ベーカー嚢腫
膝の裏(うしろ側)にある関節液(滑液)という液体を含んだ滑
液包が炎症を起こしてふくらんでできる嚢胞(のうほう)をベー
カー嚢腫(のうしゅ)と言います。
嚢腫が大きくなると、膝の動きが制限されてしまい、痛みや違
和感を伴います。
膝関節には本来、滑液(かつえき)と呼ばれる潤滑液があり、
関節の動きをスムーズに保つ働きをします。ところが関節に炎
症が起きると、炎症をしずめるために滑液が増えて、関節内の
圧力が上がってしまいます。圧力が高まリ滑液が膝の後ろ側へ
押し出されると、膝の裏側にある滑液包や関節包がふくらみ、
袋状になります。この袋をベーカー嚢腫と呼びます。
炎症をしずめるために、水袋のようなものを作っているので、
嚢腫を吸引したり、水を抜いてもすぐにまた再発してしまいます。
要因となる関節の炎症が除去されない限り、体は水(液体)をた
める対応を繰り返すのです(やけどのときに水ぶくれができるの
と同じ原理になります)。
膝の後ろには元々、関節の動きを助けるための潤滑の袋(滑液
包)がいくつか存在しています。特に腓腹筋内側頭と半膜様筋腱
の間の滑液包は、関節腔とつながっているので、膝関節内の圧
力が上がると、この滑液包に関節液が流れ込みふくらんでいき
ます。あふれ出た関節液が逃げ道として後ろ側に流れ込むのです。
膝の後ろは、膝の前のように骨で守られていないので、柔らかい
組織が多く、圧力が逃げやすく、膨らみやすくなります。
【なぜ炎症が起きるのか】
血液の熱を冷ます働きがある胆汁(たんじゅう)が分泌不足に
なると、血液は熱を帯びてしまいます(血熱)。熱変性によって
赤血球が連鎖して血液がどろどろの状態になるので血液の質が
著しく低下し、毛細血管が詰まり熱を発生させ、関節に炎症を
生起させていくのです。
胆汁は肝臓で作られ、胆のうに蓄えられ濃縮されるので、肝
臓機能が低下すると胆汁が分泌不足になります。つまり関節の
炎症は根本要因である胆汁の分泌不足を正常に復することが急
務です。そのためには低下した肝機能を上げていかなければな
りません。
【血液が熱を帯びるとどうなるか】
健康な人の血液は熱を帯びていないのでさらさらに流れてい
ます。ところが体に不調が起こると、胆汁が分泌不足になり血
液が熱を帯びるので、赤血球同士が連鎖してどろどろでべたべ
たになってしまいます。毛細血管が詰まり、流れがとどこおる
ので、足がつったり、むくんだり、足の中が固まったような感
じになったり、足が重くなったり、疼痛や関節痛等が発症して
きます。ふくらはぎの深部や足の付け根に急に痛みが生じて途
中で歩けなくなってしまうこともあります。症状がひどくなる
と下肢閉塞性動脈硬化症を引き起こす場合もあります。
こうした症状の背景には心臓機能の低下があります。心臓の
ポンプ作用が弱くなっているのです。ポンプ力が弱くなってい
るため全身の隅々まで血液を循環できなくなり、末端である下肢
への血流が悪くなってしまうのです。
【症状を改善するためにはどうしたらよいのか】
このような症状を改善するためにはまず、横たわる時間をで
きるだけ多くとることです。体は横になることで初めて重力か
ら解放され、各臓器を休ませてあげることができるからです。
立っていたり椅子に座っている状態は、重力により常に身体に
負荷がかかります。休まらないのです。眠らなくてもいいので、
日中でも体を横たえることが、体を回復させるための絶対条件
になります。
お水の摂取も大事です。私たちの体は汗や排尿で1.5リットル
の水分を排出しています。つまり一日1.5リットルの水をとる必
要があるのです。
【日本伝承医学の治療】
体に起こる症状はこのように単にその部位だけをみて、症状
を封じ込めているだけでは根本的な改善にはなりません。病気
や症状は、体全体との関連の中で捉えていくことが大事です。
日本伝承医学は、肝心要(かなめ)と言われる、肝臓(胆のう)
心臓機能を高めることを主体として学技が構築されています。
東洋医学の分野で日本古来から綿々と伝承されてきました。
家庭療法としての頭と肝臓の局所冷却法を合わせて実践してい
くことで不調な個所を改善していきます。
≪参考文献≫ 「日本伝承医学の家庭療法」 著:有本政治
「下肢閉塞性動脈硬化症」 著:有本政治