股関節から大腿部の側面の痛み、痺れ、力が入らない症状の考察 
                              2016.11.15 有本政治

難治性で慢性の痛みの症状の一つとして、股関節から大腿部の側面の痛み、痺
れ(しびれ)、力が入らないという症状があります。じっと立っているだけでも痛んだり、
歩行や階段の昇降時に症状が出ます。股関節から大腿部の側面は、東洋医学
では胆経と呼んでおり、内臓の胆嚢と脾臓の反応場所となります。つまりこの部位
に痛みや痺れが出るということは、胆嚢、脾臓に弱りがみられるということになり
ます。

この症状の特性は、症状が強い時と比較的楽な時と日によって症状の出方が違う
という点になります。これは患部の毛細血管の詰まり方によって左右されます。流
れる血液の赤血球の連鎖状態が、日や時間、体調によって異なるからです。故に
筋肉や関節という整形外科的な問題ではなく、血液の”病気”として捉える必要が
あるのです。

現代医学的には”リウマチ性疾患”の範疇に入ると考えられています。リウマチ性
疾患は膠原病の一種としても扱われていますが、いずれもはっきりとした原因が
わからないのが現状になります。また偽痛風や偽リウマチとしても扱われますが、
これもはっきりとした原因が判明していません。

現代医学の処置は、原因不明であっても、なんらかの病名が付せられ、症状を封
じ込める処置が施されます。特に抗炎症作用に優れたステロイド剤が使用され、
一時的に症状が封じ込められますが、服用を止めればさらに進行した状態での
再発を繰り返します。またステロイド剤の長期の服用による副作用は、体の免疫
力を著しく低下させ、各種の感染症に罹患する確率が高まります。痛みを封じ込
めている間に命に関わる重篤な疾患に移行してしまう場合が多々あるということ
です。この疾患を日本伝承医学的に考察し、その本質を解明し対処法を解説して
いきます。

 <リウマチ性疾患だが、血液検査で特定できないものは
   膠原病として扱われる>

膠原病(こうげんびょう)という病気は、極めて広範囲な症状をもち、いまだはっきり
とした原因が究明されていません。リウマチという病気は血液検査によって、何種
類かのある特定の因子の数値の異常がまず診断の決め手になり、X線検査、関
節や筋肉の腫れや痛みの状況もみて、総合的に判定されます。

これらの判定基準に合致しないものは、リウマチ性疾患として扱われ、リウマチと
極めて近い症状でありながら、病名が特定できず”膠原病”として扱われる事が
多いのが現状です。あるいは難病の全身性エリテマトーデス、繊維筋痛症、慢性
疲労性症候群等の病名が付される場合もあります。これらの症状は封じ込める処
置をしてしまうと、重篤な状態に移行する危険があるということをまず認識して頂き
たいと思います。

 <病名が確定できなくても、この疾患の本質は、
   全身の血液の質の低下が原因である>

日本伝承医学の疾病観と病因論は、全ての病気や症状の根元には、遺伝的な体
質をベースにしたその人自身の生命力と免疫力の低下が存在し、直接的には全
身の血液の循環・配分・質の乱れが原因であるという理論になります。

今回考察している股関節から大腿部の側面の痛み、痺れ、力が入らない等の症状
も当然上記の病因論があてはまります。その中でも特にリウマチ性疾患の場合は、
血液の質の乱れが大きい時に発症します。漢方医学的には”瘀血”(おけつ)、つまり
古血、非生理的血液の増加と停滞症状を指します。

 <血液の質が低下すると生命力が落ちて、体の免疫機構を破壊する>

私たちの体の生理機能を直接的に動かしているのは血液になります。血液が命
の源である事は間違いありません。その血液の成分が正常ではなく、質が悪く
なるという事は、当然重大な生理失調や異変を生起させることになります。

