貧血の話
 貧血は食事の質とライフスタイルが大きく関与します。昨今
は仕事上どうしても外食が多くなったり既製品やファーストフ
ード、御惣菜等で食事を済ませることが多くなっています。
こうした食生活は血液を造るための鉄分やビタミンB12や葉酸
等が不足しがちになります。貧血になると免疫力が低下して病
気になりやすく、病気になったときに治りにくくなります。
 血液検査をしたときにはRBCの項目をみていきます。これは
血液中の赤血球の数になります。L(low)と記され場合は赤血球
が少なく貧血を意味します。
赤血球は骨の中にある骨髄で作られ、体中に酸素を運び二酸化
炭素を回収する重要な細胞です。赤血球を造る力を「造血力
(ぞうけつりょく)」と言います。赤血球が低下することは造
血力の低下を表します。
 造血力が低下すると骨髄で十分な赤血球が造れなくなるので
RBCの数は減少します。Low(低い)になると脳や体の隅々まで
酸素が行きわたらず息苦しさやめまい、だるさ、疲れやすさ、
立ちくらみ、集中力、記憶力の低下等が起こります。免疫細胞
の働きも弱まるのでウィルスや細菌に感染しやすくなります。
 また造血力の低下(赤血球数の低下)はひどくなると呼吸困難、
動悸、胸痛等を発症する場合もあります。心臓にも負担がかか
るので心不全等の合併症を引き起こすこともあります。このよ
うに貧血は大事に至ることがあります。
【赤血球が低下するとなぜ心臓に負担がかかるのか】
 赤血球が減ると脳や各臓器に酸素不足が生じ、体はそれを補
うために心臓をより強く働かせようとします。少ない赤血球で
酸素を全身に速く送り込もうとするため、心臓が過剰に働き
多大な負担がかかってきます。そのため動悸やめまい、息切れ、
息苦しさ、呼吸困難等の症状が発生します。
【造血力低下(貧血)をみる項目】
 造血力の低下(貧血)RBCの数値だけでみるのではなくHb
(
ヘモグロビン)Ht(ヘマトクリット)、MCV(平均赤血球)、
MCH(平均赤血球ヘモグロビン量)MCHC(平均赤血球ヘモグロ
ビン濃度)の数値で合わせてみていきます。
Hb(ヘモグロビン)・・・血液中に含まれる酸素を運ぶため
のたんぱく質です。
赤血球が正常でもHbが低ければ貧血とな
ります。ヘモグロビンは貧血をみる時の重要項目になります。

Ht(ヘマトクリット)・・・血液中にしめる赤血球の割合に
なります。数値が高くなると血液がどろどろになり粘度が増し
血液の流れが悪くなります。
●MCV(平均赤血球容積)・・赤血球1個あたりの平均的体積を
表します。赤血球が大きくなりすぎて数値が上がると酸素がう
まく運べなくなります。血流障害を起こし脳梗塞や心筋梗塞を
発症させるリスクが高くなります。

