歯痛、歯茎の腫れをむやみに処置したり、薬で封じ込めると
脳血管障害の危険を伴う
 
2017.5.5. 有本政治


歯痛や歯茎の腫れが出ると、痛みで苦しみ、1分1秒でも早く痛みから解放され
たいと願うものです。虫歯が進行し、大きな穴が開き神経を刺激する痛みは、外
科的な処置が必要な場合もありますが、免疫力が低下して体が弱っている時は
処置してはいけません。虫歯や、歯の根が化膿したり腫れたりする痛みは、単純
に歯だけの問題だけではなく、免疫力、生命力の低下と、脳との関連があるのです。
この事を認識している人は皆無でありますが、むやみに処置したり、薬で封じ込め
ると命の危険も伴うということを認識して頂きたいと思います。

当院では、私が担当する患者に対しては上記の理由を説明し、歯科での治療は
勧めていません。以下歯と脳、歯と全身との関連を解説し、その理由を明らかに
していきます。


『頭部にある器官は、脳の熱をすてる”穴”の役割を果たしている』

顔面にある眼、鼻、耳、口という器官は、全て頭部に開いた”穴”という捉え方が
できます。頭部の大半を占める大きな脳は強固な骨に覆われて守られています。
例えればフルフェイスのオートバイのヘルメットの様な存在です。フルフェイス
のヘルメットは、頭を衝撃から守ってはくれますが、かぶり続けると内部に熱が
こもり、脳内温度を上昇させます。

この例からわかる様に、脳内の熱のこもりは、大脳や命の座と呼ばれる「脳幹」
の温度や脳圧の上昇を生起し、生命維持機構を弱らせたり、脳血管障害を誘発
し、生命に危険が生じます。これを防ぐために頭部に開いた”穴”に相当する眼、
鼻、耳、口から外部に熱や脳圧を放出して、脳内を一定の温度に保ったり脳圧
を下げています。

その方法は、クシャミ、鼻水、涙、唾液、耳だれ等として熱を排出したり、各種の
鼻炎、口内炎、内耳炎、眼の充血、炎症等を発症させる事で脳内の熱や脳圧の
上昇を表に引き出し、外部に排出する対応をとります。

また頭蓋骨の中を空洞(副鼻腔)にして、空気を流し”空冷装置”を作動させて脳
内の温度を一定に保っています。空洞となる副鼻腔は頭部に占める割合は大きな
空間になります。故にここに水や膿が溜まると、鼻を何度もかんでも、とめどなくな
く出てくるのです。
副鼻腔の空冷式の冷却で脳内の熱が抑えられない時には、副鼻腔に水を貯めて、
水冷式の冷却に切り替えて対応します(現代医学では副鼻腔炎として扱われる)。

この様に脳内温度の上昇や脳圧の上昇は、眼、鼻、耳、口を通して内熱を外部に
すてて脳圧を下げています。また温度を下げる空冷装置(副鼻腔)によって脳内の
温度や脳圧は一定に保たれるようになっています。

私たちの体はあらゆる状況に応じて何段階にも防衛手段が構築されており、脳
に開いた全ての”穴”を駆使して熱をすてているのです。歯痛や歯茎の炎症や腫
れ、化膿もその中の一手段になります。それを無視して、痛みを抑えたり、薬で
炎症や腫れ、化膿をとり去ってしまうと、脳内の熱は、排出場所を失い、脳内に
熱がこもり、脳圧が上昇して脳溢血やクモ膜下出血、脳梗塞等の脳血管障害を
誘発し、命に危険が及んでしまうことにもなります。

つまり眼、鼻、耳、口、副鼻腔等は脳と密接に関係し、脳内の熱のこもりや脳圧
の上昇を抑え、脳の機能を守り、ひいては命を守っているのです。この延長上に
歯も存在します。今回のテーマの歯痛と歯茎の腫れが起こるのも、脳と深い関係
があるのです。


『上歯は頭蓋骨の一部であり、特にその前歯は脳や鼻(副鼻腔)とつながっている』

歯という組織は頭蓋骨の中に存在します。歯は筋肉の中に埋まっているのでは
なく、上歯は頭蓋骨前面に埋め込まれ、下歯は下顎骨の前面に埋め込まれてい
ます。つまり骨から歯が生えている様な存在です。歯は骨の一部と言っても過言
ではありません。特に上歯は頭蓋骨から生えていて、その中の前歯は、副鼻腔
と隣接し、前述の様に副鼻腔は脳内の温度を一定に保つエアコンの役目を果た
しており、脳と関連があります。その副鼻腔のある骨の中から生えている前歯は
内部でつながっているため、副鼻腔や脳と関連しているのです。


