例えば竹で編んだカゴを思い浮かべてください。そのカゴに捻りの応力
を加えていくと、帯状の竹のアミ目がくずれ、ゆるむ部分と張力が増す部
分がでてきます。この実験から考察できることは、カゴ状構造体である人
体の肋骨部は、捻れの応力を受けると左側と右側で応力の差が生じるこ
とになるということです。
 人体の肋骨部は呼吸作用によって、アコーディオンのように上下に開
いたり閉じたりという動きをしています。その肋骨部に捻れの応力が加わ
ると開閉作用に障害が生じるのです。
 呼吸運動に大きく関わる横隔膜の動きと、肋骨の開閉運動に可動制限
が起こるということは、肺の膨張、収縮を大きく妨げることを意味します。
つまり、片側の肺機能を大きく減退させる結果となっていくのです。さらに、
二つの肺に包まれるように位置する心臓も、その根底部分は横隔膜に接
していますので、横隔膜の動きの減少は心臓の拍動にも変化を生じさせ
ることにつながるのです。


 このように心肺が機能低下を起こすということは、人体の生理機能にと
ってとても大きなマイナス要因になります。
さらに、人体の体幹部を仕切る隔壁としての横隔膜は、呼吸運動に関与
するだけでなく、別名「内臓マッサージ」と呼ばれるように、流動性のある
物体でもあります。全内臓を動かす、動力装置としての働きを有している
のです。動く隔壁として、その上下の動きは全内臓にパスカルの法則とし
て作用し、動きを与えてくれているのです。そして特に、人体が横たわっ
た状態においては、血液・体液のポンプ機構としての働きをもっています。
 私の予見では、横隔膜は人体最大のポンプ装置ではなかろうかとも考
えています。このように、体幹部に起こる捻れは心肺機能低下、体液の
循環低下という悪の連鎖を引き起こしていくのです。


 次に横隔膜より下部に起こる捻れの影響を考察してみましょう。
当然、下部の臓器も捻れの影響を受けることになります。特に、左右二つ
ある腎臓や女性の卵巣が捻れの影響を受けやすいのです(左右二つある
肺が捻れの応力を受けることはすでに述べてあります)。
 肋骨のカゴが捻れることで、片側に肋骨の可動性欠如、及び圧力の偏
在が生じます。肋骨部の下部に位置する腎臓は、当然この影響を受ける
ことになります。腎臓という臓器は、五臓の中で一番動きを必要とする臓
器です。それは、遊走腎という病気が証明するようにまさに動きやすい臓
器なのです。
 腎臓は血液のろ過再生装置としての役割を担う重要なものです。ものを
ろ過するということは、器具に置き換えて考えてみますと、動きが必要に
なるということです。

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