痛風リウマチ性疾患(偽痛風、痛風、偽リウマチ、リウマチ等)の本質

痛風は、風が吹いても痛い、じっとしていても痛いことからこう呼ばれています。偽
痛風とは、痛風と症状が似ていることからこの名前が付きました。痛風は、足の親
指の付け根付近に痛みが発生しやすいのに対して、偽痛風は多くは膝関節に痛み
が生じます。肩、肘、股関節、足の関節という大きな関節にも発作が起きるのが特
徴です。関節に強烈な痛みが起き、腫れや発赤、強い熱感をもちます。朝方にこわ
ばったり、関節リウマチにも似た症状を示し、原因が特定できにくく、痛風やリウマチ
より、診断がつきにくい疾患になります。

痛風との区別は、痛風が尿酸値が上昇する事によって痛みの発作が起こるのに対
して、偽痛風の場合は、ピロリン酸カルシウムが原因で痛みの発作が起こると考
えられています。痛風は尿酸の結晶が毛細血管を詰まらせ発生しますが、偽痛風
はピロリン酸カルシウムの結晶が原因で発生します。この結晶が軟骨に沈着する
ために、偽痛風は、軟骨石灰化症とも呼ばれています。また痛風は年齢に関係なく発
症しますが、偽痛風の場合は、60代以降の年配の方に多く発症しやすいのですが、
最近では若年層にもみられてきています。はっきりとした原因は不明で、甲状腺の
病気が関係してるのではないかとも言われています。

現代医学では、根本的な治療方法はなく、基本は対症療法になります。症状の軽
度のものに対しては、非ステロイド系の抗炎症薬を服用し、関節から水抜きをして、
ヒアルロン酸や非ステロイド系の抗炎症薬を関節内に注入します。重症の場合や
炎症の強いものに対しては、ステロイド薬を服用し、慢性化した場合でも、繰り返し
ステロイド薬を使用しているのが現状です。しかし服用を中止すれば再発を繰り返し、
次第に変形性関節症に移行してしまいます。症状がとれないものに対しては、関節
内にできたピロリン酸カルシウムの結晶を内視鏡で洗浄したり、変形が強い場合は、
人工関節に置き換える手術も行われます。

近年やっと、偽痛風や偽リウマチという新たな概念で捉えられるようになりました。
しかし実状はホルモン薬で抗炎症作用の強力なステロイド剤で、炎症と痛みを一時
的に封じ込めているだけになります。炎症や痛みを封じ込めてしまうと、体は免疫
力を大幅に低下させ、感染症等を引き起こしやすくなります。偽痛風を改善してい
くためには、視点を変えて、その本質を知る必要があります。痛風、偽痛風、偽リ
ウマチ、リウマチ等の血液の質に関わる症状を、日本伝承医学では、以下、痛風リ
ウマチ性と呼んでいきます。

では日本伝承医学の捉える痛風リウマチ性の症状を説明していきます。日本伝承
医学の病気や症状の捉え方は、これらを一方的に悪い反応として捉えず、体が発す
る警告サイン、命を守るための必要な対応として捉えています。この視点から痛風リ
ウマチ性疾患の本質を解明してみます。
初めて痛風リウマチ性の関節の痛みや腫れが出た場合、患者さんは皆さん戸惑い
ます。関節を打ったり、転んだり、捻ったりしたわけではないのに、突然関節が腫れ
て炎症と痛みが出た事に驚きます。これが血液の質に関わる症状だと言う事に気づ
かないからです。痛風リウマチ性の痛みは、血液の質が悪くなることによって起こる
からです。

これらは、外傷性の関節炎や関節痛とは別の疾患としてみていきます。
以前に外傷的な要因で痛めた場所とか、またスポーツ選手等が外傷後に治りが悪
くなった関節に後発で発症して、併発する事はよくあります。スポーツをしている方の
場合、その事に気づかず、局所の治療やリハビリ、トレーニングをやってもなかなか
痛みが取れず、慢性的な痛みと腫れに悩まされる方が多く見受けられます。
血液検査をしても尿酸値が高くないために、痛風リウマチ性の疾患とは診断され
ないで見落とされてしまうのです。外傷と併発した痛風リウマチ性を発症している方は、
スポーツ界でも近年増加の傾向にあります。 外傷後2ヶ月以上経過しても、痛みや
腫れ等の諸症状がとれない場合は、痛風リウマチ性のものとみて、血液の質を改善
していく必要があります。当院でスポーツ界に携わる方が多く受診されるのは、日本
伝承医学が、他の整体や鍼灸等とは概念を異にし、体に生じる症状をその部位だけ
で診ていくのではなく、血液の質を改善し、血液の循環・配分を整え、内部から調整し
ていく治療法になるからです。

