原発性脳腫瘍の本質

脳腫瘍とは、脳の頭蓋骨内にできる腫瘍(おでき)になります。体の他の所に
できたがんが転移する転移性脳腫瘍と、脳そのものから腫瘍ができる原発性
脳腫瘍に分類されます。(原発性脳腫瘍は良性と悪性とに分けられます)。早朝
に頭痛が起こりますが、クモ膜下出血のように、突然ハンマーで殴られたような
強い頭痛とは異なり、脳腫瘍の頭痛は、脳の奥の一か所から発信されるような
変な痛みが起きます。

CTやMRIだけでは確定できず、細胞をとり出した生検を顕微鏡で調べて診断さ
れます。悪性脳腫瘍は周囲に根を生やすように大きくなりますが、良性脳腫瘍は
周囲の脳とはある境界をもって大きくなります。また原発性脳腫瘍は脳の中に
一つだけ出来るのが特徴になります。原発性脳腫瘍の性質は、脳内の圧力が
上がります。これを頭蓋内圧亢進症と呼び、頭痛、吐き気、嘔吐、目がぼやける
等の症状が出ます。その他、徐々に進行する感覚障害や言語の障害、視野狭
窄、性格の変化等がありますが、強く激しい症状や日常生活に支障が出るほど
の症状は通常起きません。治療法は、基本は手術による摘出になります。
手術の目的は、摘出した腫瘍を病理診断医に診てもらい、最終的な脳腫瘍の
種類と部位を特定していきます。手術後、放射線治療、抗がん剤治療、免疫療
法等が行われます。しかし原発性脳腫瘍の場合は、原因がわかっていないため
再発を繰り返してしまう場合が多く見られます。

次に日本伝承医学の観点から脳腫瘍の本質を解説していきます。体はいきなり
脳に脳腫瘍を作るわけではありません。長い時間の経過の中で、徐々に進行し
ていったのです。

⑴脳内部の周囲とは境界をもって大きくなる。
⑵脳の中に一つだけ出来る。
⑶早朝に頭痛が起こる。
⑷脳内の圧力が上昇する。
⑸日常生活に支障はなく、激しい症状が出ず、進行が遅い。
⑹再発を繰り返す。
以上が性質になります。

日本伝承医学の病気や症状の捉え方は、病気や症状を一方的に悪い反応と
はみないで、何かを守り、何かを元に 戻し、命を守る必要な対応として捉えて
います。この観点で上記の症状を考察してみると様々な対応の姿が見えて来ます。
体が体内に蓄積してはならない物は、”熱”と”毒”(非生理的血液)になります。
特に脳の中心に位置する脳幹という部分は、生命維持のための重要な指令を
出す中枢部にあたります。ここに内熱と毒素が蓄積すると命に支障をきたします。

また頭蓋骨に囲まれた脳は、脳内の圧力(脳圧)が現界を越えると脳溢血やク
モ膜下出血を起こす危険が生じます。つまり脳及び脳幹は、内熱や毒素を蓄積
させたり脳圧を上昇をさせてはならないのです。内熱や毒素を排出し、脳圧を下
げていく対応は、段階的に構築されています。まずクシャミ、鼻水、鼻からの膿、
涙、目やに、耳だれ等の症状から発生し、次に目、鼻、口内、喉の粘膜の炎症
(花粉症、副鼻腔炎、耳下腺炎、口内炎、喉の炎症、舌炎等)、顔面や頭部、首
の皮膚病、そして粘膜の潰瘍、皮膚上のオデキに進行し、それでも熱や毒素を
すてきれない場合に、熱を冷ますために内部に水腫(水頭症等)そして最終対
応として、内部に腫瘍(原発性脳腫瘍)を発症させていきます。
このように体は体内に蓄積してはならない熱や毒素、内圧を、段階を経て体外へ
排出していくことで、脳と脳幹の機能を守り、命を守ってくれているのです。これが
脳腫瘍の本質になります。