『副鼻腔や上の前歯の歯根部や歯茎に炎症や腫れ起こすのは脳との関連が深い』

脳内に熱がこもり、脳圧が高まり、これ以上高くなると脳溢血等の脳血管障害の
危険がある場合に、副鼻腔に水を貯めていきます。副鼻腔内部や前歯の歯根部
に炎症を起こす事で、脳内の熱や脳圧を抜く対応ができるようになっているのです。

この対応のわかりやすい例が鼻血になります。脳圧を抜く緊急対応に“鼻血”が
あります。よく小さい子がはしゃぎすぎて脳が興奮すると鼻血が出る現象です。
これは脳内の熱と脳圧を抜く事で、脳の血管が切れるのを防いでくれているのです。
中年以上の男性によく鼻血が出て、鼻血が止まらない人がいますが、これは鼻血
を出す事で、脳圧を抜き、脳溢血やクモ膜下出血を回避させているのです(眼の
毛細血管が切れて、白目の部分に出血が起きるのも眼圧や脳圧を抜く対応にな
ります)。

日本伝承医学では、脳溢血が起きた場合の緊急救命法として、鼻の下を強く刺激
し、故意に鼻血を出させる技法が伝わっていますが、正に的を得た方法になりま
す。日本の古代人の見識の高さは驚嘆に値します。

この様に生きている体の起こす反応には、全て意味があり、その意味とは命を守
る対応になります。歯痛、歯根部や歯茎の炎症や腫れ、化膿には、脳血管障害
を防ぐ役割があるのです。特に副鼻腔や上の前歯は脳との関連が深く、ここに炎
症を起こすことで脳の熱や脳圧の上昇を防いでいます。故に対処を間違ってはい
けないのです。

日本では古くからの言い伝えで、顔面部の鼻を中心とした自分の握り拳の範囲内
の化膿(面疔)や腫物(歯根部の腫れや化膿も含む)は要注意で、むやみにいじって
はいけないと戒めています。古代人は経験的に、脳との関連がある場所と認識し
ていたのです。


『歯痛を表現する時、歯が浮くという言葉を使う事があるーーーこれは体調の悪
い時に発生する』

歯が浮くという表現は、今回のテーマの虫歯以外の歯痛の状態を正に言い当て
ています。歯の根元に炎症や腫れ、化膿が生じ、内圧で歯がもち上げられ、浮い
た様な状態に感じられるのです。これが進行すると、温冷刺激で痛みが出たり、一
気に神経を刺激し歯に疼痛が生じていきます。

心労が続いたり、寝不足が続いたり、疲労が極地にきたり、肩こりが激しかったり
する時に、歯が痛む事があります。この様な時に”歯が浮いた”という表現を使い
ます。明らかな虫歯が存在しなくて発生する場合がほとんになります。
つまり心身ともに疲労して、脳内に熱がこもり、脳圧が高まった状況にあるのです。
これを抜く対応として、体は歯痛を起こさせ、歯根部に炎症や腫れを発生させて
対応しているのです。


『東洋医学では歯は骨のあまりと表現され、脳、髄、骨と関わる』

東洋医学は数千年の歴史を有する実証医学であり、その中から発見された理論
は実証に基づいています。東洋医学では、人体内の全ての組織器官を単体の集
まりではなく、それぞれが相互依存し、関連しながら一つの生命体を維持してい
ると捉えています。

その中で人体の歯は、骨のあまりと表現され、脳と脊髄と関連していると解明し
ています。正にこれまで解説してきた様に、脳との関連が深い組織になります。
また脊髄と脳は脳脊髄液で満たされ、つながった存在であり、歯と関連しています。


『歯の弱りは髄(ずい)の弱り』

昔から歯の弱りは髄の弱り、骨髄の弱りと言われています。歯に痛みや炎症が
起きている時は、免疫力が著しく低下し、骨髄に弱りがきているということです。
身体の芯部に弱りがきているので充分な睡眠と休養が必要になります。

歯は骨の一部であり、脳と直結している場所になります。骨髄のバロメーターでも
あります。歯痛や歯ぐきの腫れ、炎症は決してあなどってはいけません。歯に症
状が表われたら脳に一番近い神経がやられているということです。

だから歯だけをいじってはいけないのです。脳内の炎症を除去し、内部から免疫
力を高めていかなければなりません。日本伝承医学は、脳の炎症をとり除き
免疫力と生命力を高めていく治療を行なっています。家庭療法として、頭部と肝臓
の局所冷却を合わせて実践していくことで、痛みや症状を速やかに改善していく
ことができます。


『硬い組織の骨と歯は、圧や振動がかかると微弱な電気を発生する』

日本伝承医学の技法の理論基盤としているのが、骨のもつ二大特性である「圧
電作用」と「骨伝導」であります。圧電作用とは、骨に圧や振動(ゆり、ふり、たたき)
をかけると微弱な電気を発生する原理を言います。骨伝導とは、人体中の骨は
単に硬い支持組織だけの働きではなくて、神経系統以上に情報(電気、磁気)を
伝達する人体最大で最速の伝達系であるという事です。

