股関節障害と変形性股関節症について〜運動障害や変形は悪なのか
                           2015.11.20. 有本政治

<股関節障害と変形性股関節症が難治な理由>

股関節は、下肢において膝や足関節と違って、体幹部の骨盤に直接つながる関節
になります。そのために、股関節に痛みや運動制限が起きると、歩行が著しく困
難になります。跛行(はこう)を呈し、足を引きずるような歩き方になります。
,
近年股関節障害に悩む方が激増しています。また変形性股関節症で人口骨頭へ
の置換手術を受ける方も増えています。ただ何故股関節障害や変形性股関節症
になるのか、原因は確定されていません。手術をしても、一時的には改善は見られ
るものの、予後は良好とは言い難いのが現状です。
これは股関節障害と変形性股関節症の真の原因が捉えきれていない事が背景に
あるからです。またもっと根源的な問題は、股関節の運動障害や変形を一方的に
”悪”と決め込んでいる固定概念が存在していることです。この固定概念を一度白
紙に戻して考えてみる事が必要です。運動制限や変形は、果たして悪なのかと言う逆
転の発想の中から、その本質が見えてくるのです。また股関節を局所的にみる
のではなく、体全体との関連の中から捉える事が必要になります。


<これまでの症状の捉え方を転換する事で、本質が見えてくる。生きている体の
起こす反応の全てには意味がある。大切な機能は最後まで守る>

これまでの固定概念を180度変えて、正の対応の視点を導入して体の起こす反応
を捉え直してみると、股関節障害の真の姿が浮き彫りにされます。
人体の各関節は、事故や怪我がなければ、生涯正常に動く様に作られています。
特に歩行のための下肢は、自然界においては、移動して食べ物を得る上で、最後
まで守りぬかなければならない機能になります。つまり歩けなくなるという事は、自
然界では死を意味します。故に簡単には壊れない構造になっています。移動のた
めの歩行は、たとえ跛行を呈しても、自力歩行は最後まで守り抜くように働きます。
股関節の運動障害や変形が生じても、最後まで歩行を守ろうとしていくのです。

関節の骨頭部位が変形して原形を失い、関節接触面が小さくなっても、股関節の
関節臼と大腿骨骨頭との接点が約8ミリ残っていれば歩行は維持できると言われて
います。またこれ以上変形が進行して歩行不全には向かわないのです。変形を悪
と思い込んでる固定概念が、変形を促進させ歩行不全になると思い込ませている
のです。

生命体とはそんなにもろい存在ではありません。人智を超えた対応を見せるのです。
この様に生命に関わる機能は最後まで守りぬくように作られ、機能保持の手段を
完璧に備えています。股関節に運動制限を起こすのも股関節を変形させるのにも
意味があるのです。当然股関節の機能に限らず、生命を維持する上で重要な機能
は、その機能を守るように体は対応します。特に直接命に関わる内臓の機能には、
幾重にも守る対応手段を構築しています。


<”肝心要”を守る対応の中から、体全体に歪みが生じ、そのひずみが股関節に
集約する>

42年の臨床の間には、様々な股関節の障害を診てまいりました。突発的に股関
節が全く動かなくなり、固着した様な状態の病状もよく経験します。これも命を守る
対応で、左股関節は心臓との関連から発生し、右股関節は肝臓、胆嚢との関連
から起こります。

心臓は血液循環のポンプの役割を担い、生命に直接関わる臓器です。この機能は
何としても守らねばなりません。肝臓、胆嚢も生命維持に欠かせない臓器であり
ます。肝臓は体のエネルギー物質を生成貯蔵し、胆嚢は苦い胆汁を分泌する事で、
体内の炎症を鎮め、病気予防に欠かせない働きをしています。

漢方薬は全て苦い成分でできており、これを苦寒薬と称し、体内の炎症を鎮める
事で病気を治します。これと同じ作用を胆汁が果たしています。自ら出す苦寒薬
なのです。副腎皮質ホルモンのステロイドの抗炎症作用に匹敵するものと考えて
います。病はほとんどが炎症の形態をとります。この炎症を鎮める働きを担う胆汁
は、病気予防に欠かせない物質なのです。また血液の熱変性を防ぐ働きも担って
います。
血液が熱を帯びると赤血球の連鎖が発生し、血液の質を落とし、全身の毛細血管
の流れに停滞と詰まりを起こします。故にこの胆汁の分泌は優先的に守らなけれ
ばならないのです。

