≪よくある質問≫ ※今回は痛み止めの薬の話になります
薬はやめたほうがいいでしょうか?薬の量をへらしたいので
すが?薬はできるだけ飲みたくないのですが?今は服用してい
ますがいつかはやめていきたいのですが等という質問をよく受
けます。当院ではまず自分がどうされたいかを聞きます。不安
だから服用を続けたい方には、治療と併用でいきましょうと
お話しします。量を減らしたい方には、あせらないで時間をか
けて少しずつやっていきましょうと話しています。
体は必要な対応として病状を発症させているので本来は熱を
薬で下げたり、痛みを鎮痛剤等で封じ込めるのは自然な形では
ありませんが、ずっと服用していた薬を自己判断で一気に止め
てしまうのもよくありません。薬はやめるのではなく、必要と
しない身体をつくっていくことが望ましいのです。
【痛み止めの話】
私たちの体は炎症が起きて細胞がダメージ(損傷)を受けると、
その部位を治すための防御反応が起こります。38.3度以上の
高熱を出して免疫機構にスイッチを入れ回復をはかったり、
痛みを起こして患部に血液を集めて回復させようとします。
発熱や痛みは警告サインで生じているので、まだ常用してい
ない場合は、極力封じ込めないようにしていきます。
発熱や痛みを、解熱剤や痛み止め(鎮痛剤)等を用いてしまう
と、炎症を引き起こして二次的な細胞のダメージを阻止しよう
とする働きが阻害されるので、病状はますます深部へと進行し
てしまいます。また長期に及び服用すると、体は化学物質(薬
剤)を異物と判断し白血球の数値をはねあげ、急性白血病等を
誘発させてしまう場合もあります(短期間の服用でも免疫力が
極度に落ちている場合は血液組織が破壊されやすいので要注意
です)。
すべての病状は炎症から始まり、炎症は体を守るための対応
になります.化学物質を用いなくてもいいようにするためには、
炎症を起こさなくてもよい体にしていくことが大事なのです。
そのためにはどうしたらいいのでしょうか。
まず自分自身でできることは就寝時の氷枕での後頭部冷却です。
一日の終わりに疲れきって熱をおびている脳の炎症を除去する
ためです。脳に炎症が起きると脳幹(脳の中枢部)の働きに支障
が起こり、正常な神経伝達物質が発令されなくなります。痛み
が記憶されたままになってしまうのです。
だれでも必ず脳に炎症は起こります。それは人間は頭を使っ
て考える生き物だからです。氷枕と併用してアイスバッグでの
首筋、額(ひたい)、患部の冷却も行ないます。首筋から冷や
すことで脳に冷たい新鮮な、サラサラの血液を送ることができ
ます。就寝時の肝臓冷却も必須です。疲れると肝臓は充血して
熱を帯びるからです。熱を帯びると肝臓は機能低下し、神経
伝達物質のバランスが崩れ、痛みの調整ができにくくなります。
小さな痛みでも強く感じてしまうのです。熱(炎症)を除去する
ためには肝臓の局所冷却法が有効です。
肝臓の充血や炎症は重症でなければ血液検査では異常とみな
されないので気づきにくいのですが、血液検査の肝臓の数値
(AST/ALT)で異常と記されたときは肝細胞が壊れてしまった時
で、病状がかなり進行している状態になります。充血や炎症が
起きている初期の段階でしっかり肝臓冷却を行なうことによっ
て進行を食い止めることができます。脳の炎症も重度にならな
ければMRIでは写らないので初期の段階で家庭療法としての頭
部冷却を日課として行なうようにします。
生活習慣で気を付けることは、できるだけ早く寝て横になる
時間を多く設けるようにします(日中でも可)。内臓を休ませる
ためには重力から解放させてあげなければなりません。座る
姿勢や立っていては体は休まらないのです。また、一週間に
1~2日はボーッとする自分だけの時間を持つように心がけます。
仕事や家事、行事や予定に追われる日々は脳を酷使し、脳の
炎症を助長させてしまいます。
戦後の高度経済成長期には,仕事も学校も週6日があたりま
えでした。1970年頃から週休二日制が導入され、1980年代には
「ゆとりある生活」が社会テーマとなり、週二日休みをとった
方が健康には良いと言われるようになりました。しかし育児や
介護には休みがありません。ひとりで抱え込まないで誰かと相
談、協力して、支援やサービス等を頼り、自分の精神の状態と
健康を第一に考えることから始めるようにしてみます。
≪参考文献≫ 文責:有本政治
『家庭療法としての局所冷却法』(2005年発行:有限会社日本
伝承医学研究所)
『発熱を捉えなおす』(2005年発行:有限会社日本伝承医学研究所)
「横たわることの重要性」
「薬剤アレルギー」
日本伝承医学の治療では肝胆叩打法で肝臓の充血、炎症を除
去し痛みを緩和します。肝臓機能を改善することで痛みを抑え
るエンドルフィン系(脳内の鎮痛に関わるネットワーク)の働
きをよくし、痛みを軽減させます。
痛みはプロスタグランジンという情報伝達物質が神経を刺激
して痛みを感じるようにしています。痛み止めを服用し続け
ると、体は痛みにどんどん敏感になり、薬効が切れるとリバウ
ンド現象が起きて、痛みをより強く感じるようになってしまい
ます。
痛みや炎症を起こすプロスタグランジンの生成を抑える薬に
はイブプロフェン(ややマイルド)、ロキソニン(やや強め)、
ボルタレン(かなり強め)等があります。これらを服用すると
痛みが感じられなくなるのでよく眠れるようになります(間接
的な誘眠効果)。本来は痛みによって夜中に目が覚め、トイレ
に行くので血行不良にならずにすみます。ところが薬を服用し
てしまうとよく眠れてしまうので、朝起きたときには血流が
悪い状態になり、しびれや麻痺、強い痛みを引き起こすように
なります。
夜中に何度も目が覚めてトイレに行くことは悪いことではな
く、寝ている間に血行不良にならないようにしている対応なの
で、目が覚めたらそのまま布団の中でじっとしていないで一度
起き上がり歩くようにします。立ち上がることで血流や循環が
良くなります。
日本伝承医学では体に起こる症状は悪いことではなく正への
対応として捉えています。西洋医学と併用しているかたも多く
来院されています。薬と併用されている場合は、肝臓の解毒作
用に負担がかかるため、良い脳内物質が生成されにくく回復ま
でに時間を要しますが、治療と併用していくことで復調を目指
します。