日本伝承医学のてんかんの治療
 

脳の神経細胞に突然発生する激しい電気的な刺激により発作
が起きることをてんかんと称します。発作時に脳波を測定する
と、脳内の電流の乱れから異常な波(棘波)がみられます。発作
が起きていない時にも棘波がみられることがあります。診断は
頭皮にいくつかの電極を装着して、脳の神経細胞の電気的活動
を、波形として記録します。この波形に異常がみられた場合に
てんかんと判定されます。
 脳内はニューロンと呼ばれる神経細胞がシナプスを介してつ
ながり、電子回路のようなネットワークを作って情報を伝達し
ています。脳神経細胞は、通常は規則正しいリズムで調和を保
ちながら穏やかに活動します。ところが脳に炎症が起こると、
脳細胞がくるい情報伝達がうまくできなくなります。脳は熱に
最も弱い臓器だからです。
 脳はこの状態を緊急事態と察知し、炎症を回避するため、脳
内に急速に血液を廻らせ修復を図ろうとします。強い電気信号
(
電気ショック)を送り、発作を起こさせるのです。脳の回路を
一時的にショートさせて意識を失わせ、横たわらせ、脳内の血
流を確保するのです。

 電気の容量が規定量以上になると回路焼失を防ぐ為に、電気
のブレーカーが落ち、強制的にショートします。人間の体も同
様で、脳疲労が限界に達すると、脳の熱が急上昇し脳細胞が
死滅してしまうので、それを回避するためにショートさせるの
です。日本伝承医学では、このように体に起きる症状を、正へ
の対応の姿として捉え対処していきます。

【てんかんの症状】
 てんかんは脳の慢性疾患と言われ、意識消失やけいれん等の
発作が繰り返し引き起こされます。発作の現われ方は幅が広く、
神経細胞の異常興奮が生じる部位や強さによって異なります。
発作の分類として、脳全体が同時に巻き込まれる全般発作と、
脳の一部から発作が生じる焦点性発作(部分発作)があります。
 焦点性発作は、発症部位が司る機能に異常が現われます。
手足の運動を司る部位に発症すれば、手足のけいれんが生じま
す。手足をけいれんさせ震わせることで、脳へ血液を促してい
るのです。視覚を司る後頭葉に発症した場合は、視覚や視野の
異常が生じます。一瞬目の前が真っ白になり、光が遮断されま
す。これは光を入れない事で脳圧の急上昇で脳内の血管が切れ
るのを防ぐ対応になります。側頭葉等に電気ショックが波及し
た場合は、開眼したまま意識を失うこともあります。一瞬にし
て目を閉じる神経が遮断されるからです。

【日本伝承医学の治療がなぜ有効か】
 私たちの体には神経が張りめぐらされ、その神経内を微弱な
電気が流れることで様々な情報が伝播されていきます。神経伝
達の司令塔は脳の中枢部である脳幹部になります。ストレスや
心労、過労、睡眠不足等でこの脳幹部に熱がこもると(脳の炎
)、中枢部の指令が狂い脳の神経細胞が正常に働かなくなり
ます。
 正常時は微弱な電気になりますが、脳の神経細胞が正常から
逸脱すると、脳はこれを異常事態とみなし、脳細胞は一斉に強
い電気を発します。激しい電気を発することで、脳内の虚血
(血液不足)を回避し、隅々まで急速に血液を送り込もうとする
のです。てんかんによるけいれんは、血液を速やかに脳内にめ
ぐらせようとしている命を守る対応として捉える視点が必要で
す。

 日本伝承医学では骨に圧や振動を与えることで微弱な電気を
発生させ、血液の循環・配分・質を整え、脳への血流を促し脳
の虚血を改善し、てんかんをおこさなくてもよい脳の状態にし
ていきます。治療は2週間に1度のペースでの受診になります。
受診時に家庭療法としての局所冷却法の指導が入ります。頭部
(ひたい、首筋、後頭部等)と肝臓の局所冷却法を併用していく
ことで、脳の炎症を除去し脳の神経細胞を正常に復し脳波を正
常に保ちます。

【日本伝承医学は心臓中心の医学】
 日本伝承医学では心臓調整法により低下した心臓のポンプ機
能を高め、血液の循環を守り、肝胆の叩打法で肝臓(胆のう)
能を高め、血液の質を改善し、血液の循環・配分・質を整えて
いきます。
 私たちの体は心臓のポンプ機能が低下すると、頭部に血液を
送り込めなくなり脳に虚血(血液不足)が起こります。血液を
いち早くまわす対応から、脳がオーバーヒート状態となり熱
(
炎症)をおびてしまいます。つまり脳の炎症を回避するには
まず心臓のポンプ作用を高めなければなりません。人間の脳は
単独で働くのではなく、このように心臓や肝臓(胆のう)との
関わり合いの中で、命を保っているのです。

≪参考文献≫ 有本政治著:日本伝承医学家庭療法
             「脳疲労
             「日本伝承医学の真の健康法