つまり肝臓胆嚢と心臓は、正に肝心要に当たる臓器で、命の源となる血液の循環、
配分、質(赤血球の連鎖)の保持に一番関わる臓器になります。心臓の血液の噴
出と胆汁の分泌を守るために、様々な対応がとられますが、その中の対応手段
には、体全体で心臓と胆嚢を絞り込む事で噴出と分泌を助ける対応があります。
これは命を守る必要な対応になりますが、姿勢にゆがみが生じます。この体全体の
ゆがみのひずみが股関節に集約されて、股関節に運動制限や変形が生起されてく
るのです。


<左股関節に運動制限や変形を起こす根本原因は、心臓機能を守るために起こる
体全体のゆがみから発生する>

体をゆがませる理由は、既に述べてある様に生命を維持するためです。生命維
持の中で最も重要なのは、心臓と肺の機能です。息が止まれば最短35秒位で死
に至ります。また心臓が止まれば直ちに死に至ります。故にこの二つの臓器の機
能は何にも替えて優先的に守り抜かねばなりません。
その中にあって、肺の機能は息さえ吐き出せば、吸う息は自然に入ってきます。
そのため余り対応を必要としません(咳の症状は、咳(せ)く事で息を吐き出し、空気
を取り込む対応手段になります)。もう一つの心臓は、袋を収縮する事で血液を
噴出する構造になっているため、機能が低下すると心臓の収縮を手助けする対応
を必要とします。

円錐形でハート型をした心臓のポンプの収縮を助ける対応は、心臓のポンプ構造
に準じて行なわれます。心臓のポンプ構造は、形状ポンプと呼ばれ、円錐形をした
下部の細い部分が収縮する事で、血液を噴出する構造になっています。また単純
な円錐形ではなく、上から見ると右にねじられた”ねじれドーナツ”の様な形状で胸
骨の下やや左側に収められています。
この心臓の形状ポンプの収縮を助けるためには、細くなっている下部(心臓の心
室)の部分に物理的な圧迫を加えてあげる事が収縮を助ける対応になります。この
ためには上部の胸椎の3、4、5番を前方に突出する体勢をとる事になります(心
肺機能の遺伝的に弱い人の特徴的な姿勢)。また右スピンしている心臓本体の機
能を助けるために、上体全体を右にねじる事で収縮がしやすくなります。これは体
にねじれを生起します(例)スカートが履いてるうちに回ってしまう女性の人。
さらに体全体で心臓本体を絞り込み、より収縮を助ける対応をとるのです。

心臓という生命に直結した臓器の血液の噴出機能を守るためには、生きている体
は自身の姿勢をゆがめてでも守る対応をとっていきます。
このように、心臓機能を守るための対応として発生する姿勢全体のゆがみが、左股
関節の寛骨臼と大腿骨骨頭との位置関係に片寄りを生じさせ、股関節の運動制限
やひいては変形性股関節症を引き起こす根本的な原因となるのです。


<右股関節の症状や変形は、人体の右脇腹に位置する胆嚢の機能を守るために起
こる体全体の歪みが原因>

右脇腹に位置する胆嚢は胆汁を入れる袋になります。心臓と同様に袋を収縮させ
る事で、胆汁を噴出しています。その胆嚢に炎症が起きて袋が腫れると、袋の収縮
が制限され胆汁の噴出ができなくなります。これを回避し、胆汁の分泌を守るために
は、胆嚢という袋を体ごと絞り込み、袋の収縮を助ける対応をとる事になります。体
の炎症や血液の熱変性に直接関わる胆汁の分泌は優先的に守らなければならない
のです。

右脇腹に位置する胆嚢を絞り込むためには、体の右側面全体を縮め、上体を左に
ねじり、右肩を前下方に巻き込み、右鼠蹊部を縮めこむ体勢をとる事になります。
この体全体に起こる姿勢のゆがみが、右股関節に集約され、寛骨臼と大腿骨骨
頭の位置関係にひずみと片寄りを生起させるのです。この状態の持続が、右股関
節に症状や変形をもたらす最大の要因となります。
以上が体全体と股関節の関連であり、股関節障害と変形の根本的な原因となるも
のです。また股関節障害の根拠と機序に相当します。