血液成分は赤血球、白血球、血小板等で構成されています。赤血球は血液中の
血球成分の約98%を占め、生命物質として不可欠な酸素を血中にヘモグロビンとし
て溶け込ませ、また生命維持に欠かせない栄養素を体のあらゆる組織器官に送
り届け、生命を維持しています。この赤血球の質が正常でないと、全身の組織器官
の生理機能に異常を生起します。特に遺伝的に弱い箇所から症状を引き起こして
いきます。そしてこの状態の持続は、病気の根本原因となり、我々の生命力や免
疫力を徐々に低下させる最大要因となるのです。

血小板は血液を固まりやすくさせる成分で、血管を修復したり、怪我をした時のか
さぶたとなります。故に血小板の数や質の低下は、出血を止められなくなったり、
病気の治癒を遅らせる大きな要因となるのです。

血液成分の白血球は、私たちの体の免疫物質として生命維持に重大な役割を果
たしています。これが正常に機能しないと、我々は外部からの細菌やウイルスに
すぐに侵され、様々な病気を引き起こします。
白血球は免疫の主役で、大きく分けて顆粒球、リンパ球、マクロファージ(白血球
の基礎細胞)に分類されます。顆粒球は細菌などのサイズが大きな異物を食べて
処理し、リンパ球はウイルスやガン細胞といったサイズの小さな異物にくっ付いて
処理します。マクロファージ(白血球の基礎細胞)は処理した異物と顆粒球やリン
パ球の死骸を処理する働きを担っています。

この白血球の質と数、顆粒球とリンパ球の割合が崩れるという事は、体の免疫機
構の破壊を意味しています。リウマチ性疾患の中の「自己免疫疾患=関節リウマ
チ等」と言われるものは、自己と非自己の区別ができなくなり、本来の免疫作用と
しての貪食作用を細菌やウイルスに向けるのではなく、自己の正常細胞に向け自
己破壊を起こします。これらの根本原因は血液(赤血球、白血球、血小板)の質の
低下に起因しているのです。これに歯止めをかけ、回復に向かわせるためには、
根本にある血液の質を元に戻すことが命題になります。

 <血液の質の乱れは何に起因するか>

血液の質の乱れに関与するのは、内臓の肝臓(胆嚢を含む)、脾臓、腎臓になり
ます。肝臓は血液の造成に関わり、胆汁を生成します。脾臓は古くなった赤血球
を分解する器官であり、腎臓は血液の、ろ過再生装置です。その中でも胆嚢から
の胆汁の分泌と脾臓の赤血球の分解作用の乱れが、血液の質の低下に大きく
関わっています。

胆嚢から分泌される胆汁の作用は、食べ物の成分の脂肪の分解吸収を助ける
のが主たる作用とされていますが、実は体内の”漢方薬”(苦寒薬)としての働きが
付与されているのです。それは胆汁の苦い成分が、体内の炎症を鎮め、血液の
温度を下げて熱を帯びさせないようにしているのです。つまり胆汁は体内において
漢方薬の薬理作用と同じ役割を果たしているのです。

故に胆汁の分泌が不足すると、血液が熱を帯び、その熱変性によって、血液成分
の赤血球同士がくっ付いたり、変形してしまいます。連鎖したり変形した赤血球は
本来の働きを失うことになり、血液の質の低下を生起するのです。これは当然赤
血球のみならず白血球や血小板の質を低下させる最大の要因となります。

人体内の全ての組織器官、血液、全細胞の機能を奪う最大の因子が血液の”熱変
性”に端を発しているのです。故に体の漢方薬(苦寒薬)の役割を担う胆汁の分泌は
生命維持、病気予防に大きな役割を果たしているのです。

また脾臓の機能低下は、古くなった赤血球の分解作用が低下する事で、分解さ
れない古い赤血球を体内に還流される事になり、これも血液の質を低下させる大
きな要因となります。

赤血球の変形と連鎖、分解されない古い血液の増加は、血液の、ろ過再生装置で
ある腎臓に負担をかけ、次第に腎臓の機能低下を引き起こします。腎臓の、ろ過
再生が十分に機能しないという事は、毒素や不純物を含んだ血液が増える事を意
味し、血液の質の低下をさらに進行させてしまうのです。
以上が血液の質の低下を生み出す機序になります。