MCH(平均赤血球ヘモグロビン量)・・1個の赤血球に含まれ
Hbの平均量になります。低いと酸素運搬能力が低下するので
息苦しさが出ます。
MCHC(平均赤血球ヘモグロビン濃度)・・赤血球の中のHb
濃さを表します。低いと赤血球が薄く酸素を効率よく運べない
ということになります。
※このように貧血は赤血球の数だけではなく、赤血球ひとつ
ひとつのヘモグロビンの量や濃さも合わせて確認することが
大切です。貧血は気づきにくく軽視されやすい病状ですが、
だるさや疲れやすさが出たら要注意です。
【貧血とストレスの関わり】
 貧血とストレスには関連があります。ストレスは血液を造る
力を低下させるからです。
 ストレスが続くと自律神経の交感神経が優位に立つので胃腸
の働きが弱くなります。胃腸は副交感神経の働きによって活動
するため、交感神経が強くなってしまうと、胃腸の運動や消化
液の分泌が抑制されるため胃腸の血流は減少し機能低下してい
きます。
 胃腸の働きが低下すると食べ物から摂取した鉄分がうまく吸
収されなくなり体は鉄不足になります。鉄は赤血球中のヘモグ
ロビン(Hb)を造る材料なので、鉄不足になるとヘモグロビンを
含んだ赤血球を十分に造れないので貧血になってしまうのです。
【貧血の種類】
 貧血には種類があり、鉄不足で起こるもの、赤血球の作られ
方に問題があるもの、慢性的な病気が原因で起こるもの等があ
ります。
●鉄欠乏性貧血・・・鉄分の不足によって生じる貧血
●巨赤芽(きょせきが)球性貧血・・ビタミンB12や葉酸不足に
よる貧血
赤血球が正常に成熟できなくなり、形や大きさが
異常な赤血球になってしまう。
●出血性貧血・・・事故や手術、過多月経、胃潰瘍等による出血
で生じる貧血
●再生不良性貧血・・骨髄の働きの低下で赤血球が造られなく
なり起こる貧血
●二次性貧血・・・炎症性の病気や腎臓病から起因する貧血
【貧血を改善するための食物】
 大豆製品(納豆・豆腐等)、緑黄色野菜(小松菜・ほうれん草
にんじん・かぼちゃ・ブロッコリー等)、魚、貝類、レバー等
の鉄分を多く含む食材をとり入れることです。鉄分は体に貯め
ることができないため、毎日適量をとることが大事です。
錠剤は胃粘膜を刺激するので極力食材からとるようにします。
栄養素は体内で相互に作用して働くので栄養は食事からとる方
が体には良いのです。
【貧血は軽視してはいけない】
 貧血は単なる疲れや体調不良、栄養不足と思われがちですが、
体からの深刻な警告サインなのであなどってはいけません。
貧血は血液中の赤血球やヘモグロビンが不足しているため、
体内の細胞や組織に十分な酸素が届かなくなる非常事態と言え
ます。
 貧血は鉄分不足だけでなくビタミンB12や葉酸(ようさん)
不足でもあります。ビタミンB12が不足すると赤血球が正常に
成熟できなくなり、大きく不完全な赤血球(巨赤芽球)になり
ます。巨大化すると酸素を運ぶ能力が低下します。大きくなる
と赤血球同士がくっついて血液がドロドロでべたべたになり
ます。
ビタミンB12は神経を維持するために必要な栄養素なの
で、ビタミンB12が不足すると神経細胞が損傷され手足のしび
れや刺すような痛み等の神経障害が生じやすくなります。神経
の働きに関与する栄養源なので、肩やひじ、ひざや股関節の
痛みの発生はビタミンB12不足が起因している場合もあります。
またビタミンB12は脳細胞とも関わるので記憶障害、集中力の
低下、不安感、情緒不安等になりやすくなります。ビタミンB12
を含む食材はレバー、魚介類、卵等になります。
 葉酸(ビタミンB9)も不足すると赤血球が正常に形成されなく
なり巨赤芽球貧血を引き起こす要因となります。葉酸はDNA合成、
細胞分裂や細胞の修復、血液細胞の再生等に欠かせない栄養素
になります。そのため葉酸が不足すると染色体の不安定化を
引き起こしやすくなります。染色体が不安定になるとがん細胞
が性質を変え、周囲の組織に入り込んだり転移しやすい環境を
作ります。
葉酸を含む食材には緑黄色野菜(小松菜・ほうれん
草・ブロッコリー・春菊・かぼちゃ等)、海藻類(のり・わかめ
ひじき等)、大豆類(納豆・豆腐等)等があります。

()何事もとりすぎは良くありません。適量を毎日食するよう
にします。
 私たちの体は食べた物で造られます。食生活はとても大事で、
貧血がいかに体に良くないことかを知ることから始めます。
血液検査表の細かい説明は病院ではなかなか受けることができ
ませんが当院では毎回血液検査表を持参して頂き説明するよう
にしています。
 日本伝承医学では30年に及ぶ血液検査のデータから治療効果
を実証しています。造血力と細胞新生力を高めることができる
治療法だからです。がんが寛解した、副作用が出なくなった、
転移しない等多くの声が聞かれますがこのような方々は受診す
るだけではなく各人も食生活をはじめ、「食・息・動・想・眠」
に気をつけて生活されています。病状を改善するために生活
習慣の見直しはとても大事なことです。
【日本伝承医学の治療は造血力を高める】
 日本伝承医学の治療は骨にゆり・ふり・たたきの圧を加え、
骨髄機能を発現し造血力の細胞新生力を高めていく治療法に
なります。造血力は免疫力を示し  細胞新生力は生命力を
示します。故に日本伝承医学は免疫力と生命力を高めていか
なる病状も改善に向かわせることができるのです。
≪参考文献≫ 「食・息・動・想・眠」 著:有本政治
       「血液検査表の見方
       「食生活が健康の基本
       「正しい食の話~食・息・動・想・眠の食
       「マスチゲンの効能
       「薬と食事の話