日本伝承医学の糖尿病の治療

 インスリンがうまく働かないために、血液中を流れるブドウ
(血糖)が必要以上に増えてしまう病状を糖尿病と言います。
インスリンは膵臓(すいぞう)から出るホルモンで、血糖を一定
に保つ働きがあります。血糖(糖・糖質)は生きていく上での重
要なエネルギー源で、糖をエネルギーとして使うためには、イ
ンスリンが必要となります。
 膵臓の機能が低下してしまうと、血液中に糖があふれてしまい、
血糖値が高くなります。細胞の扉を開ける役目を果たすのがイ
ンスリンになりますが、膵臓機能低下によりインスリンが正常
に分泌されなくなると、細胞の扉が開かれず、糖が細胞の中に
入ることができなくなり、血液中にあふれてしまうのです。
 つまり糖尿病を改善していくには、大元となる膵臓機能を高
めていかなければなりません。血糖の値だけをいくら薬剤等で
調整しても、インスリンだけを投与しても、膵臓機能自体が改
善されなければ根本的な解決には至りません。また血糖降下剤
等の薬剤投与は自己免疫力、自然治癒力を低下させるばかりで
はなく様々な副作用を伴う場合もあります。
 「氷山の一角」という諺があるように、病状を診ていく上で
大事なことは、水面に浮かぶ氷山(その部位や症状)だけをみる
のではなく、水面下に潜む原因を知り、病状の根本要因から正
していく必要があります。これが日本伝承医学的(東洋医学的)
な疾病観、生命観となります。局所だけを診て、その部位だけ
を治療していく西洋医学とは病理観が根底から異なります。
 真理を見極め何を選択していくかは自身の価値観によるもの
であり、決して、他から強要されるものではありません。迷い
や戸惑いが生じたならば、西洋医学と東洋医学の治療との融合
ですすめていくという選択肢もあります。自分の命や生き方は、
医者や他人任せではなく、後悔しない為にも、納得した上で自
分自身で決めていくことが大事です。

【糖尿病の分類】
 糖尿病は主として1型糖尿病と2型糖尿病に分類されます。糖
尿病の多くはは2型糖尿病になります。
 1型糖尿病は、膵臓のランゲルハンス島に炎症が起こり、イン
スリンの生産、分泌を司る膵β細胞が壊されます。その結果イ
ンスリンの量が足りなくなり、ブドウ糖が細胞に取り込まれな
くなる為、血糖値が上昇してしまいます。外から体に入ってき
た細菌やウィルスを攻撃して体を守ってくれる「免疫」が、自
分の膵β細胞を攻撃してしまうことで発症するため、自己免疫
疾患とされています。
 1型糖尿病は、生活習慣病のひとつとされている2型糖尿病と
は全く異なる糖尿病で、急速に膵β細胞が破壊され、様々な自
己抗体が陽性になります。元々若年層に多かったのですが、近
年は小児1型糖尿病の発症率が増加傾向にあります。9割が自己
免疫性、1割が突発性とされ、インスリン投与が不可欠とされて
います。
2型糖尿病は、インスリンによる血糖低下作用の低下と、
膵β細胞からのインスリン分泌の不十分の、この両方の異常が
あり血糖値が上がることで発症します。遺伝因子と共に生活習
慣や外部要因等が関与し発症すると言われます。
 年をとるとエネルギー代謝力が落ちる為、体はそれを補う為に
血糖を高くします。加齢と共に血圧(血液を流す力)が高くなる
ように、血糖も高くなるのは、自然の摂理と言えます。現今で
はすべての事象に標準値を設け、年齢に関係なく標準値を正常
値として健康の基準にしていますが、若い人と高齢の人とで、
色々な数値が同じであってはおかしいのです。


【糖尿病の初期症状】
だるくて疲れやすい/傷が治りにくい/皮膚の化膿、炎症、
灼熱感/足がつったりしびれたりする/のどが渇く/血行不良/
頻尿/夜尿症/体重減少/筋肉、筋力低下視力低下/目がかすむ/
眼底出血/勃起障害/情緒不安/無気力感/眠りの質の低下下痢・
便秘/立ちくらみ/むくみ等