 <血液の質の低下の発端は肝臓の機能低下から始まり、胆嚢に波及する>

血液の質の低下に関わる臓器は肝臓、胆嚢、脾臓、腎臓となりますが、その発端
となるのは肝臓と胆嚢になります。肝臓と胆嚢は「肝胆相照らす(かんたんあいて
らす)」の格言通り、表裏一体の臓器です。肝臓が弱れば胆嚢も機能低下をきた
すということです。

事実胆嚢は肝臓に内包されるように存在し、肝臓で作られる胆汁を胆嚢という袋
に集め、濃縮して極めて苦い物質に変えて分泌しています。胆汁の1日の分泌量
は想像以上に多く、その量は約500mlから1000ml位になります(個人差があります)。

人体中の血液量は体重の13分の1位と言われ、平均的には4から5㍑位です。こ
の血液量に比較してみると胆汁の分泌量の多さがわかるかと思います。この胆汁
の働きにより、血液の熱を冷まし、熱変性による血液の質の低下を抑えているの
です。

肝臓という臓器は、精神的な影響を一番受けやすい臓器になります。所謂精神的
なストレスの持続は、肝臓の機能を低下させる最大要因であります。
脳内で使われる神経伝達物質や脳内ホルモンの多くは、肝臓で作られ、また分解
されるという行程をもっています。精神的なストレスの持続は常に脳を覚醒興奮
させ、脳内の神経伝達物質や脳内ホルモンを大量に消費します。この状態の持
続が肝臓に負担をかけ、肝臓の機能低下を引き起こすのです。

肝臓の機能低下は、その大きな働きの中の胆汁の生成力を落とします。これが
表裏の関係にある胆嚢の機能低下も同時に引き起こす事になるのです。胆嚢の
機能低下を元に戻すための体の対応は、胆嚢に軽い炎症を起こす事で機能回復
を図ります。これは一時的に胆嚢に腫れと熱、充血をもたらします。胆嚢という袋
が腫れることで、袋の収縮が制限を受け、胆汁の噴出が十分にできなくなるので
す。これが胆汁の生成不足と相まって、胆汁の分泌不足を引き起こすのです。

<胆汁の分泌不足による血液の熱変性で発生する血液成分の連鎖と形の
  変形は、脾臓の赤血球分解作用を低下させる>

脾臓の機能を低下させる最大の要因は、胆汁の分泌不足による赤血球の連鎖(ド
ロドロでベタベタな血液状態)と変形にあります。通常の大きさや形でない赤血球を
分解し続ける事で、脾臓は大きな負担が生じ、その持続が脾臓の機能を低下させ
ます。脾臓の機能低下は益々赤血球の分解作用を落とし”古血”(瘀血=非生理的
血液)が体内を巡り、全身の血液の質を低下させるのです。

この二つの融合は、既に解説した様に腎臓の、ろ過再生機能に負担をかけ、慢性
的に腎臓の機能を低下させていきます。ろ過再生されない毒素や不純物を含んだ
血液が体内を循環し血液組織を破壊していきます。

<血液組織の破壊を元に戻し、股関節から大腿の側面の症状をとるには
 どうすべきか>

既に赤血球、白血球、血小板の働きは解説してあります。特に白血球のもつ免
疫作用の低下が今回のテーマとなるリウマチ性疾患の最大要因です。白血球の
質と数を元に戻すためには、赤血球や血小板を含めた血液全体の質を元に戻す
事が必要です。血液の質の低下の根拠と機序は明らかになっています。

既に解説した様に、その発端と本態は肝臓と胆嚢にあります。肝臓の機能低下
の原因となる精神的ストレスの持続はすぐに解決する問題ではありませんが、影
響を最小限に止め歯止めをかける事は可能です。血液の質を元に戻すためには
低下した肝臓と胆嚢の機能を回復させる事が不可欠になります。特に胆汁の分
泌を正常にする事が命題になります。この改善なくして症状の軽減ははかれません。