次に痛風リウマチ性疾患がどうして起こるのかを説明します。痛風リウマチ性の症状
は外傷性の関節炎とは違う機序で起こります。この症状は血液疾患に属し、血液の
質の低下が根本的な原因になります。具体的には赤血球の連鎖(ドロドロでベタベ
タな血液の状態)による毛細血管の流れの詰まりから徐々に進行していきます。
(これには遺伝的な体質も大きく影響してきます)。血液の質が低下するという事は、
体の免疫力の著しい低下を意味します。免疫力が低下すると、感染症にかかり
やすくなります。特に血液に病原菌が発生し、化膿性の感染症を引き起こし、菌
血症や敗血症を発症しやすくなります。(敗血症は全身に毒が回り、死に至る重
篤な病気になります)。

これを回避する対応が、痛風リウマチ性の症状の発症になります。
偽痛風、痛風、リウマチ、偽リウマチ等の関節や筋肉に発生するこうした血液疾患
は、血液に病原菌が発生し、その毒性による菌血症や敗血症への進行を防ぐための
対応として、関節に異常な熱と腫れ、痛みを起こしているものになります。これ以上
関節の毛細血管に血液が停滞すると、血液が毒性を帯び病原菌の発生が起こって
しまうため、これを回避するために、関節に高熱と腫れを起こし、熱と内圧の上昇
によって、血液の停滞を除去する対応をとっているのです。

つまり関節に異常な熱と腫れ、痛みを起こす事で毛細血管内の血液の停滞と詰ま
りを解消し、毒の発生を防いでいるのです。例えれば、流れを失った淀みは、水も
腐り、毒を発生します。これを回避するために関節に熱と腫れを起こし、分子運動
を活発にし、内圧を高める事で、流そうと対応しているのです。”流水腐らず”(りゅう
すいくさらず)のことわざ通りのことを、体は天然に実行してくれているのです。
つまり、故意に炎症を発生させているのです。正に人智を超えた対応になります。
また危険を知らせる体への警告サインとしての役割も担っています。

さらに言及すれば、関節リウマチ等で、手指が、くの字に変形を起こしますが、
これも手や手指の毛細血管の循環及び腕全体、ひいては体全体の血液循環を
守る対応になります。末端部の手指を、くの字に曲げて固着させて、関節内の毛細
血管の循環と関節液の循環を促進させるのです。川の流れで例えれば、まっすぐ
に流れている所より、曲がってカーブしている川の所の方が、流れが早くなって
いるのと同じ原理になります。流れというものは、まっすぐより、曲がっている方が、
ぶつかった抵抗力が加わるので、流れが速くなるのです。このように、私たちの体も
手指や他関節等をくの字に曲げる事で、血液の循環を促し関節ポンプ機能も高め
てくれているのです。膝の変形も同じ機序で発生していきます。このように体に起こ
ることには、ひとつひとつに皆意味があるのです。

現代医学が原因として挙げている、尿酸結晶(痛風の原因物質)、ピロリン酸カル
シウム結晶(偽痛風の原因物質)、サイトカイン(タンパク質)増加(リウマチの原因
物質)等は、本当は原因ではなく、実は結果として、発生しているだけにすぎないの
です。また菌血症や敗血症も、病原菌が原因ではなく、全身の免疫力が低下してい
る背景があり、そこに結果として発生していくのであります。免疫力が正常であれば、
本来侵されないのです。例えばインフルエンザの場合も全員が発症するわけで
はありません。血液の質が悪くなり免疫力の低下している人が発症していくのです。
つまり免疫力低下の最大要因となる血液の質というものを、見落としてはならないの
です。

以上が痛風リウマチ性疾患(偽痛風、痛風、リウマチ、偽リウマチも含む)の本質に
なります。故に必要な対応として発生させている炎症を、強力な抗炎症作用をもつ
ステロイド剤や尿酸値を下げる薬等で、炎症を取り去ったり、封じ込めたりしてはいけ
ません。体が必要な対応で起こしているのですから、薬を止めればすぐに戻り、以前
より激しく症状が再発してしまいます。つまり治癒させるための処置にはならないのです。
特にステロイド剤には強力な抗炎症作用があり、すぐに腫れ、熱、激痛を抑えるた
め、一度使用すると常用化してしまいます。また反面、免疫抑制作用により、体の
免疫力を急激に低下させていきます。故に骨髄の造血作用と細胞新生作用を著しく
低下させていきます。これが生命力や免疫力を弱めていくのです。一時的に痛みから
解放されても、重篤な病や、感染症により生命に危険が及んでしまう場合があると
いうことです。また尿酸値を下げる薬は、体内のアンモニアの分解作用を低下させ、
血液の濾過再生装置である腎臓に大きな負担をかけます。長期の服用により腎機
能を低下させ、人工透析に移行してしまう場合もあります。このように薬で検査数値
だけを規定にあてはめようとしてしまうと、重篤な疾患の誘発につながるという事を
知って頂きたいと思います。

