頸椎の変形に関する考察

※頸椎症、ストレートネックの方は『人体積木理論』を始めからお読み下さい。

 人体に起こっている姿勢の歪みを前後面に限定して、椎間板ヘルニア
を捉えなおしました。脊柱の正常な生理的カーブの逸脱は一般の腰痛、
椎間板ヘルニア、腰椎分離症、腰椎すべり症を発生させる根拠と機序に
なることは、ご理解いただけたと思います。
 この生理的カーブの逸脱は、当然腰椎のみに起こるわけではありませ
ん。積木の積み方を倒れないようにするためには、特に上部で修正しな
くてはいけません。積木が後方に後方にずれて積まれていけばある段階
で倒れてしまいます。これを倒れないようにするためには、上部で前方へ
前方へと積み直し、重力線上でバランスを取らなくてはなりません。

 この姿が、人体に置き換えれば、頭部や首を前方に凸出させたり、肩
を前方に移動させたり、逆に頭部を浮き出させたり、もっと修正不可能で
あれば受け口にしてあごを前方に凸出したり、出っ歯にしたり、また女性
の乳房を大きく重くすることで、前方への荷重を作り出したりと重力線上
への対応処置を講じているのです。これは当然、上部脊柱であります頸
椎の正常な生理的カーブを逸脱させることになってきます。
 この状態の長期的持続は、頸椎の椎間板の変形、椎骨自体の変形を
余儀なくしていきます。頸椎は7個の椎骨で構成され、その上には重い
頭部をのせています。頭部の重さの圧をうまく分散させるために、前方に
湾曲させて頸椎アーチを作っています。
 このアーチの回転半径(前湾カーブ)は下につながっている胸椎の後湾
カーブ、腰椎の前湾カーブと連動しながら、理想的な生理的カーブを形成
しています。故に理想的な回転半径(前湾カーブ)を必要とします。この回
転半径(前湾カーブ)が正常より逸脱すると重い腰部を支える支柱として
の作用、また応力を分散する作用を失っていくことは必然です。


 構造体としてのアーチ構造は(足の関節が代表的)は、重さを分散する
には理想的な構造です。故に古代より「橋」の構造はめがね橋といって
アーチ構造で作られることで強度を確保しているのです。現代の橋は、
逆アーチ構造をとっていて、アーチ型のワイヤーロープで2点間をつなぎ、
そのアーチ型のロープに橋をつり下げるという逆アーチ構造をとっていま
す。これも重さの一点集中を防ぎ、分散できる理想的な構造です。



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