脱腸を改善するためには
脱腸を改善するための絶対条件は、横になる時間をできるだけ
多くとることです。立っていたり座っていては、身体を重力か
ら解放してあげることができないからです。
人は立っている時に腹腔(おなかの中)で次の力が働きます。
重力、腹圧(おなかの圧力)、内臓(腸)の重さです。立っている
時間が長いと、これらの力が下方向(鼠径部等の弱い部分)に集
中するので、腸が腹壁の弱い穴(鼠径管)から押し出されてしま
います。
横になると内臓が重力から解放されるため、腸の重さは背中
側にも分散され、腹圧が一点にかかりにくくなります。腹筋が
ゆるむのでいきむ動作も減り、腹圧が軽減します。脱腸は朝起
きた時には軽く、夕方になると飛び出てくるのは、体が立ちっ
ぱなしで疲弊している証です。
次に大事なことは脳内温度を下げることです。家庭療法とし
ての頭部冷却法(後頭部と首筋、ひたい等の冷却)は日課として
行なうようにします。脳腸相関と言われるように脳と腸は密接
に関わっています。脳内の圧力が高くなると脳の血管がもろく
切れやすくなります。脱腸は腸の圧力を抜くとともに脳圧を抜
く対応でもあるのです。手術等で塞いでしまうと腸の圧力と脳
圧を一気にあげることになり、症状をより重篤な方向に導いて
しまいます。
食生活の見直しも大事です。小麦粉(パン、パスタ、麺類等)
は最も腸内環境に良くありません。改善したい場合は害のある
食品は直ちに止めるようにします。お酒類は肝臓機能を著しく
低下させ、血液の循環・配分・質を乱すため、脱腸に限らず、
健康維持のためには控えます。
就寝は夜10時に床に就くようにします。この時間帯に就寝す
ることで代謝が良くなり症状が改善できるからです。水は一日
1.5リットルは飲むようにします。
≪参考文献≫
『日本伝承医学の食・息・動・想・眠』 著:有本政治
西洋医学では手術しかありませんと言われてしまいますが、
日本伝承医学(東洋医学)では、脱腸は腸の圧力を抜くために起
こしている正の対応として捉えています。このように生活習慣
を見直していくことで改善できる症状として捉えています。
受診は始めは2週間に一度のペースになりますが、症状が落ち着
いてきましたら徐々に4週間に間隔をあけていきます。
【なぜ男性はもともと腹壁に弱い穴があるのか】
人間の体にはもともと鼠径管(そけいかん)という細い通路が
あります。脱腸は男性に多く、女性の8~10倍にも及ぶと言われ
るのは出生前の体の形成過程にあります。男性は体が造られる
過程で、精巣が腹部から陰嚢(いんのう)へ鼠径管を通って移動
するため、女性よりも鼠径管が太く腹壁が弱くなりがちになり
ます。男性の鼠径管の中は精索(血管、神経、精管等の束)が通
るので鼠径管も大きく弱点になりやすい部位になります。
女性の場合は子宮円索という靭帯(子宮を支える組織)が通り
ますが、これは精索よりもかなり細いので鼠径管は小さく、腹
壁に負担があまりかかりません。逆に女性は骨盤が男性より広
い形状から鼠径部ではなく大腿部にヘルニアが起きやすくなり
ます。
※ヘルニアとは、本来ある場所から組織や臓器が飛び出すこと
を言います。脱腸と呼ばれるものはほとんどが鼠径ヘルニアを
指します。
「脱腸について」