ではどうすれば痛風リウマチ性の症状を回復に向かわせる事ができるかを説明し
ます。それにはまずこの疾患の直接的要因となっている血液の質の低下の根拠と
機序を明らかにする必要があります。血液の質が低下すると、体は免疫力を落とし、
痛風リウマチ性の疾患のみならず、様々な病気や感染症を引き起こしていきます。
これらの症状が表れたという事は、自分自身の体に生命力や免疫力の低下が起こ
っているという事を知り、自覚していくことが大事です。

血液の質の低下には、4つの要因が挙げられます。1つ目は、新たな血液を作り出す
造血力の低下になります。2つ目は、腎臓の濾過再生機能の低下による質の低下で
す。3つ目は、脾臓の赤血球の分解能力の低下による古い血液の増加になります。
腎臓と脾臓による血液の質の低下は、赤血球の連鎖が先にあって、それを濾過し
たり分解するために起こっています。4つ目は赤血球の連鎖(ドロドロベタベタ血液)
による質の低下です。これは血液が熱を帯びる事から始まります。血液が熱をもつ
と赤血球の粘性が増し、赤血球同士がくっついてきます。この血液の熱変性が、血液
の質の低下の始まりになります。血液の質を元に戻すためには、胆汁の分泌を正常
にしていかなければなりません。胆汁には血液の熱を冷ます作用があるからです。

日本伝承医学ではこの胆汁に重要性を見出し、胆嚢(たんのう)を心臓に次ぐ臓器
として位置付けています。しかし現代医学に於ける胆汁の概念は、脂肪の分解吸収
を助ける働き、便の生成等位しか挙げられておらず、その働きはあまり重要視され
ていません。重要視されていないため、胆石等で胆嚢を安易に全摘してしまうのです。
胆汁の大切な働きが認識されていないからです。胆汁は1日約500〜800ml分泌さ
れます。この胆汁の持つ苦味成分が健康を維持していくためにはとても重要になり
ます。漢方薬では”良薬口に苦し”と言われるように、苦味が、”苦寒薬”と言われ、
病気の炎症を鎮めてくれるからです。体内の炎症を鎮静させる事で病気や症状は
改善していくことができるのです。

苦い物には熱を冷ます効果があります。その実例として、暑さの厳しい九州沖縄地
方では、苦瓜が伝統的に食べられています。苦味が体内の熱を冷ましてくれるから
です。また体内や脳内に熱のこもりの多くみられる現代人が、苦味のコーヒーを昨今
多く好むのにもこうした原理があります。このように胆汁は体にとって、苦寒薬として
の働きがある極めて重要な物質になります。現代医学では、抗炎症作用と言えば、す
ぐに副腎皮質ホルモン(ステロイド)を用い炎症を人為的に鎮めようとしますが、私た
ちには胆汁という、人智を超えた良薬が体に天然に備えられているのです。胆汁の
分泌不足は痛風リウマチ性の疾患をはじめ、様々な病気や症状を引き起こす最大の
要因となっています。故に病気や症状を改善していくためには、この胆汁の分泌を
如何に促し、血液の質を良くしていくかにかかっているのです。これを可能にできるの
が日本伝承医学の治療技術になります。

昔から”肝心要”(かんじんかなめ)という格言があります。体において、肝臓と心臓が
組織器官の要の働きをする重要臓器ですという意味で、物事の核心を表す言葉に
なります。肝臓と心臓は五臓六腑の中心をなし、血液の循環と配分に関与する臓器に
なります。そしてこの肝臓と表裏の関係にあるのが胆嚢(たんのう)になります。胆嚢
は肝臓に内包されていて、血液の質に関わる大事な所になります。胆嚢では、肝臓
で作られた胆汁(たんじゅう)という苦寒薬を分泌し、血液の熱を除去し、血液がサラ
サラの状態で、速やかに流れるようにしているのです。このような重要な役割を胆嚢
という臓器は担っているのです。肝臓が弱ると、胆嚢機能も弱り、胆汁が正常に分泌
されなくなり、血液に熱を帯び、血液の質が低下していきます。ですから肝臓機能を
低下させないようにしなければなりません。

