次に肩関節のみならず、肘関節にも当然、捻れの影響は生じてきます。
捻れが起これば、これまで幾度も解説してありますように、筋肉、腱、じん
帯の異常緊張が生起されます。この状態で肘の運動を長期間行えば、
障害が発生していくのは必然です。
 多少観点は違いますが、“投手肘”という症状があります。肘関節が伸
びなくなって、投球動作ができなくなる肘の障害です。これを防止するため
に、少年野球(成長期の子ども)では、ピッチャーにカーブボールを投げさ
せないように指導しています。これは何故発生するかといいますと、肘の
伸展、屈曲という動作は、単に蝶番のような動きではなく、肘関節の伸展、
屈曲はひねりが加わりながら、達成されているのです。このメカニズムは、
肘を伸ばすときは前腕部が内側に回旋(ひねり)しながら伸びていきます。
 逆に屈曲時は、逆に回旋しながら曲げられるように関節の構造が作ら
れているのです。ピッチャーがカーブを投げる動作は、ボールに回転をか
けるために、前腕を外側に回旋(ひねり)しながら、肘を伸ばす動作にな
ります。
これは、正常な肘の伸展動作に反する運動になってしまうのです。


 この関節の順な動きに反した投球動作を反復していけば、当然、肘をと
りまく筋肉・腱・じん帯に“熱を”発生させていくことになります。これは当然
関節炎を引き起こし、長期間継続すれば、骨に変形を生じさせていくのは
必然となっていきます。ピッチャー肘特有の「くの字」に屈曲して完全伸展
ができない状態を呈することになるのです。これが少年野球でカーブボー
ルを禁じている理由になります。
 逆にシュートボールでは、関節のひねりの動きに順じているので、肘をこ
わすことは少ないのです。ここにも“捻れ”ひねりの重要性をうかがい知る
ことができます。当然捻れた状態での投球動作は、肘に炎症を起こさせ、
変形の原因になることはいうまでもありません。
 次に手関節にも捻れの影響はでてきます。前腕部にあるとう骨と尺骨と
いう2本の骨に捻れが起こるということは、手関節の動きに、正常を逸脱
した状態が生起されます。これも筋肉・腱・じん帯・関節の障害の発生の
誘因として働くことになるのです。
 指関節に起こるバネ指も上肢全体に起こる捻れに起因して、循環不全
を起こし発生していきます。
 体幹部の捻れに連動して起こる上肢(肩・肘・手)の内旋(前方に捻られ
た状態)は、このように肩・肘・手・指の障害と深く関連しているのです。

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