日本伝承医学の更年期障害の治療
 

日本人の平均閉経年齢は50歳前後とされていますが、閉経の
時期にはかなりの個人差があります。一般的には閉経の前後
5年間の計10年間を更年期と言います。この時期にも個人差が
あり、10年位前から症状が現われる場合もあります。52歳で
閉経を迎えるとすると42歳位から更年期が始まり心身に不調
が生じるということです。
 更年期に様々な影響を及ぼす女性ホルモンのエストロゲン
(
卵胞ホルモン)40歳頃からが徐々に減少します。エストロ
ゲンには妊娠、出産、骨や血管を丈夫にする、コレステロール
を調整する、記憶力や集中力を保つ、情緒を安定させる働き等
があります。更年期に情緒不安になったり、血管や骨がもろく
なるのは、女性ホルモンの減少からも起因しているということ
です。

 このエストロゲンは脳の脳幹部(視床下部)から脳下垂体へ
指令が伝わることで卵巣から分泌されます。自律神経も視床下
部で調整されるため、女性ホルモンと自律神経には密接な関わ
りがあります。
 閉経の兆候は、生理の周期が23日位早くなったり、遅く
なったりします。始めは1日~2日程度の乱れなのであまり気に
ならないのですが、生理の周期に乱れが出始めたら閉経のサイ
ンだと思って下さい。間隔が23か月あいたり、半年から1
近くあいてまた出血が始まる場合もあります。終わり方にも
個人差があります。
 更年期障害の背景には、遺伝的な心肺機能(心臓と肺の機能)
の弱さがあります。心肺機能が弱いと脳へ血液を充分にめぐら
せることができずに、脳に虚血(血液不足)が生じやすくなり
ます。脳の虚血は、脳幹部でコントロールされる自律神経の
働きを大きく乱すことになります。自律神経は、心拍、呼吸、
血圧、体温、消化、代謝、排泄等を司っている為、更年期には、
これらの生理機能が大きく乱れる事になります。
 日本伝承医学では、心肺機能を高め、血液の循環・配分・質
を整えることを目的として学技が構築されています。脳への
血液の循環を正常に復することで、自律神経のバランスを整え、
症状を緩和していきます。免疫の要である白血球の寿命は
2週間とされています。免疫力を高めるためには2週間に一度
のペースでの受診が理にかなっている所以になります。また
家庭療法としての氷枕での後頭部の冷却、アイスバッグでの
首筋とひたい等の冷却が脳の虚血と脳温(脳内温度)の上昇を
防ぐ為に重要になります。脳温が高くなると脳の中枢部の機能
が正常に働かなくなりあらゆる不調を引き起こします。
日本伝承医学では家庭療法として就寝時の氷枕での冷却を必須
としています。
【更年期に現われやすい症状】
ホットフラッシュ、発汗、動悸、息切れ、頭痛、嘔吐、心臓機
能の低下、舌痛、口内炎、腟痛、腟付近の潰瘍、腟の乾き、
尿失禁、多尿症、便秘・下痢、不正出血、貧血、関節痛、肩痛、
背部痛、臍痛、のぼせ、ほてり、手足末端の冷え、肌荒れ、
皮膚機能の低下、不眠症、めまい、耳鳴り、耳閉感、視力低下、
目の奥の痛み、もの忘れ、記憶障害、だるさ、疲労感、
異常食欲、肝臓機能の低下、体臭、口臭、情緒不安(不安感、
うつ症状、無気力、おこりっぽい、イライラ、すぐ悲しくなる、
集中力欠如、神経過敏症)

※女性は生理が終わる前後1015年もの間、ホルモンと自律
神経のバランスが乱れるためこのような様々な症状を発症させ
ていきます。長い年月をかけて初潮を迎えるように、閉経も
長い歳月をかけて体が準備をしていくのです。日本伝承医学は
特に婦人科には著効を示します。症状の根本原因である心臓、
肝臓(胆のう)機能を高めながら症状改善に努めていきます。
 ≪参考文献≫有本政治著:『日本伝承医学婦人科編


 症状は全て命を守る為の対応として起きています。故に薬等
で封じ込めるのではなく、共存していく姿勢が大事です。
 不眠症や眠りの質の低下は、心臓機能(心臓の拍動)を守る
ために故意に交感神経を緊張させて昼間と同じ体の状態にして
眠らせない様にしています。これを誘眠剤等の使用で眠って
しまうと、心臓機能を大きく低下させてしまうことになります。
 口内炎は心臓にこもった熱を排出させる手段として、口内や
舌に穴をあけています。漢方医学では「心は舌(ぜつ)に開きょう
する」とされ、口内や舌に出る症状は心臓の反応とされています。
更年期には口内、舌、舌の横や裏側、喉の奥と、ありとあら
ゆる個所に口内炎ができていきます。ひとつ治ると別の個所に
でき、次から次へと同時に何個も穴を開けていきます(710個位)
口内炎は閉経前後の期間を含め10年~15年近く共存しなければ
ならない為、かなりの苦痛を伴いますが、心臓機能を守る為に
起きている症状ということを再認識し、敵視するのではなく
共存共生していくことが必要です。
 口内炎を副腎皮質ホルモン等の塗り薬で封じ込めてしまうと、
身体は熱の排出先を失い、深部に熱をこもらせていきます。
封鎖された穴は固いしこりとなり、舌がんや咽頭がん、口腔底
がん等を発症させるリスクを負います。

 情緒不安(精神不安)を、安定剤等で鎮めてしまうと、体は
自己治癒力を失い、自分で精神を調整する力をなくし、薬剤依
存症へと移行してしまいます。
 40歳から50歳代にかけて長く続く女性の更年期は、誰もが
乗り越えていかなければならない宿命のようなものです。出て
いる症状だけを除去し封じ込めるのではなく、更年期障害の
根拠と機序、背景を理解、認識し共存共生していくことが大事
です。
 ≪参考文献≫ 有本政治著:「更年期障害を捉え直すⅠ
             「更年期障害を捉え直すⅡ
             「更年期障害の対処と方法
         「更年期障害のホットフラッシュの本質
            「家庭療法としての局所冷却法

※参考文献の詳細は日本伝承医学の公式ホームページから
  ご覧頂けます。