歯ぎしりと歯のくいしばり
歯ぎしりとは無意識のうちに歯を強くかみしめたり、上下の
歯を左右にこすり合わせたり、上下の歯をカチカチと小刻みに
かみ合わせたりすることを言います。歯ぎしりは睡眠中に起こ
りますが、歯の食いしばりは日中でも起こります。歯ぎしりや
歯をくいしばったりする行為をプラキシズムと言います。プラ
キシズムは脳圧を抜く対応として起こる不随意運動になります。
自分ではわかりにくく、歯のすり減りやひび割れ、歯茎の痛み、
顎(あご)の痛みや口のあけにくさ等で歯科医師から歯ぎしりを
していると言われたり、就寝時にギリギリする音で家族から指
摘されて気づく場合がほとんどです。ストレスや交感神経の緊
張により、眠りの質が低下しているときに起きやすくなります。
※不随意運動(ふずいいうんどう)とは自分の意思とは無関係に
起こってしまう体の動きのことを指します。止めようと思って
も止められなかったり、気づかないうちに起こるのが特徴です。
【歯ぎしりは止めてはいけない】
頭蓋骨はひとつの骨のかたまりではなく、24枚の骨が合わさ
って形成されています(耳小骨を入れると30枚)。脳脊髄液の循
環によってこの頭蓋骨は微細な動きをしています(頭蓋呼吸)。
頭蓋呼吸と言われるこの微細な動きは頭蓋骨の縫合や顔面骨、
顎の関節(下顎骨・側頭骨の顎関節)によって支えられています。
歯ぎしりをすることで下顎骨は前後・左右・回転方向に微細
に動きますが、下顎骨が動くことで側頭骨や頭蓋縫合にわずか
な力が加わります。このわずかな力が頭蓋骨の微細な動き(呼吸
のリズム)を助けます。マウスピースを装着するとこの微細な動
きが阻害されてしまいます。
マウスピースは上下の歯をかみ合わせないようにするので、
下顎の微細な動きを抑制します。そのため顎から頭蓋骨に伝わ
る力や振動が抑えられ、脳内に微弱な電気が発生しにくくなり、
神経伝達がうまくいかなくなります。
※神経細胞(ニューロン)は膜電位の変化によって情報を伝え
ます。ここでの微弱な電気とはニューロン間のシナプス電位や
脳波のリズムを指します。
マウスピースの使用は頭痛や吐き気、めまい等を起こす場合が
あるので過労や心労、ストレス等で交感神経が緊張している方
の使用はお勧めできません。
【顎関節は重要で複雑な関節】
顎関節(がくかんせつ)は、顎(あご)のちょうつがいと言われ、
下あごと頭の骨(側頭骨)をつないでいます。口の開閉、前後、
左右の動きを担うとても複雑な関節になります。ひとつの関節
で回転運動(蝶番運動)と平行移動(滑走運動)の2種類の運動を
行なうのです。
顎関節は食事、会話、あくび、寝言、いびき、無意識の食い
しばりや歯はぎしり等、起きている時だけではなく寝ている時
にも使われています。頸椎(首)の関節、脊椎の椎間関節(背骨
の関節)、足(足首)関節、手首の関節等、他にも就寝時に使わ
れる関節はありますが、長時間に及び、高頻度で無意識に一日
中使われている関節は珍しく、顎関節だけになります。それだ
け顎関節は複雑な構造になっているのでマウスピースによる数
ミリの厚みでも、影響が及ぶ場合があります。
【マウスピースの使用でなぜ頭痛や吐き気が起きるのか】
マウスピースを用いると上下のかみ合わせがわずかに変わり
ます。その結果、下顎骨の位置が微妙に変わり顎周辺の筋肉が
過緊張になります。過緊張は頭や首、肩の筋肉に連鎖するので
頭痛や首痛、肩こり等が生じやすくなります。
顎や顔には三叉神経(さんさしんけい)が通っているのでマウ
