代表的な例として、下肢の大腿部(モモ)に起こる肉離れを例にあげて
みます。陸上のランナーやサッカー、ラグビー等の選手が、運動中によく
起こす疾患ですが一般的には、瞬時に過度の張力が筋肉に加わり、引
き起こされると考えられています。
 陸上短距離のランナーが、疾走中に突然、激痛に顔をゆがめて倒れこ
むシーンを目にすることがしばしばあります。全力疾走をして極限状態に
筋肉を酷使するのだから、当然起こっても不思議ではないと考えられます
し、過度のトレーニングによって、筋肉が疲労していたとも考えられます。
しかしすべての短距離ランナーが肉離れを起こしているわけではありませ
ん。
 また運動選手は、日々筋肉トレーニングを積み、栄養や睡眠にも日頃
から気をつかい、身体のケアや心のケアを充分にしていても肉離れを防
ぐことはできません。プロの選手にいたっては、毎日のトレーニングの前
後にマッサージを受けている選手も多数います。それでも肉離れを防止
することはできないのです。
 逆の例をあげれば、普段、走ることなどほとんどしない父親たちが、子
どもの運動会に参加して、短距離走に出場したとします。全力で走ったと
しても全員が肉離れしたという話は聞いたことがありません。逆に全力疾
走したり、極限に筋肉を使ったりしなくても、いとも簡単に肉離れを起こし
てしまう場合も多々あります。
 実は、肉離れを起こす最大の原因は、その大半が、身体の“捻れ”の歪
みに起因していたのです。外からではわからないバナナの中身のように
黒ずんだり腐っていたりする状態が大腿部を含む、下肢全体にわたって、
あらかじめ起こっていたのです。
 体幹部に起こっている捻りの歪みは、胴体の中身や内臓だけが機能低
下するだけではなく、全身に影響を及ぼしていたのです。


 簡単な実験で体感、検証することができます。立位の状態で足の位置
を変えないで、身体をどちらかに大きくひねってみてください。すると下肢
の股関節、膝関節、足関節とすべて関節に捻りが加わります。内部の筋
肉や腱に張力が加わっているのが体感できるはずです。足の裏の体重
のかかり方がまったく変わっています。
 体幹部に起こった捻りの歪みは当然骨盤部も同調し、それは関節をな
す動きの大きい股関節に、正常時と異なる体重のかかり方を生じさせま
す。正常時を逸脱した関節の面圧を余儀なくしていきます。
 長期間この状態が継続することにより、股関節はその骨頭の位置を正
常時より変えざるを得なくなることを意味します。関節の位置の変化は、
それに付着する筋肉の緊張を引き起こしていくのです。
 股関節の捻れの歪みは、次の関節である膝関節にも捻りを引き起こし
ていきます。さらにその下の関節である足関節へ、さらに足のつま先に
あたる中足趾節関節にも捻れの歪みは連鎖的に波及していきます。

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