<股関節の運動制限の時間的経過とその理由>

これまで解説してきました様に、全体の姿勢のゆがみが左右股関節の寛骨臼と大
腿骨骨頭の位置関係にひずみと片寄りを起こし、時間の経過の中で症状を発生させ
ています。
体のゆがみが無く、股関節の大腿骨骨頭が寛骨臼の中心に正常な角度で収まっ
ていれば、球関節の特性である大きな可動域を発揮する事が可能です。しかし、
この大腿骨骨頭の入角が前方や後方に偏ってしまうと、股関節の正常な可動域に
制限が生じるのです。

骨頭の位置のズレが小さい内や初期の頃は、自覚症状が余り感じられませんが、
時間の経過とともに自覚する様になります。両足裏を合わせたあぐら姿勢をとる
と、左右対称にならず、片側が浮き上がったり、股関節の付け根あたりに痛みや
違和感を感じます。
さらに時間の経過と位置のズレが大きくなると、立位で、もも上げを行なうと股関節
の異常側はもちあげにくかったり、正常側に比べてもち上がらなくなっています。
さらに進行すると、椅子に座って片足を組む動作が、位置異常のある股関節はでき
なくなったり、痛みが発生します。さらに進行すると、歩行時に痛みと歩幅の減少が
起こり、跛行を呈する事になっていきます。

しかしこれらの進行には理由があります。体は、心臓の血液の噴出と胆汁の分泌
を守る対応として、ゆがみを起こす事で対処しています。
股関節のひずみが進行するという事は、体のゆがみをより強くしないと対応でき
なくなっているのです。股関節に痛みや運動制限は起こしても、命に直結する方
を優先して守らなくてはならない状況になっているのです。股関節の痛みや運動
制限は、その警告サインとして発しているのです。


<股関節の固着症状は何故起きるのか>

股関節の固着症状とは、股関節がほとんど可動性を失って、固まった様な状態を
指します。突発的に起こるケースと慢性症状があります。突発的な場合は、痛み
を伴い、歩行はできますが、かなりの跛行状態になります。慢性の場合は痛みはあ
りませんが、固着側は歩幅が小さくなり、上体を揺動させた跛行を呈する事にな
ります。ただし歩行は痛み無く行なえます。

これはどうして起こるかと言うと、これまで股関節障害の根拠と機序となる心臓と
胆嚢の絞り込みの解説の中に述べている様に、心臓や胆嚢の弱りの程度に応じ
て絞り込みは変化します。心臓の血液の噴出が弱れば弱る程、心室の圧迫、右ス
ピンの助長、心臓全体の絞り込みは強くなります。右の胆嚢も同様です。

この対応が極限にきたのが固着状態になります。上体と股関節で絞り込みを固定
してでも血液の噴出と胆汁の分泌は守る対応の姿になります。この固着状態は、
股関節以外でも発生します。両肩や脊柱の肋骨のある部分と無い部分の境目に
当たる胸椎腰椎移行部です。いずれも左であれば心臓の噴出を守り、右であれば
胆嚢の分泌を守る対応として起こります。発生の機序は股関節と同様です。ただし
胸椎腰椎移行部の固着は心臓の絞り込みの場合がほとんどで、肋骨の”籠”全体
が右にねじれた状態で固着します。
以上の様に、生きている体の起こす命を守る対応は、何段階も構築されており、
正に人智を超えています。この延長上に股関節の変形も存在するのです。


<股関節の変形は何故起きるのか、変形は悪ではない>

人体の関節は事故や怪我さえなければ生涯正常に動く構造になっています。例え
ば世界一過酷な人体の走行耐久レースと言われるアメリカの「バークレイマラソン」
と言われるものがあります。これは起伏のある山道で、一周36キロの行程を5回繰
り返しタイムを競うというものです。単純計算して、180キロの高低差のある山道
を最大限の速さで走り続けるタイムレースです。
これだけ何十時間も走り続けても、股関節は壊れないのです。当たり前の様に思
われますが、これを機械のバイクに置き換えると、エンジンや車軸は熱を帯び、
途中でエンジンのオーバーヒートや車軸の損傷が起きる事は当然になります。そ
してエンジンや車軸は、強烈に熱を帯び触ると即座に火傷を負います。また熱に
より金属は溶けたり変形してしまいます。つまりどんなにエンジンや車軸に冷却
装置を付けたり、潤滑油を供給しても摩擦による熱の発生は抑えられないのです。
(ちなみに心臓は死の瞬間まで永遠に動き続けますが、オーバーヒートしません)