<胆嚢と脾臓(東洋医学では別名”左肝”と呼ぶ)の機能低下の反応は、体の側
 面の筋肉の引きつりを起こす>

胆嚢と脾臓の症状の特徴は、体の側面の筋肉の引きつりや痛みとして表われます。
股関節から大腿部の側面の痛み、痺れ、力の入らないという症状は、まさに胆嚢
と脾臓の機能低下が筋肉や骨へ現われる場所になります。右側の症状は、体の
右の側面(右脇腹)に位置する胆嚢の反応で、左側は体の左側面(左脇腹)に位置
する脾臓の反応になります。

右に出る症状は、体の右脇腹部(下部肋骨で乳頭直下部)に位置する胆嚢を、体
ごと絞り込み、腫れて収縮できなくなった胆嚢の袋の収縮を助ける対応姿勢にな
ります。この胆嚢の絞り込み姿勢は、体ごと全体で行なうために、体の側面を全
体的に引きつらせる事になります。この体の筋肉の引きつりが股関節の側面から
大腿部側面の筋肉に収縮を起こすのです。

左に出る症状は、別名”左肝”と呼ばれる脾臓の機能を守るための絞り込み姿勢
になります。これも胆嚢と同様の機序で体の左側面の筋肉を引きつらせ、左股
関節の側面から大腿部側面の筋肉を収縮させ、いわゆる”こり”の状態を作り出
すのです。

<股関節の側面から大腿部側面の筋肉の”こり”の状態に、患部の毛細血管の
 詰まりと熱の発生が加わることで慢性の嫌な痛み、痺れ、力の抜けが起きる>

患部にこりの状態があるだけでも、筋肉の引きつり感や違和感、疼痛、運動時の
重さ等が発生します。これに血液の質の低下による赤血球の連鎖と変形、毛細
血管の詰まりや停滞から発生する”熱”の発生が加わる事で、さらに嫌な熱感、疼
痛感、重さ、しびれ感、力が入らない等の症状が起きるのです。

患部に慢性炎症と血液の循環・配分・質の乱れの全てが起こっているのです。こ
れが患部の免疫機構に破綻を生起し、白血球のもつ貪食作用や処理作用を自己
の正常細胞に向けるという自己免疫疾患を発生させる最大要因となるのです。

<どう対処すべきか>

まず低下した自身の生命力や免疫力を高め、全身の血液の循環・配分・質の乱れ
を回復させることが不可欠です。そのためには骨髄機能を発現させて、細胞新生
と造血(新鮮な赤血球、白血球、血小板)を活発にし、血液の循環・配分・質に関与
する肝心要となる肝臓(胆嚢を含む)と心臓の機能を改善する事が必要です。
特に胆汁の分泌を正常に服す事が血液の質を元に戻すための大命題となります。
これらの全てを効率的に最適に行なえるのが日本伝承医学の治療になります(詳
細はHP、院長の日記の治療法の項を参照)。

ただし、この疾患は、長い時間の経過の中から血液の質を低下させたことが最大
の要因です。この破壊された血液組織を元に戻すのは容易なことではありません。
徹底した家庭療法(頭と肝胆部の氷冷却法の徹底-固定ベルトで固定して長時間
の冷却が必要)と生活習慣の改善を含めた自己努力が要求されます。特に肝胆
の機能を元に戻すために極力油っこい食事を控え、横たわる時間をできるだけ長く
とることが必要です。肝胆の機能を元にもどすためには、肝胆に血液が集まること
が必須です。血液の集まり方は、体を横たえた場合を10としたら、座位は6、立位
は4といわれています。つまり、横たわる時間をできるだけ長くとることが絶対必要
条件になります。他力本願では、決して改善しないことを肝に銘じなくてはなりませ
ん。以上の方法を根気よく続けていく事が回復への対策になります。