心と身体の相関に、この“捻れ”という現象が深く関わっているというこ
とは事実であります。心に関連する外部の捻れとは社会、対人関係にお
ける捻れを示唆します。
 社会における、対人関係の中で、摩擦を生じることを「人間関係がこじ
れる」ということばであらわします。“こじれる”とは、捻れる、ヨラれる、か
らみあうと同義語になります。そして“こじれ”がひどくなると、修復するの
に大変な作業になります。このこじれた関係を元にもどすことばが「ヨリを
もどす」という表現です。まさに、対人関係においてもこじれ、捻れは発生
させてはいけないのです。こじれの少ないうちにに早期に気づきヨリをも
どすことが大切です。こじれにこじれてしまって、複雑に絡み合うとヨリは
どんなにあとから修正を試みても元にもどせなくなります。ついには縁を
断ち切ることにもなりかねません。その決断と勇気も時と場合によっては
必要になります。こじれとからみを断ち切ることで、心救われることもある
のです。
 また、こじれて、絡み合うことを表すコトバに「しがらみ」ということばが
あります。「世間のしがらみ」「男女のしがらみ」「家族のしがらみ」このこ
とばも言い得て“妙”といえる表現です。“しがらみ”にしばられて、固まり
身動きできなくなり、進退きわまってついに「死」を選ぶといった事態に発
展してしまうこともあります。
 まさに、こじれ、捻れに端を発してヨリもどせず、断ち切ることもできず、
こりかたまって、し(深い)しがらみー死がらみ、となってしまうのです。
 このように心の外部の捻れは、気づいたときにできるだけ早急にヨリを
もどさなければならないのです。


 また人体内部(内臓)がよられて耐性を強くし、表面積を大きくとること
によって受容・伝達・処理・反応能力を高めているように、心においても
内部の捻れは必要になってきます。「心のひだ」「心のあや」などの内部
の捻れは多ければ多いほど感受性豊かな強い人格が育まれます。傷つ
いたりつらい体験をしていくことによって人は心が幾重にもあや織りのよ
うに捻られ、忍耐力や精神力を培い、受容・伝達・処理・反応能力を高め
てくれるのです。
 心と身体も内部はヨラれて、耐性が強くなりますが外部に捻れはつくっ
てはならないのです。
 日本語には、捻れのない“直”まっすぐという意味をあらわすときに素直
ということばがあります。素直な心は、社会や対人関係においても摩擦や
捻れを発生しにくくさせます。また素直な気持ちでいればどんな事態が発
生しても的確な受容・伝達・処理・反応能力が自己の内に作動するので
す。
 何事をなすにも心の素直さはいちばん大切な要素になってきます。素
直さを失えば、心が捻れ、心の捻れは、やがては身体の捻れを作り出し
ていきます。捻れはけっして心だけの問題ではなく、健康にも大きく関わ
っていくものなのです。


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