最終対応としての腫瘍は、内部に腫瘍(オデキ)を作ることで、外部にすてることが
できなくなった熱や毒素を一箇所に集め、周囲と境界を作って封じ込めていきます。
原発性脳腫瘍の性質の、脳内に一箇所でき、周囲と境界を作りながら大き
くなるという事に合致します。また脳内に固まりが出来る事で、周囲を圧迫し、
内部の圧力(脳圧)の上昇とも一致します。これは脳圧を上昇させる事で、脳内
の少ない血液を脳全体に早く廻す対応と、毛細血管内のドロドロ血液の停滞と
詰まりを押し流す対応になります。さらに症状の出方が穏やかで、進行も遅く、
激しい痛み等は出ず、日常生活に支障が出ないのは必要な対応の証しでもあ
ります。

原発性脳腫瘍の性質に挙げられる早朝の頭痛は、起床して活動を開始する準
備として発生させています。脳腫瘍ができる場合は、慢性的に脳の虚血(血液
不足)があります。起きて活動に入るためには脳に血液の供給が必要になります
が、痛みを起こして心臓のポンプ力を高め、脳に血液を集めるために頭痛は起
こっています。

脳腫瘍を改善に向かわせるためには、その原因となっている脳内の熱と毒素
の蓄積、脳圧上昇が何によってもたらされているのかを解明する必要があります。
つまり脳内の熱と毒素の蓄積、脳圧の上昇の根拠と機序がわかれば、その正
しい対処法が見出せます。
脳内の熱や毒素の蓄積と脳圧の上昇は、脳という局所の問題だけではありま
せん。長い時間の経過の中から徐々に発生しています。その原因は根源に精
神的ストレスの持続が大きく関わっています。
精神的ストレスの持続は、体内の血液の循環、配分、質(赤血球の連鎖による
ドロドロ血液)を乱します。これが脳内に熱や毒素と脳圧の上昇をもたらす全身
的要因として作用するのです。その理由は以下になります。

精神的ストレスの持続は、心理的プレシャーとして、脳を常に興奮状態にさせ
ます。これは脳を酷使する事になり、脳内に熱を発生させる要因となります。
この状態が持続すると脳に熱の蓄積をもたらします。また新鮮な血液を大量に
必要とする脳に血液を循環させるポンプ役の心臓にも大きな負担がかかり、
心臓の機能も低下していきます。特に遺伝的に心肺機能の弱い体質の人にと
っては大きな負担になり、心臓を弱らせていきます。これを回復させるために
自律神経の交感神経を緊張させていきます。交感神経が緊張すると睡眠障害
を招き、首、肩、背中、腰の筋肉を固く強張らせます。

またこの状況は、脳内の神経伝達物質や脳内ホルモンを大量に消費する事に
なります。脳の神経伝達物質や脳内ホルモンは、主に肝臓で作られ、脳に運
ばれ、脳で使われてまた肝臓に還り分解されます。そのために、これらの物質
の大量消費は、肝臓に多大なる負担をかける事になり、次第に肝臓の機能を
低下させる事になるのです。体は、肝臓の機能を元に戻す対応として肝臓に
大量の血液を集め、また熱を発生させて機能の回復を図ろうとします。血の塊
のような大きな臓器である肝臓に大量の血液がとられる事は、全身の血液の
配分を乱し、大量の血液を消費する脳に血液の供給不足を起こすのです。

