この頸椎、前湾アーチにひずみが生じますと重い頭部の圧力が一点に
集中してきます。このアーチのくずれを古代のめがね橋(アーチ橋)に例え
て考察してみましょう。7個の石で構成されているアーチ橋だとします。
アーチ構造は、上からの重さの圧力に対して力を均等に分散できる理想
的な構造体です。これが、上からの力でなく両端(左右)から中心に向かっ
て力が作用しますと7個の石で作られているアーチ橋の頂点部は一番う
すく、構造的に横からの力に対しては、一番もろい部分です。上からの力
にはアーチ構造は理想ですが横からの力に対しては、もろくも崩れ去るの
です。7個の石で作られていて、左右3個づつでアーチ型を作るとトップに
のっかっている石が左右の応力によって浮き上がり、アーチ橋はいとも簡
単に崩れてしまうのです。


 これと同様のことが頸椎の前湾アーチにも起こってくるのです。正常な
カーブの逸脱によって、頭部のトップにある頸椎4番に集中的に加わり、
頸椎の4番を前方に浮き上がらせてしまう力として作用します。これは重
大な構造体の破壊につながってきます。人間が生きていく上で致命的な
構造破壊になってくるのです。
 これはどうしても防止しなくてはなりません。そのための応急処置として
アーチ構造を守るためには、アーチのトップにあたる頸椎4番とその下の
頸椎5番を変形させて、二つの骨をくっつけることによって強度を増し、頸
椎4番の凸出をくい止めている姿なのです。必要な対応としてわざと変形
融合させていくのです。
 これも命を守る対応であり、必要な変形処置にあたるのです。さらに、
補強が必要であるなら、その下の頸椎6番までも変形融合させられる処
置を人体はとっていくのです。すべて、イノチを守り、脊髄神経の引き伸
ばしを守り、アーチの破壊をくい止める必要不可欠な対応処置であること
を認識していただきたいのです。


 人体に起こっている変形は、悪い対応ではなく、すべてイノチを守るた
めの対応であるのです。
 この視点の欠落が、数々の悲劇的な“医原病”を作り出していってるこ
とに気づいてほしいのです。
 故に脊柱の生理的カーブを逸脱したタイプの人は、X線で頸椎の写真
を撮るとほとんどの人が、頸椎の4番、5番間に狭窄、変形、融合が見つ
かるのです。そして脊髄神経がでる椎間孔が狭くなっているという指摘
を受け、変形性頸椎症という“悪”の診断を下されるのです。

次のページへ