血糖値が高いのはどうしてか?

 日本伝承医学は東洋医学の分野になります。西洋医学は病気を
局所で診ていき薬や手術で治療します。東洋医学では病状を体全
体の関連の中で捉え、根本要因から見直し、生命力と免疫力を高
めることで症状を改善します。近年では西洋医学と東洋医学を融合
して体を診ていく総合医療の考え方が浸透しています。どちらが正し
いかではなく大切なことは、最終的には自分が何を選択してどうした
いかを自分自身で考え、決断していくことだと思います。

≪語句の説明≫
HbA1c(グリコヘモグロビン)
グリコヘモクロビンとは血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンに
ブドウ糖(グリコース)が結合したもので、血糖値が高くなるとグリコヘ
モクロビンの割合も増えます。

〇ヘモグロビン
赤血球の中にあるたんぱく質で酸素を運ぶ重要な役割があります。

※血液は血漿(主に水分)と血球(赤血球・白血球・血小板)で構成さ
れています。これらの成分がバランスを崩し、血液の質が低下する
背景には、「胆汁の分泌不足」が挙げられます。精神的ストレの持
続で肝臓機能が低下すると内包されている胆のう昨日も低下して胆
という汁分泌不足を招き血液の質が低下しバランスがくずれてしま
うという摂理を覚えておきます。

(Q)やせていて甘い物もそんなに食べていないのに、HbA1cが高いと
いう健康診断の結果が出てしまいましたが、なぜでしょうか?

(A)太っていて甘い物を食べすぎるから血糖値が高くなるという考え
方は一部の捉え方であり根本的な要因ではありません。
 血糖値が上がる背景には精神的ストレスの持続により自律神経の
バランスの乱れが存在しています。自律神経には交感神経と副交感
神経がありますがこの二つは拮抗的に働きます。 副交感神経には
血糖値を抑える作用があります。ストレスを受けて交感神経が優位
になると副交感神経が抑制されるので、必然的に血糖値が上昇しま
す。血糖値が上昇すると膵臓(すいぞう)にインスリンを分泌しなさい
という指令が出ます。インスリンは血糖を下げる唯一のホルモンだか
らです。
 血糖を下げるためにインスリンをもっと出さなければいけないと膵臓
が過剰に働くためますます負担がかかり膵臓機能は弱っていきます。
膵臓のβ(ベータ)細胞が壊れ、ついにはインスリンが出せなくなり、
血糖が下げられなくなります。ここまできて糖尿病という診断がくだり
ます。
 食生活を気を付けることも大事ですが、血糖値が高くなりはじめた
時点で、交感神経の緊張を和らげ、自律神経のバランスを整えなけ
ればなりません。
 日本には自律神経調整法という技法が太古の時代から伝承されて
います。手技療法で脳内の炎症(熱のこもり)を除去し自律神経を調
整して交感神経の緊張をとり去り、血糖値の上昇を抑える手法です。
家庭療法としての頭部の局所冷却法を併せて行うことで著効を示し
ます。体はこのように数値だけをみていくのではなく、その根本要因
を探り、重症化する前に対処していくことが大事です。

【私たちの体の話】
 血糖値が高くなる背景には、精神的ストレスの持続による肝臓(
のう)機能の低下、それに伴いすい臓、胃腸等の各臓器の機能低下
があります。
 人間はストレスを受けると瞬時に肝臓が充血して機能低下を引き
起こします。そして肝臓に内包(隣接)されている胆のうから胆汁(
んじゅう)が分泌されなくなります。人の病気や不調のほとんどは、
精神的ストレスの持続による脳の炎症、肝臓の充血から生じる胆
汁の分泌不足から始まるといっても過言ではありません。
 胆汁には脂肪の分解消化や血液の熱を冷ます大事な役割があり、
分泌不足になると膵液(すいえき)や胃液に大きな負担がかかってし
まいます。胆汁の代わりに膵液と胃液が過剰に働くため膵臓と胃に
負担がかかるのです。
 胆汁が出なくなると脂肪が細かくならないので水に溶けにくくなり、
膵液のリパーゼ(脂肪分解酵素)が正常に働かなくなります。消化
不良の状態になり胃に食べ物が長く滞在するようになるので、胃に
も常に負担がかかります➡胃痛、胃もたれ、膨満(ぼうまん)感、食
欲不振等が発症。
 本来胆汁と膵液によって脂肪は十二指腸で分解され小腸で吸収
されますが、胆汁が分泌不足になると大きな脂肪分子のまま腸へ
移動することになります。小腸の細胞は小さく分解された脂肪酸、
モノグリセリドしか吸収でないため、未消化の脂肪は吸収されずに
腸内に異物として残ってしまいます。この異物が有害物質を生じさせ
腸にダメージを与え炎症を引き起こします➡腹痛、下痢、便秘、
血便、腹部の張り、ガスがたまる等が発症。
 腸の炎症が慢性化すると潰瘍性大腸炎、過敏性腸症候群、腸管
ベーチエット等を発症する場合があります。重症化する前に腸の炎
症を除去するためには、その大元となる肝臓の機能を正常に復し、
胆汁の分泌を促進していかなければなりません。そのためには家
庭療法としてのアイスバッグを用いた頭部と肝臓冷却が必要です。
冷却によって脳の炎症、肝臓胆のうの炎症が除去され胆汁の分泌
が促進されるからです。血糖値が高くなっているときはこのように肝
臓、胆のう、すい臓、胃の臓器が関わっているということを認識して
いきます。

