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 このことは「理性と感性」という問題に関してもあてはまる問題であろう。
つまり人体(生命)を医者達が理づめに観察しても、とても気がつかない
ことが、芸術家の「感性」をもって眺めると、医者達が考えもつかない事
実をとらえ、表現していることが多いことには、歴史が証明している。
 今後我々に要求されることは、芸術家的なダイナミックな「感性」と「目」
をもって人体(生命)探求にむかう重要な視点をもつことではなかろうか。
 つまりものを見る視点は、西洋的・東洋的という二値論に偏した「優劣」
という差を排除して、それを「特徴」として正当に評価しうる「目」をもつこ
とである。「優劣」という「色メガネ」をかけて物事をみると正しいことはみ
えてこない。
 このことは東洋医学・西洋医学という問題にとどまらず、我々の身近な
問題解決にも、この「色メガネ」は必ず存在し、これを外さない限り、問題
解決にはつながらないほど大切なことである。意外と人は、この「落とし
穴」に気がついていないのではなかろうか。

 自己の存在は、他との「差」があって「存在」が認識されるのであるが、
その差は排他主義につながりやすい。
つまりこの「差」を「優劣」の視点で眺めるからである。これは人間関係の
中に潜む重要な「テーマ」ではなかろうか。

                                           1989. 7.19