腹膜炎の本質 2023.5.20.有本政治

 腹膜とは胃、肝臓、腸管、子宮、卵巣等の腹部にある臓器の
表面を覆っている膜になります。これらの臓器は蠕動(ぜんどう)
運動や収縮運動を行なっていて、腹膜はその動きを滑らかにして
臓器を保護しています。腹膜には多くの血管やリンパ管が走行し、
腹膜に炎症が起きた症状を腹膜炎と言います。重症になると
敗血症や多臓器不全に移行し死に至る場合があります。
 腹膜炎は、炎症を起こす事で血液を集め白血球を一気に増加
させ、その部位を回復させようとする対応になります。腹部は
免疫の要(かなめ)で、この部位に炎症が起きるという事は、
免疫力と生命力が著しく低下している事を意味しています。
 腹膜炎は体が弱っている警告サインになりますので初期症状
がみられた段階で生活習慣に気をつけます。みぞおちや腹部全体
にかけて、背部から腰部にかけて違和感や痛み倦怠感等が生じ
たら、就寝時間を早め、横たわる時間を増やし、充分な休養を
とり養生するようにします。
 体は最後まで命を守る対応をとります。何段階もの警告を発し
て症状を進行させていきます。警告を無視し続けた時に重篤な
病状へと移行していくのです。

【続発性腹膜炎】
 最も多い腹膜炎の症状になります(腸管穿孔、胆のう炎、
急性膵炎、卵巣炎等)
腸管神経系には、消化管の収縮運動に関わる神経と粘液の分泌
や絨毛運動に関わる神経があり、自律神経系と密接に関わって
います。
 腸管(消化管)は神経を介して(自律神経)脳とつながっている
ため、心労や過労等によるストレスで炎症を起こしやすい部位
になります。家庭療法としての頭部と肝臓、患部の局所冷却法
が有効になりますので日課として行なうようにします。
≪参考文献≫有本政治:著 「家庭療法としての局所冷却法」 

【日本伝承医学/漢方医学的考察】
 日本伝承医学では腹膜炎は小腸の弱りとして捉えています。
心臓と小腸は表裏(ひょうり)の関係にあり、心は「君火(くんか)
小腸は「相火(そうか)」と表現し人体の火()エネルギーの元を
意味します。心が主で小腸は従の関係を表わしどちらも体の熱源
として機能します。
 小腸の働きは、腐熟されたおかゆ状の食べ物から栄養分を吸収し、
血や肉とします。血液は骨髄の中で作られていますが、実は小腸
も造血機関になります。
 漢方医学においては生命力の盛衰を診断する場所として小腸の
反応の一番表われる臍下(さいか)3寸に位置する「関元穴(かんげん
けつ)」を触診して、この部位が力なくへこむ場合は、生命力が
極度に低下していると判定します。またこの場所は丹田(たんでん)
と言い、力のエネルギーの発現場所とされています。
≪参考文献≫有本政治:著「丹田の意味

 人体の土台は骨盤と二本の下肢で構成されていて骨盤を連結
する股関節の骨頭部は頚体角と言い「くの字」型をしており、
この角度は120度となっています。円を三分割する120度分率と
一致しています。つまり人体にかかる重力を一番合理的に分散
できる構造を骨盤内に作り上げているのです。
 上体からの垂直圧と両肢関係からの120度分率の交わる場所が
丹田になります。人体の機能の中心と構造形態としての中心が
臍下3寸の場所としての小腸にあたります。故に小腸の弱りは
生命力に直結しており、ここに炎症が起きるという事は、命の
危険に直面していると捉えるべきであります。
≪参考文献≫ 有本政治著:『日本伝承医学と漢方医学との関連性
               200498日発行
          発行:有限会社日本伝承医学研究所

           リハビリテーション科「臍痛