痛風の原因とされる尿酸を薬で下げ続けてはいけない理由
                      2023.2.10. 有本政治
 

宇宙・自然・社会を貫く原理のひとつに「正反二面性」の法則があります。
病気や症状にもこの法則はあてはまります。視点を変えてみれば、病気や症状は
一方的に悪ではなく、正の対応の側面が必ず存在するのです。

痛風と診断された場合、尿酸値を下げる薬を長期に渡り服用してしまうケース
が多く見られます。尿酸値の上昇は一方的に悪だと考えられているからです。
しかし薬は一時的に病状を封じ込めているにすぎず、長期間用いると自己治癒力
を損ない、必ず弊害が生じます。この章では体にとって尿酸がどういう働きを
しているか、尿酸の役割を解説しながら考察していきます。

【尿酸の役割】
 尿酸は、産出と排出量がほぼ同量で血液中の尿酸量は一定に保たれています。
しかし尿酸が増えすぎると血液中に溶けきれずに結晶化され、血中、血管壁、
体内(関節、臓器等)に停滞してしまいます。尿酸は血液中では、体が酸化する
のを防ぐ働きがあり(抗酸化作用)、活性酸素がふえすぎないようにバランスを
保ってくれますが、結晶化されてしまうと尿酸としての働きが失われ、活性酸
素が増えてしまう場合があります。また尿酸が結晶化すると、白血球が結晶を
異物としてとらえ、排除しようとして炎症を引き起こします。この炎症を抗炎
症剤で封じ込めてしまうと、体はさらに白血球を増やし、急性白血病の引き金
にもなりかねます。炎症は体内の余計な熱や毒素を捨てる対応なので封じ込め
ないようにします。

【尿酸は生命維持に必要な物質】

  ①尿酸は人体の化学的エネルギー生成時に出る排出物を尿として体外に
 出す前の必要物質

②体内の毒素(アンモニア等)の分解物として、尿酸にして体外に排出し
 なくてはならない

エネルギー生成時における老廃物と、毒素を分解するために出る物質を、尿
や便として体外に排出する際に、必ず尿酸化しなければなりません。つまり
尿酸は、生命維持に必要な物質になります。体にとって必要な物質を、尿酸
値を下げる薬で(尿酸排出促進剤、尿酸生成抑制剤等)尿酸値を急激に下げ
たり、尿酸生成を抑制してしまうと、エネルギー生成と毒素の分解(解毒作用)
ができなくなり、体中に毒素が停滞していくことになります。

【なぜ尿酸が増えるのか】

尿酸の量が増えるのは、体内の毒素(アンモニア)を分解する働きを担う肝臓
の解毒作用が過剰に働かなければならない状況にある時になります。つまり体内
に貯めてはいけない毒素が大量に発生したことを意味します。特にアンモニアと
いう物質は、アンモニア脳症(肝性脳症)と言われ、脳の機能を著しく低下させ、
命に危険が及ぶ場合もあります。

これを回避するためには、毒素分解機能をフル回転させる必要があり、これ
により生成する尿酸の量も多量にならざるを得ないのです。痛風を起こしてまで
も命を守る対応を優先させていくのです。つまり一時的に尿酸値を高くし、
結晶化させて痛風の痛みを発症させ、命を守る対応をとっているのです。痛み
とは、これ以上無理をしてはいけないと体に知らせる警告サインでもあります。
睡眠、栄養、運動等の生活習慣を見直しましょうという警告になります。特に
痛風を起こす人の食事は、高たんぱく高脂肪の傾向があり、水の摂取も不足し
ています。
 

【尿酸値を正常にするには】

第一に求められるのは生活習慣(食・息・動・想・眠)の見直しになります。
次に低下した肝臓(胆のう)機能を元に戻すことが不可欠となります。
私の50年余の臨床経験から言えることは人工透析になる人の多くに、長期に渡る
尿酸値を下げる薬の服用が認められています。これは体の毒素の分解が充分に
行なわれず血液のろ過再生装置である腎臓に長期間負担をかけ、腎臓機能低下
を誘発させた結果と言えます。日本伝承医学では肝胆叩打法により、肝臓機能
を正常にし、胆汁(たんじゅう)の分泌を促していき、尿酸値を正常に復してい
きます。家庭療法として、頭と肝臓の氷冷却法も併用して行なっていきます。
 

(参考文献)痛風リウマチ性疾患の本質」著:有本政治