【日本伝承医学の糖尿病の治療法】
 私たちの体の中には常に微弱な電気が流れています。微弱な
電気信号が発生することで心臓は動いています。日本伝承医学
ではまず手技療法による心臓調整法で、骨に圧を加え電気を発
生させ、低下した電気レベル、混乱した心臓の電気系統を正常
に復していきます。全細胞の母体である骨髄幹細胞にスイッチ
を入れ造血力と細胞新生力を高めます。
 次に個別操法として膵臓調整法を用います。「膵臓調整法」に
より膵臓機能を正常に復し、インスリンの分泌を促します。
また「自律神経調整法」により自律神経を調整することで、交
感神経の緊張をとり血糖値の上昇を抑えていきます。人は極度
のストレスや心労、心配事や悩み等が日常生活内にあると肝臓
機能が異常亢進され血糖値が高くなります。つまり糖尿病と精
神状態は大きく関連しているのです。
 日本伝承医学では肝胆の巧打法を用いて、肝臓の炎症を除去し、
肝臓胆のう機能を正常に復し、胆汁の分泌を促進させます。胆
汁の分泌が改善されれば膵臓の負担が軽減されます。臓器はこ
のように単独で働くのではなく、互いに関連し合い、その機能
を維持しています。詳細は有本政治著:『血糖値を捉えなおす
~血糖値上昇はストレスが原因』、『肝臓を捉えなおす』の項
を御覧下さい。

【血糖値の上昇を抑えるには家庭療法としての頭部冷却法が有効】
 自律神経のバランスが乱れ、交感神経が緊張すると、交感神経
の緊張は過活動を促し血糖値を上昇させます。自律神経は脳幹
の視床下部から発令されますが、ストレスや心労で脳内に熱が
こもると(脳の炎症・脳内温度の上昇)、視床下部に炎症が起き
機能低下し、自律神経が乱れていきます。
 日本伝承医学が推奨する脳内温度を下げる為の氷枕とアイス
バッグによる頭部冷却法(ひたい・後頭部・首筋等)が理にかな
った家庭療法と言える所以はここにあります。頭部冷却法の詳
細は下記項目の「家庭療法としての局所冷却法」の項を参照下
さい。

【日本伝承医学】
 日本伝承医学では、体に現われる症状を単にその部位だけでみ
ていくのではなく内臓、脳、血液の循環・配分・質等の体全体
との関連の中で
捉えていきます。全体調整法で、身体のねじれ
のゆがみをとり、肝臓心臓等内臓機能を高め、症状に合わせて
個別操法を用います。治療は血液組織の再生修復周期と合わせ
2週間に1度の受診となっています。
 当院では治療と併用して自身で行なえる家庭療法の指導を行な
います。家庭療法としての生活習慣を身につけるために通院し
て頂いています。日本伝承医学は受診しながら、人体の疾病観・
生命観を学び、家庭療法としての自助努力を身につけていきま
す。
 家庭療法としては「食・息・動・想・眠」と「頭部と肝臓の
局所冷却法」を実践します。不調になる方は通常の水の摂取が
充分に足りていない場合が多々あります。水を飲むことは生命
を養う上での基本となるので、一日
1.5リットル位を目安に習慣
として飲むようにします。
 日本伝承医学では、体に起こる症状は悪いことではなく、命
を守るための正への対応として捉えています。身体に生じるね
じれのゆがみをとり、低下した内臓機能を高め血液の循環・配
分・質を整え、免疫力と生命力を高めていく治療の学技の詳細
はホームページの下記文献を参照下さい。

≪参考文献≫有本政治著:
    「日本伝承医学とは~日本伝承医学の生命観と疾病観
             日本伝承医学の家庭療法」(局所冷却法)
             血糖値を捉えなおす
             肝臓を捉えなおす」 
             食・息・動・想・眠」