人体の捻れが内臓に及ぼす影響



 具体的に解説します。まず人体の機能面を司る内臓への影響をあげて
みましょう。一番わかりやすいのは呼吸器への影響です。体幹部(胴体)
に捻れが生じますと、胴体の内部を区分している横隔膜の動きが阻害さ
れてきます。横隔膜とは人体の体幹部をドームの屋根のような形状で、
内部を仕切っている隔壁です。横隔膜は肺の吸気、呼気に大きく関与す
るもので、通常、吸気時に10cm位下降します。呼気時に上昇して、肺の
膨張、収縮に関わっています。
 呼吸法でいわれる「腹式呼吸」とは、この横隔膜の上下の動きを指して
います。横隔膜が大きく上下することで、吸気、呼気を十分に行うことが
できるのです。
 簡単な実験をしてみますと、横隔膜の動きが実感できます。まず仰臥
位(ぎょうがい)で寝ます。そして、腹式呼吸の要領で腹部に手をおき、大
きく呼吸を何回かやってみます。何の問題もなく深く呼吸できます。しか
し寝たまま、上体を左右どちらかに大きく捻った姿勢をとってみます。腹
筋に力が入らないように注意して、同じように腹式呼吸をしてみましょう。
横隔膜の動きが制限され、深い呼吸ができなくなることが、すぐに体感さ
れます。
このように横隔膜の動きは呼吸に大きく関わっているのです。


 私たちの身体は吸気で生きるために一番大切なエネルギーであります
酸素を体内に取り入れ、血中にヘモグロビンとして取り込ませ、全身を滋
養しています。そして呼気においては、体内の有毒ガスであります二酸
化炭素を体外に放出し、さらに体内の“熱”をすてる重要な役割を担って
いるのです。
 私たちの命を存続させる上で、この呼吸作用は最重要機能といえます。
横隔膜の動きが制限を受けるということは、それがたとえわずかなもの
であったとしても、長時間継続されれば、人体のすべての機能に低下を
もたらしていくのは必然です。
 生命にとって、酸素の不足と二酸化炭素の体内蓄積、及び熱の排出不
足は、人体機能に決定的なダメージを与えていくのです。さらに体幹部に
捻れが生じるということは、左右どちらかの肩が、前方に巻き込む姿勢を
呈することになります。
 胴体の上部、横隔膜より上にある臓器は二つの肺と、その真ん中に心
臓が存在します。そして、外側は、カゴ状をした肋骨が左右12対、脊柱と
関節をなしています。このカゴ状をした肋骨部全体に捻れが加わります
と、12対の肋骨の動きに、何らかの動きの制限が起こってきます。 

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