捻れが関節・筋肉に及ぼす影響(下肢編)



 私は約25年間、スポーツトレーナーとして、多くの運動選手のスポーツ
障害に関わってきました。その中で得た結論は、スポーツにおける怪我
の8割は、本人の持つ身体の歪み(捻れ)によって起こるべくして起こり、
不可抗力による怪我は全体の2割であろうということでした。
 例えば代表的な下肢に起こる大腿部の肉離れ、膝の半月板損傷、じん
帯損傷、アキレス腱断裂、上肢に起こる肩、肘の痛み等は、身体の捻れ
の歪みに起因して、起こるべくして起こっているのです。
 不可抗力によって起こる怪我とは、バレーボールの選手がよく起こす、
ジャンプして着地時の相手の足に乗ったり、ボールに乗ったりして起こす
足首の捻挫。ラグビーの選手が起こしやすい、何人もの人に乗られて起
こす肩、膝の怪我。柔道や相撲に見られる、相手ともつれあって転倒した
場合の怪我、サッカー選手のヘディング時の空中衝突、反則による怪我、
バスケット選手の相手の膝がモモに入っての打撲等に限定されていて、
これらは不可抗力としか言いようのない事故に相当するものです。これ
は、スポーツにおける、障害の約2割程度と見ていいでしょう。8割は起
こるべくして引き起こされているのです。
 スポーツによる関節筋肉に起こる障害にとどまらず、全身の関節・筋肉・
腱・じん帯から、爪にいたるまでの各種障害は、実は、身体の捻れの歪
みが、大きく関わって引き起こされているのです。
 冒頭で述べてありますように、外見からはわからない、気づかない「バ
ナナの中身」が腐りかかっている状態がすでに存在していて、そこに何
かを引き金として、起こされているのです。


 人体の内部には、神経が引きのばされたり、血流やリンパ液の還流が
阻害されて停滞を起こしたり、筋肉が常に張力をうけたり、常に収縮を余
儀なくされたり(いわゆるコリ状態)、筋肉内の循環不良のため、不純物
や有害物質が貯留したり、腱やじん帯が常に過剰な張力をうけたりという、
生理失調がすでに起こっているのです。これらの生理失調をバナナの中
身の状態にたとえて表現してきましたが、まさに外見はきれいで形もくず
れていないのに、バナナの中身が黒ずんだり腐っていたりという例にぴっ
たりと人体もあてはまるのです。これが「人体バナナ理論」と名づけた命
名の由来です。
 次に身体に起こっている“捻れ”がどういう機序でこういう状態を引き起
こすのか、具体的に例をあげながら解説してみましょう。

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