人体中膝に次ぐ大きな関節接触面を持つ股関節には、レース走行中常に強い重力
圧と動きによる接触圧がかかり続けます。これは当然熱の発生を生起します。硬
いもの同士が強い圧と速い動きで擦れ合えば大きな熱を発生します。ピストンエ
ンジンや車軸で解説してある通りです。火傷や物が溶ける様な熱です。
しかし人間の股関節にはその様な熱は一切発生しません。当たり前の様に感じま
すが、これは素晴らしい仕組みを備えられているからなのです。それは人体に熱
を発生させないための機構と熱を速やかにすてる仕組みが完備されているから
です。

その仕組みとは、重力の緩衝装置や重力圧を面でなく点で受ける構造と関節内
に充填してある潤滑液(関節液)の供給循環システムが完璧だからです。
簡単に熱で股関節がオーバーヒートを起こし破壊されたのでは、生物は直ちに命
を失う事になります。自然界に生きる生物は、死の瞬間まで歩行を守りぬく様に
完璧な対応を備えているのです。
重力の緩衝装置や重力圧の分散のための点接触等の構造的な仕組みは、脊柱、
骨盤、下肢といった全体的なつながりの中で達成されます。股関節内の熱の処理は、
関節液の循環供給システムが担っています。この関節液の役割は、水冷作用、潤
滑作用、速やかな循環と関節膜を透過しての交換作用が求められます。

股関節はこの全てを完璧に備えています。それは死の瞬間まで一生使用しても壊
れないためには当然の備えです。この関節液が関節包に仕切られて股関節内に充
満し股関節を熱の破壊から守っているのです。
股関節を熱の破壊から守るためには、この関節液の循環供給システムは最後まで
守る必要があるのです。
この関節液の循環供給を守る対応が、股関節の大腿骨骨頭の変形の根拠と機序
になります。体全体の姿勢のゆがみが、股関節の大腿骨骨頭位置にひずみを発生させ、
股関節内の関節液の循環供給に制限をもたらしたのです。これは股関節内に熱を
発生させ貯留させる最大要因となるのです。股関節を熱の破壊から守るためには、
関節液の流れを変える必要に迫られるのです。これを成すためには、骨頭の形を
変える事で達成するしか対応の手段がなくなったのです。

例えるなら、小川の流れを変えるのに、流れの中に大きな石を置きます。水の流
れは大きく変わります。水の流れは石にぶつかり、抵抗を受け、その両脇の水の
流れは急流になります。これと同じ作用が骨の形を変える事で関節液の循環が変
わるのです。
骨の変形の程度は、関節液の停滞の程度と時間の経過で変わります。これが股関
節の変形の真の姿なのです。つまり骨頭の形を自ら故意に変えていくのです。そして
その目的は関節液の循環供給を守る必要な対応であったのです。
変形は悪どころか、これによって股関節が熱の破壊から守られているのです。さ
らには歩行を確保させる事で、命を守っているのです。


<変形の進行によって歩行ができなくなるという考え方は、間違いである>

レントゲンの画像に映し出された大腿骨骨頭部の丸さを失った形を見てしまうと
誰しもこれは大変な事態だと不安をもちます。それは無理もない事で、機械である
ならそれは間違いなく悪い状態で、そのまま使用すれば動かなくなる事は明白です。
この機械の部品の変形の概念がどうしても拭いされないのです。しかし生命体は
機械ではありません。機械に永久機関は作れませんが、生命体は死の直前まで永
久に動き続ける事ができる様に、また最後の最後まで自らの命を守りぬく様に作ら
れています。故に股関節に変形が起きても、最後の一線は超えない様に変形には
歯止めがかかるのです。寛骨臼と大腿骨骨頭の接点が約8ミリ残っていれば歩行は
可能なのです。
変形が悪という先入観と固定概念が、このまま変形が進行すると歩行不全に成る
と思い込ませているのです。生命体のもつ、命を最後まで守るという完璧な対応
手段は人智をはるかに超えて構築されています。生命体は、ある限界で変形を止
め最後まで歩行を守るぬこうとするのです。