血の固まりのような臓器である肝臓が機能低下する一番の要因は、肉体的なものよ
り、精神的なものが大きく関与してきます。精神的ストレスの持続は、脳を疲労させ、脳
内の神経伝達物質や脳内ホルモンを大量に消費させます。これらの脳内物質は、
主に肝臓で作られ、脳で消費されて、また肝臓に還って分解されます。この状態の持続
が徐々に肝臓機能に影響を与え、肝臓機能が低下する要因となるのです。
肝臓は別名、肝(キモ)と呼ばれ、キモが座っている、キモが小さいなどの表現があ
るように、精神的な強さと関連づけられています。つまり”やる気や意欲”と深く関わりが
あります。こうした気力を持続するためには、常に自分を叱咤激励しプレッシャーをかけ
続けなくてはなりません。これが自分では気づかないうちに、精神的肉体的に大きな負
担をかけていく事になるのです。脳の神経伝達物質や脳内ホルモンを大量に消費させ、
脳に熱を帯びさせ、脳に炎症を起こしていきます。これを冷まそうとするために、体は
苦い胆汁を大量に消費させていきます。これが肝臓や胆嚢にさらに負担をかけていき
ます。

肝臓や胆嚢に弱りが出ると、これを回復させる対応として、体は肝臓、胆嚢に大量
の血液を集め、炎症を起こす事で、機能の回復を図ります。これは肝臓や胆嚢に腫
れを生起させます。胆嚢という袋に腫れが起こると、袋を正常に収縮させる事ができ
なくなり胆汁がうまく分泌できなくなってしまうのです。胆汁は、胆嚢という袋を収縮させ
ることによって分泌されるからです。

胆汁が分泌不足になると、血液は熱を帯びてドロドロの状態になり、全身の血液の質
の低下を引き起こしていきます。また血の塊のような臓器である肝臓に大量の血液が
集まる事で(肝臓の充血)、全身の血液の配分を大きく乱すことにもなるのです。さらに、
血液を全身に早く循環させる必要上、血液のポンプ役の心臓に負担をかけ、心臓機能
を低下させていきます。つまり全身の血液の循環、配分、質の全てに影響が及び、様々
な疾患発症の原因となっていくのです。

血液の循環、配分、質に関わるのが肝臓、胆嚢、心臓になります。この肝臓、胆嚢、心
臓の働きを元に戻していく事で、全身の血液の循環、配分、質の乱れを整えていかなけ
ればなりません。
痛風リウマチ性の症状を改善していくためには、血液の質を低下させるこうした要因全
てにアプローチする事が必要です。まず造血力の低下を補い、腎臓の濾過再生機能や
脾臓の赤血球分解機能を正常にしていきます。血液の質を良くするためには、造血に
関与する骨髄の機能を発現し、腎臓、脾臓を修復し、全身の血液の循環、配分、質の
乱れに関与している肝臓、胆嚢、心臓の機能を回復させていかなければなりません。
また症状の出ている関節への直接的な施術も必要です。

これら全てに有効に働くのが日本伝承医学の治療法になります。日本伝承医学の
治療は、骨髄の機能を発現させる事を目的に構築されており、造血と細胞新生を活
発にして、血液の質を根本から改善させることができます。また内臓的には肝心要
(肝臓と心臓)の機能を高めることを主体としています。これにより肝臓(胆嚢)、心臓
の働きを元に戻し、血液の質、循環、配分を改善させていきます。腎臓と脾臓の治療
には、日本古代から継承された、ふり操法を用います。関節の直接的処方としては、
赤血球の連鎖を取り除く、血液の質を改善するたたき操法と、関節手技法を用いて、
腫れ、熱、痛みを除去していきます。また家庭療法として推奨する肝臓と頭と患部の
冷却法を行ない、肝臓と頭部(脳内)の熱のこもりをとり、肝臓、胆嚢の熱と腫れ、
炎症をしずめていきます。日本伝承医学ではこのような統合的な取り組みにより、痛風
リウマチ性の症状に対応しています。

≪参考文献≫

「痛風の原因とされる尿酸を薬で下げ続けてはいけない理由

関節リウマチ

股関節から大腿部の側面の痛み、痺れ、力が入らない症状の考察

リウマチ疾患の治療後の血液検査表の推移