わかりやすい例として、骨伝導を使用したイヤホンやマイクが実用化されていて、
人間の言葉の様な微細で繊細な振動を瞬時に伝達する作用が骨にはあるので
す。故に骨に発生した電気は瞬時に全骨格に伝達するのです(日本伝承医学は
この2つの原理を応用し、骨髄機能を発現する医学であります)。


『歯を噛む事で電気を発生させ、骨伝導で脳全体に伝え脳細胞を活性化している』

前項で解説した様に、骨のあまりと言われる歯は噛む事で微弱な電気を発生し
ます。この発生した電気は骨伝導を介して瞬時に全骨格に伝わります。特に歯と
頭蓋骨は一体であり、歯の噛む圧とカチカチとした振動により発生した電気は脳
細胞を活性化する働きを担っているのです。

故に脳が疲労している人は、無意識に歯ぎしりをする事で脳細胞を活性化しよう
と働くのです。生きている体の対応には全て意味があるのです。また歯をくいし
ばる事で、力が出る事が実証されています(運動選手のマウスピース)。これも圧
電と骨伝導の証明であります。

古代日本では歯の痛みの除去法に、歯をカチカチと噛み鳴らす事で電気を発生
させ、痛みや腫れを除去してきたのです。


『歯と脳の密接な関係を認識できれば、むやみに処置する危険性に歯止め
 がかかる』

これまで詳細に歯と脳の関係を述べてきました。虫歯で大きく歯の中に穴が開き、
神経に達しての歯痛を除き、特に目に見えた虫歯は無く、歯根部や歯茎に腫れ
や化膿が出る場合が要注意になります。その中でも、顔面部の鼻を中心にして
自分の握りこぶしの範囲内の歯痛や歯根部、歯茎の腫れや化膿は十分に注意
が必要です。
また、上の前歯の歯根部の炎症は、脳や髄に直結した場所になり、一番処置し
てはならない場所です。以上の認識をもって慎重に対処していく事が必要です。


『どう処置する事が必要か』

これまで解説した様に、歯根部の腫れや化膿は、脳内の熱のこもりと脳圧の上
昇を抜く対応として発生している事を理解する事が大切です。故に脳内の熱と
脳圧の上昇が鎮まらない限りは歯根部の対応は無くなりません。

処置としては脳と局所の歯との二箇所からのアプローチが必要です。さらに言え
ば、脳の熱のこもりと脳圧の上昇を起こすのは、全身の血液の循環・配分・質の
乱れが原因です。つまり全身の血液の循環・配分・質(赤血球の連鎖と変形)の
乱れをとり、脳内の熱と脳圧の上昇を除去し、歯そのものの炎症を鎮めるという
総合的な対処が求められるのです。

脳と脊髄に関わる歯に症状が出る時は、歯の問題だけではなく、自身の健康状
態に大きな破綻がきていると認識すべきなのです。自身の生命力や免疫力にか
なりの弱りが出てきた証拠と捉えなければなりません。特にこれまで解説した様
に、顔面部の中央で自身の握り拳の範囲内の歯根部の炎症は、脳の炎症や脳
圧の上昇が極限にきている時に発生します。
対応を間違えると、脳血管障害を引き起こす危険がある事を肝に銘じなければな
りません。


『具体的な冷却法』

脳全体と局所の歯の徹底した氷冷却が必要です。具体的な 場所は、脳に関し
ては後頭部、額、両首になります。氷枕を後頭部に当て、アイスバッグを使用して
額、両首を冷します。

痛む歯と腫れて化膿している歯根部に対しては、小粒の氷を直接口内に含み、
氷を直接患部に当てて溶かしながら冷却します。溶けた水は吐き出す様にしま
す(水分摂取が過多になるため)。また患部の外側からもアイスバッグを当てて冷
却します。脳も歯も時間は長く徹底した冷却が効果的です。

以上の脳と歯の二箇所を歯根部の腫れと化膿が引くまで何日も根気よく続けます。
これにより脳内の熱のこもりと脳圧の上昇が徐々に終息に向かい、歯痛や歯根
部の腫れは治まっていきます。
さらに全身の血液の循環・配分・質の乱れを改善させるために肝臓と胆嚢の冷却
も必要です。

これと並行して日本伝承医学の治療を併用してしていく事で、低下した生命力や
免疫力を高め、全身の血液の循環・配分・質の乱れが改善され、脳内の熱のこも
りと脳圧の上昇が除去されます。また歯の炎症が速やかに鎮静されます。