<人口骨頭への置換手術を行なった場合の予後はどうなるのか>

この問題に関しては、この置換手術法の歴史が浅いため予後の判定が難しい面
は否めません。想定される事態を述べておきます。
これまで詳細に股関節の障害と変形の根拠と機序を述べてきました。股関節に痛
みや運動障害が発症する原因は、右は胆嚢、左は心臓の機能低下を補う対応として、
体全体で、胆嚢と心臓を絞り込み、胆汁の分泌と心臓の血液の噴出を守るために
体のゆがみの集約が起こるからです。また股関節の変形は、ゆがみの集約により、
大腿骨骨頭の位置以上が生起され、関節内の関節液の循環を守る対応として発生
しています。

変形した骨頭部を切断して人工関節に置き換えられるという事は、本来の関節機
能に大きな変化が生じる事になります。関節を熱の破壊から守る関節液や関節包
が無くなります。人工関節には、熱の発生を最小限にする様々な工夫がなされて
いるはずです。また熱の発生につながる激しい運動や姿勢は制限されるはずです。
骨頭の受け皿になる寛骨臼側には、ソケット部品と磨耗軽減のための緩衝物が組
み込まれます。故にソケット部と緩衝物、人工骨頭部が、磨耗することはあっても
元の自然な骨の様に変形する事はありません。

体に人工物が入れられた場合、当然生命体は、これを受け入れて順応する様に対
応します。それは生命を全うさせるための苦肉の対応となります。そのためには、
人工物はそのままに、寛骨臼側の受け皿部と大腿骨側に差し込まれた金属棒との
間に、骨を増殖させたり、逆に骨を溶解させて、変形させ馴染ませる対応をとって
いきます。ただ元々骨と金属は親和性はなく、時間の経過の中で骨の方が破壊さ
れたり人工骨頭が磨耗する可能性も出てきます(歯のインプラント手術も同様になり
ます)。こうした理由から股関節の置換手術の再手術も起きているのが現状になりま
す。

このように人工物の変化は無くとも、支える骨側に骨の増殖と溶解が生じるのは、
人工物を体に馴染ませる必要上避けられない対応になります。生きている体の苦
肉の対応と言えます。生命を維持するために、最後まで命を守るように生命体の
やる事は全てこの一点に集約されるのです。


<体のゆがみはそのまま残り、内臓機能を守る対応が大きくなり上半身に反応が
起きる>

股関節の大腿骨骨頭の変形は止まっても、体のゆがみはそのままの状態です。
胆嚢と心臓の絞り込みは、臓器の機能低下の状態と程度に応じて繰り返されます。
故にゆがみの状態が大きくなれば、大腿骨骨頭の位置にひずみが生じ、痛みや
運動障害が発生する事は当然です。股関節の固着も起こります。
ただ人工物に置き換えたために、接点が大きくなり支えは利くようになり、股関節
自体の痛みは軽減されると考えられます。そのために下肢の絞り込みの対応が
制限され、それを補うために上体の絞り込みをより強くする事で対応する事にな
るのです。そのために肩の巻き込みが助長され、肩の痛みや運動制限、場合に
よっては肩の固着が発生します。(詳細は院長の日記、肩の痛みの項参照)


<肝心要が影響を受け、全身の血液の循環、配分、質を乱し、免疫力を大きく低
下させる>

またそれ以上に大きな体への影響が生じます。体の絞り込みの対応が制限を受け
るために、胆嚢と心臓の機能低下を補えず、胆汁の分泌不足と心臓からの血液噴
出力が低下する事により、肝心要の働きを落とす事になります。
肝心要と表現される肝臓(胆嚢を含む)と心臓は、命の源となる全身の血液の循
環、配分、質に関わる臓器になります。全ての病気の背景にはこの全身の血液の
循環、配分、質の乱れが必ず存在します。
肝臓はレバーと呼ばれ、血の固まった様な大きな臓器で、血液成分や脳内ホルモ
ン、脳の神経伝達物質等を生成し、人体のエネルギーの貯蔵庫として生命維持に
欠かせない臓器であります。肝臓の機能低下は免疫力を大きく落とし様々な感染
症やガンの誘発につながります。

また胆嚢の機能低下は、胆汁の分泌を減少させ、脂肪の分解吸収ができなくなる
事で、脂肪酸とグリセリンの生成を低下させます。脂肪酸の不足は糖代謝を落と
し人体にエネルギー不足を生じさせます。これを補う対応として血中に脂肪を蓄
えさせるのです。これがコレステロールと中性脂肪の上昇につながるのです(高
脂血症)。これを薬で抑制するとさらに重篤な対応へと移行していくのです。

