。
 精神的ストレスの長期に及ぶ持続、生活習慣の乱れ、過労心労
が重なり、血液の質の低下が極限まで達すると、脾臓の肥大も
極限まできて、対処できなくなります。次に体がとる対応は、
その臓器の機能を閉鎖するために、萎縮し固まることです(臓器
不全)。脾臓の萎縮は極限まできた最終対応と言えます。
 肝硬変も同様の機序になります。肝臓の炎症(肝炎)が長期に
及ぶことで(慢性肝炎)、肝臓の組織が線維化し固まっていきま
す。肝臓がん、肝性脳症等に命に関わる重篤な病状へ移行する
リスクが高くなります。
 肝炎や脾臓の炎症(腫れ・肥大)は初期の時点で、全ての生活
習慣を見直し、仕事を制限し、横たわる時間を多くとり、しっ
かり養生していけば改善できる症状になります。体は初期の
段階で幾重にも警告サインを発し、最後まで命を守ろうと働き
ます。警告サインを無視し続けていくと、症状は進行し重篤な
病状へと移行してしまうのです。
≪参考文献≫有本政治著:『がんをとらえ直す』

【脳の炎症が免疫機構を破綻させる】
 脳に炎症が起きると中枢部の脳幹(視床下部)からの司令が
狂い、免疫器官である脾臓と接続する神経回路に異常が起こり、
免疫機能が著しく
低下します。本来神経回路は遮断され異常が
発生すると、神経可塑性
(しんけいかそせい)を促し新たな回路
を造り、遮断された部位を補うようにできています。ところが
脳の炎症
(脳幹部の熱のこもり)により神経回路が誤った形で
接続されてしまうと、システム
(ニューロンネットワーク)
狂い非自己と自己の区別ができなくなってしまい、自分で自己
を攻撃し始めます。
 神経伝達網は脳幹の視床下部が担っています。脳に炎症が
起きると脳幹部に熱がこもり、情報が狂いニューロンネット
ワーク
(脳の神経細胞情報網)に障害が発生します。
中枢部
(司令塔)が狂うことで正常な神経可塑性が促進されなく
なる
のです。
 また視床下部は自律神経を調整しているため、この部位に熱
がこもると、自律神経のバランスが乱れホルモンバランスが
崩れます。自律神経とホルモンは互いに連動しながら働いて
いるからです。胸腺ホルモンはT細胞の機能分化促進等に不可欠
なため、脳の視床下部の炎症によるホルモン異常は免疫細胞で
あるT細胞にも大きな影響を及ぼします。
 脳の炎症を除去するためには、家庭療法としての頭部冷却が
有効になります。日本伝承医学では基本操法と肝胆叩打法で
血液の循環・配分・質を改善し、眼圧調整法、後頭骨擦過法、
自律神経調整法等により、脳内の炎症
(脳幹の熱のこもり)
除去していきます。自律神経のバランスが整うことで交感神経
の緊張
(優位な状態)がとれ、免疫機構が修復され免疫力と生命
力が高まります。免疫力とは造血力で、生命力とは細胞新生力
になります。
※詳細は「日本伝承医学の治療法」、
「家庭療法としての局所冷却法」を参照下さい。


【ストレスが自己免疫疾患を誘発させる】
 1960年代に精神的ストレスが自己免疫疾患に影響をすると
いう事実が報告され、「精神免疫学」の概念が提唱されました。
1970年代には、精神状態と免疫機能を結びつける神経科学が
加わり、「精神神経免疫学」の分野が確立されました。1980
代に入り、一次リンパ管である胸腺と骨髄、二次リンパ管で
あるリンパ節と脾臓の、両リンパ管にもアドレナリン作動性
神経が投射されていることがわかり、交感神経系による免疫系
の制御における解剖学的な根拠が明らかになりました。精神的
ストレスで自律神経の交感神経が緊張すると、免疫系が制御
され免疫力が低下するということが免疫学として立証されたの
です。

 二次リンパ管である脾臓では、アドレナリン作動性神経は
T細胞の存在する領域だけに分布し、B細胞の集まるリンパ濾胞
の内部には入り込
まないという投射パターンをとることが明ら
かになりました
。司令塔であるT細胞からB細胞へ抗体を作る
ように指令を出すため、B細胞にアドレナリン作動性神経が
伝達されないと、リンパ球が働かず減少し抗体が作れなくなり
ます(免疫力の低下)。脾臓がストレスに非常に弱い臓器である
ということが立証されたのです。
※投射とは、感覚器官、低次中枢神経よりくるそれぞれの神経
インパルス
(活動電位)を大脳皮質において空間的に別々の領域
で受容することを言います。神経投射は、ある神経細胞の集団
が軸索を伸ばして別の標的となる神経細胞の集団にシナプスを
作ることを言います。

【対処法】
 その部位だけを封じ込める薬品等の使用は、自己治癒力、
免疫力を低下させてしまうので極力避けるようにします。
ステロイド剤は皮下から血液に入り、白血球数を跳ね上げ血液
組織を乱す引き金にもなりかねます。長期に及ぶ使用は、脳内
に内熱を封じ込めるため脳圧上昇を助長させ、脳血管障害を
発症させるリスクを負うことになります。
 根底要因にある脳内の炎症は、就寝時の後頭部の冷却、首筋
のアイスバッグでの局所冷却により除去することができます。
首筋は頭蓋骨の様に骨で囲まれていないため、直接、脳への
血液を冷やす事ができるからです。冷たいきれいな血液が脳内
を巡ることで、血熱(血液の熱)がとれ、赤血球が連鎖したべと
べとでどろどろの血液の状態が改善され、炎症がおさまります。
あらゆる病状は炎症()から生じるため、病気を治すためには、
いかにこの熱を捨てていくかが命題となります。
 自己免疫疾患を発生する方に共通して言えるのは、慢性的な
水の摂取不足になります。人間は一日1.52リットルの水が
必要です。汗や排尿で毎日これだけの量が排出されているから
です。草花も水が不足すると生命力が弱まり枯れてしまいます。
人間も同様で、生命力を上げていくには毎日の水がとても重要
になります。水は常温で、一度にたくさん飲むのではなく、
少しずつ飲んでいく習慣をつけます。動物や植物にお茶や
コーヒ-はあげないように、人間にも純粋な水が大事になります。

【自己免疫疾患に対する対処法】
 日本伝承医学では骨髄機能を発現させることで、造血と細胞
新生を活発化させます。そして病気の直接的要因となり血液の
循環・配分・質を整え、脳への血流を改善し脳の炎症を除去し、
自律神経のバランスを整えます。免疫機構が正常に働くように
調整することで自己免疫疾患を改善していきます。
 家庭療法としては頭部(後頭部、ひたい、首筋等)の局所冷却
法を日課として行ないます。生活習慣(食・息・動・想・眠)
をあらためていくことも必要です。免疫力を高めるためには
特に眠(睡眠)が重要になります。病状を改善するためには、
横たわる時間をできるだけ多くとるように心がけるようにします。

≪参考文献≫ 有本政治著:「家庭療法としての局所冷却法
              「食・息・動・想・眠
                          がんを捉えなおす
              「日本伝承医学の治療法」 
  「血液検査で特定できないものは膠原病として扱われる
             「全身性エリテマトーデス
             「類天疱瘡」