足底腱膜炎

 足底腱膜(そくていけんまく)には足のアーチ構造を支える重要
なクッションの役割があります。足指の付け根から踵(かかと)
の骨まで、足の裏に張られている強靭な腱(けん)の膜で、ここ
に炎症が起きた状態を足底腱膜炎と言います。 
 腱とは骨に筋肉を付着させている強力な結合組織繊維束のこと
をさします。筋肉と骨をつなげていているので筋肉の両端は必ず
腱になっています。
()骨と骨をつなげているのは靭帯(じんたい)になります。
 
 足底腱膜は圧迫力と牽引力(けんいんりょく)により、負荷が
かかります。圧迫力とは足裏にかかる荷重と足を着地させた時
の衝撃の力で、牽引力は足を蹴り出す時に引っ張られる力のこと
を言います。特別にスポーツをしていなくても、足底腱膜は
立位時や歩行時等、日常生活において常に負荷がかかる部位に
なります。
 足底腱膜炎になる引き金は過労、歩きすぎや長時間での立ち
仕事、家事、過度な運動量、オーバーワーク等(ハイキング、
ジョギング、登山、ショッピング旅行等)が挙げられますが、
背景には心肺機能(心臓と肺の機能)の低下による体のねじれが
必ず存在します。
身体のねじれのゆがみから、上体のねじれが
下肢に及び、足のアーチ構造に一点応力が生じることで破壊が
起こります。ベタ足、外反母趾、舟状骨突出等も同様の機序で
発生します。
 足底腱膜に炎症が起きると、歩行時に踵や足底が着地する時
に痛みが出ます。痛みは急激に起きることがあり、足裏にとげ
が刺さっているような激痛を感じる場合もあります。根底要因
に心肺機能の低下があるので回復には日数がかかります。違和感
や痛みが少しでも残る場合は無理をしないでしっかり養生して
いかないと症状を長引かせることになります。

【足底腱膜は足のアーチ構造を守る】
 足のアーチ構造には、足が接地し荷重が加わった時に地面から
の衝撃を吸収、緩和し、足や腰だけではなく、体全体にかかる
負担を軽減する役割があります。アーチが弾力性を保てるのは、
足底腱膜が踵骨から足指に向かい扇状に張っているからになり
ます。
 心臓のポンプ作用が低下すると、ふくらはぎの筋肉ポンプが、
心臓ポンプを助けるために懸命に働かなければならなくなります。
アーチはふくらはぎとすねの筋肉と腱によって支えられている
ので、ふくらはぎに必要以上に負荷がかかればアーチ構造にも
障害が起こります。足のアーチ構造が
障害され、地面からの
衝撃をうまく吸収できなくなると、足裏に炎症が
起きやすく
なります。
 足底腱膜にかかる力を軽減する目的で、足のアーチを補強する
ためにはテーピングも有効となります。

【足のアーチ構造が崩れる原因】
 足のアーチは、靭帯によってばらけないように固定された、
アーチ型の骨組みになります。外側縦アーチ、内側縦アーチ、
横アーチの
3つのアーチで成り立ち、このアーチ構造が崩れる
という事は、靭帯が伸びたりゆるくなったりすることで構造が
破綻していくことを示します。一度伸びた輪ゴムが元に戻らない
ように、ゆるくなった靭帯を戻すことは難しいため、アーチを
とり戻すためには筋力をつけていかなければなりません。
ふくらはぎに筋肉をつけるには、毎日のつま先立ちが有効になり
ます。アーチ構造が崩れる根本的要因には心肺機能の低下に
よる体のねじれのゆがみがありますが、直接的要因としては
下記項目が挙げられます。
    筋力の低下、筋力不足
    加齢や運動不足(歩行不足)
    疲労、過労、心労、精神的ストレス
    歩きすぎ、動きすぎ等のオーバーワーク
    水の摂取不足、食生活の偏りによる血液の質の低下
 足は脳や心臓から最も遠い位置にある為、血液が心臓まで戻り
にくいため、血液の循環を助けるために足が歩行時に血液を押し
上げるポンプ作用の役目を分担しています。足を上げる時の
筋肉の収縮弛緩によりポンプ効果が起き、心臓、脳へと血液を
還すことができます。この大事な役割を担っているのが足の
アーチ構造になります。心臓ポンプ作用と同じような働きが
あるため、足は第二の心臓と言われています。

【日本伝承医学からの考察と対処法】
 心臓のポンプ作用が低下すると、第二の心臓の役割を担う
ふくらはぎの筋肉ポンプがフル稼働します。これを更に助ける
対応が踵をつけなくして、つま先歩き(つま先立ち)をさせ、
ふくらはぎの筋肉の収縮をより強く作動させるのです。回復の
ためには根本的要因である低下した心臓機能を元に戻す必要が
あります。足底腱膜炎は足裏のその部位だけを診ていては完治
できません。
 日本伝承医学では基本操法によりまず身体のねじれのゆがみ
を除去します。心臓調整法を用い低下した心臓機能を復し、
個別操法として各種足の操法を使用します。足底腱膜炎の炎症
を除去するためにアイスバッグによる患部の局所冷却法も有効
になります。  ≪参考文献≫有本政治:著「局所冷却法


                     「足底筋膜炎の本質と対処法