幕末の志士達が、好んで使った“赤心”(赤子のような素直な心)あるい
は、“天に恥ず”といった思想は、上記の中から生まれ育ったものであり、
それが彼等の本当の心のよりどころであり、あのエネルギーの源であった
のである。日本人の最も大切にする心、“素直”は実は「湧源」を生み出す
最も大切なことである。湧源の源は素直な心なのである。
最近、私が心掛けていることは、「モノ・コト」に対して、五感をすまして、
素直に貞くということである。“素直に貞く”この中から「湧源」の世界に通
じる何かが発見できるのではなかろうか。
万巻の書物を読み、何かをつかもうと外にばかり追い求めても、何も見
つからないし、何もつかめない。
私の師、野口三千三が、御手本は自然界、身体に貞く、重さに貞く、お
もちゃに貞くと“素直に貞く”ということを常々話されているが、私もやっと
“貞く”という意味が分かりかけてきた。
すべての「モノ・コト」に対して“素直に貞く”このことが本当に分かっては
じめて“湧源”の世界に到達できるのではなかろうか。
シンクからソースへの架け橋は、この素直に貞くことから始まる。
我々が目指している日本伝承医学の発展、継承は、理想的に言えば、こ
の湧源の二文字に要約されるものでありたいと考えている。
我田引水を恥じずに言うと、これをもって将来の医学の一助とならんこと
を念願するものである。
1992. 8. 19