また胆汁のもつ炎症の鎮静作用と血液の熱を冷ます作用の低下は、様々な炎症性
疾患を起きやすくします。病のほとんどが何々炎という名称がつくように、病気に
なりやすい体質に移行させます。つまりは免疫力を低下させてしまうのです。また
血液の熱を冷ます作用の低下は、血液に熱変性を生み、赤血球の連鎖(ドロドロで
ベタベタな血液)を生起します。これは血液の質を低下させ、これも体の免疫力を著しく
低下させます。特に血液の質の低下は様々な自己免疫疾患(リウマチ、膠原病
等)の根源的な要因となります。

さらに体内の毛細血管の流れに停滞と詰まりをもたらします。これは全身を網羅
する毛細血管に熱を発生させ、これを回避する対応として、アトピー性皮膚炎や
浮腫を作り出します。脳内の毛細血管の流れの停滞と詰まりは、これを流す対応
としての脳圧の上昇を起こします。脳圧の上昇は、脳溢血、脳梗塞、クモ膜下出
血の危険を高める事につながるのです。

この様な肝臓や胆嚢の機能低下を元に戻す対応として、肝胆に大量の血液を集め
熱を発生させます。中身の詰まった大きな臓器に充血が起きる事は、全身の血液
の配分を乱す最大の要因となるのです。
また心臓のポンプ力の低下は、全身の血液の循環を大きく乱す事になるのは必然
です。肝心要と言われる肝胆と心臓の機能低下は、以上の様に全身の血液の循環、
配分、質を乱す最大の要因となり、体の生命力や免疫力を低下させるのです。こ
れは当然ガンを含めた重篤な疾患を引き起こす隠れた根源的な原因となるのです。

<人工関節への置換手術の隠された真実>

人工関節により、痛みや運動障害が一時的に消失したかの様に見えても、体内で
は上記の症状が引き起こされているのです。ほとんどの方がこの事に気づかず、
人工関節との関連は誰も指摘する事がありませんが、股関節の痛みや運動障害、
変形の根拠と機序に照らすと、解説したような問題が起こり得るのです。この事実
を踏まえた上での対処が求められます。


<どう対処することが、正しい選択か>

これまで、股関節障害と変形の根拠と機序を詳細に解説してまいりました。根拠
と機序が明らかになれば、どう対処すべきかの答えはすでに出ています。
右股関節であれば、肝胆の機能を元に戻せば、胆嚢を絞り込む体勢はとる必要は
なくなります。左股関節であれば、心臓のポンプ機能を高める事で心臓の絞り込み
姿勢はなくなるのです。

股関節障害や変形を食い止め、回復に向かわせるためには、この大元になってい
る体全体の姿勢のゆがみを元に戻す治療が不可欠になるのです。ただし変形そのも
のは、不可逆性の変性なので、骨が元の形に戻る事はありません。それ以上の変
形や痛みと運動障害は防止する事ができます。

肝胆と心臓の機能低下を修復し、体の歪みを元に戻す治療法は、日本伝承医学に
おいては確立しています。また股関節自体の個別の治療法も確立しています。42
年に及ぶ臨床実績がそれを証明しています。痛みと運動障害に関しては、日本伝
承医学の治療法が大きな成果を果たします。ただし変形症に関しては、変形の程
度が著しい場合は、完全な歩行には限界があります。跛行は呈しますが、痛みは
無く日常生活を送る事は充分に可能です(治療に関する詳細は、HP日本伝承医学
の解説参照)。

変形性股関節症に対しての、人工関節の置換手術の予後に関しては詳述してある
通りです。今まで誰も気づかなかった大きなリスクを抱える事を知った上での選択が
求められます。
確かに手術の方法や人工関節の素材の進歩は日進月歩の進化を遂げています。
手術による恩恵を受けている方が大勢いる事は事実です。この痛みから解放さ
れるなら、寿命は縮まっても構わないと考える方もおられます。この選択は個人に
委ねられる問題ではありますが、これまで手術の真のリスクを説明できる解説が
皆無であります。日本伝承医学の提唱する股関節障害と変形の根拠と機序及び
治療法が、選択肢の1つになる事を願います。
私自身の考えは、手術は最終手段であり、跛行は呈しても痛みは無く日常が送ら
れ、自分の寿命を全うできる方法がベストと考えます。

日本伝承医学の股関節治療

股関節から大腿部の側面の痛み、痺れ、力が入らない症状の考察