浮遊肋骨

 11肋骨と第12肋骨を浮遊肋骨(ふゆうろっこつ)と言います。
これは肋骨の一番下にある短い骨(脇腹の一番下)で、腰の少し
上になります。この11番と12番の肋骨は他の肋骨とは異なり、
前側の胸骨(きょうこつ)に連結していません。1番から7番ま
での肋骨は脊柱(胸椎)から肋軟骨を介して直接胸椎につながり、
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番から10番までの肋骨は肋軟骨を介して間接的に胸骨とつな
がっています。ところが11番と12番だけが脊柱(背中側)だけ
で支えられていて、前面はどこにもつながっていないのです。
それは体幹の回旋(ひねり)や側屈等の動作に柔軟性をもたせる
為になります。
※肋骨のことを一般的にあばらぼねと言います。
 浮遊肋骨は前面がどこにも固定されていないため可動性が非
常に高くなっています(自由度が高い)。それは大きい動きがと
れることで臓器を守るクッション的役割を担っているからです。
自由度が高いということはその反面不安定になります。ある動
作や外力が加わると身体に負担がかかりやすくなってしまうの
です。
 浮遊肋骨である第11肋骨と第12肋骨に負担がかかる動作とし
て、かがんで重いものを持つ姿勢や引っ越し等の荷造り、箱に
物を詰める動作、重いものをかかえて持ち上げる動作、赤ちゃ
んやペットを抱きかかえる、抱っこする姿勢、落ちたものを拾
う動作等が挙げられます。前かがみで持ち上げるこのような動
作が肋骨下部(脇腹、体の側面、胸の下付近、背中側下部から
腰にかけて)に大きな負担をかけてしまうのです。痛みはその
時に起きなくても、就寝時、翌日や二日後等に生じる場合があ
ります(遅発性筋肉痛)

 痛みがあるときは必ず内部に炎症が起きているので、患部を
氷を入れたアイスバッグで冷却するようにします。体幹部にね
じれのゆがみが起きているので、受診日を待たずに連絡して途
中で来るようにして下さい。ねじれのゆがみを放置すると浮遊
肋骨周辺の筋肉(腹斜筋・腰方形筋・広背筋等)に慢性的緊張が
起こり、横隔膜の動きが著しく制限され、内臓に影響を及ぼし
ます。
 ※痛みが遅れて出ることを遅発性筋肉痛と言います。その時
はなんでもなかったのに数時間後、もしくは数日後に痛みが出
ることを言います。深部がズキズキしたり、押すと痛かったり、
呼吸をしても痛く感じる場合があります。普段しない動作や運
動をすると筋繊維に微細な損傷が起こり、患部を修復するため
に炎症が起こり痛みの物質(ヒスタミンやブラジキニン、カリ
ウムイオン等)が出て痛みを引き起こすのです。

≪横隔膜の動きが制限されるとどうなるか≫
 横隔膜は胸腔(きょうくう)と腹腔(ふくくう)を分けるドーム
状の筋肉になります。胸腔は心臓や肺がある場所で腹腔は胃腸・
肝臓・腎臓・膵臓がある場所になります。横隔膜がこの胸腔と
腹腔を隔てる仕切りの筋肉となっています。
 横隔膜は呼吸により上下に動き胸腔の空間を広げたり狭めた
りしています。この横隔膜の動きによって呼吸が維持され、血
液やリンパの流れが促進され、内臓の動きが守られています。
 体にねじれのゆがみが生じるとこの横隔膜の上下の動きが阻
害されるため、あらゆる機能が障害を引き起こし不調になりま
す。日本伝承医学では基本操法でまず体のねじれのゆがみを正
してから、個別操法に入り不調な個所を改善していきます。

≪参考文献≫
病気と症状は体のねじれのゆがみに起因する』著:有本政治
 「日本伝承医学の胸痛の治療