脳内に血液が不足すると、少ない血液を脳全体に早く巡らせる対応として、脳
圧を上昇させていきます。これが脳圧上昇の一因となります。また脳圧上昇の
持続により、熱も発生していきます。これが全身の血液の配分が乱れる事に
よる脳の 熱と脳圧上昇の理由になります。さらに、肝臓の機能低下は、内包す
る胆嚢の機能低下ももたらします。体は胆嚢の機能を回復させるために、 軽い
炎症を起こす事で対応します。胆嚢に炎症が起こると、一時的に胆嚢の袋が腫
れて、収縮が制限されます。袋が収縮できない事により、胆汁の分泌が途絶え
ます。胆汁の働きは、その極めて苦い成分により、体の炎症を鎮め、血液の熱
を冷ます作用を担っています。この働きの低下により、血液は熱を帯び、熱変
性によって赤血球の連鎖が発生し、ドロドロでベタベタの血液になるのです。
これは全身及び脳内の毛細血管の流れに停滞と詰まりを引き起こします。毛細
血管に熱をもたせ、熱の蓄積の一因となります。また血液の質を低下させ、体
内や脳内に毒素を 作り出す要因となるのです。体は脳内の毛細血管内の流れ
の停滞や詰まりを押し流す対応として、脳圧を高めざるを得ないのです。これが
脳圧の上昇を生み、熱の発生にもつながっているのです。また狭い閉鎖された
脳内にドロドロベタベタ血液が滞る事で、非生理的血液(東洋医学では瘀血=毒
素)となり蓄積されるのです。これが脳内に毒素が蓄積する理由になります。
さらに全身の毛細血管の流れに停滞と詰まりが発生すると、これを流す対応とし
て、心臓のポンプに負担がかかります。これが更に心臓の機能を低下させてい
きます。

また全身の毛細血管が熱をもつ事で、これを排出するためにアトピー性の皮
膚病やじんましんが発生します。ドロドロベタベタ血液と質の低下した血液(毒素)
は、肝臓の解毒作用にも大きな負担をかけ、ますます肝臓機能を低下させてい
きます。以上が全身血液の循環、配分、質の乱れが、脳内に熱や毒素を蓄積し、
脳圧の上昇をもたらした根拠と機序になります。

また同時に肝臓、胆嚢や心臓の機能低下が相乗的に働いて脳内に熱や毒素の
蓄積と脳圧の上昇ををもたらす原因となっていたのです。これらの関わりが明ら
かになる事で、どう対処すれば良いかが見えて来ます。根本原因の精神的スト
レスを取り除く事はすぐには出来ませんが、体への影響を最小限に食い止め、
脳腫瘍を作る必要がない体の状態に持っていく事は可能です。脳の熱と毒素
の蓄積と脳圧の上昇の直接的な要因となっている、さらに全身の血液の循環、
配分、質の乱れを整えるためには、肝心要に相当する肝臓、胆嚢と心臓の機
能低下を元に戻す事が不可欠です。さらに全ての病の背景に存在するその
人自身の生命力や免疫力を高める事も必要です。また脳の熱と脳圧の上昇を
除去するための脳自体の療法も大切です。

生命力とは細胞新生力に置き換えられます。免疫力とは造血力になります。
細胞新生と造血は共に人体の骨髄で行われています。生命力や免疫力を高め
るためには、骨髄機能を発現させるで回復していくことができます。日本伝承
医学の治療法は骨髄機能を発現する目的で構築されているため、適した治療法
になります。

また内臓的には、肝心要を主体に技術が構成されています。肝臓(胆嚢を含む)
と心臓の働きを高める事で、全身の血液の循環、配分、質の乱れを整える事
が出来ます。さらに家庭療法として推奨する頭と肝臓(胆嚢を含む)の氷冷却法
は、直接的に脳腫瘍に作用します。脳の熱と脳圧の上昇を抑え、肝臓の充血と
炎症を鎮める作用があります。そして脳の熱と脳圧の上昇を除去する方法とし
て、額と左の首の冷却を行ないます。以上の統合的な取り組みで原発性脳腫瘍
の治療を行なっています。原発性脳腫瘍の本質を正しく認識し、処置の選択を間
違わないで頂きたいと思います。

≪参考文献≫:『シリーズ病気をとらえなおす』~
             文責者:有本政治
              発行:有限会社日本伝承医学研究所
             発行日:2004年4月14日

   脳・心臓の血栓症について

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