スピースにより下顎の位置が微妙にずれると三叉神経が刺激さ
れ、頭痛や吐き気、めまいが起きることがあります。マウスピ
ースは歯や顎を守るために奨められていますが違和感があった
ときは止めるようにします。
【日本伝承医学の治療】
日本伝承医学では自律神経調整法と後頭骨擦過法によって交
感神経の緊張をとります。交感神経の緊張がとれて自律神経が
整えば、歯ぎしりや歯の食いしばりはなくなっていきます。
交感神経が緊張しているときは脳内に炎症が生じているので
就寝時の氷枕での頭部冷却は日課として毎日行なうようにします。
【西洋医学と東洋医学の異なる視点】
西洋医学と東洋医学では体の捉え方が異なります。西洋医学
では負担や損傷が起きているその部位だけを治すことを主体と
していますが東洋医学では、患部だけをみるのではなく、根本
的な要因となる内臓の働きや自律神経の乱れ等から見直し、改
善していく治療法を行なっていきます。
日本伝承医学は東洋医学の分野になります。症状や病状をその
部位だけでみるのではなく、精神状態や内臓との全体の関連の
中で捉えていきます。症状や病状を負の対応ではなく、最後ま
で生命を守るための正の対応として捉えていくのが日本伝承医
学の本質となります。西洋医学とは体に対する捉え方の視点が
異なるため、どちらが正しいとか正しくないという判断ではな
く、自分自身が納得する選択眼で歩まれればよいかと思います。
【頭蓋骨疲労】
頭蓋骨疲労とは頭を使いすぎることで脳が疲弊し頭蓋骨の縫
合部が微妙に広がり、本来の機能から逸脱することを言います。
過度なストレスや精神的心労の持続により、頭蓋骨の微妙な動
きが制限されたり、ゆがみが生じたりすると脳機能や自律神経
のバランスが乱れます。マウスピ-スも頭蓋骨にストレスを与
える要因になることがあるので使用は自身の体調を鑑み慎重に
します。
赤ちゃんの頭蓋骨は、脳が急速に成長するため大泉門(だいせ
んもん)というまだ骨が結合していない柔らかい部分があります。
生後2~3か月から1歳半位の間には閉じていきますがかなり個
人差があります。
大人の頭蓋骨も完全に閉じているのではなく呼吸に合わせて
縫合部が微細に開閉しています。頭蓋骨がポンプのように膨張
と収縮を繰り返すことで脳脊髄液の循環を助けているのです。
脳室で産生された脳脊髄液は脳の表面を満たすくも膜下腔へ流
れ、頭蓋骨の内側から脊柱管内を通り、仙骨、尾骨まで行き、
還流しています。
頭蓋骨疲労を起こすと、この脳脊髄液の還流に支障をきたし、
頭蓋内の圧力が高まります。脳や脊髄の神経は脳脊髄液によっ
て保護されているので神経伝達が乱れて様々な不調が生じます。
自律神経が乱れるので眠れなくなったり、頭痛やめまい、吐き
気、動悸、息苦しさ、疲労感、情緒不安等を生じる場合があり
ます。
頭蓋骨疲労は背景に、心労やストレス、目の酷使、眼精疲労、
過労等による脳疲労が存在します。脳疲労の時には日本伝承医
学が推奨している「食・息・動・想・眠」の生活習慣に気をつ
けて過ごすようにします。水が不足すると体液(血液・リンパ液・
組織液・脳脊髄液等)の循環が悪くなり頭部に老廃物がたまり
やすくなるので一日1.5~2リットルの水の摂取を目標とします。
横たわる時間が少ないと体が重力から解放されず各臓器を十分
に休めることができません。眠れなくても横になる時間を増や
すことを最優先とします。
≪参考文献≫ 「食・息・動・想・眠」 著:有本政治
「歯痛」
「顎関節症」
「脳疲労」
「疲労物質」