【病状、不調を改善するためには】
 病気や不調のほとんどは、精神的ストレスの持続による脳の炎症、
肝臓の充血から始まります。脳幹(脳の中心部)から発令される自律
神経は、脳内に炎症が起こるとバランスを崩します。自律神経は心
拍、脈、呼吸、血圧、消化、排泄、代謝、体温、情緒等の生命維持
に必要な機能を調整しているのでバランスがくずれたときに人は病
気になります。
ではそうならないためにはどうしたらよいのでしょうか?
 私たちは人と関わりながら生活していく以上ストレスをなくすことは
できません。それならば、脳内に炎症が起きないようにすればいい
のです。そのためには就寝時に後頭部を氷枕で冷やして、眠ってい
る間に、脳の熱のこもりを除去して脳内温度を下げなければいけま
せん。
 脳内温度を下げるために脳内に冷えた血液を送り込むには、氷枕
とアイスバッグでの後頭部、ひたい、首すじの冷却が必須です。 血液
は熱をおびると(血熱)、赤血球同士がくっついて、べとべとでどろどろ
になるので脳の血流が阻害されます。脳内の熱のこもりを除去し脳内
の血流を改善するためにも冷却は毎日おこなうようにします。

≪睡眠≫
 人はストレスを受けると体は交感神経緊張状態になります(交感神
経が優位な状態)。心がいつも緊張していてリラックスできなくなります。
交感神経が緊張しているので眠っているときも深い眠り(ノンレム睡
)につけなくなり、浅い眠り(レム睡眠)を繰り返します。眠りの質が
低下するので就寝時に体が回復できないため、朝起きたときにだる
く、疲れがとれません➡頭痛、頭重感、めまい、気分の落ち込み、記
憶障害、疲労感等を発症。
 眠りの質をあげるためには就寝時に脳内温度を下げることです。脳
内温度が上がると自律神経が乱れて交感神経が緊張し深い眠りに
つけなくなるからです。つまり深い眠りにつくためには、日課として氷枕
で後頭部を冷却することが重要になります。

≪胃腸≫
 胃腸はストレス等で交感神経が優位になると機能低下します。胃腸
は副交感神経の支配を受けている臓器だからです。副交感神経は
休む、リラックスする、回復する、消化するモードの神経系のため、交
感神経が優位になると胃腸本来の働きができなくなってしまいます。
 交感神経が緊張したときに、胃痛、胃もたれ、胃がむかむかする、
膨満感、下痢、便秘、おなかがはる、食欲不振、異常食欲等の胃腸
障害が起きるのです。交感神経の緊張を和らげるためには脳内温度
を下げることが必須になります。

≪肝臓≫
 ストレスを受けると肝臓が瞬時に充血し、血液が肝臓に集まるため
脳が虚血(血液不足)になります。脳が虚血になると脳が養われなくな
るので自律神経がバランスをくずし、体の生理機能が低下していきま
す。肝臓の局所冷却が有効になるのは、充血して炎症を起こした肝
臓の熱を除去するためになります。

※病気や症状は「炎症」という症状から始まります。重症になる前に
いかに脳内の炎症、肝臓の充血(炎症)を除去できるかで、症状が
悪化するのを防ぐことができます。家庭療法としての頭部と肝臓の
冷却は受診時に指導しています。

  ≪参考文献≫ 著:有本政治
     
     『家庭療法としての局所冷却法
     『血糖値』をとらえなおす
     「日本伝承医学の糖尿病の治療